パブコメ1

高浜原発の審査書案についてのパブリックコメント 2014.12.24 中西正之 1.201412200000321622 格納容器の水蒸気爆発の有無は国際的な原発の安全基準の無視により判定された(その1) 「
(4)重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係わる技術的能力(4)-1.2.2.1 雰
囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧)183ページd.原子炉格納容器から環境
に放出されるCs137の放出量は、7日間で約4.2TBqであり、100TBqを下回
っている。上記b.、c及びd.より、解析結果は格納容器破損防止対策の評価項目(a)、
(b)、(c)及び(g)を満足している。」についての意見。 この項目は、川内原発審査書案175ページと同じ論旨で、川内原発の放出量は約5.6
TBqと表記されている。原子力規制委員会がこの項目を認定したので、伊藤鹿児島県知事
の11月7日の会見での、「今回は100万年に一回の事故をも想定し、例え福島原発事故
と同様の事故が川内原発で起こったとしても、100TBqテラベクレルよりはるかに少な
い5.6TBqであり、原子炉から5.5km では5μSv/h に過ぎないほど厳しい規制基準
なので全く《命》を心配するようなレベルにはなりえない。等」の発言が行われた川内原発
容認の理論的根拠になった。 しかし、この論拠は「IAEA(国際原子力機関)の安全基準」、
「EUR(European Utility Requirement)規制基準」、「EPR (European Pressure Reactor:欧州加圧水型炉)の過酷
事故対策の設計基準」のいずれからも著しく逸脱している。 EUR規制基準で新設炉は、いつまでも土壌を汚染し続けるセシウム137の放散量を3
0TBq に抑える事に決め、それを可能にするためにコアキャッチャーを取り付ける事を推
奨している。そして、ヨーロッパやアメリカの新規制基準は、格納容器内で大規模な水蒸気
爆発が起こらないために、格納容器内での冷却水の使用量に厳格な量を考慮している。チェ
ルノブイリ過酷事故を経験し、旧ソ連は過酷事故発生後直ちに原子炉の真下にトンネルを掘
って、コアキャッチャーを取り付けて、地下水の放射能汚染を防止した。また、大量の冷却
水の抜き取りを行い、水蒸気爆発防止対策をおこなった。 そして、日本以外の欧米、ロシアでは、格納容器下部を1200℃で簡単に溶けるコンク
リートで設計し2600℃の溶融炉心を受けて、溶融炉心・コンクリート相互作用(MCC
I)が引き起こされ、チャイナシンドローム発生直前まで行ったことにより、大設計ミスに
気が付いて、一斉に対策を行った。緊急キャビティ貯水冷却を度々試みたが、どうしても水
蒸気爆発の防止ができないので、絶対に緊急キャビティ貯水冷却をしてはいけないという事
になり、約10年前に二つの方法が新基準に採用された。 一つの基準はIVR-AM(In-Vessel Retention:溶融物の圧力容器内保持)対策にな
った。大量の水を使用しないので、格納容器が破裂するような水蒸気爆発は起きない。もう
一つはコアキャッチャー取り付けだった。 世界の新規制基準は水蒸気爆発による爆轟(ばくごう)破壊を起こさない事となっている
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が、原子力規制委員会の新規制基準は、世界の新規制基準を全く無視して、策定されている。 また、この審査書案は、格納容器内に水蒸気爆発が起こらない事を、MAAPでもMEL
CORでも、シミュレーションをしていなく、4電力会社が主張する、水蒸気爆発は起こら
ないという、主観的でまったく科学的、技術的根拠のない論拠を、認定しただけである。こ
のような非科学的、非技術的な論旨は到底認める事ができないので、高浜原発の再稼働には
反対します。 2.201412220000321915 格納容器の水蒸気爆発の有無は国際的な原発の安全基準の無視により判定された(その2) <原子炉格納容器から環境に放出されるCs137の放出量は、7日間で約4.2TBqの
確認> (4)重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係わる技術的能力(4)-1.2.2.1
雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧)183ページd.原子炉格納容器から環
境に放出されるCs137の放出量は、7日間で約4.2TBqであり、100TBqを下
回っている。上記b.、c及びd.より、解析結果は格納容器破損防止対策の評価項目(a)、
(b)、(c)及び(g)を満足している。」についての意見。 この項目は、川内原発審査書案175ページと同じ論旨で、川内原発の放出量は約5.6
TBqと表記されている。 九州電力は川内原発の過酷事故の発生時、原子炉格納容器から環境に放出されるCs13
7の放出量は、7日間で約5.6TBqに収まることの説明を九州電力のホームページで説
明している。 http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/company/data_book/data_book_2014_5.pdf [九州電力データーブック2014別冊]川内原子力発電所1、2号機の安全対策について]
