Title 統計的システム論 I Author(s) - HERMES-IR

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Type
統計的システム論 I
片岡, 信二
一橋大学研究年報. 自然科学研究, 17: 31-57
1977-07-20
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/9454
Right
Hitotsubashi University Repository
31
統計的システム論1
片 岡 信 二
序
われわれはさきの小論文において多数の行動主体の集団の性質を分
析する方法として,統計的システム論(ないしはStatistical System
Dynamics)を提案した(1)・本論文においてはこれを更に展開し,シ
ステムのエント・ピー概念を条件つき最尤化から全く数学的に導入す
ること(前論文までは天下り的年定義した),および最近発表されて
いる所得分布曲線を理論的に導出することなどを行うことにする.
さてわれわれはまず抽象化されたrシステム」の定義から始めるこ
とにしよう。
1,システム
相互に関連をもった人ないしは物の集合体で,ある内部構造をもっ
たものをシステムとよぴ,次のような性質をもつ・ものとする.
(1) システムの内部構造にはいろいろな状態があり,状態はいく
つかの変数と外部から与えられるパラメーターによって記述される.
前者をミク・状態変数,後者を外生ペラメーターとよぶ.以下ではミ
ク・状態変数はすぺて確率変数とする.
(2) ミク・状態変数のとることのできる値をミク・状態値とよぶ.
ミク・状態値は外生パラメーターの一部によって変動を受けることが
ある。
(3) 内部構造にはいく組かのミクロ状態値の組合せによって表わ
されるミクロ状態があり,それぞれにいくつかのミクロ状態関数が附
随している.すなわちシステムはミク・状態によって表わされる内部
構造をもつ.
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(4)二つ以上のシステムが相互に影響を及ぽし合うことを相互作
用という,システムは相互作用によってミクロ状態間の遷移を行う.
(5) 以上のように定義したシステムをいくつか集めた集団も一つ
のシステムである.
(6)非常に多くのシステムからなるシステム集団によって一つの
システムが囲まれて,種々の制約のもとに相互作用を行っているとき
前者を後者の環境システムという.
(7) おのおののミク・状態変数の確率分布が与えられると,ミク
ロ状態関数の期待値が求められるが,これをシステムのマク・状態量
とよぶ.
さて以上のような定義を具体的にするために数学的記号を用いて話
を進めよう.つぎのようなシステムを◎とよぶ.
(1)Gにはπ個のミクロ状態変数¢1,¢2,……,翫があり,紛(γ=
1,2,……,π)のミクロ状態値をの『1,のγ2,……,の7ε『の67個とする.当
分以下の議論ではミク・状態値は不連続であるとし,必要な段階で連
続なモデルに変える.
(2) ミク・状態ベクトルをの=(¢1,晩,……,灘π)とし,これにょ
ってシステム◎の内部構造が記述される.
(3) 1≦h≦61,……,1≦砺≦‘πなる添字ゼ42,一一,砺の順列乞=
(乞1,ぢ2,……,ゼπ)の集合を1としミク・状態値ベクトル♂=(¢二h,∬2‘2,
一,¢捨)を定義すると,ミクロ状態ベクトルのはミク・状態値ベク
トル♂のいずれかの値をとる.
(4) g個の外生パラメーターλ1,λ2,…,㌔をとり,外生パラメー
ター・ベクトルλ=(λ1,え2,……,えC)をつくる.外生パラメーターの
なかには♂(λ)となってミクロ状態値ベクトルを変え,システムの内
部構造に変動を与えるものもあるし,次に定義するミク・状態関数の
パラメーターとなるものもある.
(5) ミクロ状態ベクトルの,外生パラメーターλによってシステ
ムのミク・状態に対してミク・状態関数∫1(の,λ),五(の,λ),……,あ(の,
λ)があるものとする.これらはシステムのミク・状態を特性づけ,
統計的システム論1 33
評価する量を表わすものとする.また同様にしてミクロ状態関数ベク
トル∫(の,λ)=(五(の,え),五(の,え),……,ん(の,え))を定義しておく.
(6) ミク・状態変数侮,z2,……,晦は確率変数であったから,こ
れに附随する確率を次のように定義する.
π乞=Prob(∬1=の1‘二7の2=の2裏22……ン¢π=諺π¢簿)
=Pr・b(の=¢‘),乞∈1。
以下の議論ではπ‘を¢‘やλによってどのように表現するかが問題
となる,以下π‘をミクロ状態確率とよぶ.
II.最尤状態
さて上記のようなシステムGと同等なN個のシステムの集団を
◎とし,㊥内のおのおののシステムは環境システムの複雑な影響,相
互作用を受けて内部構造のミクロ状態間の遷移を行っているとしよう.
