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内部労働市場の形成と年齢賃金プロファイル
荒井, 一博
一橋大学研究年報. 経済学研究, 31: 249-308
1990-05-15
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/9285
Right
Hitotsubashi University Repository
内部労働市場の形成と年齢賃金プロファイル
荒 井 一 博
L 序
わが国の雇用や賃金の問題を考える際に,労働市場全体を伝統的な経済
理論のように完全競争的なものとみなし,内部労働市揚の存在を無視した
議論を展開すれば,その結論は現実から大きく乖離したものになろう・伝
統的な経済理論においては,労働力の価格付けと配分も,他の多くの財の
場合と同様に,価格メカニズムによって決定されると想定されている。一
方Doeringer and Piore(1971,1985)によって明確に主張された内部労働
市揚論によれば,内部労働市場では,労働力の価格付けと配分が,一揃い
の管理上の規則や手続きによって支配される.内部労働市揚とは,そのよ
うな管理上の単位,すなわち企業内の組織を意味する.
内部労働市場の典型的な成員は,最初に入口ともいえる限定された仕事
につき,経験を重ねるにしたがって,階層的な組織の上方の仕事に昇進し
ていく.内部労働市場の最も根本的な特徴は,伝統的経済理論の標準的な
企業と.は対照的に,一定量の労働力が,組織内にかなり強く取り入れられ,
そう簡単には解雇されないことである・つまり内部労働市場では,雇用保
障の程度がかなり高いといえる.そして雇用保障の程度が高いほど,雇用
の内部化が進行していることになる.雇用保障の程度が高いということは,
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一橋大学研究年報 経済学研究31
わが国の揚合終身雇用の程度が高いということとほとんど同義であるとみ
なすことができる.もちろん雇用保障が最高度に発揮される場合は,労働
者が学校卒業後直ちに入社し,定年退職まで同一企業に在職することがで
きる場合である.
このような特徴を持つ内部労働市揚は,わが国では大企業の男子労働者
の雇用に関する揚合が典型例となるが,それと比べると内部化の程度は劣
るものの,中小企業の男子労働者の揚合にもかなり広く適合するといえよ
う。Doeringer and Pioreの議論は米国の事例を基にしているので,米国
においも,内部労働市揚は,労働市揚全体の中で重要な部分を占めている
ということになる.Hall(1982)は,米国においても長期雇用が極めて普
通に行なわれていることを実証している.間(1964),尾高(1984)等に
よると,わが国においてブルーカラーをも含む内部労働市揚が発生したの
は,1920年頃である.
このように,典型的な内部労働市揚においては,終身的な雇用が前提と
なっている・そしてそれを前提として(あるいはそれを考慮にいれて),
労働力の配分や当該組織内の賃金構造が決まる.本論文では,内部労働市
場論において最も基本的な,なぜ企業によって終身雇用制が採用されるか
という問題(内部労働市揚の形成要因あるいは内部化要因の間題),およ
び同様に基本的な・内部労働市揚内で年齢別賃金格差(年齢賃金プ・ファ
イル)がどのように決定されるかという問題を考察する.内部労働市揚の
形成要因,同市揚内での労働力の配分,およぴ同市揚内での賃金構造(賃
金格差)の決定は,内部労働市場理論における最も基本的な問題であり,
Doeringer and Pioreが内部労働市揚の理論の中で問題としたのも,これ
ら三つの事柄である.本論文では,これらのうちの二つを問題とすること
になる・ただし賃金構造に関しては年齢に関するもののみに焦点をあてる.
Doeringer and Piore等が既に上記の三つの基本的間題について論じて
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プロファイル
いるので,当然本論文の主張はそれらとはかなり違ったものになる・まず
本論文で主張する内部労働市場の形成メカニズムは,彼らの議論やその他
の説明より,かなり形式的な議論によって説明される.また内部労働市揚
における賃金構造に関する議論では,日本の実状に基づいて,理論的な分
析とその実証とが行なわれる.そして内部労働市揚の形成と賃金構造とに
関する二つの説明が,矛盾なく接合されることを示す・
IL 内部化要因に関する諸理論の問題点
内部労働市揚の歴史は近年に始まったわけではないが,その分析は
Doeringer and Piore(1971)以後急速に進歩した。実際1970年代以降,
内部労働市揚の分析は労働経済学における最も重要な研究課題の一つであ
った.しかしながら驚くべきことに,厳密にいってどのような条件の下で
内部労働市場が生起するか(終身雇用制が採用されるか)を示した研究は
ほとんどない。確かに多くの人が内部労働市揚の根本的形成要因を指摘し
ているが,形成メカニズムを厳密に分析した研究は,ほとんどないといっ
てよいだろう.以下でこの点を少し詳しくみることにしよう・
まずDoerillger and Pioreの説明から検討する。彼らが指摘する内部
労働市揚の根本的形成要因は,技能の企業特殊性とそれに対応した企業内
教育訓練(就中OJT)である。技能が企業特殊的になると,企業が負担
する訓練費の割合が大きくなり,訓練に規模の経済が働きにくくなるため
訓練費の絶対額が増加する。したがって企業は労働者の解雇を控え,離職
を抑制する.すなわち終身雇用制が採用されることになる・明らかに,こ
の論法にはBecker(1964,1975)の考え方が援用されている、彼らはさ
らに労働者の募集や選抜の費用も内部化を促すという・すなわち終身雇用
制の下では,それらの費用は大いに節約される・この議論はOi(1962)の
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一橋大学研究年報 経済学研究31
ものと同類である・内部労働市場を議論するにあたって,彼らは慣習も重
要な要素としているが・終身雇用制に関していえぱ,慣習はそれを永続さ
せるのに貢献する効果を持ったということになる.
Doeringer and Pioreは,内部化要因について,付加的な説明も行なっ
ている。簡単にまとめてみると,次のような要因も含まれるとしている.
まず内部労働市揚は,労働者にも利益をもたらす.労働者の雇用が保障さ
れているので安定した生活が可能になる上に,そこでは内部昇進の可能性
が高い,高い雇用保障は,労働者が解雇されたならぱ負担しなければなら
ない職探しの費用を不要にする.また上に挙げたこと以外にも,企業にと
っての利益がある.すなわち終身雇用制の下では,内部の労働者に関する
情報が自然と蓄積されるので,労働力の活用に際して,(外部から採用し
て直ちに使う揚合に比較して)情報収集に多くの費用をかける必要がない.
また企業内訓練に1ま,見様見真似で覚えてしまうという面があるため,新
たに労働者を雇って訓練を施すより経費が少ない揚合がある.
彼らはさらに,一つの企業が内部労働市揚を形成すると,他企業もそれ
に追随せざるを得なくなる揚合を指摘している.企業の観点からは,製品
市場および労働市場で競争力を維持するのにそうする必要があり,その企
業に既に雇われた労働者の観点からは,彼らの雇用保障と昇進機会を高め
るためにそうする必要が生じてくると説く.
以上がDoeringer and Piore等による,内部労働市揚形成要因に関す
る議論であるが,他の人々によっても,それについて間接的に議論された
揚合がある.Coase(1937)は,企業形成の議論において,短期的契約を
繰り返すよりも・長期的契約の方が低費用である場合を指摘している.ま
たBaily(1874)やAzariadis(1975)は,終身的な雇用関係における,
賃金の固定性や雇用の安定性の便益を強調している.
このように内部労働市場を形成するとみなされる要因はいくつかあるが,
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
その多くは,今日取引費用と呼ばれているものの節約と関連する。すなわ
ち,若干大雑把にいうと,内部労働市場は取引費用を節約するために形成
される,ということになる(これに関連してはAoki(1984)も参考にな
る).
内部労働市揚の形成要因に関する上の議論を検討してみると,次のよう
な疑問が湧いてくる.すなわち内部労働市揚は多様な費用を節約するため
の手段ならば,現実の経済で,なぜ全ての企業が全ての労働者を内部労働
市場に組織しないのであろうか.なぜある企業は内部労働市場を持ち,他
の企業はそうでないのであろうか.なぜ内部化の程度は,企業や労働者グ
ループによって異なるのであろうか.この間題は極めて重要であるが,上
に紹介した理論は明解な解答を示していないし,そのほかの研究でも,説
得力のあるものは皆無に近いといえよう.ただWilhamson(1985)は人
的資本における特殊性の程度の相違からこれを説明しようとじているが,
残念ながらそれは極めて大雑把な議論に過ぎない・すなわち彼の理論では,
人的資本の特殊性の高さに応じて内部化の程度が決定される,換言すれば,
雇用保障の程度が高いということは,人的資本の特殊性が高いことを意味
する.本論文の議論では,内部化のメカニズムはこれほど単純ではないこ
とを示す.また彼は,人的資本の特殊性を,どのように定義するか述べて
いないが,内部化のメカニズムの議論に人的資本の特殊性を使うときには,
厳密な定義をすることがぜひとも必要があろう。
IIL 内部化のモデル
内部労働市揚におけるこのような空白を埋めるために,Arai(1988b,
1989)およぴ荒井(1989a)では,一連の異なった雇用形態を均衡として
導出できるモデルを考察した.すなわち,一方の極には終身雇用のように
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一橋大学研究年報 経済学研究31
内部化が完全な雇用形態,他方の極にはスポット市揚的な雇用のように,
内部化が全く行なわれない雇用形態が生起するモデルを考えた.もちろん
その中間には内部化の不完全な雇用形態が存在する.そのモデルは企業と
労働者の間のゲームとして定式化されるが,そこでは企業の解雇政策と,
労働者の一般・特殊人的資本投資誘因が特に間題となる.以下ではその考
え方を検討してみよう.
ここで問題とされる人的資本は,企業内の訓練によって蓄積される,そ
れはOff−JT,OJT,経験による学習(ラーニング・バイ・ドゥーイング)
等,どの様な形態による訓練でもよい,訓練を施した企業以外の多くの企
業でも同等に有用な人的資本を一般人的資本,それ以外では有用性の劣る
ものを特殊人的資本と呼ぶ.簡単化のために,以後両者をそれぞれ一般資
本,特殊資本と呼ぶことにする.特殊資本の例には,次のような知識ない
しは技能がある.すなわち,他企業では使用されない機械,他企業では生
産されない製品,同僚の性格,勤務する企業の組織や経営方針等々に関す
る知識ないしは技能である.
ここの議論とほとんど表裏一体の関係にある労働異動の問題を,特殊・
一般資本の観点から分析した研究も若干存在する.ところがそれらにお
いては,これら二種類の人的資本の量が固定され’ていたり(M:ortensen
(1978)),両者の比が固定されていたり(Pencave1(1972)),あるいは企
業内において特殊訓練のみが行なわれるとされていたりする(Donaldson
and Eaton(1976),Hashimoto(1979)).しかしながらこうした仮定に反
して,労働異動と特殊ないしは一般資本の投資量との間には,きわめて重
大な相互依存関係がある.
すなわちまず一方においては多くの特殊資本が蓄積されれば,解雇の確
率は低くなる.特殊資本が重要となるのは,それが一般資本より有用また
は生産的であるからである,さもなければ,他企業でさらに有用性の劣る
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
人的資本を蓄積するはずがない.するとそれを多く蓄積した労働者を,企
業はそれほど簡単には解雇しないであろう.次に他方においては,もし解
雇の確率が高ければ,労働者は特殊資本よりは一般資本に投資しようとす
る誘因を持つ.すなわち労働者が簡単に解雇されてしまうようならば,解
雇された場合に有用性の減少する特殊資本よりは,解雇されても有用性の
減少しない一般資本を蓄積しようとするであろう。このような相互依存関
係がある揚合は,特殊資本投資と一般資本投資とが内生的に,しかも企業
の解雇政策と同時に決定されるモデルを作ることが必要である.残念なが
ら上記の諸研究はこの条件を満たしていない.
解雇の確率が人的資本投資に影響することを,極端な具体例によって説
明してみよう.ある企業が労働者に外国語(会話)能力の修得を要請した
とする.もしその企業の解雇確率が高ければ,労働者は英語のように他企
業でも有用な言語以外は修得しようとはしないであろう・逆に解雇の確率
が零に近ければ,きわめて希な言語でさえ,修得しようとする誘因が出て
くるであろう(ただし賃金も適当な水準になければならないが).この揚
合,英語能力は一般資本であり,希な言語の能力は特殊資本である。
Becker et al。(1977)は,このような因果関係を結婚・離婚の経済学で論
じた.すなわち離婚の確率が高いと,特殊資本である子供の数を少なくす
る誘因が働く.このような議論は,蓄積の過程で労働者の時間や努力を必
要とする,どのような特殊ないしは一般資本にも当てはまる.
