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ニッセイ基礎研究所
No.14-175
26 Dec. 2014
消費者物価(全国 14 年 11 月)
~コア CPI 上昇率は 15 年度入り後に 0%台
前半へ
経済研究部
斎藤 太郎
E-mail: [email protected]
経済調査室長
TEL:03-3512-1836
1. コア CPI(消費税の影響を除く)は 2 ヵ月連続の 1%割れ
総務省が 12 月 26 日に公表した消費者物価指数によると、14 年 11 月の消費者物価(全国、生鮮
食品を除く総合、以下コア CPI)は前年比 2.7%(10 月:同 2.9%)となり、上昇率は前月から 0.2
ポイント縮小した。事前の市場予想
消
費
者
物
価
指
数
の
推
移
(QUICK 集計:2.7%、当社予想も 2.7%)
(前年同月比、%)
全 国
総 合
生鮮食品を
除く総合
通りの結果であった。
食料(酒類を除く)及びエネルギーを
0.7
0.9
1.1
1.1
1.5
1.6
1.4
1.5
1.6
3.4
3.7
3.6
3.4
3.3
3.2
2.9
2.4
13年 7月
8月
除く総合は前年比 2.1%(10 月:同 2.2%)
、
9月
10月
総合は前年比 2.4%(10 月:同 2.9%)で
11月
12月
あった。
14年 1月
2月
コア CPI を消費税の影響を除くベース
3月
でみると、4 月は消費税率引き上げ分以上
5月
4月
6月
7月
の値上げが行われたこともあり、前年比
8月
9月
1.5%まで上昇率が高まったが、その後は
10月
11月
鈍化傾向が続き、11 月は前年比 0.7%と
12月
0.7
0.8
0.7
0.9
1.2
1.3
1.3
1.3
1.3
3.2
3.4
3.3
3.3
3.1
3.0
2.9
2.7
-
-
東
総合
食料(酒類除く)
及びエネルギーを
除く総合
▲0.1
▲0.1
0.0
0.3
0.6
0.7
0.7
0.8
0.7
2.3
2.2
2.3
2.3
2.3
2.3
2.2
2.1
-
京
都
区
生鮮食品を
除く総合
0.4
0.5
0.5
0.6
1.0
1.0
0.7
1.1
1.3
2.9
3.1
3.0
2.8
2.8
2.8
2.5
2.1
2.1
部
食料(酒類除く)
及びエネルギーを
除く総合
0.3
0.4
0.2
0.3
0.6
0.7
0.7
0.9
1.0
2.7
2.8
2.8
2.7
2.7
2.6
2.6
2.4
2.3
▲0.4
▲0.4
▲0.4
▲0.2
0.2
0.3
0.3
0.5
0.4
2.0
1.9
2.0
2.1
2.1
2.0
2.1
1.8
1.8
(資料)総務省統計局「消費者物価指数」
なった。
コア CPI の内訳をみると、電気代(10 月:前年比 5.2%→11 月:同 6.0%)、ガス代(10 月:前
年比 5.0%→11 月:同 5.3%)の上昇率
は前月から若干高まったが、ガソリン
(10 月:前年比 4.1%→11 月:同 0.7%)
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解
(前年比)
3.5%
3.0%
2.5%
灯油(10 月:前年比 6.1%→11 月:同
2.0%
1.6%)の上昇率が前月から大きく低下
1.5%
したため、エネルギー価格の上昇率は
1.0%
10 月の前年比 4.9%から同 3.9%へと
低下した。
0.0%
▲0.5%
また、テレビ(10 月:前年比 10.8%
→11 月:同 5.7%)
、携帯型オーディオ
1|
0.5%
▲1.0%
1204
1207
エネルギー
1210
1301
1304
1307
食料(生鮮食品除く)
1310
1401
その他
(資料)総務省統計局「消費者物価指数」
|経済・金融フラッシュ No.14-175|Copyright ©2014 NLI Research Institute
All rights reserved
1404
1407
消費税
1410
(年・月)
プレーヤー(10 月:前年比 25.5%→11 月:同 7.4%)の上昇幅が縮小し、ビデオレコーダー(10
月:前年比 3.2%→11 月:同▲4.1%)が下落に転じたことなどから、これまで高い伸びを続けて
きた教養娯楽耐久財の上昇率が 10 月の前年比 7.3%から同 3.9%へと大きく低下したこともコア
CPI を押し下げた。
コア CPI 上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが 0.10%(10 月:0.20%)、食料(生鮮食品を
除く)が 0.25%(10 月:0.27%)
、その他が 0.33%(10 月:0.41%)であった(当研究所試算に
よる消費税の影響を除くベース)。