このようなシステム⑤ないしその要素◎の状態変化を完全に追跡
することは出来ないので,われわれは以下のような統計的な視点から
これをながめてみることにする.㊦が環境システムおよぴ内部のG
同志の相互作用をはじめてから十分時間の経過した後のある時刻をと
って,◎のなかの各システムGを調ぺたところミク・状態ゼにある
数が窺であったとする.そこでNを十分大きくとると,ミクロ状態
乞にある確率π名は
π乞
π6=1im一
ガ→DDN
となる.そしてこれは一つのシステム◎に十分長い時間着目して調
べたとき,それが¢に滞っている確率に等しいと想定する・
さてN個のシステム◎が耽の各ミクロ状態に分けられる確率は
(各Gは同等であるが区別はつくものとして)
N!
r= (2.1)
Hπ‘1
乞∈1
ただし Σ物=ヱv (2.2)
匙∈1
34 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
となるようなrに比例する。短も十分大であるとして,スターリン
グの公式
陶!÷(響
を用いると,
昭÷(与)刀/耳(ザ
=N坪ノHザ‘
多
ハじ
一{・/嘘)Fド
したがって
1im曜÷{1/Hπ乞π‘}坪 (2.3)
π,π‘→DD ‘
となる.すなわち,㊥全体の状態が(π1,%2,……)にある確率は
(H:‘π‘吻)坪に比例することになる.このことは㊤のなかの一つの平
均的なGをとってそれのミク・状態確率π茗を議論していってよい
ことを示している.そこでこのようなシステム◎を対象として統計
システム論を展開することにする.
さきに定義したミク・状態関数九(¢,λ)の状態確率窺による期待
値は
E{五(の,え)1=Σπ轟(♂,え)
z∈r
となるが,この右辺をπ4の1次式と考え,システムヘの環境システ
ムからの制約条件として
Σπ轟(♂,え)=9κ (毒=1,2,……鵠) (2.4)
‘∈1
を与える・こ乙で仰は外生パラメーターの一種であるが,期待値の
与件という意味でえとは区別しマク・状態変数とよぴ,またベクト
ルg=(ψbρ2ド・・……,ρ皿)をアクロ状態変数ベクトルとよぶ.
さて◎ないし平均的な意昧での◎が環境システムとの複雑な相
互作用の後にある種の均衡状態に到達したとすると,(2.4)の条件式
統計的システム論1 35
のもとで,r最も確からしい状態」にあると考えてよいであろう・こ
れをr最尤状態の原理」とよぼう.すなわち,(2。4)の条件のもとで
maxP=■ぺ‘ (2・5)
π‘ 葛
となるようなπ‘を求めることになる.
次に(2.4)のもとでの(2.5)の最適解と,
maxθ=Σ(一:π乞)109πε (2.6)
r‘ ‘
(2.4)のもとでの(2.6)の最適解は一致することを証明する.
〔補助定理〕 rP(π),θ(π)はともに厳密に凹関数である」・
証明 まず9=1/Pとおく。
∂9
一=(2(logπ乞十1)
∂π乞
∂29 ∂9 1
凝=颪(lo9π汁1)+鴛
1
=9(IQ9π‘+1)蘇9一>0
π¢
∂29
=o(井ブ)
∂π5∂π,
故にgのHessianは正値確定となりg(π)は厳密に凸である・従っ
てPは凹となる.同様にしてθも厳密に凹であることが証明される・
(終)
つぎに翫に関する線形不等式体系
Σα匙‘π‘=δ㌃, π‘≧0 (2・7)
包
を考え,これを満足するベクトルπの集合9は空でないとするξ,
この島は明らかに凸集合である。
〔定理1〕 いま二つの問題を
(1) maxP(π)=Hπ‘一9‘
π∈9 ‘
(n) maxθ(π)=Σ(一πゑ)109π5
π∈ρ ‘
とするとき,(1)と(H)の解が存在するならば両者は一致する.
36 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
証明 空でないπの凸集合9で定義される厳密に凹の関数P(π)
は唯一つの最大点を持つ.従ってそれは
F=nπ¢一π一Σβ海(Σα滝乞π乞一砺)
乞 κ 乞
として,Kuhn Tucker条件
∂F
死一P(暫D一脚1::lllζl/@・・
Σα雇π茗=ゐκ (2.7)
‘
を満さなければならない.ただし
lim p(π)10gπ,=1im■π‘曹π‘1im logπゴ
π戸〇十 π,一ウ〇十乞 π,→〇十
=二一〇〇
であるから,π‘→0十で∂.Fノ∂π乞は負とならない.従って(2,8)の下
の式は満足され’ず,最大点ではπ‘>0(¢=1,2,……)となる。この解
を(渇,痘,……,売‘),(β1,β2,……,β魏)とする.