このように企業の解雇政策(解雇確率)と,労働者の特殊・一般資本投
資との間には,相互規定的な関係がある.ここで留意すべきことは,まず
第一に,解雇確率が高ければ,労働者は彼の時間や努力の多くを一般資本
の蓄積に向けるということは,解雇確率の高い企業が特殊資本の蓄積を要
求すれば,労働者が集まらないということと同じであることである.第二
に,企業が解雇の確率を低めるような政策を採用すると,労働者の特殊資
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一橋大学研究年報 経済学研究31
本蓄積誘因は高まるが,この企業にとって景気の悪いとき(例えば生産物
の価格が低いとき)には,企業は雇用を保障したために,損失を被ること
がありうることである.
このような状況において,企業はどのような雇用政策を採用し,労働者
は二種類の人的資本を,それぞれどれだけ蓄積するのであろうか.企業に
よる雇用政策と労働者による人的資本の蓄積の観点から,ゲームの均衡を
次の三種類に分類する.第一は終身雇用均衡(LEE:Lifetime Employ−
ment Equilibrium)で,解雇がなく特殊資本が蓄積される場合である.第
二は条件付き雇用均衡(CEEl Conditional EmPloyment Equilibrium)で,
解雇確率は正であるが,特殊資本が蓄積される場合である.第三はスポッ
ト市揚的雇用均衡(SEE:Spot−market Emp!oyment Equilibrium)で,一
般資本のみが蓄積される場合である.雇用の内部化はLEEにおいて最も
強く,SEEにおいて最も弱い.当モデルの眼目の一つは,正確にいって
どのような条件が満たされるときに,これらの均衡が生起するかを示すこ
とができることである,以下では,このゲームの内容をもう少し詳しくみ
よう.
企業と労働者は2期間生存すると仮定する.第1期には人的資本投資が
なされ,第2期には前期に蓄積された人的資本を使って生産が行なわれる.
第1期のはじめに企業と労働者は労働契約を結ぶ.契約は企業の戦略を反
映しており,二つの要素からなる.一つは第2期の賃金であり,もう一つ
は雇用保障の水準である(このモデルでは,第1期の賃金はあまり重要な
役割を果たさない).企業の戦略を考慮にいれて,蛍働者は時間や努力と
いった彼の保有する資源を,特殊・一般資本投資にどのように配分するか
を決定する.
雇用契約が結ばれるとき,当該企業の生産物の第2期における価格は不
確実であると仮定する.しかしこの不確実性は次第に消滅するので,第1
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
期の終わりには,確実になるとしよう.第1期の終わりになって価格情報
が得られると直ちに,先の雇用契約が実行される・もし企業が労働者を解
雇すると,彼は第1期に蓄積した人的資本を使って・他の企業で働かなけ
ればならない.解雇がなければ,彼は同一の企業に勤務し続けることがで
きる.もちろん第1期の終わりに離職して,第2期には他企業で働くこと
も自由である.
労働者は,第1期に人的資本に投資するための,一定量の資源を保有し
ていると仮定する.それは時間や努力であるが,説明を簡単にするために
彼の保有時間o〉0によって,彼の保有総資源量を表わすことにする,こ
のoに関しては,若干異なった解釈がありうる・第1は,0が彼の第1期
の総勤務時間を表わしていて,その期には彼は生産を行なわないというも
のである.この揚合,第1期は単なる人的資本投資期間にすぎない。以下
でみるようにこれはそれ程極端な仮定ではなく,経済学ではこのような仮
定がしばしば採用される.もう一つの解釈は,oは先のように第1期の総
勤務時間であるが,労働者はその期の初めから最後まで,生産に携わると
いうものである.この揚合,第1期における人的資本蓄積は,OJTまたは
ラーニング・バイ・ドゥーイングによって行なわれることになる,さらに
もう一つの解釈は,0が第1期の総勤務時間のある部分を表わしていて,
この部分では生産が行なわれないというものである・第1期の他の部分で
は,彼は生産に従事し,訓練を受けない・これも一つの解釈ではありうる
が,本質的には第1の解釈と同じである,
単純化のために,人的資本投資は労働者の時間(や努力)以外の資源を
必要としないと仮定する.単位を適当にとって,1単位の時間から・1単
位の特殊資本または1単位の一般資本が蓄積されるとしよう,特殊資本の
蓄積量をの≧0,一般資本のそれをガ≧0とすれば,の+Foである.この
ゲームでは,¢が労働者の唯一の戦略となる。
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人的資本投資に関するこの定式化はBecker(1975)のものとは異なる.
労働者が一般訓練の費用を負担し,企業が特殊訓練の費用を負担するとい
う彼の有名な命題は,訓練の行なわれるのはどちらかというと例外的であ
ることを暗黙のうちに仮定している.その定式化では,労働者が生産性を
全く上げないで,生産のみに従事することが可能だとされている.そのよ
うな定式化では,主たる訓練費用は,訓練期間中に放棄した賃金ないしは
生産物の価値であるといえる.これに対してわれわれのモデルでの定式化
では,労働者はどの企業にいようとも,第1期に必ず訓練を受けると仮定
されている.すると訓練費用としては,上記のものの他に,労働者が他の
訓練機会を失うことによる機会費用が加わる.ほとんどの企業は最初の数
年間を訓練期間とみなしており,さらにたとえ形式的な訓練が行なわれな
くとも,(ラーニング・バイ・ドゥーイングなどによって)労働者の生産
性が上がっていくので,われわれの定式化は現実経済の重要な側面をとら
えているといえる.
特殊・一般資本の間には,次のような関係があるとする.すなわち当該
企業の中では,α単位の一般資本と1単位の特殊資本とは,生産上完全に
代替的であるとする.もしα≦1ならば分析することはほとんどないので,
嶽下では特に断わらないかぎりα>1と仮定する.
再び単位を適当にとり,1単位の一般資本は第2期に当該企業で1単位
の生産物を生産することができるとする.すると離職・解雇がない揚合,
当該労働者の第2期の物的生産物はα¢十叙となる.当該企業の生産物の
第2期における価格をpとし,計算を簡単にするために,pはp1とp2の
二つの値のみをとると仮定しよう.ただしO<p几<p2で,p=p‘となる確
率は鏡である(ぢ=1,2。πエ+π2=1).すると労働者の価値生産物はp(α詔
+鰹)となる.解雇・離職がなければ,この労働者は第2期に当該企業か
らωの賃金を受けるとしよう.この乞σは,企業の戦略の一つの要素である.
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内部労働市場の形成と年齢賃金プロファイル
もし第1期の終わりに労働者が解雇されると,彼は第2期には他の企業
で人的資本の組合せ(の,Ψ)を用いて働くことになる・この新しい企業で
は,特殊資本はそれほど生産的でない.そこではβ単位の一般資本と1単
位の特殊資本とが,生産上完全に代替的であるとする・ただしO≦β<α,
β<1である。ここで1一βは特殊資本の特殊性を示す測度になる。βの値
が小さいほど特殊性は高い.β=0ならぱ特殊性は完全ということになる
(特殊性の測度に関する詳しい説明は荒井(1988)でなされている),厳密
にいうと,上記のβ<1の条件は不要である.しかしながら1≦β<αの
場合は特に興味深いわけでもないので,ここでは省略しよう(詳しくは
Arai(1989)参照).
労働者が新しい企業で得る賃金はγ(禽+写)に等しいと仮定する,ただ
しγ>0は定数である・現実の経済においては,賃金の不確実性は生産物
価格のそれよりもずっと小さいといえよう.このような仮定を採用すると,
労働者の離職決定の取扱が非常に容易になる.彼が離職するのは,当該企
業の第2期の賃金が,彼が市揚で獲得しうる最高の賃金よりも低いときに
限られる.
さて再び当初の企業と労働者の関係に戻り,企業がどのように解雇決定
をするかをみることにしよう,不確実性下において特殊資本の蓄積の可能
性があるときは,価値生産物が賃金を下回るとわかっても,解雇が行な
われない場合がある.雇用保障の測度となるオという変数を導入して,
p(α詔十穿)+ε<ωのときにのみ解雇が行なわれると定式化しよう.他の事
情一定な限り,εが大きいほど解雇は起こりにくい・む>0ならば,価値生
産物が賃金を下回っても,解雇が行なわれない揚合がある。逆にむ<0な
らば,前者が後者を上回っても,解雇が行なわれる揚合がある.この6が
企業の戦略の第二の要素であり,われわれはそれを雇用保障の限度と呼ぶ
ことにしよう.企業の解雇政策が以上のようであるとすると,当該労働者
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が解雇される確率は,(死〃,6,謬)という企業と労働者の戦略の関数として内
生的に決定される。詔+写=oという関係を使うと,それはProb{p((α一1)
の十〇)十む<ω}によって表わされる,解雇されない確率は,当然1より上
の確率を差し引いたものになる.
第1期の初めに企業の戦略(ω,亡)が与えられると,労働者はそれに反
応して劣の水準を選ぶ・彼は期待賃金を最大化するように行動すると仮定
する(これは彼が危険中立的であるということと同値である)と,与えら
れた(ω,オ)に対して,期待賃金はのの関数U(灘)となる.それは,労働
者が解雇されて他企業で働く確率とその揚合の賃金,および解雇されない
で当該企業で働く確率とその揚合の賃金から計算される.もちろん解雇の
確率は上に示した式によって与えられ,両当事者の戦略によっては,1に
なることも0になることもありうる.U(灘)は,労働者が企業の戦略をど
のように評価するかを表わす評価関数でもある.労働者は,第2期には他
企業で働くことも自由であり,その揚合の賃金は,γ(o一(1一β)の)となる.
したがってこのゲームにおける彼の期待賃金は,S(¢)=max{U(の),7(o一
(1一β)灘)}となる。企業によって(卿,6)が与えられると,労働者は0≦
の≦oの下でS(謬)を最大化するようにωを選択する.∬=0を選択するの
は自由であるから,S(の)≧摺が成立する.
次に企業の利得を考えよう,企業が労働者を解雇する揚合には,解雇し
た労働者の代わりに,o単位の一般資本を有する新しい労働者を,市揚賃
金で直ちに雇い入れ’ることができると仮定する.この仮定は必ずしも必要
ではないが,議論の形式上有用である.つまるところ,企業の利得は,労
働者を雇い続ける確率とそのときの利潤,および解雇する確率とその時の
利潤から計算される.もちろん解雇の確率は,上に示したものと同じであ
る.u(の)≧70でないと労働者を引きつけることができないので,企業は
その戦略に対する労働者の反応を考慮しながら,u(ω)≧γoの制約の下で
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
その利得を最大化するように(ω,む)を決定する.
IV.モデルの解とその解釈
以上がこのモデルの枠組みであるが,Wi11iamson(1985)の主張とは異
なり,このモデルで実現する均衡の形態は,特殊資本の特殊性の程度だけ
に依存するわけではない.実際それを決定している要因は多く,このモデ
ルでは0以外の全ての外生変数が,均衡の形態の決定になんらかの形で関
わっている,0がその決定から独立であるということは,訓練の時間の長
短は実現する雇用形態と無関係であることを意味する。すなわち短時間に
完了する特殊訓練であったとしても,雇用保障を全く考慮しないで訓練の
効果を期待することはできないということである.たとえ短期間に済む訓
練でも,なんらかの雇用保障がなければ,労働者は彼の時間や努力をそれ
に割こうとはしないことになる.解雇の可能性が高けれぱ,一般資本を蓄
積した方が有利であるからである.前述のように訓練には,他の訓練を放
棄することによる機会費用が存在する.
