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第 26 回大分県家庭科、技術・家庭科教育研
究大会 国東大会(別速杵ブロック)
立を促し、主体的に自分の家庭生活を充実
させる意欲と態度を身につけさせたい。そ
の意欲と態度が、
「家庭生活を便利に、より
大分県立別府青山高等学校
教諭 藤田 理加
豊かに」という視点を生み、生活を見通す
力に繋がるのではないかと考えた。小・中・
高等学校の家庭科の学習を経て、日々の生
活や自分の将来について見通しを持つこと
のできる子どもたちを育成することを目標
とし、この主題を設定した。
(3)高等学校家庭科研究主題・研究仮説等
主題
生活課題の解決を目指して、主体的に問
題を解決する能力と実践的態度の育成
主題設定の理由
平成 25 年度から高等学校においても新
学習指導要領が年次進行で実施されている。
1 はじめに
その中で家庭科の学習を実際の生活と結び
本大会は、大分県家庭科、技術・家庭科
付け、課題解決学習を行う「ホームプロジ
教育研究協議会の会員相互の研究を深めて
ェクトと学校家庭クラブ活動」については
資質の向上に努め、本県家庭科及び技術・
一層の充実を図ることが示された。高等学
家庭科教育の振興を図ることを目的として
校では早くから「ホームプロジェクトと学
行うものである。2年間の取り組みについ
校家庭クラブ活動」
が盛り込まれているが、
て報告する。
単位数の減少により知識や技術習得に時間
2 大会実施要項
が割かれ、学習内容については各学校間で
(1)大会主題
実施状況や実施内容に差があり、これ
家庭科、技術・家庭科における実践力を
はぐくむ学習活動のあり方
(2)小・中・高家庭科共通主題
生活の自立を目指し、生活の見通しを持
まで研究が深められていなかった。
高等学校では、課題解決を図るうえで、
生活者の視点を入れ、生活課題を家族や家
庭生活、そして地域社会へと拡げた。その
って主体的に実践する力の育成
各課題に対して主体的に問題を解決する能
共通主題設定の理由
力と実践的態度の育成を図るための研究を
学習指導要領改訂において、
「自己と家庭、
進めることにした。これらの研究を踏まえ
家庭と社会とのつながり」という空間軸の
て最終的にその身につけた実践力を継続さ
視点と、
「生涯の見通しをもつ」という時間
せるための評価方法についても考察するこ
軸の視点を踏まえ、よりよい生活を送るた
とができれば、
「ホームプロジェクトと学校
めの能力と実践的な態度を育成する視点か
家庭クラブ活動」について一つの方向性が
ら、小学校、中学校の指導内容の一層の体
示せるのではないかと考えた。
系化が図られている。
イ 研究仮説
今回の研究で小・中・高等学校で段階的
生活者の視点で自分の家庭生活や地域社
に課題解決学習に取り組むことにより、自
会に目を向け、問題を見つけて、その解決
に向けて取り組むことで、生活の充実向上
(1)ホームプロジェクトに取り組む前と後では家庭生活を送る上での意識に変化はありましたか。
を図ることができる力を習得することがで
①家庭生活に関心を持ち、生活を見直そうという意識になった
35.0%
②少し、家庭生活に関心をもつようになった
54.5%
③特になかった
10.5%
き、さらにそれらを活用する実践力を身に
つけることになるだろう。
(2)自分自身がホームプロジェクトに取り組んでみて、今後の家庭生活に活かせることはありましたか。
ウ 研究内容
①すでに自分や家族の家庭生活に活かしている
28.1%
②今後、自分や家族の家庭生活に活かせることがあった
60.0%
③特になかった
11.9%
① 各学校でのホームプロジェクト実態
調査
ほとんどの学校で夏季休業中の課題
として取り組んでいる。単位数の減少か
ら、授業にかける時間は少なく、発表を
行っていない学校もある。
②
(3)友人の発表を聞いて、今後の生活に活かせそうな内容がありましたか。
①すぐに生活に取り入れてみたい内容があった
39.7%
②少し、生活に取り入れてみたいと思う内容があった
53.8%
③特になかった
6.5%
(4)自分の取り組みと友人の発表を聞いて、今後新たに取り組んでみたい課題が生まれましたか。
①是非取り組んでみたい課題が見つかった
31.8%
各学校におけるテーマ設定までの
②時間があるときに取り組んでみたい課題が見つかった。
58.7%
アプローチ方法
③特に見つからなかった
9.5%
○「よくわかるホームプロジェクトと家
(5)今回のホームプロジェクトを取り組む上で、これまで家庭科の授業で学んできたことが役立ちましたか。
①大変役に立った
27.7%
庭クラブ活動」制作・全国家庭クラブ
②役に立った
60.1%
連盟を見せてから、今までの題目一覧
③役に立たなかった
12.2%
と優秀作品をいくつか参考資料に利
エ 研究のまとめと今後の課題
用しようと考えている。
今回の研究にあたり、実施時期や実施方
○ ワークシートを作成し、
作品例や教科
法から発表の有無や方法に至るまで全て各
書(東京書籍)のチャート式を利用し
校の裁量に任されていた「ホームプロジェ
て、テーマを決定させる。その理由と
クト」の実態を調査することができた。
計画までを2単位時間使い実施。
○教室のパソコンでホームプロジェクト
ホームプロジェクトは事前学習から発表
に至るまで、授業時間をかなり必要とする
の流れや実施例を紹介する。過去の生
が、
この課題解決学習に取り組むにあたり、
徒の優秀作品の記録用紙を配付する。
生徒が家庭生活に関心を持ち、何かを自分
図書館で調べ学習をさせる(1単位)
でやってみることで、これまで家庭科で学
○夏季休業中にホームプロジェクトに取
んだ知識や技術を集結させる経験をする。
り組ませるために、5月に1回目の
その経験こそがその後の家庭科の授業への
事前学習を実施した。
取り組みを主体的にし、生活の自立を目指
○図書館活用による情報収集。
すことに繋がっていくのではないかと考え
③
ホームプロジェクト発表の実施と
る。その生活の自立こそが、家庭科で身に
事後アンケートによる生徒の意識
つけてもらいたい力であり、生徒たちの将
調査
来の生活設計に結びついていくものである
と信じている。
(4)研究のまとめと今後の課題(全体)
今回の研究にあたり、共通の主題を設定
し、その主題のとらえ方について各校種の
教科の目標を吟味することができ、小・中・
高等学校での役割が見えやすくなった。そ
のうえで校種ごとに「学んだことを自分の
家庭生活や地域社会で活かす」実践的な学
習の研究に取り組むことができた。主題に
沿って提案授業がなされ、小・中・高等学
校での学習目標や内容、適切な題材や教材
が明確になった。
課題解決学習を段階的に行ったことで、
各校種での役割や課題を確認できた。学校
で学習したことを家庭へとつなぐ取り組み
を繰り返し行うことが重要であると再認識
した。
今後の課題としては、家庭での実践的活
動を定着させるための家庭との情報の共有
化や、
評価の仕方を更に工夫していくこと、
限られた授業時間の中でいかに効率的に実
践的な内容に取り組ませていくかなどが挙
げられる。