週次レポート 平成 26年 12月 22日 調整円高の一服とドル値固め焦点 原油安・ドル高の調整や閑散相場での乱高下は警戒 今週の為替相場は、 調整円高の一服やドル/円でのドル値固めが想定されよう。週間予想はドル/ 円が 1 18.20 -120.2 0円、ユーロ/ 円が 144.80 -149. 50円。17日の米 FOM Cでは利上げを急がない姿勢が示され、米国株 の急反発に端を発したリスク選好が円安再開を支援している。一方で FRBは来年半ば以降の利上げ姿勢を維 持し、緩やかな米国債金利の上昇(債券価格は下落) とドル高へと回帰してきた。ただし、今週に限れば原油 安・ドル高の短期調整や、海外クリスマス要因による閑散相場での乱高下は警戒される。 海外長期投資家に日本株買い余地、為替ヘッジなどで円売り 「来年のドル/ 円相場は、日米の“逆向き”金融政策と米国景気の本格回復のほか、日銀による量的質的緩 和が第 3弾まで予想される。そのため 110円方向への調整円高リスクは 20%にとどまり、6割の可能性で 1 ドル=130円方向の円安・ドル高が実現しよう」――。 ある海外の長期投資家はこのような見通しを示す。日本株についても、 「先進国の中での相対的な日本の政 治の安定性に加え、消費税 10%再増税の延期などによる名目 3%成長への期待感、企業収益の持続的な改善 により、来春 3月末にも日経平均 2万円の大台回復」( 同)を見込む海外勢が少なくないという。 もっとも短期売買を繰り返すヘッジファンドなどと異なり、バイ・オンリーの長期海外投資家(年金、保 険、投信、政府系ファンドなど)はこれまで日本株の押し目買い好機を逃してきた。日銀による 10月 31日 の電撃追加緩和では買いそびれ、直後に衆院解散・総選挙となって選挙結果を見極めようと「解散アノマリ ー」の株高に乗り切れず、師走総選挙で圧勝した安倍政権のアベノミクス強靭化を見極める矢先に、原油安 とロシア危機に世界連鎖株安が惹起され、買い場を逃してきている。 だが、「ここに来て 2015年の投資戦略として長期海外投資家は、日本株の割安感と日本経済の良好さを再 評価しつつある」(同筋)。来年 1月にかけては来年運用分のニューマネーを含めて、リアルマネーの対日株 式投資が拡大する可能性が高い。為替相場では、1)海外長期投資家による日本株買いと、日本の株高を受け たリスク選好の円安、2)海外長期投資家による日本株買いと、円安に伴う為替差損回避のためのヘッジの円 売り、3)海外長期投資家の日本株買いに便乗したヘッジファンドなどの短期投機筋による日経平均先物ロン グと円ショートの再開――などが円安要因として注目されよう。 すでにシカゴ IMMの投機的な円ポジション(非商業部門、国際通貨市場)では、最新 16日週に-8万 69 27 枚のネット円ショートとなり、12月 9日週の-10万 4136枚から円の買い戻しが進展してきた。ドル/円は 12月 8日の 121. 85円前後のドル高値から、調整的なドル安・円高が加速。12月 16日には 115.56円前後ま でドル安・円高が進んでいる。その過程では大きく積み上がった円ショートの整理が進捗しており、今後は 直近最高の円ショートである-11万枚から-12万枚方向へ「円売り再開余地」が意識されやすい。 長期スパンでも、円の総合力を示す日銀の名目・円実効為替レート(2010年 1月=100)は 11月に 7 5.7 となり、10月に 80.8から円安が進んだ。直近の円最安値は 2007年 6月の 72.96 (ドル/円は 12 4.14円前後) であり、当面は同レベルをターゲットにした円の下落余地(ドルなどの外貨の上昇余地)が焦点になりそう だ。 しかも円の実効相場は長期テクニカルで、2007年 6月にサポートラインとなった 240カ月(20年)移動平 均線 87.19の重要節目を完全に下回ってきた。11月には 300カ月(25年) 、360カ月(30年) 移動平均線なども 下抜けており、改めて「197 0年代の 360円から始まった長期ドル安・円高トレンドの終焉」(アジア系ヘッ ジファンド幹部)が示唆されている。来年以降は 1ドル=125円や 130円にとどまらない、円安オーバーシ ュートの波乱余地が注視されよう。その他の注目ポイントは以下の通り。 <原油安・ドル高の短期調整> 前週まで急落してきた原油先物だが、前週末の NY市場からは下落に歯止めが掛かってきた。