外生変数のどのような大きさの組合せに対して,どのような形態の均衡
が生起するかを,言葉で正確に説明するのは困難なので,主要な外生変数
に注目して,結果の概略を整理してみたい・まず特殊資本の特殊性(1一β)
が高いときには,LEE(終身雇用均衡)かSEE(スポット市揚的雇用均
衡)のどちらかが生起し,CEE(条件付き雇用均衡)は生起しない・特殊
性が高いときは,労働力を完全に内部化してしまうか,さもなければ特殊
資本の蓄積はあきらめ全く内部化をしないかのいずれかになる(どちらに
なるかは,他の外生変数の大きさの組合せに依存する)・特殊性が高くな
ると,特殊資本を蓄積して解雇された場合,当該労働者は他企業できわめ
て低い賃金しか受け取ることができないからである。
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一僑大学研究年報 経済学研究31
この結果1まWi11iamson(1985)の主張に反する事柄を含んでいる.す
なわち特殊資本の特殊性が高く,特殊資本が一般資本より生産的でも,
SEEが生起する揚合がある。この場合,生産物価格が高い(p=p2)とき
には,特殊資本は企業にとって確かに価値があるが,それが低い(p=p玉)
ときには賃金に比して価値が低く,終身雇用は企業にとって高くつくこと
になる・つまり人的資本の特殊性が高くとも,人的資本の価値は生産物価
格に依存するので,期待値でみた揚合,終身雇用は企業に損失をもたらす
場合がある.
LEEが生起しやすい揚合の一つは,他の事情一定にして,特殊資本の
相対的生産性αが大きい場合である(以下ではr他の事情一定にして」と
いう表現は省略する).もし特殊資本の当該企業における生産性が高けれ
ば,企業が雇用を保障してその蓄積を奨励するのは自然であろう.もう一
つの場合は,生産物価格ノηとp2が賃金率7に比して大きい揚合である.
この条件は,生産物市場が寡占的なときに成立しやすい.さらに生産物価
格が高くなる確率(π2)が大きいほど,LEEが生起しやすい.また特殊資
本の特殊性の度合が,ある臨界的な水準より低い揚合には,特殊性の度合
が大きいほどLEEが生起しやすいことを示すことができる.
LEEには労働保蔵がありうる.すなわち労働者の価値生産物が賃金を
下回っても,解雇がない場合がある・このとき雇用保障の限度が正となり,
企業は,生産物価格が低く損失が生じても,労働者を解雇しない.あえて
そうするのは,労働者が生産性の高い特殊資本を蓄積する誘因を持つよう
にするためである.このようにして蓄積された特殊資本は,生産物価格が
高いときには,大きな利潤をもたらす.
さきに触れたように,CEEは特殊資本の特殊性が低いときにのみ生起
する。CEEは,p1が小さいほど,あるいはp2またはπ2が大きいほど生
起しやすい・生産物価格の分布に関するこの性質は興味深い.p1が(7に
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
比して)小さければ,p=p1のときに解雇することは企業に取って有利で
ある.p,が大きければ,p=p2のときに労働者を保持しておくことは有利
になる.またπ2が大きければ,CEEにおける賃金費用が低くなることを
示すことができる.さらにCEEにおいては,当初の労働者を解雇して新
しい労働者を雇い入れることがないことも示すことができる,生産的な労
働者を保持することが不利な場合には,それより生産的でない労働者を雇
い入れることは,一層不利なためである。ここで考えているモデルを一般
化して,生産物価格が三つの値を取ると仮定すると,CEEにおいても労
働保蔵がありうることを示すことができる(Arai(1989)参照).したがっ
て,労働保蔵という現象は終身雇用に特有のものではなく,それ以外の場
合にもかなり広く存在するものといえよう.
当然ながら,SEEが生起するのは,LEEもCEEも生起しないとき
である.SEEは伝統的な一般均衡モデルでの雇用と同類の雇用形態であ
る.伝統的な一般均衡モデルでは,特殊資本の存在が想定されていない
(Debreu(1959)参照).SEEでは特殊資本が蓄積されないので,企業と
労働者は互いに愛着を感ずることがなく,離職・解雇は外部不経済をもた
らさない.伝統的な多期間一般均衡モデルでは,ある期のある企業の労働
投入は,その前の期のものと重複していようが,していまいが企業及び労
働者双方にとって全く無差別である.特殊資本が存在しない場合には,同
一企業内で雇用が継続するかどうかは重要な問題ではないのである・
特殊資本の生産性が一般資本のそれよりも小さい(α≦1)揚合は,当然
一般資本のみが蓄積されてSEEが生起することになるが,賃金に比して
生産物価格が十分高ければ,この場合でも労働者は解雇されないと考える
こともできる.なぜなら,企業が当初の労働者を,新しい労働者と入れ換
えてみても,生産性は不変であるからである・これは形の上では終身雇用
となるが,われわれが先に定義した終身雇用とは異なる・すなわちこの場
263
一橋大学研究年報 経済学研究31
合には特殊資本が蓄積されていないために,企業と労働者の間に全く愛着
関係がないのである.この違いを比喩的に表現したら次のようになろうか.
二つの鉄片が,互いに接しているとしよう.これらの鉄片が単なる鉄から
できている揚合は,互いに引き合うカはないが,それ’らが磁石からできて
いれば,直接目には見えないが互いに引き合っていることになる.前者が
SEEの場合,後者がLEEの揚合に対応する.外面的には同じでも,内
実は異なる.
このようなゲームの解は,もちろん非協カゲームの均衡として導出した
ものである。われわれが考察している場合のように,当事者が二人のとき
は,情報の共有が容易なため,協カゲームとして定式化した方がよいとい
う見方もありうる・しかし上の均衡は,当初の企業と労働者の共同利益を
最大化しているということを,計算によって示すことができる.
以上が労働力の内部化に関する理論の概略である.上の議論では,年齢
賃金プ・ファイルがどのようになるかあまり説明されなかったので,ここ
でそれをまとめておくことにしよう.結論から先に述べると,上のモデル
の均衡における年齢賃金プロファイルには,かなりの自由度がある.すな
わち,ある条件を満たす様々な異なったプ・ファィルが,上の理論と両立
しうる・上のモデルでは,全ての労働者は同一であると仮定されているの
で,終身雇用的な雇用形態(LEE)であろうと,あるいは条件付き雇用形
態(CEE)であろうと,外部労働市揚のプ・ファイルと同じ期待賃金の現
在価値をもたらすプ・ファイルであれぱ,労働者の離職を特に奨励するよ
うなもの(第1期の賃金が特に高いもの)以外はどのようなものでも,均
衡賃金プロファィルとなりうる.
上のモデルの説明では第1期の賃金には特に触れなかったが,終身雇用
的な雇用形態の揚合,条件付き雇用形態の揚合双方においては,それは外
部労働市場での第1期の賃金水準に合わせれば十分である.スポット市揚
264
内部労働市場の形成と年齢賃金プ・ファイル
的雇用形態においては,当然ながらその水準に合わせざるをえない・
終身雇用的な雇用形態の場合には,第2期の賃金も基本的には同様に外
部労働市揚の第2期の賃金と同一にすれば十分である.条件付き雇用形態
の揚合には,解雇の可能性があり,労働者は解雇されると,他企業で低い
賃金を受けることになるので,解雇されないで雇用され続けるときの賃金
を,外部労働市揚で一般資本のみを持つ労働者が得る賃金より高くすると
いうのが一つの方法である.他の方法としては,継続して雇用されるとき
の賃金を,外部労働市場での賃金と同一にして,解雇するときには,解雇
手当を支給するということも考えられる.労働者と企業双方が危険中立的
ならば,これら二つの方法は全く同等である・しかしながら(今までの仮
定を少し変えて)労働者が危険回避的で,企業が危険中立的であるとする
と,解雇手当を支給する方法の方がパレート優位である.スポット市場的
雇用形態の場合には,第2期の賃金も(外部)労働市場の水準に合わせざ
るをえない.
終身雇用的な雇用形態および条件付き雇用形態における上の賃金プ・フ
ァイルは,多数の可能性の中のほんの一部であって,他のものでも均衡雇
用形態と矛盾しない.例えばLEEでは,賃金の流列の現在価値が等しい
限り,上のものよりもっと急傾斜のプ・ファイル,すなわち第1期の賃金
を低くし第2期の賃金を高くするようなプ・ファイル,でもかまわない・
CEEにおいても同様で,第1期の賃金を低くし,雇用が継続する揚合の第
2期の賃金や解雇手当を高くすることもできる。
以上の議論は,特殊資本の存在とその蓄積誘因を考慮に入れた,内部労
働市揚の形成メカニズムに関するものであり,どのような条件のときに,
どの程度内部化するかを明確に示すことができた・しかしながら年齢賃金
プ・ファイルに関しては,それが満たすべき必要条件は示すことができた
ものの,不確定性の存在することを明らかにした。これらを踏まえて,次
265
一橋大学研究年報 経済学研究31
節では内部労働市揚において,年齢賃金プロファイルがどのように特定化
されるかを検討したい.
V。年齢賃金プ・ファイルに関する諸理論
現実の経済を観察してみると,一般に賃金は年齢とともに上昇している.
これはわが国だけでなく,米国においても見られるし,西欧のホワイトカ
ラーにも見られる(小野(1973)参照).このような事実に対して,主と
して米国や日本で,それを説明することを目的とした研究がいくつかなさ
れている.それらの中には必ずしも上でみた内部労働市場との関連で理論
を展開していないものもあるが,われわれの議論との比較を容易にするた
めに,簡単に整理しておくことにしよう(Arai(1982)および小野(1987)
にもサーベイがある).
米国で最初に年齢や勤続年数と賃金との関係を体系的に分析したのは,
Mincer(1958)やBecker(1964)等の人的資本アプ・一チに依拠する人
達である.このアプ・一チの基本的な考え方はかなり単純であって,次の
ように要約できよう.まず労働者が一般資本のみを蓄積する揚合は,年齢
とともに彼の生産性が上昇するので,それに対応して賃金も上昇して行く
と考える.もっと正確に述べれば,訓練期間中は労働者が費用を負担する
ので,これが賃金プロファイルを一層急傾斜にする.ある企業で,同一の
勤続年数の労働者でも年齢が違うと賃金も違うのは,一般資本の量が違う
からであると説明される.
労働者が特殊資本を蓄積する揚合も,一般に賃金プロファィルは右上が
りになる.標準的な議論に基づく詳細な説明は荒井他(1989,第2章)で
行なったので,ここでは簡単にまとめておこう.特殊訓練の揚合でも,企
業が労働者に訓練費用の一部を負担させ,訓練終了後その収益の一部を分
266
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
け与え,労働者の離職を抑制するために,年齢賃金プロファイルが右上が
りになると説明される.またある企業において,年齢が同じなのに勤続年
数が異なると賃金が異なるのは,特殊資本の量が異なるからであると説明
される.
日本人による年齢賃金プロファイル理論の代表的なものには,氏原
(1966)による日本的熟練仮説や,小池(1966,1977)による職務遍歴仮
説などがある.前者は日本経済に固有の事情を強調しているものの,人的
資本論の特殊訓練に通ずる考え方も有している.後者は,職務遍歴によっ
て熟練を養成するときの,職務の構成が企業ごとに異なることによる特殊
性の存在,すなわち特殊訓練の存在を強調する.両者とも,勤続年数が増
加するにしたがって,熟練の獲得段階が上昇したり,あるいは難しい職務
に昇進したりするので,賃金も勤続年数とともに増加するとしている.
Doeringer and Pioreによる内部労働市場論も,年齢賃金プ・ファイル
に関する議論をしているが,人的資本論の特殊資本の考え方にかなり近く,
特に変わった議論はしていないといえる.ただある仕事の労働力が他の仕
事の従事者の中から投入されることになっている場合は,前者の賃金が後
者の賃金を上回ること,管理する仕事の賃金は管理される仕事の賃金より
高くなること,また企業内教育訓練で教える側の賃金は教えられる側の賃
金より高いことなども説かれている,
その他の著名な理論としてはSalop and Salop(1976)やGuaschand
Weiss(1980)の自己選抜モデルや,Lazear(1979)のチーティングモデ
ルなどがある.前者は,定着性の強い労働者を引きつけたり,能力のある
労働者を選抜したりするために,企業が右上がりの年齢賃金プロファィル
を設定することを説明するモデルである.後者は,労働者の不正行為を回
避するために,年齢賃金プ・ファィルを右上がりにしておくというモデル
である.
