11月全国消費者物価

経済分析レポート
2014 年 12 月 26 日 全 7 頁
Indicators Update
11 月全国消費者物価
コア CPI は横ばい圏、原油急落でガソリン価格がマイナスへ
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 長内 智
[要約]

2014 年 11 月の全国コア CPI(除く生鮮食品、以下コア CPI)は前年比+2.7%と、市場
コンセンサス(同+2.7%)通りの結果となった。消費税を除くベース(大和総研によ
る試算値、以下同様)でみると、エネルギーのプラス寄与縮小が続いたことで、前年比
+0.7%と前月(同+0.9%)から上昇幅が縮小した。季節調整値の推移も併せて評価す
ると、コア CPI は引き続き横ばい圏で推移していると考える。

12 月東京コア CPI(中旬速報値)は前年比+2.3%と、上昇幅は前月(同+2.4%)から
縮小した。これは、非耐久消費財(除く生鮮食品、エネルギー)のプラス寄与が縮小し
たことや、耐久財のマイナス寄与が小幅に拡大したことによる。この東京コア CPI の結
果を踏まえると、12 月のコア CPI は前年比+2.6%(消費税を除くベース、同+0.6%)
となる見込みである。

先行きのコア CPI(消費税の影響を除くベース)は、原油安に伴うエネルギー価格のプ
ラス寄与縮小を背景に、当面弱めの推移になると考えている。来年の春にかけて、コア
CPI の前年比は+0.5%を下回る水準まで低下していくことになろう。他方、2015 年 1
月以降、食料品を中心に値上げが相次ぐ予定であり、エネルギー価格を含まない内閣府
試算の「コアコア CPI(生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)
」は、コ
ア CPI とは対照的に底堅く推移する公算。
図表1
消費者物価指数の概況(前年比、%)
2014年
4月
全国コアCPI
(除く消費税の影響)
コンセンサス
5月
6月
7月
8月
9月
10月
3.2
1.5
3.4
1.4
3.3
1.4
3.3
1.4
3.1
1.1
3.0
1.0
2.9
0.9
2.3
2.2
2.3
2.3
2.3
2.3
2.2
DIR予想
11月
12月
2.7
0.7
2.7
2.6
全国コアコアCPI
2.1
東京都区部コアCPI
2.7
2.8
2.8
2.7
2.7
2.6
2.6
2.4
コアコアCPI
2.0
1.9
2.0
2.1
2.1
2.0
2.1
1.8
(注1)コンセンサスはBloomberg。
(注2)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコアCPIは食料(除く酒類)及びエネルギーを除く総合。
(注3)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
2.3
1.8
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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全国コア CPI は横ばい圏の推移が続く
2014 年 11 月の全国コア CPI(除く生鮮食品、以下コア CPI)は前年比+2.7%と、市場コンセ
ンサス(同+2.7%)通りの結果となった。消費税を除くベース(大和総研による試算値、以下
同様)でみると、エネルギーのプラス寄与縮小が続いたことで、前年比+0.7%と前月(同+0.9%)
から上昇幅が縮小した。季節調整値の推移も併せて評価すると、コア CPI は引き続き横ばい圏
で推移していると考える。
図表2
4
全国コア CPI の内訳(消費税除く)
(前年比、%)
(前年比、%)
6
4.0
3
4
2
2
1
0
0
-2
-1
-4
-2
-6
-3
-8
-4
13
コアCPI
コア非耐久消費財
耐久消費財(右軸)
(前年比、%、%pt)
2.0
(年)
14
全国コア CPI の前年比と寄与度
3.0
-10
12
図表3
1.0
0.0
-1.0
12
13
消費税の影響
エネルギー
半耐久消費財
コアCPI
半耐久消費財
サービス
14
(年)
サービス
コアコア非耐久消費財
耐久消費財
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コア非耐久消費財は生鮮食品を除く非耐久消費財、コアコア非耐久
消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(注2)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
図表4
105
全国 CPI の水準(季節調整値)
(2010年=100)
104
消費税の影響を除く
ベース(参考値)
103
102
コアCPI
101
100
99
98
97
コアコアCPI
96