2.コア CPI 上昇率は 15 年度入り後には 0%台前半へ
14 年 12 月の東京都区部のコア CPI は前年比 2.3%(11 月:同 2.4%)となり、上昇率は前月から
0.1 ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK 集計:2.3%、当社予想も 2.3%)通りの結果であ
った。
ガソリン(11 月:前年比 1.5%→12 月:同▲2.9%)、灯油(11 月:前年比 1.7%→12 月:同▲3.3%)
が下落に転じたが、電気代(11 月:前年比 5.6%→12 月:同 6.0%)、ガス代(11 月:前年比 2.8%
→12 月:同 5.1%)の上昇率が高まったため、エネルギー価格の上昇率は 11 月の前年比 4.1%から
同 4.3%へと若干高まった。
一方、食料品(生鮮食品を除く)の上昇率が 11 月の前年比 3.7%から同 3.4%へと低下したこと、
テレビ、パソコンなどの教養娯楽耐久
財が前年比▲2.6%(11 月:同 2.5%)
(前年比)
3.0%
消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解
2.5%
と下落に転じたことがコア CPI を押し
2.0%
下げた。
1.5%
1.0%
東京都区部のコア CPI 上昇率のうち、
0.5%
エネルギーによる寄与が 0.10%(11
0.0%
月:0.08%)、食料(生鮮食品を除く)
▲0.5%
▲1.0%
が 0.12%(11 月:0.16%)
、その他が
▲1.5%
1204
0.09%(11 月:0.27%)であった(当
研究所試算による消費税の影響を除く
1207
1210
エネルギー
1301
1304
1307
1310
1401
食料(生鮮食品除く)
1404
その他
1407
1410
消費税
(資料)総務省統計局「消費者物価指数」
(年・月)
ベース)。
このところ、円安、原油安が同時進行して
いるが、当面は原油安による物価下押し圧
(円/リットル)
170
ドバイ原油とガソリン店頭価格
(円/KL)
75000
力が円安による押し上げ圧力を上回る公算
165
が大きい。ガソリン店頭価格は 7/14 時点の
160
65000
155
60000
1 リットル=169.9 円(レギュラー、全国平均)
から 149.1 円(12/22 時点)まで 1 割以上下
落しており、消費税の影響を含めてもすで
に前年比マイナスとなっている。
ガソリン、灯油の下落率は今後さらに拡大
2|
70000
ドバイ原油(円ベース、右目盛)
150
55000
ガソリン店頭価格(レギュラー)
145
50000
140
45000
135
40000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月月 月 月 月 月 月 月 月 月 月
(週次)
12年
13年
14年
(出所)資源エネルギー庁
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し、消費税率引き上げの影響が一巡する 15 年 4 月以降は二桁のマイナスとなる公算が大きい。
一方、電気代、ガス代は燃料費調整が市場価格に遅れて反映されるため現時点では高止まりして
いるが、先行きは原油価格の大幅下落が反映されることにより上昇率が徐々に鈍化し、消費税率引
き上げの影響が一巡する 15 年 5 月以降は前年比でマイナスとなるだろう。
この結果、コア CPI 上昇率に対するエネルギーの寄与度(消費税の影響を除く)は 14 年 5 月の
0.68%から 11 月には 0.10%まで縮小し
たが、15 年 1 月にマイナスに転じた後、
5 月以降はマイナス幅が▲0.5%を超え
(前年比)
エネルギーの上昇率はマイナスへ
15%
ガソリン
(前年比、寄与度)
0.8%
灯油
0.6%
10%
予測
る可能性が高い。
0.4%
5%
0.2%
今後、食料品を中心に円安によるコス
ト増を価格転嫁する動きが出てくるこ
0%
とが見込まれるものの、エネルギー価格
▲5%
下落の影響がそれを大きく上回るため、
0.0%
▲0.2%
▲0.4%
▲10%
0.5%程度、15 年度入り後には 0%前半
▲15%
▲0.8%
1401 1402 1403 1404 1405 1406 1407 1408 1409 1410 1411 1412 1501 1502 1503 1504 1505 1506
(注)エネルギーはコアCPI上昇率への寄与度(消費税の影響を除く)
まで低下することが予想される。
▲0.6%
エネルギー(寄与度、右目盛)
コア CPI 上昇率は 14 年度末にかけて
エネルギーはガソリン、灯油、電気代、ガス代
(年・月)
(資料)総務省統計局「消費者物価指数」
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