また同様にして(H)に対しても
σ=Σ(一π蛋)logπ乞一Σ7瓦(Σα㌃‘πrδ濫)
塾 ㌃ 年
とおき,Kuhn−Tucker条件をつくると,
∂σ
砺r一(bg世苓寧1惣1二1}(乞・)
Σα匙‘π‘=δん (2。7)
3
となる.この解もθ(π)の凹性から唯一つであり,しかもすべて正で
あることが言える.この解を(勾,為,……,偽),(殊,ア2,……,拓)とす
る.ところで.P(売)>0であるから,(2.8)の両辺をP(歪)で割ると
β髭
一(109島+1)一Σ諏鯨=0 (2。10)
κP(π)
となり,β意/P(歪)=7㌃とおくと,(売1,……,窺),(71,・・…・,7皿)は(2,9〉
を満し(1【)の最適解となる.しかるにどちらもuniqueであるから
統計的システム論1 37
の ハ ぼ ハ
π1=π1,”“●●,πε=π多
となる.逆にP(π)〉0を(2。9)にかけると
一P(π)(log偽+1)一Σ.P(π)解離=0
κ
となり,β廊=P(π)7㌃とおくと(π1,……,π彦),(β1,……,β皿)は(1)
の解となる. (終)
以上により,最尤状態を求める(1)の代りに(■)の解を求めて
もよいことがわかった.ここで
θ=一Σπ‘109π‘ (2.11)
‘
をシステム◎のエントロピーと定義し,これを(2.4)という条件式
のもとで最大にするようなπ¢を求めることが次の問題となる.
皿.統計的システム論
(i) 最尤状態のミクロ状態確率
これまでの問題を最適化問題の形に定式化しておくと次のようにな
る.
maxθ=一Σπ¢logπ密 (3。1)
π4 乞ξI
Subject toΣπ‘=1 (3,2)
乙∈1
Σπ協(嫉λ)=9彦 (3・3)
‘∈1
π‘>0. (3.4)
つ
(3,2)と(3.3)のLagrange乗数をβo,β1,……,βmとしてLag。
range関数 、
L=一Σπ‘llogπ4+β。+Σβぬ(♂,λ)} (3.5)
乞ξ1 κ
をつくり,窺で偏微分して0とおくと,
∂L
爾=一{10gπ¢+1+β・+写β議(¢もλ)1=0
となる.π5の最適解をp‘とおき,Lagrange乗数侮の最適解は同
じ記号β七とおくと,
38 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
pH・稿+激鰍え)}]
=exp(一1一β。)expl一研(♂,え)} (3。6)
となる㌧ここで直はベクトル(β1岬2,……,β吼)であり,魚と侮は
互いに共役なマク・状態変数であるとよぶ.また(3.6)の∫T(♂,λ)
億横ベクトルバ♂,え)の転置ベクトルを示す.(以下上つきTのつい
たベクトルにはすぺて縦ベクトルを意味するものとする。)p‘を(3.
2)に代入すると,
ΣP‘=exp(一1一β。)Σexpl一βプT(の‘,え)1=1
tξ1. ‘∈1
セあるから,
Z=exp(1+β。)=Σexp{一βプT(♂,え)1 (3.7)
‘d
とおくと,結局
1
ρ‘〒7exp{一町丁(♂,λ)}乞∈1 (3・8)
となる・ここでZ(β,λ)を分配関数とよぶことにする.この惣を
(3.3)に代入すると,
ΣP轟(♂,λ)=9な (乃=1,2……,侃) (3.9)
‘∈1
となり,これらは鴉個のパラメーター伽を与えて鵬個の乗数魚を
定める乃個の連立方程式となっているのである.また最尤状態のミク
・状態確率跳を用いてエント・ピーθ@)を求めると,これをsと
して,
3=一ΣP‘!09P‘=一ΣP重{一β/T(♂3λ)一IOgZ}
‘∈■ 乙∈∫
=βρ丁+1・gzq3,λ) (3.10)
が得られる.
(髄) 特性状態関数
1、以上によってシステム◎の内部構造五(♂,え)が与えられたとき,
外生パラメークー・ベクトルとマク・状態変数ベクトルgとが定まる
ぐ
統計的システム論1 39
と,最尤状態における統計的システム論的な一切の未知量すなわちg
の共役変数ベクトルβ,分配関数z,エント・ピーsなどのマク・な
量がすべて決定されることになる.
一般にマク・状態変数ペクトル2=(21,∼2,……,βρ)を独立変数とす
るスカラー関数σ(∼)が定義されるとき,ヒれをβのマク・状態関数
とよぶ.(2もマク・状態関数である.)また2に関するマク・状態関
数のなかで,その一つが決まれば,他のマクロ状態関数がすべて決定
されてしまうようなものを,2に関する特性状態関数とよぶ.
〔定理2〕 分配関数の対数王og Z(β,え)は(β,え)に関する特性状態
関数であり,エントロピーSは(卯,λ)に関する特性状態関数である.