海外ヘッジフ ァンドなどによるクリスマス休暇や年末決算に向けた投げ売りやポジション手仕舞いの一段落のほか、テク ニカル面で一旦の「売られ過ぎ過熱感」が意識されつつある。 21日にはサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が「世界経済の成長が原油需要を押し上げ、原油相場 は回復する」という見通しを示したほか、1 6日には米国のケリー国務長官が、「ロシアが最近、ウクライナ 情勢をめぐる緊張緩和に向けて建設的な働きをした」、 「ロシアのプーチン大統領の対応次第では、数週間内 に米欧が制裁を解除することもあり得る」などと発言している。原油安の一因は各国協調による「ロシア封 じ込め」が影響しており、ロシアが原油急落による経済混乱などを受けて対外強硬姿勢を軟化させてくると、 短期的な原油の自律反発を支援しやすい。 原油安・ドル高の一服は、ドル/ 円でドルの上値を抑えるものだ。原油安に連動し、対ドルで下落してきた 豪ドル、NZドル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランドといった資源国通貨の対ドルでの短期反発を支援する 反面、対欧州通貨を含めたドル全面安を招く調整余地をはらむ。もっとも原油下げ止まりはリスク選好を通 じて、クロス円主導での円安要因となる。資源国通貨の自律反発が対円にも波及し(円安) 、ドル/円でのドル 安・円高リスクを相殺する余地が残されている。 <米国の経済指標> 米国の経済指標は基本的な回復傾向が優勢ながら、強弱混在が続いている。今週も指標内容に一喜一憂の 展開が続きそうだ。まず 22日の中古住宅販売は、先行指標である中古住宅販売成約指数が悪化しており、こ れまでの回復の反動鈍化が警戒される。続く 23日の耐久財受注は、航空機関連の受注急増が上振れサプライ ズとして注目されよう。23日の 7-9月期 GDP改定値や個人支出も底堅い内容が想定される反面、ミシガン 大学消費者信頼感指数や新築住宅販売については、前月までの改善の反動減速がリスクとなる。24日の新規 失業保険申請件数も改善の減少傾向が続いてきただけに、年末商戦向け臨時雇用のピークアウトなどが調整 悪化(申請は増加)を招く可能性をはらむ。 <ギリシャ大統領選> ギリシャの議会では 23日、大統領選の第 2回投票を行うが、1回目の投票結果を見る限り、必要な票数に は遠く及ばない。2 9日の第 3回投票でも決められなければ、 「年明けにも総選挙に突入せざるを得ないが、 世論調査では野党に勢いがある」 (時事通信) 。ギリシャでは緊縮財政に反対する反 EU派候補が支持を集めて おり、引き続きギリシャの政治混迷は突発的なユーロ安や円高の波乱要因として注意を要する。ユーロにつ いては、年明けの欧州中銀(EC B)による量的緩和強化の可能性も、対ドルなどでの戻り売り材料となりやすい。 ただし、ECBの緩和期待は、底流部分で世界的な株高とリスク選好の円安地合いをサポートしていく。 <リスク回避尺度の VIX指数> リスク回避の尺度となり、 米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(C BOE )の ボラティリティー・インデックス(VIX指数)は 19日、16.49と直近最高である 16日の 25.20から急低下し て終了した。12月 5日の 11 .53を直近最低とした VIX急上昇と米国株の急落、円全面高というリスク回避相 場の一服が示されている。 テクニカルの日足・一目均衡表では、雲の下限 17.9 4を完全に下抜けてきた。雲の下限は先行き 1月 12日 にかけて 13. 43方向に切り下がっており、雲の下限に沿う形での V IX低下とリスク選好による米株高・円安 の持続が期待されやすい。ただし、VIX指数は 17日の日中最低 19. 26から、翌日 18日は最高が 18.51と急 低下しており、ギャップ(隙間=窓)が空いている。今週はクリスマス相場で閑散な取引が想定されるため、 ちょっとした悪材料の浮上による乱高下と、ギャップを埋める「窓埋め」の VIX再上昇、裏表での米株安と リスク回避の円全面高は短期波乱の地雷として警戒される。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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