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10
2005
06
07
08
09
2010
11
12
13
14
(月/年)
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコアCPIは食料(除く酒類)及びエネルギーを除く総合。
消費税は前年比に与える影響(日本銀行試算値)を基に調整。
(注2)シャドーは政府の「月例経済報告」において「デフレ」の文言があった時期。
(出所)総務省、内閣府資料、日銀資料より大和総研作成
3/7
12 月東京コア CPI(中旬速報値)は前年比+2.3%と、上昇幅は前月(同+2.4%)から縮小
した。これは、非耐久消費財(除く生鮮食品、エネルギー)のプラス寄与が縮小したことや、
耐久財のマイナス寄与が小幅に拡大したことによる。この東京コア CPI の結果を踏まえると、
12 月のコア CPI は前年比+2.6%(消費税を除くベース、同+0.6%)となる見込みである。
11 月コア CPI(消費税の影響を除くベース)を財・サービス別にみると、耐久消費財(10 月:
前年比+0.8%→11 月:同▲0.2%)は、2013 年 10 月以来のマイナスとなった。これは、
「電気
冷蔵庫」のマイナス幅が拡大したことに加えて、
「ルームエアコン」や「テレビ」といった家電
のプラス寄与が縮小したことによる。昨年のこの時期は、消費税増税前の駆け込み需要が徐々
に顕在化し始めて、家電価格が例年よりも高めに推移していたため、その反動が出ていると考
えられる。半耐久消費財(10 月:前年比+0.9%→11 月:同+0.9%)は、前月から横ばいとな
った。コア非耐久消費財(除く生鮮食品)(10 月:前年比+1.4%→11 月:同+1.1%)は、前
月からプラス幅が縮小した。原油価格が急落した影響で、
「ガソリン」が 2013 年 5 月以来の前
年比マイナスとなり、全体を押し下げた。なお、東京の中旬速報値を踏まえると、12 月は消費
税を含むベースでも前年比マイナスになる公算である。
「都市ガス代」は、原料費調整制度によ
って前月と比べると僅かに低下したものの、昨年 11 月の単価下落幅の方が大きかった裏の影響
でプラス寄与は小幅に拡大した。「電気代」は、前年の裏の影響や北海道電力の値上げ(約+
0.02%pt 弱の押し上げ)もあって、プラス寄与が拡大した。サービス(10 月:前年比+0.5%
→11 月:同+0.4%)は、「宿泊料」の価格引き下げなどによって、前月からプラス幅が小幅に
縮小した。
コア CPI の前年比は来年の春にかけて+0.5%を下回る可能性
先行きのコア CPI(消費税の影響を除くベース)は、原油安に伴うエネルギー価格のプラス寄
与縮小を背景に、当面弱めの推移になると考えている。日本銀行の 10 月末の追加緩和に伴う円
安進行が、輸入価格の上昇などを通じて、消費者物価の押し上げに寄与すると想定されるもの
の、エネルギー価格の押し下げ効果の方が大きくなるためである。マクロの需給バランスの観
点からは、7-9 月期の GDP ギャップが予想外にマイナス幅を拡大したため、それが今後の物価上
昇を抑制する要因となる。この結果、来年の春にかけて、コア CPI の前年比は+0.5%を下回る
水準まで低下していくことになろう。また、エネルギー価格に関連する出来事として、関西電
力が 12 月 24 日に電気料金の再値上げ(値上げ幅は 10.23%、値上げ予定日は 2015 年 4 月 1 日)
を申請したことが挙げられる。直近の北海道電力の再値上げの結果を踏まえると、値上げ幅が
圧縮される可能性もあるが、それでも一定程度の押し上げ効果が見込まれる。近畿圏のウエイ
トを用いて、10.23%の値上げが実施された場合の影響を機械的に試算すると、近畿圏のコア CPI
を 0.36%pt 程度、全国のコア CPI を 0.06%pt 程度押し上げる計算になる。なお、当社のメイ
ンシナリオとして、日本銀行が目指す 2%のインフレ目標は期限内の達成が困難であるとの見方
に変更はないものの、日本銀行が 10 月末に決定した追加緩和の効果については引き続き慎重に
見極める必要があると考えている。
4/7
図表5
30
輸入価格指数(前年比)の要因分解
図表6
電力各社の値上げ状況
(%、%pt)
値上げ
実施日
電力
会社
12/9/1
東京
8.46
13/5/1
関西
申請日
値上げ予定日
[申請]
[10.28]
12/5/11
12/7/1
9.75
[11.88]
12/11/26
13/4/1
九州
6.23
[8.51]
12/11/27
13/4/1
東北
8.94
[11.41]
13/2/14
13/7/1
四国
7.80
[10.94]
13/2/20
13/7/1
北海道
7.73
[10.20]
13/4/24
13/9/1
14/5/1
中部
3.77
[4.95]
13/10/29
14/4/1
14/11/1
北海道
15.33
[17.03]
14/7/31
14/10/1
?