証明
∂ 1
一舐logZ=一万写{一裾λ)}exp圃丁(ね)1
=ΣP轟(♂,λ)=卯七 (3.11)
‘
そこでベクトル
∂器z一(∂騒そ……,∂講z)
と定義すると,(3.11)は
∂logZ
一 =ψ (3.12)
∂β
とかくことができる・したがって10gzをβの関数として定めれば,
砂また従って(3,10)より3が求められることになる,
また(3.10)より全微分を求めると
ゐ=φβT+β吻丁+41・9Z
一ψ研β酬(∂’器z)晒(∂lll争
一鯖(∂’llZ)認 (瑚
となり,
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∂3 ∂3∂bgz
砺鴫諏rλ (3・14)
が得られる・これから3をψの関数として求められれば,β,109Zが
再ぴ得られることになる. (終)
以上で10gZ(β,λ),s(幹,λ)がそれぞれの独立変数に関して特性状態
関数となることがわかったが,もっと一般的にはgの一部分と,残り
の砂に共役なマク・状態変数βを組合わせて独立変数とする特性状態
関数をつくることができる.すなわち皿個の添字の集合Mを2つの部
分集合に分けてM’,M”とし,gからはM’の添字のものを,βから
娃M”の添字のものを選んで独立変数としたときの特性状態関数丑
(9巡,,β}1“,λ) は
E(ψM・,βM“,λ)=logZ(β,λ)+Σβ蘇(3・15)
意∈M’
である.
証明 (3.15)の全微分をとると,
4嚇細λ)一為∂談毎+煮雑λ’
+Σβ仰㌃+Σ曜β㌃
を∈M’ ㌃∈M’
認一卿七+溜酬(∂111z)認
ここで(3.12)式を用いてある. (終)
(茸i) 外生パラメーターの変動に対する応答
これまでは外生パラメーターについては説明しなかったが,ここで
若干の考察を行っておく.
∂舞z一轟一彦揖{一昂謝即1一恥九@λ)}
一写1一写擶勉卜副写擶}
一一Σ磯〉 (3・6)
統計的システム論1 41
こ こ
で
(蔑)一写誕貌え) (3・7)
である.これは乃番目のミク・状態関数九(♂,λ)のんについての変
化率鱗(♂,λ)/頒のすぺてのミク・状態にわたる平均値を意味して
おり,これを元素とするη×g型行列(X)を
(霧)一(X)幻 (3・8)
と定義し,(X)を応答行列とよぶ.これを用いると,
∂1器z非一苓螺(野)♂λ’一一β(x)認
(3.19)
とかくことができる.
(iv) エント・ピーと状態変化
(3.13)から
β姻∂1劉4λ・
であり,これに(3.19)を代入すると,
43一β(4gT一(X)dλT) (3,20)
が得られる・(3・20)より・これを導出した過程を逆に辿って行くと,
β(⑫T一(X)dλT)=♂(β卯丁十Iog Z) (3。21)
となることが容易にわかるから,β(⑫T一(X)♂λT)という量は特性状
態関数3=βgT十109Zの全微分になっていることになる。
さて上のことをシステムの変化と関係ずけて考えてみよう.いまシ
ステム◎が(卿,λ■)という制約を受けて最尤状態にあるとし,これ
を状態丁■で表わす.このT■から(g,λ)を僅かずつ変化させなが
ら,しかもその時点時点での最尤状態を取らせつつTπ(g■■,λ11)に
到達したとする。この間システムは環境システムと複雑な相互作用を
行って状態の変化を受けるであろう.このとき,(3.20)ないしは(3.
42 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
図1
λ
Tπぐ¢π,λ4)
A
B
T1(野,λ」)
ψ
21)を積分して
ゴβ(4ザー(x)4ブ)一ズ 一ズ
={β」」9・」丁+1・9Z(β・・,え・・)Hβ、卯、T+1・9Z(β、,え、)1
(3.22)
が得られる.
〔定理3〕T」→T1∫の状態変化の過程で,(3,22)の積分(エントロ
ピーの差)は変化の道筋には依存しない.
(v) ミク・状態関数五(の,λ)の分散
(3.11)より,
∂log Z 1 ε
卯ん=一∂βr万写岬λ)expl一写βゴ胴え)1
舞一一∂醤号[写一{裾λ)}・卿1一苧β照え)}z
一写紳)即{一写β卿)}駿]
=一ΣP乞{五(♂,え)}2+{Σ躍七⑰ε,λ)}2
ε ‘
統計的システム論1 43
∂21・9Z ∂晦
∂β廊2=一轟=写卿の‘‘λ)一9髭}2
=Var{ノん@,え)}≧0. (3.23)
従って次のことが言える.
〔定理4〕 ミク・状態関数九(の,λ)の最尤状態における分散は∂2109
z/∂βノである.
〔定理5〕 最尤状態においてβ滝を大きくすると仰は小さくなる.
すなわち共役変数同志の変化の方向は逆である.
