2014年 12月 24日 日本国家公務員労働組合連合会 景気を回復し、国の財政健全化を進めるために 大企業の内部留保の一部を労働者に還元すべき 資本金 10 億円以上の大企業は約5千社(全企業数の 0.2%)ですが、この一 握りの大企業が 285 兆円(全企業の内部留保総額の 56%)もの内部留保を抱え 込んでいます。 これらは、国民犠牲と大企業優遇政策のうえに生じたものと考えます。 本資料は「2015 年国民春闘白書」 (全労連・労働総研編集)に掲載された主要 企業・連結内部留保一覧に基づいて、国公労連が毎年試算公表してきた『内部留 保の1%による雇用増』と『非正規を含む全ての労働者に賃上げ要求額(今年は、 月2万円)の賃上げをするための内部留保の取り崩し率』について試算したもの です。 私たち国公労連は、2015 年春闘にあたり、景気を回復し、国の財政健全化を 進めるためにも、この大企業の膨大な内部留保の一部を労働者に還元すること を求めます。また、一部の大企業が富を独占する社会構造の恩恵となっている 「大企業優遇の不公平税制」や「重層下請け構造」の是正をはかり、労働者の不 当解雇、非正規労働者やワーキングプアの増大、過労死・過労自殺などに歯止め をかける世論と運動を発展させ、誰もが安心して働き続けられる社会をつくる ために全国各地で官民が連帯したとりくみを進めていく方針です。 【要旨】・わずか 0.2%の大企業が 56%の内部留保を蓄積している ・国民犠牲と大企業優遇の政策が膨大な内部留保が生じさせた ・主要 134 社のうち 90 社で 1000 人以上の雇用が可能 ・134 社中 84 社が 3%の取り崩しで月 2 万円の賃上げが可能 【資料】・主要企業の連結内部留保(134 社)による試算 ・参考 持ち株会社の連結内部留保(129 社)による試算 (問い合わせ先) 日本国家公務員労働組合連合会(国公労連) 調査政策部 青柳・笠松・千葉 〒105-0003 東京都港区西新橋 1-17-14 西新橋エクセルアネックス3F 電話:03(3502)6363 ~ わずか 0.2%の大企業が 56%の内部留保を蓄積している ~ 金融業、保険業以外の全企業が保有する内部留保は、2013 年度末で 509 兆円に膨れあがっていますが、そのうち資本金 10 億円以上の大企業(約 5千社、全企業数の 0.2%)が保有する内部留保額は、この 10 年間で、102 兆 円積み増し、285 兆円(全企業の内部留保総額の 56%)にもなっています。 また、この内部留保は、一年間で 13 兆円(2013 年度ベースで 4.6%)も積 み増していますが、この積み増し分の一部を労働者に還元するだけでも、大幅 な賃金引き上げと、雇用の確保ができます。 1 ~ 国民犠牲と大企業優遇の政策が膨大な内部留保を生じさせた ~ 政府は、1989 年に消費税3%を導入し、1997 年に5%へ増税する一方で、 所得税の最高税率を 70%から 40%に下げ、法人税の最高税率も 42%から 25.5%に下げるなど、応能負担の原則に逆行する大企業・高所得者優遇の「税 制改革」を進めました。そのため、国民の格差と貧困は拡大し、国の財政も悪 化の一途をたどり、現在の公債残高は、780 兆円まで膨らんでいます。 また、労働者の平均賃金は 1997 年をピークに 1999 年の労働者派遣法の対 象業務が拡大されて以降は、昨年まで減少し続けていました。 このように、膨大な内部留保は、政府による大企業優遇と国民犠牲の政策の もと、労働者の非正規化や賃金の切り下げのうえで蓄えられてきたものといえ ます。 国民の生活や権利を切り捨て、国の借金を膨らませてまで、大企業に資産を 蓄えさせる政府が、世界のどこにあるのでしょうか。ましてや財政難・社会保 障制度の行き詰まりを口実に、消費税率引き上げや社会保障の切り捨てなどを 許すことはできません。 2 ~ 主要 134 社のうち 90 社で 1000 人以上の雇用が可能 ~ 内部留保の1%による雇用増 主要企業 134 社について、内部留保の1%を雇用に回すとどれくらいの雇用 増があるのかを試算しました。雇用については年収が 300 万円で1年間雇用と します。 この試算によると、主要企業 134 社のうち 90 社においてそれぞれ 1000 人を 超える雇用が可能です。このうち 25 社では 5000 人以上の雇用が可能であり、 さらに、8 社では1万人以上の雇用が可能です。 個別企業をみると、トヨタ自動車は内部留保が 16 兆 7902 億円であり、その 1%によって5万5千人以上の雇用が可能です。また、「電機リストラ」を計 画しているパナソニックでは内部留保が 2 兆 4433 億円、ソニー2 兆 4276 億円 などとなっており、内部留保のごく一部を取り崩せば大規模なリストラを回避 できることは明らかです。 ~ 134 社中 84 社が 3%の取り崩しで月 2 万円の賃上げが可能 ~ 月2万円賃上げをする場合の内部留保取り崩し率 (1)正規労働者の賃上げ 主要企業 134 社について、正規従業員全員に月2万円賃上げ(ボーナス4月 含めて年間必要財源は 32 万円)するために内部留保の何%を取り崩せばよい かを試算しました。 この試算によると、主要企業 134 社のうち 93 社において内部留保の3%未 満で正規労働者全員に月2万円の賃上げが可能です。 (2) 非正規労働者の賃上げ 主要企業 134 社のうち非正規労働者(雇用関係のある臨時従業員)の人数が 明らかな企業は 91 社です。この非正規労働者全員に月2万円賃上げ(年間必 要財源は 24 万円)するため内部留保の何%を取り崩せばよいか計算したとこ ろ、91 社のうち 86 社において内部留保の 3%未満で非正規労働者全員に月2 万円の賃上げが可能です。 さらに、正規と非正規の両方(当該企業に働く全ての労働者)に月2万円賃 上げする場合の内部留保の取り崩率も試算しています。この試算によると、134 社中、84 社で内部留保の3%未満の取り崩しによって月2万円の賃上げが可能 です。 (3)個別企業の例 トヨタ自動車が正規 33.9 万人と非正規 8.6 万人とに月2万円の賃上げをす るのには、内部留保の 0.77%を取り崩せば可能です。 以 上 3
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