の19ページに再稼働申請書の対策案が簡潔にまとめられている。 この[九州電力データーブック2014別冊]は、川内原発の再稼働にあたって行った過
酷事故対策が如何に厳格に行われたかを宣伝するための資料であり、九州電力に都合の良い
事だけ記載されている。その隠された部分に、今の高浜原発3、4号炉、川内原発1、2号
炉の再稼働における重要な問題が潜んでいる。 しかし、この19ページには、国内で作成された不十分な新規制基準に照らし合わせても、
大きな問題が表れているが、
「IAEA(国際原子力機関)の安全基準」、
「EUR(European Utility Requirement)規制基準」、
「EPR (European Pressure Reactor:欧州加圧水型炉)
の過酷事故対策の設計基準」に比べてみると、信じられないような大欠陥が存在している。 ヨーロッパ、アメリカを中心とする国際的な新規制基準は、実際に過酷事故の発生時でも
半減期が30.1年と長く、一たび原発から放射性物質が大気や地下水などに放出されれば、
長年放射性物質汚染により、住民が苦しめられるCs137の放出量を30TBq以下にな
るように、様々な過酷事故対策を規定した。 日本の新規制基準も、Cs137の放出量を100TBq以下になるように規定だけはし
たが、国際的な新規制基準が行った過酷事故対策の規定は行わなかった。 2
そのために、加圧水型の原発を建設した三菱重工業と、関西電力、九州電力、北海道電力、
四国電力は共同作業で、新規制基準で規定されている「過酷事故の発生時は原子炉圧力容器
内の核燃料を冷却続けなければならない」との項目を無視して、溶融核燃料の格納容器緊急
貯水冷却法を取り入れて、1年間強行に新規制基準の適合性審査で主張し続けた。 そして、殆ど検討もシミュレーション行わないで、溶融核燃料が緊急に格納容器貯水され
た冷却水に一度に大量に落下しても、水蒸気爆発は絶対に起こらないと結論して、フイルタ
ー付ベントさえも行わずに、格納容器から原子炉建屋内に漏洩した、放射性物質は空気浄化
設備を使用して減量し、原子炉格納容器から環境に放出されるCs137の放出量は、7日
間で約4.2TBqであると説明している。 高浜原発の審査書案は、国際的な新規制基準を適用すれば到底承認できないような、きわ
めて杜撰(ずさん)な過酷事故対策を、あいまいな新規制基準からは大幅には逸脱していな
いとの理由だけで、認定してしまった。 このことからも、日本の新規制基準は「IAEA(国際原子力機関)の安全基準」、
「EU
R(European Utility Requirement)規制基準」、「EPR (European Pressure Reactor:
欧州加圧水型炉)の過酷事故対策の設計基準」に比べて、いかに低レベルかが確認できると
思われる。 3.201412240000322168 格納容器の水蒸気爆発の有無は国際的な原発の安全基準の無視により判定された(その3) <高浜原発3・4炉の過酷事故対策はIAEAの安全基準を無視して作成された> 原子力規制委員会が作成した、IAEA(国際原子力機関)が発行している「安全基準」
の中の https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000126742.pdf に「原子力発電所の
原子炉格納系の設計」が掲載されている。特にページ70からページ74に特に重要な「6.
重大事故(過酷事故)に対する設計上の考慮」が記載されている。 ページ71の7行より「計算コードは、容認された研究開発に基づく国際的に認められた
知識の状態を反映していること(特に、現象のモデル化は議論の余地がないものであるべき である)と記載されている。 関西電力が使用したMAAPコードは国会事故調査委員会の報告書でも、欠陥プログラムと
指摘されており、MAAP コードは、米国電力研究所(EPRI)が所有するシビアアクシデント
解析コードであり日本の電力業界で使用されているが、あまり過酷事故対策が必要ではない
という、電力業界に都合の良いシミュレーション結果を出している。また、福島第一原発の
過酷事故対策の解析に使用されて、実炉の測定記録値と会わない結果が大量に出ている。 原子力規制委員会が使用しているMELCORコードは米国原子力規制委員会/サンディ
ア国立研究所において開発された原発の過酷事故検討用プログラムで、国際的にははるかに
評価が高い。 しかも、格納容器キャビティに緊急貯水を行い、過酷事故発生時溶融炉心を落下させて冷却
した時、格納容器内で水蒸気爆発が起きるかどうかは、MAAPコードでもMELCORコ
ードでも全くシミュレーションされていない。IAEAの安全基準を全く無視している。 3
それから、ページ74の(f)に「溶融炉心物質及び炉心デリブとコンクリートとの間の相
互作用に起因する不都合な影響を最小にする種類のコンクリートを格納容器の床に使用す
る事。」と記載されている。これは、具体的な表現がされていないが、過酷事故の発生時、
MCCIの発生を防止するために、特殊コンクリートを使用する事という意味である。 耐火物の専門多識から判断すると、日本の原子力業界では、1400℃を超えるような高温
度領域での知識がほとんどないが、ヨーロパ、ロシア、アメリカの原子力業界ではそれらの
知識は明らかに豊富である。 特殊コンクリートとは、アルミナセメントを使用した耐火コンクリートと超微粉のセラミッ
ク結合によるノンセメントコククリートを意味する。いずれもフランスで発明された特殊コ