IV,所得分布と統計的システム論
以上われわれ’は抽象的に定義されたシステムについてその一般的な
性質を議論してきたが,ここでそれの一つの具体化として,経済活動
を行う人間の集団を考察してみよう.勿論ここでのわれわれの観点は
経済活動や機構の細部に立入って分析するのではなく,集団全体を,
外部(環境システム)とのマク・な相互作用によって規制を受けつつ
確率的に行動する一つの自然的存在と見なしたとき,どのような行動
法則が見出せるかというのがここでの問題である.しかし自然的存在
といってもこれを構成する人間の本然的な欲求や集団としての規範を
無視するわけではなく,これらは個人の効用と集団の厚生という形で
モデルに取り入れることになる.また外部とは外国とか他府県とかの
ように物理的,地理的な外部や,政策を実施される側に対する実施す
る側のように組織的な外部の他に,もっと抽象的に人間集団としての
経済社会をこれまで動かしてきたr見えざる手」もこれと考えよう.
(i)モデル
ーつの都市なり国なりの一定領域に住む住民の所得を,いくつかの
所得階層に分け,各階層に属する人数の分布を問題とするのであるが,
これを一人の平均的な住民が,ある階層に属する確率を求めるという
形で考えることにする.すなわち,はじめは個人をシステム◎とし,
個人の集団を◎として議論を進め,後で平均的なGに引き直してゆ
44 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
くということである.
さてモデルをつくる上で次のような前提を置くことにする.
〔前提〕 (1) 各個人は◎の全所得の分配に参加するが,その分配
量は必ずしも一定しておらず,確率的要素を持っている.
(2) ◎全体の厚生関数が存在し,これは各個人の所得の効用の和
となっている・しかも後では効用関数は所得の対数関数と仮定するが,
これはBemoulli J,の効用関数で,すでに古くDaltonによって導
入されたものである(文献1,P、26)
(3)(1),(2)のもとでシステム◎は最も確からしい状態,最尤
状態をとる,
この前提のもとで定式化を行うと次のようになる.〃漁=1,2,……
Z)を所得階層乞の所得水準として,ある平均的な個人◎が階層づに
属する確率をπ5とすると
maxθ=一Σπ‘lo9π‘ (4.1)
笛
subject to
Σπ乞=1 (4.2)
‘
Σπ瑠F9 (4。3)
乞
Σπ乞%(の=脳 (4.4)
‘
π名>0
となる。ここで劉は一人当り平均所得,妖写乞)は個人の所得の効用関
数,%は一人当りの平均厚生である.ここで写,%は必ずしも定数で
はなくパラメーターであることはm.の一般論で述ぺた通りである.
(例が9で卿が%である.)
Lagrange関数を
L=一Σπflo9π¢一β・(Σπr1)一β、(Σπ融一9)
ε ‘ ‘
一β2(Σπ‘%(穿‘)一%)
‘
とすると,
統計的システム論1 45
∂L
襯=一lo9π…一β・一触一β2吻‘)=O
pf=exp{一(1十βo)}exp{一β瑠乞一β2%(“乞)1. (4。5)
従って分配関数を
Z=exp(1+β。)=Σexp{一β磁一β2%(〃‘)1(4・6)
‘
とおくと,
1
P‘=一exp{一βエ写‘一β2吻¢)} (4・7)
z
となり,前節(3.11)と同様に
∂109Z
蘂二郵鼎}色・
が得られる.
さて計算を更に進めるために効用関数娠卸)と,所得階層の水準駒
の密度に次の仮定をおく.
〔仮定〕 (1)効用関数はBemou11i型%(冒)=IogΨとする。(烈ogΨ
としても結果は同じである.)(2)g‘の密度は連続的で一定であると
する.
これらの仮定のもとで分配関数(4。6)は
Z=Σexp(一β1写‘)写∫一β2 (4.9)
乞
となり,水準駒の密度関数をω(ッ)=0とすると,
Z一∫。。exp(一β1Ψ)画 (生・・)
となる.(次節の(iii)の注意1参照)ここでβ1〃=オと変数変換すると
z一∬即(一・)(孟)㌔(羨)
一・朗∫。。〆湘一・陪顎一β2)(生・・)
となる, さらに1一β2=αとおくと,
46
一橋大学研究年報 自然科学研究 17
z一綱α)(r(α)一∫、繍)
logZ瓢一αlogβ・+10gr(α)+10g・.
(4.12)
また(4,8)より
∂109Z α
一∂β1=瓦=”
∂109Z ∂IOg Z
一∂β2=∂α=司09β・+ψ(α)=錫
(4,13)
(4.14)
ここに
d
ψ(α)=あ10g「(α)
である。
次にエント・ピー3は(3.10)を用いると,定数項を除いて
3=β・穿+β2%+109Z
=1・馳+α一1・9α一(α一1)ψ(α)+logr(α)(4。15)
となり, また(4.12)およぴ(4.13),(4,14)より
u=1・融+ψ(α)一10gα (4.16)
となる・ここで3−logッ=σ(α),%一log写コτ(α)とおくことにする.