関西
?
[10.23]
14/12/24
15/4/1
25
20
15
10
13/9/1
5
0
-5
-10
-15
11
12
13
14
(年)
値上げ率(%)
[実施]
[申請]
為替要因
エネルギー価格要因
(注)北海道電力の2014年11月の値上げでは、燃料費のかさむ
その他価格要因
輸入価格(前年比)
冬場の2014年11月~2015年3月は12.43%の値上げに抑制。
(注1)エネルギー価格要因は、鉱物性燃料の寄与度。
(注2)計算上の誤差により、寄与度の合計は輸入価格
指数の前年比に一致しない。
(出所)財務省より大和総研作成
図表7
6
GDP ギャップと全国コア CPI
(%)
(前年比、%)
4
4
3
2
2
0
1
-2
0
-4
-1
-6
-2
-8
-3
-10
-4
85
90
95
00
GDPギャップ(2四半期先行)
05
10
全国コアCPI(右軸)
15
(年)
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、消費税の影響は日銀の試算値を用いて調整済み。
(注2)2014年10-12月以降のGDPギャップは大和予想。
(出所)総務省、内閣府統計、日銀資料より大和総研作成
他方、2015 年 1 月以降、食料品を中心に値上げが相次ぐ予定であり、エネルギー価格を含ま
ない内閣府試算の「コアコア CPI(生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)」は、
コア CPI とは対照的に底堅く推移する公算である。政府は、12 月の月例経済報告において、消
費者物価の基調判断を「このところ横ばいとなっている」と前月から据え置いたが、当面、そ
れが下方修正される可能性は低いとみている。さらに、企業の値上げが文房具やティッシュと
いった日用品まで広がっており、こうした動きが他の商品まで波及すると、政府の基調判断が
上方修正される可能性もあろう。
5/7
図表8
値上げ動向
1月
12月
2月
3月
・牛丼
・即席麺
・輸入ワイン
・冷凍食品
・アイスクリーム
・弁当
・冷凍食品
・文房具
・ルウ製品
・ティーバック
・パスタ
・ティッシュ
・レトルト製品
・オリーブ油
・食用油
・パソコン
・パスタソース
(注1)表の値上げ商品は、必ずしも消費者物価指数の調査対象銘柄(小売物価統計調査)とは限らない。
(注2)12月の牛丼、1月のティッシュの大部分、2月のルウ製品とレトルト製品、の値上げは、
調査日の影響で、翌月の消費者物価指数に反映される見込み。
(注3)1月のパソコンの値上げは、銘柄変更時期などに影響されるため、翌月以降に反映される可能性。
(出所)各種報道等より大和総研作成
6/7
財・サービス別にみたコアCPIの動き
全国コアCPIの財・サービス別寄与度分解
4.0
耐久消費財
(前年比、%、%pt)
0.4
3.5
0.3
3.0
0.2
2.5
0.1
(コアCPIへの寄与度、%pt)
0.0
2.0
-0.1
1.5
-0.2
1.0
-0.3
0.5
-0.4
0.0
-0.5
-0.5
-0.6
-1.0
12
13
-0.7
14
耐久消費財
コアコア非耐久消費財
サービス
コアCPI
(年)
12
13
半耐久消費財
エネルギー
消費税の影響
14
(年)
携帯電話
教養娯楽
家事用耐久財
冷暖房用器具
その他
消費税の影響
耐久消費財
(注)消費税の影響は大和総研による試算値、コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコア非耐久消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(出所)総務省統計より大和総研作成