267
一橋大学研究年報経済学研究31
このように年齢(や勤続年数)と賃金との間の正の相関を説明するモデ
ルは少なからず存在するが,一般人的資本の概念に基づく説明以外のモデ
ルには,一つの共通の欠陥がある.それらは確かに右上がりの年齢賃金プ
ロファイルの存在理由を説明しているが,年齢と賃金との相関の度合すな
わち年齢別賃金格差の大きさに,なぜ変化(変動ないしは推移)が生ずる
のかを説明することができない,というのがそれである.それらにおいて
は,年齢賃金プ・ファイルがなぜ右上がりになるかを説明することのみが
念頭にあって,変化を説明することは考慮されていなかったといえるかも
しれない.しかし現実の経済では,以下でみるようにかなり大きな変化が
見られるので,それに対する含意のないモデルは不完全であるといえよう.
一般資本の概念を用いた説明においては,そのような変化はとりたてて
問題とすることではなく,単純に,年齢などで区別された労働者グループ
間の,相対的需給関係の変化によって,そのような変化が生じると説くで
1)
あろう。しかしながら一般資本の概念のみでは,本論文で問題としている,
内部労働市場がなぜ形成されるかという問題を解明できない.われわれが
知りたいのは,内部労働市場の存在がかなり大きなウェイトを占める経済
で,どのような要因によって年齢別賃金格差が決まり,かつその変化が生
じるかということである.われわれ.が以下で取り上げる,年齢賃金プロフ
ァィルに関する理論は,内部労働市揚の発達と資本市揚の不完全性を想定
したもので,その主張は,わが国に固有なものと思われる伝統的な生活費
保障仮説(舟橋(1961,1967)参照)のものと似ているところもある.
注
1)ただし以下でみるReder(1955)の仮説はこのような考え方を発展させた
ものともいえるかもしれない。
268
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
VI.内部労働市揚における年齢賃金プ・ファイル
本節では内部労働市場を想定した理論モデルに依拠して,年齢別賃金格
差とその推移に関する仮説を導出する.その基本的な考え方は既に荒井
(1984)やArai(1988a)で議論されているが,本節ではそれをi整理し,
さらにそれを発展させた理論も付加する.上記論文のモデルは,既に内部
労働市揚ができあがっているときに,年齢賃金プ・ファイル(年齢別賃金
格差)がどのように決定されるかを問題としているが,以下でみるよう
に,それと内部化要因に関する先のわれわれの理論とは,矛眉なく接合で
きる.
年齢賃金プ・ファイルの決定に関する,上記論文の基本的な主張は,内
部労働市揚が形成される揚合,プ・ファイルは各世代の労働者の生活資金
の必要度に比例して決定され,その際に労働者の世代間で資金の移転が行
なわれているというものである.一般に高年労働者の生活資金の必要度が
若年労働者のそれよりも大きいので,われわれのモデルの年齢賃金プ・フ
ァイルも右上がりとなる.
このような考え方には,生活費保障仮説のものと似た所もある。しかし
ながら,後者はマルクス経済学的発想に基づいていて,われわれの立場か
らは理解できない論点をいくつか有する.一例をあげれば,合理的に貯蓄
する労働者に対し,なぜ生活費に対応した賃金を支払わなければならない
かを,それは説明していない。もし労働者が合理的に行動するならば,賃
金は例えば限界価値生産物に等しくとも,なんら支障はない。なぜなら若
年労働者は貯蓄することによって,将来資金の必要となったときに,貯蓄
資金を使うことができるからである。われわれのモデルでは,この疑間が
解消できるように工夫されている。
269
一橋大学研究年報 経済学研究31
年齢賃金プ・ファイルが,生活費に対応して決定されるという理論の利
点は,第1にそれが日本の労働市揚における賃金決定の実状をかなりよく
反映しているというところにある(舟橋(1967),島田(1980)等参照).
日本の年齢賃金プ・ファイルは,モデル家計の生活費のプ・ファイルにき
わめて似ているという事実もある(小池(1966)).第2の利点は,本論で
は重要な点で以下で詳しくみることにするが,それが年齢別賃金格差の推
移を説明できるところにある.
われわれのモデルにおいて,賃金が各年齢段階の生活資金の必要度に比
例して支払われる根本的な理由は二つある.まず第一は,内部労働市場で
は,労働者が長期間継続して雇用される傾向があるため,彼の賃金を各時
点での彼の限界価値生産物などに等しくする理由は全くない,すなわち長
期間全体である水準以上の賃金が保障されればよいということである.
第二は,資本市場が極めて不完全であることである.実際過去何十年間
かをみると,平均的な労働者が利用できる実質貸付利子率は殆ど零であっ
たり,負の水準であったりする.荒井(1984)には,1952年から1981年
までの,実質利子率が調べられているが,その平均は零%である.本論文
の最後では,1965年以降20年程のデータを用いて実証を行なうが,その
間実質利子率は約一〇・3%であった.ちなみに実質平均経済成長率は,こ
の間約6・0%であった.ただしここでは,銀行の一年定期預金名目利子率
1)
から,消費者物価指数成長率を引いたものを,実質貸付利子率とする.
このような状況においては,労働者が彼の各年齢段階でどれだけの賃金
を得るかは,極めて重要な間題となる.なぜなら,若年期の賃金が高すぎ
ると,高年期に備えて貯蓄しても目減りするからである.逆に若年期の賃
金が低く,高年期の賃金が高すぎても,資本市揚が不完全なときは,一般
に若年期の借入れが困難なため,生活を極端に切り詰めなければならない
からである。
270
内部労働市揚の形成と年齢賃金プロファイル
資本市揚が不完全な揚合には,各企業内で若年労働者から高年労働者に
資金の世代間移転を行なうことによって,資本市揚の不完全性にともなう
不利益(われわれのモデルでは利子率が低いこと)を克服することができ
る.すなわち若年労働者は,その限界価値生産物(ないしは賃金を規定す
るそれ相当のもの)の全部は賃金として受け取らず,その一部を高年労働
者に移転し,後に自身が高年労働者になったときには,その時の若年労働
者から移転を受けるわけである.
このような世代間移転はSamuelson(1958)で説かれたものと同類で,
もし全ての企業が同一であれぱ,それによって経済成長率に等しい実質利
子率を達成することができる。現実では全ての企業が同じではないので,
必ずしも経済成長率に等しい実質利子率を実現することはできないが,世
代間移転によって,多かれ少なかれそれに近い利子率を実現できるであろ
う.なお企業内で資金の世代間移転が行なわれているということは,企業
関係者は気付いていないかも知れない。彼らは,単に各年齢段階の生活費
に応じて,賃金を決定しているだけかも知れない.しかしながらそうする
ことが,結果的に世代間の移転に寄与していることになるのである・
このモデルでは,全ての企業は同一であり,全ての労働者は,世代の相
違はあるものの,一生涯において他の労働者と同質であると仮定されてい
る.そのためそこでは,労働異動に対する誘因はなく,消極的ながら内部
労働市揚が既にできあがっている状態を前提として,年齢別賃金格差がど
のように決定されるかを問題としている.しかしながらこのモデルの結論
からみると,このモデルにも内部化を促進する積極的な要因がないわけで
はない.すなわち各年齢段階の生活費に対応する,最適な年齢賃金プ・フ
ァイルを維持するためには,労働力がかなり内部化されていなけれぱなら
ないので,そのようなプ・ファイルを維持するというのが,内部化の一つ
の要因であるといえる.したがって年齢賃金プ・ファイルに関するここで
271
一橋大学研究年報 経済学研究31
の議論は,先に論じたわれわれの内部化要因の議論に追加される,内部化
強化要因を含むと解釈される.換言すれば,最適年齢賃金プ・ファイル要
因によって,内部化は先の議論よりは進行しやすくなる.ただし先の議論
における年齢賃金プ・ファイルには,大幅な自由度があるため(生活費に
対応させて,プ・ファイルを急傾斜にすることは,かなり自由にできるた
め),それとここの議論とは矛盾なく接合できる.
このモデルの結果を要約し,その直観的意味を説明してみよう.モデル
では,前述のように全ての企業は同一であると仮定される。そして労働者
は全員が同一の,異時点の消費に関するホモセティックな効用関数を持っ
ていると仮定されている・ホモセティックな効用関数というのは若干強い
仮定のようにもみえるが,関数の変数が異時点の消費であることを考慮す
れぱ,それほど極端な仮定でもない.これは異時点間の消費パターンが,
所得水準と無関係であることを意味する.もちろんこれらは計算を容易に
するための仮定であって,これらの仮定が厳密に満たされなくとも,結論
は現実を近似的に説明するとみなすことができよう.
モデルの第一の結果は,労働力人口の増加率が高いほど,年齢別賃金格
差は大きくなるというものである(ここで年齢別賃金格差とは,ある時点
における,若年労働者の賃金に対する,高年労働者の賃金の比率である).
これは次のように解釈できる.労働力人口の増加率が高いと,若年労働者
の構成比が大きく,高年労働者のそれが小さくなる.これは世代間移転の
効果が大きいことを意味する.すなわち若年労働者の各人が少量の移転を
行なっても,高年労働者は相対的に少ないので,後者は一人当り多くの移
転を受けることになる・もちろん若年労働者が将来高年になったときも,
同様に一人当りにして多くの移転を受けることができる.このようなとき
は,年齢別賃金格差を大きくしようとする誘因が高まることになる.
第二の結果は,労働者が高年期の消費に相対的に多くの評価を与えるほ
272
内部労働市場の形成と年齢賃金プロファイル
ど,年齢別賃金格差は大きくなるというものである・高年期の消費に相対
的に多くの評価を与えるときは,高年期に相対的に多くの消費をすること
によって満足度を高めることができるので,多くの世代間移転を行なって
それを実現する,
高年期の消費に多くの評価を与える要因の主要なものとしては,次のよ
うなものがある.まず第一に,単身または結婚直後の時期を含む若年期の
一単位の消費よりも,配偶者や成長期にいる子供を持つ高年期のそれの方
が価値があると労働者は感ずるであろう.第二に,家族の効用関数はその
メンバーの効用関数を総計することによって得られるとすると(一種の社
会的厚生関数),家族人員数の多い時(高年期)の方が,(家族の効用関数
の)一単位の消費に多くの評価を与えることになろう・このような考え方
は,標準的な経済理論のものとは異なるかもしれない・しかしながら,標
準的な経済理論における,多期間モデルの家計の効用関数は,きわめて曖
味なものである.いったいそこでは家族のメンバーは,不変なのか変わる
のか,各メンバーの嗜好はどのように合計されるのか等々が全く説明され
ていない.
第三の結果は,労働生産性の増加率が低いほど,年齢別賃金格差は大き
くなるというものである.労働生産性の増加率が高いときには,世代間移
転をそれほど多く行なわなくても,若年労働者が将来高年齢になったとき
に,相対的に高い生産性を実現できるので,多くの世代間移転は必要でな
くなる.この結果を得るに際しては,若年期の消費と高年期のそれとの間
の代替の弾力性は,1より小さいと仮定されている。1より小さいという
仮定は,若年期と高年期において,それぞれある一定の生活水準を維持し
ようとする傾向があることを意味する,付言すれば,例えぼ若年期の消費
を極めて大きくして,高年期の消費を極めて小さくすることは,労働者の
満足度をそれほど大きくしないことを意味する・代替の弾力性が1より大
273
一橋大学研究年報 経済学研究31
きいと,この結果は逆になる.
第四の結果は,高年期の生活費が相対的に高いほど,年齢別賃金格差は
大きくなるというものである.第三の結果の揚合と同様に,この場合も代
替の弾力性は1より小さいと仮定されており,1より大きけれぱ,結果は
逆になる.この結果の意味は自明であろう.
なおこの形式モデルでは,労働力人口増加率,労働生産性増加率など年
齢別賃金格差を規定する要因は,常に一定の値をとると仮定されている。
したがってそれは,必ずしも年齢別賃金格差の年々の変動を説明しようと
するモデルではない.しかしながら,それらに少しずつなめらかで単調な
変化が起きているときには,それに応じて年齢別賃金格差も少しずつ調整
されると想定することができるので,これらの結果を年々の年齢別賃金格
差の説明に援用することができよう.