(h)Salem=Mount論文との比較
最近SalemとMountは1960∼1969年のアメリカ合…衆国の家計
所得分布のデータから,つぎのガンマ分布が,従来の対数正規分布よ
りよい適合度を示すことを実証した(3).
λα
乃(Xl嬬=T(α)「一18一λx (生・7)
ここでXは所得,α,λ(ただしえは同じ記号であるが一般論で用いた
外生パラメーターではない)はパラメーターである.彼等はα,えの
推定値を最尤法によって求めるため,ル個の無作為抽出のサンプル
X1,X2,……,XNに対して対数尤度関数
1 1
109L=[α!09λ一logr(α)]+(α一1)一Σ109X名一え一ΣX‘
N ハr
統計的システム論1 47
(4.18)
を設定し,Σx‘μ▽=瓦Σlogx6μv=109才として,
∂109L _ ^ _
=αμ一x=o:え=d/x (4.19)
∂え
∂109L ∼ ^ _
=1・gえ一ψ(α)+1・gX=0:109λ一ψ(凌)=一logX
∂α
とした. これ。らより
1・gα一ψ(α)=1・g■一109才=1・g(■/才)(4.20)
を導き,αの最尤推定値凌を求め,(4.19)からλを得た.更に彼
等はこれらの推定値によるガンマ分布の適合度検定を行い,これが対
数正規分布より優れていることを示している.
さてわれわれは前項において,ある個人が所得階層舘に属する確
率P‘は(4.7)より
1
Pε=万exp{一β・写‘一β漁)1
であることを示した.そこで効用関数妖影‘)=10g擁とし,9階層駒が
密度o(一定)の連続分布をするとして(4.10)を用いると,
β、α
幽傷旦)=爾ず一1沸 (4・21)
となり,β、をえ(すでにα=1一β2と置いてある),写をXと置けば
(4.17)と全く一致することになる.従ってわれ’われの統計的システ
ム論の観点からもガンマ分布が得られたことになる.以下では推定値
λ,凌をβ1,αと置いて計算を進めて行くことにする,
(岱) 計算と図示
表1にはSalem=Mountによる原データと推定値およぴわれわれ
の導出した式による計算値が示してある.図2は(4.16)のτ(α)=%
一log写,図3は(4・15)のσ(α)=8−logΨのグラフである.また図
4には所得分布の不平等度を表わす尺度として最近よく用いられる
Theilのエントロピー正r
恥Qo
年
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1,969
(=ぴ=ψ2)
6354.5
*
(=e』♂2)
4888.0
0gX
一
=∬=¢2)
8.4945
λ(軍βユ)*
*
β2(=1一α)
2.06
一ユ,06
10‘
3.2418
ogXIX
*
一 一
(嵩1一β2)
=μ一1・9ン)
ε一lo9び
7
一〇.2624
0.8754
0.2231
0.2364
6578.0
4976.5
8.5125
2.9492
1.94
一〇。94
一〇.2790
0.8928
6823.0
5390.5
8.5924
3.3270
2.27
一1。27
一〇.2357
0.8454
0.2048
7106.5
5478.0
8.6085
2.9128
2.07
一1.07
一〇.2603
0.8740
q.2228
7439.0
5856.5
8.6753
3.0112
2.24
一1.24
一〇.2392
0.849ブ
0.2072
0.2093
7828.0
6138.0
8.7223
2.8232
2.21
一1。21
一〇.2432
0.8539
8424.5
6809.0
8.8260
2.9794
2.51
一1.51
一〇.2129
0.8123
0.1856
0.1910
8973.5
7210.0
8.8832
2.7191
2.44
一,1.44
一〇,2188
σ.8218
9598.5
7746.0
8.9549
2.5837
2.48
一1.48
一〇。2144
0.8164
0.1888
一1.43
一〇.2201
0.8232
0.1922
10360.5
8320.0
9.0264
2.3454
2.43
(*印はSahm=Mountの論文より転載)
ー繭汁蝉毫謁岳鑑 皿麹摯蝉虫塒 旨
表1
*
統計的システム論1
図2
0.0
τ(α)=詞09鮮
一〇.5
r1.0
一1,5
0。0
1.0 2.0 3.0
4.0
5
α
図3
1.0
σ(α)串s−1・9忽
0。5
1.0 2.0
4,0
α
5,0
0.0
3。0
0。0
.0
一2.0
49
50
一橋大学研究年報 自然科学研究 17
図4
1。0
η
0。5
∼
0・0 エ・0 210 3・0 4・0 5・0
α
図5
ユ.0
8−lo9穿
0.5
一2.0 −1.5 −1.0 −0.5
鶉一109写
0.0
統計的システム論1
図6
1.4
ε
1.3
!‘=一〇,1
1.2
驚、=0.
1.1
箆=0.1▼
00
1
15
0.20
0.25
109写
0.30
0.35
図7
1.0
3
log暫=0.04
】ogv=0.