半耐久消費財
0.4
非耐久消費財(生鮮食品、エネルギーを除く)
(コアCPIへの寄与度、%pt)
1.2
(コアCPIへの寄与度、%pt)
1.0
0.3
0.8
0.2
0.6
0.4
0.1
0.2
0.0
0.0
-0.1
-0.2
12
13
14
12
(年)
13
14
(年)
家具・家事用品
被服及び履物
教養娯楽
食料
家事用消耗品
保健医療
自動車関連
身の回り品
その他
教養娯楽
たばこ
その他
消費税の影響
半耐久消費財
消費税の影響
非耐久消費財
(注)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
一般サービス
0.8
公共サービス
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(コアCPIへの寄与度、%pt)
0.5
0.6
0.4
0.4
0.3
0.2
0.2
0.0
0.1
-0.2
0.0
-0.4
12
13
14
(年)
-0.1
12
13
14
(年)
外食
家賃
教育関連
家賃
保険料等
医療・福祉関連
通信・教養娯楽等
その他
消費税の影響
運輸・通信関連
教育関連
教養娯楽関連
消費税の影響
公共サービス
一般サービス
(注)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
7/7
他の関連指標の動向
輸入物価と企業向け価格
4
名目実効為替と原油価格
(前年比、%)
(前年比、%)
25
140
20
130
15
120
10
110
5
100
0
90
-5
80
-10
70
-15
60
-20
50
-25
(年)
40
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
10
11
12
13
企業物価
14
(ドル/バレル)
(2010=100)
60
↑
円安
70
80
90
100
110
120
円高
↓
10
11
12
13
WTI原油先物価格
企業向けサービス価格
130
(年)
14
ドバイ原油スポット価格
名目実効為替(右軸、逆目盛)
輸入物価(円ベース、右軸)
(注)企業物価、企業向けサービス価格は消費税を除くベース。
(出所)日本銀行統計、Bloombergより大和総研作成
企業物価(最終財:うち耐久消費財)
25
企業物価(最終財:うち非耐久消費財)
(前年比、%)
(前年比、%)
20
20
15
15
10
10
5
5
0
0
-5
-5
-10
-10
-15
-15
10
11
12
耐久消費財
13
うち国内品
14
10
(年)
11
12
非耐久消費財
うち輸入品
13
14
うち国内品
(年)
うち輸入品
(注)企業物価は消費税を除くベース。
(出所)日本銀行統計より大和総研作成
家計の期待インフレ率(1年先)
6
ガソリン価格と灯油価格
(%)
175
(円/18リットル)
(円/リットル)
2,300
170
2,200
165
2,100
160
2,000
155
1,900
150
1,800
145
1,700
140
1,600
135
1,500
5
4
3
2
1
130
0
10
11
内閣府(旧)
12
13
内閣府(新)
14
日本銀行
(年)
1,400
12
13
レギュラー・ガソリン店頭価格
14
(年)
灯油店頭価格(右軸)
(注1)内閣府の期待インフレ率は消費税の影響を含む、日本銀行は含まない。
(注2)内閣府と日本銀行の期待インフレ率のいずれにおいても上方バイアスがあるため、方向や相対的な水準で評価する必要がある。
(出所)左図は内閣府、日本銀行、右図は資源エネルギー庁統計より大和総研作成