このようなモデルに対しては,直ちに次のような疑問が出るかもしれな
い.すなわち企業内の世代間移転が銀行預金などよりも有利ならば,なぜ
現実の経済において銀行預金が行なわれるのであろうか.解答はいくつか
ある.まず労働力の内部化は必ずしも完全でない。したがって労働者の将
来に対する備えを,現在勤務する企業に,全面的に託してしまうのは危険
である.また労働者間には初期条件や嗜好などに相違があるため,それら
が同一であると仮定したこのモデルの結果は,現実と完全には一致しない,
上のモデルでは,年齢別賃金格差を規定する要因に,変動や不確実性が
存在しないと仮定されていたために,各世代共通の一定率の移転が行なわ
れたが(年齢別賃金絡差が全ての時点で一定),これを若干修正して,現
実解釈をもっと容易にすることもできる.一つの修正の仕方は,移転は各
時点の状況に応じて,ある程度確率的になされると想定するものである.
労働者の各年齢段階における生活資金の相対的必要度は,就職時点におい
ては確率変数であると仮定しよう.すると危険回避的な労働者ならば,次
274
内部労働市揚の形成と年齢賃金プロファイル
のような賃金契約を,ある一定の率で世代間移転を行なう賃金契約よりも
好むであろう.すなわちそれは,各時点における各世代の生活資金の相対
的必要度に比例して賃金を支払うという契約である,なぜならその方が,
労働者は一生を通じて,安定的な生活水準を維持できるからである.この
ような契約では,例えばある時点において,高年労働者の生活費が若年労
働者のそれに比して高くなると,前者の賃金も相対的に高くなる.もちろ
んその際,若年労働者から高年労働者への移転が行なわれると仮定する.
こうすることによって世代間で危険の分担が行なわれることになる.
労働者が危険回避的で企業が危険中立的ならば,Baily(1974)やAza−
riadis(1975)の議論にならって,賃金決定に際し,労働者の世代間移転
だけではなく,企業と労働者との間にも確率的な移転が行なわれると考え
ることもできる.これは企業と労働者の間の危険分担である.しかしなが
ら,このような形で企業が移転に関与しても,年齢別賃金格差に関するわ
れわれの主張の本質は不変である.なぜなら,労働者に関しては,いずれ
にしても生活費の相対的に上がった世代が高い賃金を受け取り,相対的に
下がった世代は低い賃金を受け取るのが,効率的であるからである,
このような確率的な賃金契約を想定することの利点は,上の理論モデル
と違って,年齢別賃金格差の年’々の変動を明示的にモデノレの中に組み込む
ことができることにある.このような修正モデルにおける年齢別賃金格差
の大小に対する含意は,もとのモデルについて記したものと同じである.
労働者の各年齢段階における生活費を問題としなければならないのは,
各年齢段階にほぼ固有な生活費項目があるからである.例えば,労務行政
研究所(1976)によると,2人の子供が高校卒業後就職すると仮定した場
合,労働者の生計費は47歳でピークとなり,18歳時のそれの約3倍に達
する.労働省(1984)には,子供2人とも大学に進学する場合の年齢別教
育費が示されているが,それによると40歳代の後半に教育費が急激に上
275
一橋大学研究年報 経済学研究31
昇する・したがって何らかの理由によって高校や大学の教育費が高まると,
それは高年労働者の賃金を上昇させ,その結果年齢別賃金格差は拡大する
ことになる,もちろん年齢別の生活費の違いをもたらすのは,子供の教育
費に限られるわけではない.そのほかに住宅費用,社会保障制度の完備度
なども類似の作用をするであろう.
年齢段階の生活費と関連している事柄に,定年退職年齢の問題がある.
もし定年退職年齢が高まれぱ,労働者は,以前は退職後の期間に相当して
いたある年齢段階の生活資金を,予め準備する必要がなくなるので,定年
退職年齢に近い年齢段階の賃金が以前ほど高いことは必要でなくなる.換
言すれば,定年退職年齢の増加は年齢別賃金格差を縮小させる.
以上が年齢賃金プ・ファイルに関するわれわれの理論である.以下では
この理論の含意が現実の経済の中に観察されるかを調べてみたい.すなわ
ちわが国の年齢別賃金格差の推移を分析対象として取り上げ,それを上の
理論で説明できるかを調ぺてみることにする.
1)資料は『経済統計年報』,r消費者物価指数年報』,r経済要覧』である.
VIL 年齢別賃金格差の推移
本節では昭和40年以降62年までの『賃金構造基本統計調査』を使用し
て,主要な産業における,男子の40歳代(40−49歳)の平均賃金(所定内
給与額)と20歳代前半(20−24歳)のそれとの比率の変化を観察する(以
下では,比率は100倍したものを用い,それをもって年齢別賃金格差を代
表させる).そして次節では,それを踏まえてわれわれの理論の検定を行
なう.考察対象とする産業は,昭和40年以降一貫してデータの揃う,比
較的大きな(労働者数の多い)産業である.ただ製造業は,極めて重要な
産業であり,労働者をホワイトヵラーとブルーカラーとに分け,賃金格差
276
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
も所定内給与額だけでなく,賞与などを含めたものを考慮した,かなり大
規模な分析を予定しているので,その分析は別の機会に扱うこととし,以
下ではそれを実証分析の対象とはしない.40年以降を分析期間とするのは,
各企業規模及び各学歴に対応した数値が一貫して得られるためである.た
だ48年調査は失敗であるといわれており,筆者による検討の結果も異常
さを示していたので,本論文の対象からは除外する・
次節での分析期間は,データの制約上昭和40年から昭和61年までであ
る.そこで昭和61年『賃金構造基本統計調査』中の各産業における男子
労働者数を比較してみると,大きい順に,製造業587万人,卸売・小売業
276万人,建設業149万人,金融・保険業65万人,不動産業8万人となっ
ている.昭和40年では,製造業498万人,卸売・小売業168万人,建設
業90万人,金融・保険業46万人,不動産業3万人となっている・ただし
昭和40年では不動産業は鉱業の20万人より規模が小さい.われわれが本
節と次節で問題とするのは,卸売・小売業,建設業,及び金融・保険業で
ある.不動産業は,他の産業と比べると著しく規模が小さく,実際に分析
をしてみるとなかなか明確な規則性が得られないので,以下では取り上げ
ないことにする.金融・保険業も,分析目的のためにはかなり規模が小
さく,分析上の価値は若干落ちる.筆者の実験からは,以下の分析目的に
は,ちょうど金融・保険業位の規模が,臨界的な規模になるといえそうで
ある.
学歴は比較的興味深い,学歴計,旧中・新高卒,旧大・新大卒の3種類
のみを検討する.企業規模は,規模計,1000人以上,100−999人,10−99
人の4種類を取り上げる.したがって各産業について,企業規模・学歴で
分類された12の労働者グループを分析の対象とする,
前節で年齢別賃金格差およびその変化に関する,われわれの理論仮説
を提示したが,賃金格差の変動に関する理論としては唯一著名なReder
277
一橋大学研究年報経済学研究31
(1955)の仮説を比較対象として取り上げ,それを念頭に入れながら,年
齢別賃金格差の各産業における実際の推移を観察することにしよう,彼の
仮説は,賃金格差の変動と景気変動とを関連付けるものである.
その仮説によれば,景気がよくなると,熟練・未熟練労働力双方におい
て,労働力不足が発生する.これに対応するために,企業は熟練労働力の
基準を以前よりも下げ,今までは未熟練労働者と分類していた者の一部も,
熟練労働者として採用するようになる.もちろんこのような未熟練労働者
に対しては,企業内教育訓練などが施されることもあろう.未熟練労働力
に対する需要は直接的な需要のほかに,このような熟練労働力に代替させ
るための需要もあるため,好況期の需要合計はかなり大きくなる。しかし
ながら今まで非労働力であった者が新たに労働力になるのはそれほど容易
ではないので,その供給はあまり増えない.したがって未熟練労働者の賃
金は,熟練労働者の賃金よりも大きく上昇する。景気が悪くなると,これ
とは逆のことが生じる・以上をまとめると景気のよいときに賃金格差は縮
小し,景気の悪いときに拡大することになる.
この仮説は数理モデルで表現されておらず,必ずしも十分に明解でない.
そもそも労働市揚の構造や,賃金と限界価値生産物の乖離の具合いなども
あまりはっきりしない.しかしながら,上の熟練労働者を高年労働者,未
熟練労働者を若年労働者とみなせば,このモデルは一応年齢別賃金格差の
変動を説明しているとみなすことができる.
それでは年齢別賃金格差の実際の推移を観察することにしよう.図1か
ら図12までには,卸売業・小売業の各労働者グループの賃金格差の推移
が描かれている.前述のように昭和48年の数値は使用しないが,昭和47
年と昭和49年の数値は実線でつないである.同様に図13から図24まで
には建設業のものが描かれている・金融・保険業のグラフも描いてみたが,
図が過多になるのを避けるため,ここには載せてない.
278
内部労働市場の形成と年齢賃金プ・ファイル
卸売業・小売業のグラフを見ると,図1に典型的に現われているように,
V字型のものがいくつかある.このような場合,年齢別賃金格差は昭和40
年代に縮小し,昭和50年代に拡大したことがほぼ共通の特徴である・こ
のような事実は,単純な揚合については,既に荒井(1984)や佐野(1989)
でも指摘されている.上のRederの仮説に従えば,昭和40年代は高度経
済成長期であり,昭和50年代は低成長期であったため・この縮小・拡大
は,これらの好・不況に対応したことになる・したがってRederの仮説
でも,このような型の賃金格差の推移は一応説明できるようにみえる。
しかしながらRederの仮説のみでは,どうしても説明できそうもない
ような形の推移を示している労働者グループもある。典型的には,図3,6,
9に示された卸売業・小売業の旧大・新大卒のグループである.これらに
おいては,昭和50年代以降の賃金格差が全体として拡大していない。建
設業を見ると,図16,19,22のように,ほぼ一貫して拡大しているといえ
そうなものもある.また金融・保険業のグラフでは単純なV字型のものは
少ない.われわれがここで発見した重要な事実は,Rederの仮説のみでは
明かに説明できそうもない年齢別賃金格差の推移があるということである.
さらにRederの仮説で説明がつきそうな揚合でも,説明力が十分に大き
いという保証はない.このようなことを念頭におきながら,次節では主と
してわれわれの理論仮説を検定することにしよう。
VIII.仮説の検定
前節で観察した年齢別賃金格差の推移を,先に検討した仮説はどれだけ
説明できるであろうか.本節では,回帰分析によって仮説の検定を行なう.
回帰式の被説明変数は,卸売業・小売業,建設業・金融・保険業の各産業
279
一橋大学研究年報 経済学研究31
の,12の労働者グループの前節で観察した年齢別賃金格差であり,説明変
数は前述の仮説に基づいて選ぶ変数である.
まず最初に,ここで選び出す説明変数の説明を行なおう.第一の説明変
数は,労働力人口増加率に関するものである.前述のように,労働力人口
増加率が高いときには,若年労働者の割合が相対的に大きく,高年労働者
のそれが相対的に小さいので,『賃金構造基本統計調査』から得られる,
各労働者グループ内の年齢構成比を,労働力人口増加率の代理変数として
使うことができる、40歳代の労働者の構成比をS4,20歳代前半の労働者
のそれをS2とすると,一般に労働力人口増加率が高いときには,S4の
値は小さく,s2の値は大きくなる.過去20年余りでは,ほとんどの場合,
S4はかなりなめらかに増加しており,S2は減少している.われわれの仮
説によれぱ,年齢別賃金格差に対してS4は負の効果,S2は正の効果を
持つ.
次に労働生産性に対応した変数を考えよう.これに関しては,適当なデ
ータがないためやむを得ず,『賃金構造基本統計調査』から得られる,各
労働者グループの平均賃金の実質増加率(%)を代理変数とする.ただし
1)
実質化するためには,卸売物価指数を使う.そのように計算された変数を
σ研としよう。上の仮説によれば,σrは負の効果を持つことが期待さ
れるが,残念ながらそれは増減の変動が激しく,それほど規則的な動きを
していない.