0.9
109マ==一〇.04
0、8
一〇.4
一〇.3
μ
一〇.2
51
52 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
図8
一1.0
鉱
一1.1
ε=:一〇.1’
8
一一
0
一1.2
ε冨0.1
一1.25
一1,0
一〇.9
一〇.8
109び
寿一∫。。[歯]1・9[論]弄(㈱d¢
1
=一+ψ(α)一10gα (4.22)
α
E(詔)=のの期待値=α/λ
が図示してある.なお図中の矢印はSalem=Mountの論文の計算値
の範囲を示している.平均厚生脳,不平等度1、はいずれもαの単調
関数であるが,エント・ピー8はα=1で最大値をとることは注目す
ぺきである.図6∼8はε,%,logΨの三つのマク・状態関数の間の関
係を,一つをパラメーターとしてグラフに図示してある.これらは大
体Salem=Momtの計算値の範囲だけを示している.広範囲にとっ
たとき5とbg写,%と10g写のグラフは単調であるが,8と%のグラ
フは%のもっと小さい方向で3は最大となり再び減少するグラフとな
る,このことの意味は次項で詳細に説明する.
〔注意1〕(4・9)より(4.10)の連続表示に移るとき,積分の下限
(最低所得階層の所得)を0とした.これはまったく数学的な計算上
統計的システム論1 53
の便宜のためであって実際にはある正定数に置かなければならない・
このためいくつかの不都合なことが起る.
(1) エントロピーは定義式(2.11)からわかるように元来有限で
ある.(lim一π‘10gπ‘=O.)しかし(4.15)の8−log写=σ(α)はα→
む リナ
0で一〇〇となる.従ってグラフはαが0の近辺では正しくない.
(2) またα>0という制約も(4,10)下限を0としたための数学
的な制約であり,現実にはα〈0の揚合も知り得る.高橋長太郎教授
の著書(文献(1),p.39)によれば,「パレートは所得分布に関する経
験法則として
五
瑞=(鉛+α)避(碩媚定数)(4・23)
という法則が成り立つとした.これを1890年の01denbourg公領地に
ついて適用した結果,log且=8,72204,α=1。465,α=220,β=0.0000274
という数値を得た.βの値は極めて小さく,殆んど無視できるとして
近似式
且 五
ハ「¢= または ヱVガ==π (4.24)
(の+α)“ z
を用いてさしつかえないとしたのである.(故杉本栄一教授蔵書,V.Pa−
reto,Lacourbedelarepartitiondelarichesse,1896)」とある.(4.23〉
はまさにガンマ分布であるが,ここでの“α”をこれまで用いてきた
ガンマ分布のパラメータαないしβ2に直せば
β2=L465, α=1一β2=一〇・465<0
となってしまう.したがってパレート分布まで含めることができるよ
うにするには,積分の下限を0としてはいけないことになる・
〔注意2〕 8に含まれる定数項と,影の単位に附随して入ってくる定
数項とを省略したから,%,3,Io9Ψを含むグラフや計算値においては,
意味のあるのはその値ではなく,相対的な差であることは注意を要す
る.
54 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
,(iv)検 討
(1) 長期的な年次変化 表1によると長期的には■(=写),10g才
(=%)およびα(=1一β2)は増加し,え(=β1)は減少傾向になってい
る・まず写,財はそれぞれ一人当りの所得,厚生(平均効用)である
から,1960∼1969の10年間にいずれも増加したことを示すし,また
(4・16)より%一10g雪はαの増加関数になっているから平均所得で
テフレートした効用も年次的には増加傾向にをったことを示す.図4
はTheilのエントロピー(文献(6))であるが,これも減少しており
均等化が進んでいることがわかる,
(4。15) より,3−10gΨ=σ(α) とおくと,
dσ 1
あ=1一’π一(α一1)ψ(α)一ψ+ψ
であるから,α=1でσ(α)は最大値をとる.表1でα>1あるから
3−109gは減少しておりこれも所得の均等化が進行しているためであ
る考えられる.
(2)s,%,雪の関係 α>1ではΨを一定したとき3と%が互いに
逆方向になることは次のようにして説明できる.いま一定の所得を多
数の個人に分配するとき,個人の効用関数が凹関数ならば少人数の人
に多くを分配するよりもできるだけ平均して分けられた方が集団全体
としての厚生は大きくなる筈である,他方エント・ピーについて考え
ると,一定の所得が平均化して分配されているという状態はあまり
r確からしい」とは言えない.すなわちα>1のときは所得の均等化
はいわゆる自然の進む方向とは逆方向なのである.これは厚生増大の
ためには自然の方向に逆って進める政策が必要となるということを意
味する,数学的にはα>1すなわちβ2<0であるということは%の
増加がsの減少を引き起すことを表わしている.ただし上記のことは
1960∼1969のアメリカ合衆国についていえることであって,0<α<1
すなわちO<β2<1のようなときには事情は逆になる。これはαの小
のときすなわち厚生%が小さい国があったとすれば,%の増加する方
向が自然の進む方向であって,このことは比較的高額所得者に所得が
統計的システム論1 55
集中しているような集団はエント・ピーの低い状態にあり,もっと高
い状態への移行は自然の方向でもあることを意味する,たとえば前述
の〔注意1〕で述べたパレート分布の原型(4,23)では,われわれの
記号でα=一〇。465であるから,エント・ピーの一番大きくなるα=
1より小さく,図3では山の左の方の状態である.従って19世紀後
.半頃の貴族の領地においては,エント・ピーはかなり低い状態にあっ
たのではないかとも推測される.
