(3) 「地域住民主体の震災復興まちづくり」 にっこり北地区住民有志の会 鈴木 昭子 氏 (公社)日本建築家協会(JIA)東北支部宮城地域会 東日本大震災復興支援委員会 委員長 手島 浩之 氏 イ にっこり地区とは ・ 石巻市北上町に位置し,震災前から中学校や総合グラウンド,テニスコートやクラブハウス等, スポーツ施設が集積し,現在では,敷地内には仮設住宅が建ち並ぶ。 ・ 復興計画では,北上町の中心機能が,このにっこり団地に集積することになっている。 ・ このにっこり団地の自力再建者有志による「にっこり北住民有志の会」が立ち上がった。 ・ 住民有志の会が初めてワークショップを開催し現場を見ると,当初の高台移転計画案では宅地 南側が全て山側に隔たれている状況だった。 ⇒ 住民自身が日照や眺望を考慮した住宅の向き等を考えたことが自分たちで計画を練り たいと考えたきっかけ ロ 北上まちづくり委員会と分科会 ・ 石巻市では広域合併した際に条例を制定し,総合支所毎にまちづくり委員会を設置したが,東 日本大震災によって機能停止。集落毎(防集団地ごと)のまとまりでは,既存の契約講など自 治組織が有効に機能し意見の集約が図れるが,旧北上町全体での意見集約が難しいことが次第 に明らかになっていった。そこで再度,北上まちづくり委員会を立ち上げ,市長が委員を任命 し,住民合意の意見を形成し,まちづくり委員会から市長に答申するという仕組を立ち上げ直 した。 ・ 仕組み自体は立ち上げたが,なかなか住民に浸透したまちづくり委員会にならず,様々な工夫 をしながら,どうすれば,住民から積極的な意見が出される仕組みになるかを模索した。 ・ 他方,各集落毎(防集団地ごと)に専門家の協力を得て,高台移転等の計画案に対して住民の 意見を吸い上げ,計画案に反映させる提案を行っていた。 ・ そこで,地区毎の課題を反映する住民有志の会を,地区別分科会として位置づけ,地区別分科 会を通じてまちづくり委員会に要望を吸い上げるような仕組みを検討した結果, 比較的スムー ズに,各地区とまちづくり委員会がつながるようになった。 ⇒ 分科会に出た意見をまちづくり委員会の了承を得て,市長へ答申するという仕組へ ・ 地区別分科会のほか,必要に応じて分野別分科会を立ち上げ,必要な議題についての詳細な検 討や意見の抽出を行う仕組みとしている。現在は,北網の中心となる地区の機能を考える「中 心部分科会」と,子どもを取り巻く環境を考える「子どもの分科会」を立ち上げている。 ハ 分科会での活動 ・ 地区別分科会のひとつである「にっこり北住民有志の会」では,ワークショップでは子どもと 高齢者が安心して暮らせるまち,若者が住みたいと思うまちをテーマとして議論する。住民か ら多くの意見が出るが,日本建築家協会や石巻市北上地区復興応援隊等がとりまとめを行い, 次回ワークショップには前回の内容を整理・反映し,議論がきちんと積み重なってゆく工夫を している。 ⇒ 住民の意見がにっこり団地の計画に反映 ・ 地区別分科会のひとつである「にっこり北住民有志の会」では,まちなみ見学会を2回開催し, 先進事例を皆で勉強している。また, 「防集団地の宅地の割り当て」に際しては,決め方につ いて工夫を凝らし,住民全員が「第一希望」の宅地に決まり,大いに満足した。 ニ 課題と今後の展望 ・ これまでの活動を「北上まちづくり委員会支援活動報告書」として本としてまとめた。 ⇒ 住民同士での振り返り,他高台移転事業の参考事例に ・ 分野別分科会を立ち上げ,子どもの環境や北上中心部の公共施設等をテーマに議論を始めてい る。そこで議論した結果を,行政内の既存の検討の仕組みにどうつなげ,住民が主体であり, 住民の意見を反映したまちづくりが出来るかを模索している。
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