次は生活費に関する変数である.前述のように,年齢に対応して大きく
変化する生活費に教育費がある・そこで,ここでは大学の学校納付金を説
明変数に導入する,資料としては,『私立学校の財務状況に関する調査報
告書』と『学校基本調査報告書』を用い,私立大学の学生一人当りの実質
年間学校納付金を算出する・実質値の算出には消費者物価指数を使う.昭
和50年価格(万円)で表示し,この変数をTUと呼ぼう.TUの数値は
280
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
昭和61年まで得ることができた,上の仮説によれば,TUは年齢別賃金
格差に対して正の効果を持っ.
生活費の変数として定年退職年齢も加えよう.資料としては『雇用管理
の実態』を使うが,2,3の注意点がある.まず第1に,この調査は企業に
関する平均であって,労働者に関する平均ではない.両者は明らかに異な
るが,実際問題としては,これはそれほど重要ではなかろう.第2は企業
規模の範囲の取り方に関するものである.すなわち『雇用管理の実態』の
企業規模の取り方の方が,『賃金構造基本統計調査』のそれよりも若干細
かいといえる.本論文では前者を後者に合わせて,5000人以上と1000−
4999人規模の各定年退職年齢の単純平均を1000人以上の平均とする.同
様なことを100−999人規模についても行なう.単純平均を取るのは,ウェ
ートが得られないためである.また30−99人規模の値を,10−99人のそれ
の代理変数とする。これは最小規模範囲のの取り方が異なることによる.
2)
規模以外の労働者特性に関しては定年退職年齢に差がないと仮定する.定
年退職年齢の変数をEEと呼ぼう.EEは一般に上昇している.上の仮説
によれぱ,REは年齢別賃金格差に対して負の効果を持つ.
以上の他に,われわれの理論仮説と間接的に関連する勤続年数を説明変
数として加える.本論文の分析期間中に各年齢階級の勤続年数は上昇して
おり,それが賃金を変化させた可能性がある.これは企業特殊人的資本の
理論からも説明が可能であろう.若年労働者の勤続年数は大きく変わりえ
ないので,勤続年数の上昇は高年労働者の賃金を相対的に高めると想定す
れば,それは年齢別賃金格差を拡大させる。しかし世代間移転モデルの観
点からは,異なった説明が成立する.上の理論モデルは内部化が完全な場
合を想定していたが,現実は必ずしもそうでないため,勤続年数の上昇を
内部化の完全化と解釈すれば,それによって上の理論モデルは成立しやす
くなり,そのことは賃金を生活費に対応させやすくなることを意味し,年
281
一橋大学研究年報 経済学研究31
齢別賃金格差は拡大することになる.われわれは,ここでは一応このよう
な解釈を採用することにする.本論文では,『賃金構造基本統計調査』を
使って,40歳代の勤続年数をLSと表記し説明変数に加える。
3)
われわれの理論仮説と関係のない説明変数も付け加えたい.それは,
Rederの仮説を反映した変数である.ここでは有効求人倍率(常用労働
者).Z)Sを使って,景気の状態を表わすことにしよう.年齢別賃金格差に
4)
対して,ヱ)Sは負の効果を持つことが期待される.
このような説明変数と資料を用いて回帰分析を行なうが,それに先だっ
て,回帰モデルの特定化の問題に触れておこう.本論文では,M1から
M5までの,五つの異なった特定化による回帰モデルを試みる.M1は,
説明変数をS4(またはS2)とTUにしたものである.M2は,M:1に
REを加えたものである.M3は,M2にゐSとDSとを加えたもので
ある。M4は,M3からS4(またはS2)を取り除いたものである.M5
は,M3にσ研を加えたものである.
M1とM2が,われわれの理論仮説を検定する,最も単純なモデルで
ある・それらに研Vを入れてないのは,それがなめらかな推移をしてお
らず,また必ずしも満足のいく生産性増加率の代理変数でもないからであ
る,M3は,われわれの理論仮説に他の要因も組み込んで,一層一般化し
たものである.M1とM4においてS4(またはS2)とREとが一緒に
使われていないのは,両者の間に正(または負)の強い相関がある場合が
あるからである・M5は,上で取り上げた全ての変数を含む,最も一般的
なモデルである.
実証結果は表1,2,3に示されている.表1は卸売業・小売業に,表2は
建設業に,表3は金融・保険業に関するものである.実証においては,各
産業の12の各労働者グループに,最も一般的なM5を最初に適用し,そ
の結果が問題としている全ての仮説をかなり有意に支持しているときには,
282
内部労働市場の形成と年齢賃金プ・ファイル
そこで実証を終了した.そうでないときは,全ての仮説がかなり有意に支
持されるまで,一般性のより劣る他のモデルを試みた.表の中でモデル名
に*のあるものは,OLSではD・Wが2からかなり離れるので,2段階
Cochrane−Orcutt法を適用したものである.回帰係数の下の括弧内は孟値
を表わし,!〉は標本数を表わしている.標本数は可能な限り大きくしてあ
る.最長の分析期間は昭和40年から昭和61年までのうち,昭和48年を
除いた21年間である.表中のその他の記号は自明であろう.
S4とS2とは高い負の相関を示している揚合が多いので,実証モデル
においてはいずれか一方のみを使い,表中には各グループ全体として,よ
り簡潔に仮説の検定ができる結果を表記した.ただし一貫性を持たせるた
めに,各グループ内にS4を説明変数とする回帰式が少なくも一つあるよ
うにした,またM5だけは,全てのグループに回帰結果が明示されてい
る。あるグループの結果の中に,ある仮説を支持するものが一つもなけれ
ば,五つの特定化いずれにおいても支持されなかったことを意味する・
それでは年齢構成比を表わす説明変数の効果から見ていくことにしよう.
卸売業・小売業の,企業規模と学歴で分類された各労働者グループにおい
て,少なくも一つの回帰結果で,S4が負の有意な効果を示しているとい
えないのは,一つだけである.ただ二つのグループにおいては,有意性が
若干低くなつている.建設業では,S4が負の有意な効果を示していない
のは5グループである.しかしこれらの5グループの中には,S2が正の
有意な効果を示しているものが三つ,若干有意性が低いが正の効果を示し
ているのが一つある.したがって年齢構成比が理論通りの効果を全く表わ
していないのは,一つだけということになろう.同様に金融・保険業を見
ると,S4かS2のいずれかが期待通りの効果を示していないのは,3グ
ループだけである,ただし若干有意性の低いものも一,二ある.以下でも
明らかになるが,金融・保険業は労働者数が少ないため,われわれの仮説
283
一橋大学研究年報 経済学研究31
にとっては,検定がそ九ほどうまくいかない場合もある.これらの実証結
果を見ると,舘齢構成、比ないしは労働力人口増加率が年齢別賃金格差に影
響するというわれわれの主張は,極めて有力な仮説であるといえよう。
次に生活費に対応した説明変数の効果を見よう,TUは,卸売業・小売
業では全ての労働者グループで,有意な正の効果を示している.しかもそ
のほとんどで,有意性がかなり高い.建設業では一つの労働者グループ以
外でそういえる。金融・保険業でも,有意性の低いグループが一つあるが,
その他では期待通りの結果がでている.これは大学教育費が,年齢別賃金
格差を規定する重要な要因になっていることを意味する。もちろんそれと
同じように変化する他の費用項目(例えば高校の教育費やこれらの被教育
年齢層の生活費)があれば,それらも格差を規定しているといえよう.
EEも,卸売業・小売業及び建設業の全ての労働者グループで,負の有
意な効果を示しているといえる.金融・保険業では半数のグループで期待
通りの結果がでていない・したがって労働者数の多い最初の二つの産業に
関する限り,定年退職年齢に関するわれわれの理論仮説は支持されたとみ
なしてよい.
次いで労働生産性増加率の代理変数である研Vの効果を見てみよう.
これが仮説通り負の有意な効果を示している場合は皆無である.したがっ
てこの代理変数を使った検定は,不成功であったといえる.そもそもわれ
われの理論仮説は,労働生産性増加率が急激に変動する揚合を想定してい
ないので,σrはあまり適当な代理変数ではなかつたことになる.また労
働生産増加率と平均賃金の増加率とはそれほど相関していない可能性もあ
る.
LSの効果はどうであろうか.卸売業・小売業をみると,回帰係数の符
号は正負両方あるが,正のものの方が多い.建設業を見ると圧倒的に正の
ものが多く,そのほとんどが有意である.金融・保険業では,正負ほぼ半
284
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
半であるが,正の場合の有意性が若干強い.各労働者グループにおける,
回帰係数の符号と有意性に関するこのような結果には,特に規則性がある
とも思えない.われわれの仮説に基づく先の説明に従えば,建設業で内部
化完全化の効果がかなり大きかったことになる,
最後に景気の効果を検討しよう.DSが負で有意な効果を示している結
果のあるグループは,卸売業・小売業で全体の半分程,建設業で二つ程,
金融・保険業で五つ程である.三産業合計で見ると約1/3の揚合に過ぎな
い.そしてそれほど明確な規則性があるともいえないが,どちらかといえ
ぱ,大規模企業および低学歴労働者のグループにおいて,.DSの効果が負
で有意となる傾向がある.
以上の実証結果より,まずわれわれの理論仮説は,労働力人口の増加
率,大学の教育費,及び定年退職年齢に関する側面について,ほとんど全
ての労働者グループにおいて成立することが確かめられた・そしてこのこ
とは,労働者数が多い卸売業・小売業と建設業について,特に正しいこと
がわかった.荒井(1989b)は,地域別の横断面データを使って,産業計,
製造業,卸売業・小売業,及び建設業について,類似の実証を行なったが
その結果もこれと似ている.したがってわれわれの理論は,かなりの普遍
性を持つといえよう.次に,年齢別賃金格差に関するRederの仮説は,
全体としてそれほど強力ではなく,全ての労働者グループでかなり普遍的
に当てはまるとはいえないことが判明した・したがって年齢別賃金格差は,
景気などのような単一の要因ではなく,複合作用するかなり多くの要因に
よって規定されるということがいえよう.本論文の主張は,労働力人口の
増加率,大学教育の学校納付金,定年退職年齢などのような,構造的ない
しは制度的要因が特に重要であるということである,
1)資料はr物価指数年報』である。
2) さらにデータ不足の間題がある.データは過去数年こそ毎年得られるが,
285
一橋大学研究年報 経済学研究31
昭和50年代半ば以前は1−2年おきにしか得られない.しかしデータが得ら
れない年の,他の変数のデータを使わないのは非常にもったいない.そこで
われわれは,得られるデータを使用し,定年退職年齢を被説明変数,8,82,
およぴ孟3を説明変数として回帰分析を行ない,その昭和40年以降の予測値
を年齢別賃金格差を説明するための説明変数とする.ここでオとは,昭和の
年度を表わす・定年退職年齢はかなりなめらかに変化しており,このような
予測値を使用しても,まず大勢に影響はないであろう.このような回帰結果
の決定係数は,卸売業・小売業で0.94から0,89,建設業で0,92から0.86,
金融・保険業で0.96から0.72であった.
3) われわれの理論仮説の第二の結果に関する検定は,本論文では行なわない.
4)1)Sの資料は『年齢別求職,求人,就職状況調査』である.有効求人倍率
と年齢別賃金格差とを関連づけた研究には,既に村上(1988)がある.しか
し彼女は,有効求人倍率の増加と年齢別賃金格差の縮小とが同時に起こった
揚合の多少を問題にしているに過ぎず,統計的検定を行なっていない.
IX.結語
本論文では,内部労働市揚論における,二つの非常に基本的な間題を考
察した.第一に取り上げた問題は,内部労働市場がなぜ生起するのかとい
う問題である・第二に取り上げた問題は,内部労働市場内において,年齢
賃金プ・ファイルがどのように決まるかという問題である.そしてこれら
二つの事柄に対してわれわれの理論を提示し,それらが理論的に接合でき
ることも指摘した。また第二の間題に対しては,理論仮説の検定も行なっ
た.
第一の問題に関しては,最初に既存の研究が内部化の程度の決定をうま
く説明できないことを指摘し,次いでそれを説明することを目的としたわ
れわれのモデルを検討した.そのモデルは,企業の解雇政策と,労働者の
特殊・一般人的資本投資を内生化したものである.それによると,内部化
286
内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
の程度は多くの要因に依存して決定され,単純に人的資本の特殊性の程度
だけで決まるわけではない.