ンクリートであるが、耐火コンクリートは日本で商業原発の建設が始まった1970年代に
は世界中に広く使用されており、ノンセメントコククリートは1980年代に発明され、今
日では世界中で大量に使用されている。 MCCIはポルトランドセメントコンクリートでは激しく起こり、耐火コンクリートではあ
る程度緩和され、ノンセメントコククリートは著しく緩和される。日本の新規制基準や関西
電力の過酷事故対策には、IAEA(国際原子力機関)の「安全基準」は全く理解されずに
作成された。 ページ74の(e)にコアキャッチャーを使用する事と書いてある。 ページ108からページ111に添付資料[3]重大事故現象(過酷事故現象)が記載され
ているが、この部分に格納容器の爆発防止対策の神髄が説明されている。 ページ108には、日本の新規制基準では無視された、「溶融炉心物質とコンクリートとの
相互作用に起因する大量の水素及びその他の非凝縮気体の発生」の説明、また「格納構造物
の建設に使用されたコンクリートの種類、並びに原子炉キャビティにおける水の利用可能性
によって影響される。」と説明されている。 ページ110には、水蒸気爆発については「原子炉キャビティに水が存在する状態と・・・、
周囲の水の急速な蒸発及び加速を生じ著しい圧力荷重及び衝撃荷重を生み出すことになる。」 また、「原子炉キャビティ内での水の存在は、原子炉キャビティ支持壁及び格納容器ライ
ナなどの構造物の重要な部材がこれらの大きな衝撃荷重に耐える能力が無いのであれば、適
正なレイアウトをする事によって避けられる。」と説明されている。これは、具体的には、
圧力容器外面冷却(IVR-AM)である。新規制基準はIAEAの安全基準を理解しなくて、策
定されており、高浜原発の過酷事故対策もIAEAの安全基準の理解がされていない。 高浜原発の審査書案は承認されるものでは無い。 4.201412240000322283 格納容器の水蒸気爆発の有無は国際的な原発の安全基準の無視により判定された(その4) <ヨーロッパの個別規制基準はIAEA(国際原子力機関)の安全基準より厳しい> (4)重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係わる技術的能力(4)-1.2.2.1
雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧)183ページd.原子炉格納容器から環
境に放出されるCs137の放出量は、7日間で約4.2TBqであり、100TBqを下
4
回っている。上記b.、c及びd.より、解析結果は格納容器破損防止対策の評価項目(a)、
(b)、(c)及び(g)を満足している。」についての意見。 IAEA(国際原子力機関)の安全基準は世界各国の安全基準の各要素を統括するように作
成されているので、多くの項目を網羅しており、必要限度の最低の安全基準を規定してはい
るが、最高の安全基準では無い。 また、福島第一原の過酷事故発生以前の旧規制基準には、五層の深層防護(Defense in Depth)の4層目が欠落していたので、日本の旧規制基準はIAEAの過酷事故防止対策の
項には、まったく含まれていない。そして、新規制基準は福島第一原の過酷事故の発生を経
験しても、原発の再稼働を行う為に、欠落していた4層目の過酷事故対策を超特急で策定し
たため、IAEAの新安全基準や海外の優れた新規制基準を理解しないままに、未熟な新規
制基準が策定された。 世界的に見て、最も厳しい設計基準は、EPR (European Pressure Reactor:欧州加圧
水型炉)の設計基準と思われる。 原子力規制委員会が翻訳したIAEA(国際原子力機関)が発行している「安全基準」の
中の https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000126742.pdf の「原子力発電所の原
子炉格納系の設計」のペーシ102からページ103で紹介されているが、コアキャッチャ
ーによるMCCI対策を取っている。格納容器キャビティに水を貯水しないので、格納容器
内水蒸気爆発が起こらないし、MCCIも起こらないので、最適な対策である。 また、スタンダードなのは、EUR(European Utility Requirement)規制基準と思われ
る。EURもコアキャッチャーを最良な方法と認定しているが、IVR-AM(In-Vessel Retention:溶融物の圧力容器内保持)対策も認めている。大量の水を使用しないので、格
納容器が破裂するような水蒸気爆発は起きないが、原子炉圧力容器の冷却が十分にできずに
メルトスルーが起きた時には、MCCIは防止できない。
アメリカのNRC/URD :米国電力要求文書(Utilities Requirements Document)はヨ
ーロッパの新規制基準ほど厳しくはないが、IAEAの新安全基準には良く合致している。 何れの新規制基準や設計基準も、原子炉耐圧容器内では、メルトダウン発生時でも水蒸気
爆発は起こりにくいと規定している。 しかし、日本の電力会社や原子力規制委員会は、この規定を格納容器内でも水蒸気爆発は
起こりにくいと早とちりし、高浜原発の再稼働申請書にある、格納容器内では水蒸気爆発が
起こらないという、まったく何の検討もない対策をそのまま認定してしまった。 高浜原発の審査書案は承認されるものでは無い。
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