狛江GAP研究会(PDF:355KB)

GAP導入事例
都内初のGAPの取組 ~食の安全を「見える化」してブランド野菜の確立へ~
狛江GAP研究会(東京都狛江市)
【取組主体の概要】
設立年次:平成26年4月
販売開始:平成26年6月
構 成 員:18戸(21名)
※H26年10月時点・順次増加中
取組作目:野菜(枝豆、トマト、小松菜等約50品目)
導入GAP:狛江版GAP(研究会オリジナルGAP)
研究会の会員が生産した野菜が
並ぶ直売所の様子
【取組の概要】
1.導入の契機(きっかけ)
消費者の食品の安全に対する意識の高まりを受け、「食品の安全性をどのように確
保しているか」を発信していくため、市内の有志の野菜生産者が狛江GAP研究会を組
織し、GAPの取組を開始した。この取組に対し、地域のJA及び市が一体となって支援し、
普及指導員が技術的な助言を行った。
2.導入経過
GAPを導入する前から、直売所に出荷する市内の野菜生産者は農薬の使用履歴を
記帳していた。そのことに加えて安全な農産物を求める消費者の目が近年いっそう厳
しくなったことに対応し、消費者に安心して生産物を購入してもらえるよう、市内の野
菜生産者の中でGAPに取り組む気運が高まった。
このため、有志の野菜生産者が平成25
年からGAP作成の準備を開始し、平成26年
4月に「狛江GAP研究会」を組織した。また、
市の基本計画の中で「狛江ブランドの確立」
をすること、また、地域のJAの5ヵ年計画の
中で「GAPの導入を検討する」ことが記載さ
れていたこともあり、市及びJAが一体となっ
て狛江GAP研究会の取組を支援した。
市では、会員の生産物を「狛江ブランド
野菜」と位置づけて支援している。研究会
では、オリジナルのロゴマークを作成して
PRを行っている。
狛江ブランド野菜のロゴマーク
(提供:狛江市、狛江GAP研究会)
2.導入経過(つづき)
(1)合意形成で工夫した点
• 近隣の産地において取り組まれているGAPや東京都GAP等の情報を収集し
た上で、点検項目を精査し、『少量多品目の野菜生産』という地域の実情に
合った形で会員が取り組みやすいように点検項目を絞り込んだ。点検項目
については、研究会の中で随時検討し、対応可能なものから取り組むこと
としている。今後、PDCAサイクルを回していく中で見直しを行い、レベルアッ
プしたいと考えている。
• チェックシートに「コメント欄」を設けて記入の際の自由度を高め、作業中に
気づいた点を生産者が記入できるようにしている。
• 第三者(普及指導員)を交えた監査を行う仕組みを整え、客観的な視点で
チェックリストの検証や防除履歴の確認等をできるようにしている。
(2)消費者へのPRで工夫した点
地元自治体と連携することによって、「狛江ブランド野菜」として販売している。
販売に当たっては、ロゴの入ったシールやテープなどを使用して、他の生産物
との違いが一目でわかるようにしている。
出荷先が直売所、JAの店舗及び地元の飲食店等、ほぼ近隣で完結している
ため、会員の作業車両やJA等関係機関の公用車にもロゴ入りのステッカーを
貼ってブランド野菜をPRしている。
また、市内での観光イベントの際には、観光協会等とも連携して、会員が生産
した野菜を提供するなど、地元に密着したPRに努めている。
(※赤枠内の拡大)
□より良いGAPとしていくために
・このチェックシートはいつでも確認できる場所に置
いておきましょう。
・作業が完了するたびにチェックし、気づいたことが
あればコメントに書き込んでいきましょう。
・月次でチェックするものは、月ごとに上からチェック
日を記入し、チェックマークを入れてください。
・このチェックシートの気づき及び反省点を次の作付
に生かしましょう。
・グループ内で気づき、反省点及び意見を出し合い
ましょう。
チェックシートの抜粋のうち右の欄の黄色く着色
した部分がコメント欄
市内のレストランの店頭にのぼりを掲げ
て狛江ブランド野菜をPRしている
直売所の店内でもGAPの解説等を
行ってブランド野菜をPRしている
3.GAP導入により改善した点もしくは今後改善が見込まれる点
農薬だけでなく、施肥等の作業を記帳し、監査するようになったことで、会員の中で
「安全な農産物を生産する」という意識がこれまで以上に高まった。
今後も、取組を継続することで、農薬の適正使用が徹底されるとともに、化学肥料
についても使用量を見直すことによって、施肥量の抑制と資材費の低減が期待され
る。
また、監査については、研究会が主体となって、地域の普及指導員に技術的な助
言を受けながら実施している。研究会では監査を自己点検及び客観的な視点での点
検の機会としてだけでなく、研究会の中での情報交換の場として捉えている。今後も
監査を「作業上の問題点があった場合、
それを会員の間で共有し、話し合う場」
として、問題点の解決やチェックシートの
改善につなげていきたいと考えている。
今後は会員同士の相互点検や情報交
換を行うことで、レベルの高い生産者の
技術が「見える化」され、研究会全体の
技術レベルが高まることが期待できる。
研究会における監査の様子
(写真提供:狛江市)
4.今後の課題・要望
生産の場面での「見える化」の見込みは立っているが、一方で消費者に対する「見
える化」が現状では十分でないと考えている。
また、消費者からの声が会員に届くような取組み(アンケート調査など)も行いたい
と考えている。
地元に根ざした取組が可能なことや、研究会のロゴマークを作成していることを活
かして消費者へのPRに一層努めたいと考えている。
5.実践者(生産者)からのコメント
GAPを導入したことで、会員が品質向上やリスクの低減について改めて考えるよい
きっかけになった。
また、自らの作業内容を記帳、点検して、見直すようになったことで、日頃行ってい
る作業の場面でも、会員が気を引き締めて行うようになるという効果もあった。
今後は研究会が市内の野菜生産者同士の技術交流の場になって、野菜生産者全
体の技術レベルが高まることを期待している。(研究会役員)
平成27年1月作成