第二の問題に関しては,まず年齢別賃金格差に関する既存の研究が,そ
の変化,とりわけ内部労働市揚が存在するときの変化を説明できないこと
を論じた.次いで内部労働市揚の存在と資本市場の不完全性を仮定して,
年齢別賃金格差に関するわれわれのモデルを考え,それから格差の変化に
関する仮説命題を導出した。さらにその仮説を検定するために,三つの主
要な産業における合計36の労働者グループの,昭和40年以降のデータを
使って,実証分析行なった.実証結果はわれわれにかなり有利で,われわ
れの理論仮説はほぼ支持されたといえよう.
本研究は,文部省科学研究費補助金(昭和62,63年度)による研究の一
部である.本論文の計算は安斎寿美助手にお願いした.厚く謝意を表した
い.
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内部労働市揚の形成と年齢賃金プ・ファイル
図1.卸売業・小売業、企業規模計、学歴計
230
220
210
200
昭和40年 45 50 55 60
図2.卸売業・小売業、企業規模計、旧中・新高卒
240
230
220
210
200
190
昭和40年 45 50 55 60
図3.卸売業・小売業、企業規模計、旧大・新大卒
300
290
280
270
260
250
240
昭和40年
45
50
55
291
60
一橋大学研究年報 経済学研究31
図4.卸売業・小売業、1000人以上、学歴計
290
280
270
260
/へ
250
240
230’
昭和40年
290
45 50 55 60
図5.卸売業・小売業、1000人以上、旧中・新高卒
280
270
260
250
240
230
220
210
昭和40年 45 50 55 60
340
図6。卸売業・小売業、1000人以上、旧大・新大卒
330
320
310
300
290
280
270
260
昭和40年
45
50
292
55
60
内部労働市揚の形成と年齢賃金プロファイル
240
図7.卸売業・小売業、100−999入、学歴計
230
220
210
200
昭和40年
45 50 55 60
図8.
卸売業・小売業、100−999人、旧中・新高卒
250
240
230
220
210
200
昭和40年
45 50 55 60
図9
300
卸売業・小売業、100−999人、旧大・新大卒
290
280
270
260
250
240
230
220
昭和40年
45
55
50
293
60L
一橋大学研究年報 経済学研究31
210
図10・卸売業・小売業、10−99人、学歴計
200
190
180
170
昭和40年
230
45 50 55 60
図1L卸売業・小売業、10−99人、旧中・新高卒
220
210
200
190
99
6卒
大
新
大
5
旧
5 、
人
10
﹁
0 ,、
5
業
売
小
45
業
売
飢
図
180
瑠和40年
ロ
290
280
270
260
250
240
230
220
昭和40年
45
9
4
0
2
210
5
55
60
内部労働市揚の形成と年齢賃金プロフ7イル
190
図13,建設業く企業規模計、学歴計
180
170
160
150
140
昭和40年
220
45 50 55 60
図14.建設業、企業規模計、旧中・新高卒
210
200
190
180
真70
昭和40年
300
45 50 55 60
図15.建設業、企業規模計、旧大・新大卒
290
280
270
260
250
240
昭和40年
45
55
50
295
60
一橋大学研究年報 経済学研究31
260
図16.建設業、1000人以上、学歴計
250
240
230
220
210
200
190
昭和40年
260
45 50 55 60
図17。建設業、1000人以上、旧中・新高卒
250
240
230
220
210
200
昭和40年
310
45 50 55 60
図18.建設業、1000人以上、旧大・新大卒
300
,290
280
270
260
250
昭和40年
45
50
296
55
60
内部労働市場の形成と年齢賃金プ・ファイル
200
図19.建設業、100−999入、学歴計
190
ユ80
170
160
150
140
昭和40年
220
45 50 55
60
図20.建設業、100−999人、旧中・新高卒
210
200
190
180
170
昭和40年
310
45 50 55 60
図21.建設業、100−999人、旧大・新大卒
300
290
280
270
260
250
240
230
220
昭和40年
45
50
55
297
60
一橋大学研究年報 経済学研究31
口琢
蜘
m
謬
目 揚
翻
珊
㎜
励 蜘
㎜
拗
㈱
鑑
端
識
図22.建設業、10−99人、学歴計
45 50 55
60
図23.建設業、10−99人、旧中・新高卒
45 50 55
60
図24。建設業、10−99人、旧大・新大卒
h目
45
50
298
55
6Q
表1卸売業・小売業
(6) (7)
(8) (9) (10)
企業規模 計
計
計
1000入以上
学歴 計
モデル MI M5
旧中・新高卒
旧大・新大卒
言1’
式番号 (1) (2)
54 −176.3 −249.4
(一4.30)(一1.12)
M1
M5
191.0 1903
“o
O
RE
LS
1)S
N認犀昂Fn
刃 以
M1
289.8
M5
M1ホ
M2*
5479
114.8
933。7
755.4
(一〇.16)
(一1.59)
(一6.15)
M5
−40.86
−233.1
−432.2
一374.6 −452.9
13.80
(0.77)
TU
M5
3956
(一6,98) (一L53)
S2
θ『
(5)
一52.20
一173.1
一44.27
(一〇.59)
(一〇.77)
(一〇.60)
11.00
一16.27
一21.75
(0.33)
(一〇.57)
(一〇.54)
一1.846
(一α05)
1.719 2.162
1.977
(2.29) (2.80)
(2.63)
1.449 1.929
2.427
3.117
3.274
(7.26) (6.44)
(7.30)
(7.62)
(6.09)
0.9912
2,748
(2、87) (2.91)
一25.90
(一1.69)
一31。85
一67.98
一95.20
(一1.25)
(一3.85)
(一2.32)
6.051
(2.31)
7.110
3.638
10.29
(2.27)
(1,23)
(1.65)
(一2.09)
一10。43
(一2.02)
一18.19
一11.97
一6.345
一14.06
(一2.41)
(一1.39)
(一〇.71)
21
19
21
21
19
一23.07
一7.020
(一2.29) (一〇.59)
一7.531
(一1.83)
19
19
19
19
19
4.63
5.00
7.72
6.99
5.78
6.05
6.34
3.74
3,09
6.01
0.801
0.881
0.751
0。856
0,833
0.747
0.823
0.305
0.392
0.731
0.779
0.822
0.724
0.784
0.749
0.719
0.734
0.219
0,271
0.597
36.25
14。82
27.17
11.89
9.96
26.61
9.30
3.52
3.23
5.44
1.88
2.05
1.85
2.22
2.23
2.47
1.91
1.92
1.73
1、80
冴裳糠惑研邸3駅潟伴岳蓼蹄距刈.口博噛義、マ
CONST 196.9 1589
(3)
(4)
表1卸売業・小売業(続き)
式番号
企業規模
学歴
モデノレ
CONST
54
(11) (12)
1000人以上
旧中・新高卒
Ml
194。4
(15) (16) (17)
(18) (19)
100−999人
100−999人
計
M5
旧中・新高卒
M:1
MI M2 M5
1923
MI M5
321.1
206.7 1192 1010
193,3 2077
−222.5
(一4.79)
−252.5
(一1.55)
(一4.10)
(一3,80)
216,4
一101.9
64.60 107.3
(3.62)
(一〇,83)
(1.47) (1.22)
36.16
34.50
(0.87)
(0,97)
21.05
(0.89)
108。8
(1.41)
一9.895
(一〇.33)
いOO
4.503
3.777
一〇.2100
1.535
1.475 1.843 1.593
(4.79)
(4.51)
1.955
(一〇.37)
(1.82)
(5.53) (4.50) (3.01)
2.329
(4.52)
(3.71)
一39.52
一30,07
(一3.00)
(一2.39)
一18.35 −15.12
(一1.99)(一1.24)
(一2.65)
5.022
2。124
(1.03)
(0.85)
0.3695
2.569
(0.25)
(1.34)
一21.88
19,49
(一2.28)
(1。71)
1号E’
L8
1)S
ル凹躍畢Fn
E 21
19
21
19
一35.02
一9.998
一7.516
(一1.64)
(一1.08)
21
21
19
21
19
13。1
9。09
11。8
7.89
5.11
4.81
4.37
7。88
5.43
0。568
0.785
0.416
0,718
0.647
0,705
0.741
0.534
0,760
0.520
0。678
0.351
0.577
0.608
0.653
0.611
0。482
0.640
11.85
7.32
6.41
5。09
16.48
13.55
5.71
10。32
6.33
1.19
2.03
1。90
2.04
1.94
1.67
2.21
1.53
1。77
ー勘汁蝉車醤岳鑑 齢鱗蝉頸謎。一
−153。7
θ躍
以
2260
1000人以上
旧大・新大卒
−639,5
52
TU
M5
(13) (14)
表1卸売業・小売業(続き)
式番号
企業規模
学歴
モデノレ
54
100−999人
1日大・新大卒
M1
265.4
M5*
M l
M5
167.8
1356
191.0
2978
−38。39
−243.3
(一4.47)
R五1
LS
z)s
N
M l
一252.5
一73.02
一134.2
(一1.37)
(一〇.61)
(一1.29)
70.71
一14.06
一34.88
(1.56)
(一〇.64)
(一〇。89)
3.314
(2.68)
0.8986
(4.52)
0。8320
(2.61)
1.351
1.734
(4.28)
(3.83)
(28)
(27)
10−99人
10−99人
(一〇.98)
0.8068
(1.42)
(26)
i日大・新大卒
1日中・新高卒
計
−352.4
σ甲
一
4304
10−99人
(24) (25)
(一3.14)
52
8 TU
M5
(22) (23)
M1
275.3
M4
1400
M5
990.8
−428.5
−274.0
(一4,55)
(一1.41)
一1.453
(一〇.03)
0.6508
(1.70)
0.8240
0.5758
(1.44)
(1.02)
一71.81
一28.49
一50.28
一19.79
一12.85
(一2.25)
(一2.07)
(一2.53)
(一1.97)
(一〇.77)
一3。557
7.029
5.374
一3.656
1、190
(一1.16)
(1.78)
(1.20)
(一〇.85)
(0.23)
11.86
0.4535
2.980
(0.98)
(0.04)
(o.25)
一11.60
一14.20
(一1.65)
(一1.33)
19
21
21
19
SEE
14.0
9。95
4.34
3,83
6.77
6.73
10.4
11.2
10.5
R2
0.415
0.770
0。720
0。710
0.537
0。626
0.596
0.578
0.585
0.350
0.655
0.689
0.536
0.486
0.439
0.551
0.473
0.377
6.38
6.70
23.10
4.09
10.45
3.35
13、27
5.48
2.81
1.99
1.96
2.18
π2
F
P.以
21
1.87
19
2.28
21
1。31
17
1。76
21
1.41
1.56
冴幾壕藩缶離e駅謁伴岳馨矯除団.口博−屯、マ
CONST
(20) (21)
表2建設業
式番号
(29)
企業規模
学歴
モアノレ
CONST
54
(30)
計
計
M3
M5
126.1
547.0
526.1
1000人以上
旧大・新大卒
Ml
M5
M1
193.5
1312
286.6
M5
2117
計
MI M5
154.9 723.3
(一〇.59)
−479.2
140。0
(一8.38)
(一5.43)
(1.17)
169.7
135.9
11.98
(1.67)
17.25
(1.15)
(0.12)
(0.27)
13.32
38.17
(o.74)
一29.25
(1.62)
(一1,19)
1.358 0.6982
0.6462
(2.68)
223.5
(2.11)
10.48
(o.49)
2.130
1。075
1、308
1.116
1,022
1.653
(8,94)
(3。34)
(3.70)
(4.66)
(2.13)
(3.66)
一9。054
一8。580
一21.19
(一2.72)
(一2.33)
一34.33
(一4.81)
(一5.73)
(一2,03)
9.452
9.295
6.720
(4.16)
(3.84)
7.423
(3.07)
7.891
(2.78)
(3.28)
一2。051
一2.675
一9.893
(一〇.92)
4.834
(一〇.74)
一5.825
(一2.09)
(0.91)
一12。46
(一1.16)
ル
21
8ER
3.93
2。93
3.01
5,09
3.40
4.11
6.30
4.58
BZ
8.73
0.908
0。958
0.960
0.821
0.928
0.628
0.908
0.844
0.942
0.898
0.943
0。941
0。801
0.891
0.586
0.861
0.827
0.913
89.30
67.59
48.54
41.19
25.61
15.16
19。64
48.63
32.49
2.15
1.96
1。98
1.75
2.38
1。17
2.35
1,09
2.16
π2
F
z).躍.