かくしてα=1(β2=0)のとき,すなわち分布関数が指数分布のと
きが一番エントロピーの高い自然な状態(肝一定のもとで)である
ということができ,これからどちらの方向に進めるのも.(とくに厚生
を高める方向には)何等かの政策が必要であるということになる.
Salem=Mount論文によると,同じ1960∼1969年の無作為抽出家
計データにジブラ分布を当てはめた揚合,ガンマ分布より分布のske−
wnessが大きくなり,山が少し左にずれることがわかる。そこでわれ
われの計算方式で古い時代のデータ,あるいは先進国,途上国の所得
分布を計算し直してみるのも興味深いと思われる.
(3) その他の符号条件の説明
β2の符号の意味については前項で述べたが,β1は(4.13)よりβ1
=α忽〉oとなる・これによって平均所得Ψを増加するとsも増加し,
自然の方向としてもより好ましい変化であることを示す。
統計的システム論の一般論の帰結として定理5が導かれたが,これ’
がSalem;Mountの計算値にどのように表われているかを最後に示
そう・表1にはX(=写=91),109才(=u=卯2),λ(=β1),1一α(=β2)の
値が示されている.定理5によると,
∂卯1 ∂92
一<02 一<0
∂β・ ∂β2
が成り立つので,表1のデータに線形回帰式を当てはめた結果は次の
ようになる,ただし,β1の単位は10−4としてある.
X(一r9エ)一12035・3−2952.89・βr351尋,42・β2
(815.59)(196。77) (289,58)
56 一橋大学研究年報 自然科学研究 17
偏相関係数
一〇.9848
一〇.9771
短2=0,9878
1・9£(=92)=9.00892−0,347194・β・一〇572196・β2
(0.05310)(0.012810) (0.018852)
偏相関係数 一〇.9953 −0,9962
となる。これからも∂g1/∂β1<o,∂g2/∂β2<oが導かれ’ることがわかる.
しかしこのことはSalem=Mountのガンマ分布とわれわれのモデル
の理論的分布関数が完全に一致することからの当然の帰結と言えるだ
ろう.なおβ正とβ2の相関係数は0,4935でありあまり相関はない
と考えてよい.
結語
以上でわれわれの統計的システム論の一般論の展開とその応用とし
ての所得分布曲線の導出を行ってきたが,とくにこれまで発表したも
のとの相違,改良点としては,(1)システム論の中心的な役割を果す
エントロピーという概念を,従来から物理学でやるようにボルツマン
の関係式10g rと当初から天下り的に置くのではなく(勿論物理学
ではこれが正しかったのであるが),確率的に「最も確からしい」状
態を記述する数学的定式化に附随して導入したという点である・これ
はrエント・ピーのようなものを何故もってくるか」という疑問に対
する一つの答えとなると思う,勿論これの持つシステム論的な(また
は経済的な)意味の解明については今後の課題であると思われる・改
良点の(2)は現実のデータによって理論式を確かめることができた
ということで,これはSalem,Mount両氏の論文に負う所が大きい。
しかしわれわれの理論はあくまで仮設であり,この仮設の当否を示す
ためには更に多くのデータで確めねばならない,
今後の課題としては(1)年代別,国別,組織別にデータを調ぺる
こと,(2)理論的には多種類のシステムの混合集団,相互作用の強い
システムの集団等への拡張およびそれらの動学化である・
統計的システム論1
57
最後に,本論文の計算には本学電子計算機FACOM230−25を使用
したが,いろいろ便宜をいただいた産業経営研究所の方々に謝意を呈
する.
参考文献
(1) 高橋長太郎,「所得分布の変動様式」岩波書店,1955.
(2)片岡信二,r不確実性と最適化(統計的システム論への一試論)」,
経済研究(一橋大学経済研究所編),第24巻,第4号,pp.307−313,
1973.
(3) A。B。Z,Salem,T,D。Mount,“A Convenient Descriptive
MQdel of Income Distribution二The Gamma Density”,Eoo%01ηβ一
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(5) A.1.Khinchin,Mα疏θ翅α痂αJ Fo麗犯磁≠歪o%σ5弼ゴ5漉α」ハfθ一
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(昭和52年3月2日 受理)