情報通信サービスの環境負荷低減に向けた 取り組み

環境エネルギー
情報通信サービスの環境負荷低減に向けた取り組み
サステナブル
エネルギーマネジメント
情報通信サービスの環境負荷低減に向けた
取り組み
わたなべ
情報通信サービスの提供には,ネットワーク装置や空調装置,電源装置,
アクセス設備など,さまざまな設備で構成される通信インフラが必要です.
本稿では,各設備を主管するNTTの研究所やグループ会社をメンバとした
グリーン&サステナブルインフラ委員会を中心とした,情報通信サービス
の環境負荷低減に向けた取り組みについて紹介します.
地球環境問題の解決に向けて
ければなりません.さらに,この電力
のぶゆき
渡部 信幸
すぎやま
あきやま
よしはる
/秋山 佳春
あきら
杉山 聡
NTT環境エネルギー研究所
ことが予想されます.
の供給は現在ほぼ100%を商用電力に
こうした電力コスト上昇の問題,お
地球温暖化や資源枯渇などの地球環
依存しています.化石燃料をベースと
よび将来の地球環境問題の解決に向け
境問題に対し,NTTグループでは,
した輸入に頼る現在の日本の電力供給
て,NTT環境エネルギー研究所では
地球環境における
「低炭素社会の実現」
下 で は, 年 々 そ の 単 価 が 上 昇 し,
NTTネットワークサービスシステム
「循環型社会の形成」
「生物多様性の保
NTTグループの短期収支にとっても
研究所,NTTアクセスサービスシス
全」を未来にわたって取り組むべき 3
無視できない状況になっています.加
テム研究所,NTTファシリティーズな
つの環境テーマとしてとらえ,情報通
えて,動画をはじめとする大容量コン
どと連携し,消費電力削減技術や省資
信サービスの利活用によってこれらの
テンツを利用するサービスや,スマー
源化技術の研究開発,およびR&D戦
実現を目指しています.その一方で,
トフォンによる新しいサービスなどの
略立案を推進しています.
情報通信サービスの利用には,ルータ
普及によりトラフィック量は年々増加
やサーバなどのネットワーク装置やそ
しています.増加するトラフィックに
れらを冷却する空調装置,電柱や電線
対応するための設備投資により,サー
などのアクセス設備など,大量の電力
ビスを提供するための電力が増加する
環境エネルギーに関する6つの
技術群
情報通信サービスの提供には,ネッ
や資源を使用します.ネットワークト
ラフィック量の増加に伴う消費電力の
増加や,電力単価の上昇による電力料
金の上昇は,地球環境保全の観点のみ
ならず,NTTグループの経営上の喫
(億kWh)
100
88.0
88.6
88.1
87.0
86.4
80
緊の課題として,ますます重要になっ
てきています.
NTTグ ル ー プ で は,2013年 度 に
約86億kWhの電力を使用しました(図
1)
.この消費電力規模は日本全体の
60
40
再生可能
エネルギー・
新エネルギーの
発電量
電力購入量
20
商用電力の約 1 %に相当します.こう
した大規模な電力消費に起因するCO2
排出量は,NTTグループトータルの
排出量の95%程度を占めており,低炭
素社会の実現に向けて削減していかな
12
NTT技術ジャーナル 2015.1
0
2009
2010
2011
2012
2013
(年度)
出典:NTTグループCSR報告書2014より作成
図 1 NTTグループ電力使用量推移
特
集
③ネットワーク装置と電源・空調装置の運用連係技術
ネットワーク
①電源関連技術
・給電技術
・創エネ・蓄エネシステム技術
通信ビル
②空調関連技術
・気流制御技術
④ネットワークアーキテクチャ・
ネットワーク装置での
省電力化技術
・装置の統合削減による電力削減
・装置の電力削減
通信インフラ
ONU
ONU
ONU
ONU
空調
ONU
MDF
給電
⑥外部環境対策技術
・EMC技術 ・ソフトエラー試験技術
⑤省資源化技術
EMC: Electro-Magnetic Compatibility
(電磁的両立性)
ONU: Optical Network Unit
MDF: Main Distribution Frame
図 2 環境エネルギーに関する 6 つの技術群
トワーク装置や空調装置,電源装置,
の 6 つの技術群に分類し,各要素技術
ことにより,NTTグループの事業活
アクセス設備など,さまざまな設備で
の研究開発を進めています(図 2 )
.
動全体のさらなるエネルギー効率およ
構成される通信インフラが必要です.
本特集では,6 つの技術群の①から,
通信インフラ全体の環境負荷低減に向
創エネ ・ 蓄エネ材料技術の研究開発と
け,各設備を主管する研究所やグルー
高電圧直流(HVDC)給電普及拡大に
プ会社にまたがった連携戦略組織とし
向けた取り組みを,④から,ネット
てグリーン&サステナブルインフラ委
ワーク系通信装置の省電力化と光アク
員会(2014年11月に環境エネルギー
セス系通信装置の省電力化の取り組み
委員会から改称)を2013年 4 月に立
を,⑤から,電気通信用設備材料の省
ち上げました.本委員会では,情報通
資源化に向けた研究開発の取り組みを
信サービスの環境負荷低減を実現する
紹介します.さらに,情報通信サービ
ための技術を,①ネットワーク装置へ
スの環境への影響を定量化するための
の給電と電力自給率向上のための電源
評価技術の取り組みも紹介します.
関連技術,②通信ビルのエネルギー効
率を高める空調関連技術,③ネット
ワーク装置と電源 ・ 空調装置の運用連
今後の展望
NTT環境エネルギー研究所では,
係技術,④ネットワーク全体の省エネ
グリーン&サステナブルインフラ委員
に資するネットワークアーキテク
会を軸に,ほかの研究所やグループ会
チャ ・ ネットワーク装置での省電力化
社らと連携し,情報通信サービスの環
技術,⑤通信インフラのグリーン化を
境負荷低減に向けた技術開発を進めて
図る省資源化技術,⑥電磁波 ・ 雷など
います.引き続き,事業現場のニーズ
の外乱に対応する外部環境対策技術,
や外部動向をスピーディに反映させる
び資源効率の向上を目指して技術開発
を推進していきます.
(左から)
秋山 佳春/ 渡部 信幸/
杉山 聡
これからも消費電力削減技術や省資源化
技 術 な ど のR&D活 動 を 推 進 す る こ と で,
NTTグループに限らず,社会全体の環境負
荷低減に貢献していきたいと考えています.
◆問い合わせ先
NTT環境エネルギー研究所
企画担当
TEL 0422-59-2404
FAX 0422-59-5681
E-mail ene-env-lab lab.ntt.co.jp
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