21
19
21
19
21
19
21
19
[蕊汁蠕蚤甚蝿 酸繁糖摯避監
いON
1)8
(36) (37)
計
−403.8
(11.57) (3,19)
L8
(34) (35)
計
−20.69
θ躍
EE
(32) (33)
旧中・新高卒
Ml
52
TU
(31)
表2建設業(続き)
式番号
企業規模
学歴
(38) (39)
1000人以上
旧中・新高卒
]M[1
M5
CONST
198.1
1072
54
−129。4
52
o躍
いOO
TO
M2 M5
1243 1318
98L5
M l M5
455.0
179.0 1534
51。27
−296.9 −89.55
(0.37)
(一6.12)(一〇.71)
212,7
(1。40)
(1.21)
16.64
32.48
一12。28
(0.59)
(1.00)
(一〇.46)
2,312
2.914
(4.74)
(5.30)
0,5155
0.6411
0.4680
0.6273
(1.59)
(2.08)
(1.61)
(1。74)
27。09
(0.81)
2.076
1.155
(7.43)
(2.30)
一24.50
一19.40
一17.58
一19。50
一15。98
一7.741
一12.83
一7.079
(一3.71)
(一2.79)
(一2.49)
(一1.65)
(一1.37)
(一2.87)
(一1.07)
(一2.15)
7。829
7.232
7.456
7。260
5.179
(3,90)
(4.40)
(4,42)
(3.84)
(2,12)
0.5925
一6,951
(一1.10)
一〇。3690
8.431
(一〇.08)
(3.36)
罪2以
Ns丑πFn
21
M3 M4
495.6 815.8
200.7
(5.11)
1)S
旧中・新高卒
M5
(4.31)
2.500
(46) (47)
100−999人
234.4
(1.61)
LS
(45)
計
IM[3
1.627
RE
(43) (44)
100−999人
旧大・新大卒
−211.5 −180.5
(一1,90)(一1.46)
(一〇.89)
(42)
1000人以上
一7.220
15.34
2。603
一1.194
1.647
(一1.18)
(L88)
(0.63)
(一〇.33)
(0.53)
(0。11)
19
21
21
21
19
5.04
4。76
4.90
5.25
6.55
6.21
19
21
21
19
12.02
6。29
9。76
7.98
0.286
0.841
0.681
0.798
0.929
0。937
0.929
0.933
0.754
0.832
0.206
0.761
0.624
0.697
0.906
0.916
0。911
0.900
0.727
0.749
12.08
7。90
39.32
44.41
51.92
27.93
27.62
9.94
2.04
2.32
1.63
1.73
1.55
1.62
1。91
2.04
3.60
0。844
10.55
2.30
Σ瑛糠蜜研舳e駅謁陛岳騨蹄紬刈.ロ刈縄屯、マ
モフーノレ
(40) (41)
表2建設業(続き)
式…番号 (48) (49)
(50)
企業規模 100−999人
学歴 旧大・新大卒
(51)
(52)
10−99人
モデル MI M5
M3
M5
M5*
CONST 305.1 2840
186.2
545.2
1121
いO鼻
0。3600
(0.62)
RE
LS
1)S
躍
ロ
RπFP
臨
l I
212.3
一105.4
89.68
(2.99)
(一〇.76)
(1.15)
: 3685 :
1
ロ
1 365.7 i
i (2,31)i
l
I
l
I I
σ『
TO
(一1.89)
l M5 i
21
一82.94
26.59
13.00
27.22
−26.68 ’
(一1.17)
(1.49)
(0.88)
(1.23)
(一〇.54)
3.244
(2.89)
0.3934
0。7515
0.5508
1,129
1.279
1.466
0.4876
(0.76)
(3。03)
(1.41)
(6.39)
(2,80)
(3,40)
(1.20)
一46.69
一2.590
一8.129
一12.90
一8.240
一12.58
3.601
(一3.29)
(一〇.58)
(一1.49)
(一3.60)
(一1.01)
(一1.73)
(0.50)
一61.81
(一3,59)
8.675
6.912
8,871
5.708
一〇.6310
一2,012
6.740
1.736
(2.34)
(5.87)
(4.70)
(4.22)
(一〇.40)
(一1,91)
(2.78)
(0.56)
24.90
一2。218
一2.009
5.534
一6.940
一4.403
一3。282
(1.87)
(一1.28)
(一〇.69)
(1.20)
(一1.86)
(一1,45)
(一〇.97)
6.877
(0.57)
19
コ
21
19
17
21
21
17
19
15.5
11.5
2。73
2。71
1.95
4.83
4。88
3.35
10.1
0.520
0.792
0.963
0.967
0.991
0.723
0.699
0.909
0.603
0.467
0.689
0,951
0.950
0.986
0,631
0。623
0.854
0.404
9.75
7.63
77.20
58.06
183.79
7.83
9.28
16.58
3.03
2.17
2.54
2.48
2.28
2.34
2.40
2.56
2.08
1.93
[舖汁藤虫識儒叢 醸簸緑望謡呂
52
M3 M4 M5零
610.1 885.3 −100.5
−323.7
(一3.13)
−111.4
i (56) 1
し
し
i10−99人 l
i旧大・新大卒i
旧中・新高卒
計
54 −520,4 −180畳1
(一3。39) (一〇。67)
(53) (54) (55)
10−99人
表3金融・保険業
(57) (58)
(59)
(60)
モアノレ
M2寧 M5
M5
M1率
CONST
647.4 626.1
623。2
王08.6
54
(62)
(61)
(63) (64)
(65) (66)
計
計
計
1000人以上
計
旧中・新高卒
旧大・新大卒
計
M5
M3 M5
M4 M5
一31.43
1509 1890
−228,8 95.69
−464.7 −458.5
(一2.73)(一3.67)
101.5
M2*
173.2
103、9 65.27
−26.01
(2.55)(一〇。80)
(一〇.68)
52
一232.5
87.02
153.6
(一1.06)
(2.37)
(1.69)
(0.36)
一14.72
一6851
一19.31
一27.25
一8.613
(一〇.80)
(一1.12)
(一〇.35)
TU
2.191 1.869
1。340
1.799
1.533
2。220
2.647
0.6460
1.404
(6.24) (4.19)
(2.32)
(7.42) (3.34)
(4.13)
(3.47)
(5.16)
(1,54)
(2.34)
RE
一11.28 −7.409
一5.796
一2。545
3.704
一22,15
一29。66
8.063
2.061
(一2.11)(一1.29)
(一1.04)
(一〇.36)
(0.68)
(一2.50)
(一3.94)
(2.47)
(0.47)
一〇.053
(一〇.01)
一1.311
0.9649
3.930
5.373
L648
0.1452
(一〇.63)
(0.43)
(o.83)
(1。59)
(2.89)
(0.04)
一6。765
1’907
5.452
一5.911
一8.101
(一1.64)
(0.40)
(1.05)
(一2。00)
(一1.91)
θ甲
OO肋
LS
PS
N甜餅浮Fn
R 毘
1,679
一4.354
一7.722
(一1.16) (一1。84)
19
19
19
(一〇.51)
(一〇、22)
21
19
21
19
3.40
3.47
3,32
3.30
3。63
3.30
6。95
4.79
4.78
4.14
0.943
0.969
0.971
0。847
0.789
0.953
0.801
0.892
0.9堺9
0.969
0.931
0、953
0。957
0.828
0.747
0.929
0.735
0.838
0.936
0.954
82.43
61.43
67.06
44.20
18.74
40.13
12.06
16.44
73.93
63,42
2。05
1.93
1.73
1.89
1.82
1.88
2。02
2.68
2.03
2.09
19
19
19
丑裳糠塵計甑O駅爵伊醤駐鴻陣刈.ロ団圃義、マ
式番号
企業規模
学歴
表3金融・保険業(続き)
式番号
企業規模
学歴
(67) (68)
1000人以上
1日中・新高卒
i (69) i (70) (71)
i1000人以上i 100−999人
M l M5
l M5 i M2* M3
181.3 −383.2
! 1097 1 1264 982。2
OOα
TU
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LS
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坪
M5
M4 M5卓
l M5 1
1432
1927 2399
: 2628 i
『
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ロ ロ
−103.9
1 −279.O i −105.5 2.928
−38.02
i −455.4 1
(一〇.77)
i(一2.27)i(一1.51) (0,02)
(一〇.32)
i(一4.18)i
, I
I ,
156.0
1
(4.38)
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i旧大・新大卒i
驚 1
80.33
, 1
『 1
(0.58)
一21.06
ロ
’ 一21.93 ’
一11.41
(一〇。58)
一21.69
(一〇.60)
(一〇.47)
(一〇、67)
2.061 0.1571
2.792 1.838 1。393
(8.16) (0.22)
(4.05) (4.88) (2.48) (3.68)
2.041
1.665
1.786
(3.52)
(3.09)
12.12
一15.59 −20.33 −13.18
一21.87
一21,13
一22.18
(2.01)
(一2.74) (一4.50)(一1.68)
(一3.20)
(一3。35)
(一2.83)
一〇.1605
3.902 −1.075
一1。599
一〇.7496
(一〇.04)
(1、08) (一〇.40)
一14.44
(一2.92)
3。884 −4.216
21 19
一〇,6534
22.76 ’
(0.78)
3.184
(4.70)
一40.95
(一4.12)
一3。669
(一1.57)
(一〇.33)
(一1.47)
1.099
一8.179
一2.069
(0.61) (一1.14)
(0.23)
(一1.99)
(一〇.36)
5。580
(0,82)
(一〇。31)
19 19 21
19
19
17
19
SER
6.49
4,85
5.51 4.25 5.97
4.54
6.08
5.77
6.37
E2
0.806
0.917
0.821 0.850 0。773
0。880
0.844
0.918
0.794
0.784
0.875
0.732 0.820 0.697
0.820
0.800
0.868
0.692
37.33
22.05
9。18 28.40 10.19
14.69
18.99
18.57
7.72
1.06
1.95
2.28 2.47 1.73
2.34
2.31
2。52
2.53
π2
F
D.レV.
ー蕩汁雑毫譲岳超 酸蒲帖鼠醤ω一
52
, 1
1 (75) l
i100−999人i
旧中・新高卒
1旧大・新大卒i 計
CONST
(73) (74)
100−999人
ド
ド
モアノレ
54
(72)
ロ
ロ
表3金融・保険業(続き)
式番号
(76) (77)
(78) (79)
企業規模
10−99人
学歴
計
10−99人
旧中・新高卒
モ7’ノレ
M2 M5
M2 M5
S4
128.5 −1551
−293.8 −479.4
(一1,65) (一2.15)
旧大・新大卒
M5 M5率
−21.57 −1899
一1065 −2503
−266.4 −482.2
(一2.50) (一3.69)
−3.852
S2
(一〇.01)
411.7
(1.58)
σ}V
20.16
(0.33)
ωO回
TO
E五1
LS
210、1
199.2
(0.78)
(2.48)
(2.86)
2.434
一1.077
(0.55)
(1.27)
(一〇.46)
3.847
34.66
20.28
59.49
(0.53)
(2、13)
(0.88)
(1。59)
11.08
2。008
一1.696
(1.78)
(2.85)
(0。36)
(一〇.28)
22.15
18,03
一11.52
一26.00
(1.26)
(1。41)
(一〇.33)
(一〇,65)
19
19
17
11.0
29.0
27。59
2.059 −0.1587
2.408
(3.81)(一〇.11)
(3.58)
1.581 29.40
(0.21) (1.56)
10.65
ヱ)S
42.40
皿:以
NS丑πFひ
21
19
21
0.6227
13.6
13.6
12.8
0.611
0.704
0.631
0.792
0,571
0.604
0.542
0.556
0.565
0.688
0。357
0.366
8.89
4.76
9.67
7.61
2,66
2。54
2.21
2.11
1.91
2.35
1.99
1。83
Σ嶺糠塵缶酷e磯渇仕岳蓼矯距寸.ロ博圃眠、マ
CONST
(80) (81)
10−99人