12キーワードの2014年回顧は期待外れの我慢の年

リサーチ TODAY
2014 年 12 月 25 日
12キーワードの2014年回顧は期待外れの我慢の年
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
2014年を総括する観点から、TODAYで示した各月の12のキーワードをレビューしたい。
■図表:2014年のみずほ総合研究所『リサーチTODAY』を中心とした12のキーワード
キーワード
1月
ECBの日本化
2月
「異次元」の追加緩和
3月
達磨さんが転んだ
4月
欧州の日本化
5月
ゴルディロックス
6月
長期停滞論と日本化
7月
ユーロ債も投資家の主食
8月
期待外れと我慢の期間
9月
「追加緩和、補正、逆所得政
策」の3点セット
10 月
ロシア経済三重苦(制裁・通
貨安・原油安)
11 月
トリプルメリット
12 月
1985 年逆オイルショックの再
来
内 容
ECBが金融緩和に追い込まれる状況は日本と類似した日本化現象。「ECB
の緩和メニューはなにか、ECBの日本化か」(『リサーチ TODAY』2014 年 1 月
27 日)
黒田日銀総裁が行いうる追加緩和には従来とは発想を変えた「異次元」の発
想が必要。「日銀の追加緩和には『異次元』の発想も」(『リサーチ TODAY』
2014 年 2 月 27 日)
為替の潮流は米国が決めるが、今年もその考えではドル高が続く。「やはり為
替は『達磨さんが転んだ』、円安継続なるか」(『リサーチ TODAY』2014 年 3 月
4 日)
欧州出張で受けた印象は欧州における日本化不安が高まっていること。「欧
州出張メモ2、欧州にそこはかとなく漂う日本化不安」(『リサーチ TODAY』
2014 年 4 月 10 日)
2014 年の成長が期待外れのなか、グレート・ローテーションの期待が低下し、
ゴルディロックスの継続を意識。「5月の四半期見通し、まだゴルディロックスが
続くか」(『リサーチ TODAY』2014 年 5 月 19 日)
米国の長期停滞論もバランスシート調整の後遺症としての日本化と類似した
様相。「米国の『長期停滞論』と『日本化』」(『リサーチ TODAY』2014 年 6 月
18 日)
日本の投資家の運用として欧州の周辺国も含めた関心が高まる「ユーロ債も
投資家の主食だ、パスタかパエリアか」(『リサーチ TODAY』2014 年 7 月 31
日)
今年の成長は期待外れで、回復までの我慢の期間が続くと展望「見通し改
訂、年前半は期待外れ、我慢の期間が続く」(『リサーチ TODAY』2014 年 8 月
18 日)
必要な政策として、日銀の追加緩和、補正予算、賃上げのための逆所得政
策を主張。「『追加緩和、補正、逆所得政策』の3点セットを」(『リサーチ
TODAY』2014 年 9 月 16 日)
今年最大の注目点の一つはロシア経済、苦境をもたらす三重苦の状況「三重
苦(制裁・通貨安・原油安)でロシア経済悪化に」(『リサーチ TODAY』2014 年
10 月 21 日)。
日本経済を支える、①金融緩和、②財政拡大、③円安・原油安のトリプルメリ
ットを指摘「足元下振れだが、来年は『トリプルメリット』で飛躍も」(『リサーチ
TODAY』2014 年 11 月 19 日)
今次原油価格下落は 1985 年の逆オイルショックの環境に類似。「原油価格
下落、逆オイルショックは 1985 年の再来」(『リサーチ TODAY』2014 年 12 月
17 日)
(資料)みずほ総合研究所
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リサーチTODAY
2014 年 12 月 25 日
下記は、2013年の12のキーワードである。
1月:今年は円安への「達磨さんが転んだ」、2月:脱「失われた3年」、3月:脱「失われた20年」、4月:グ
レート・ローテーションVSゴルディロックス、5月:株・不動産、資産価格上昇、6月:growth strategy VS
structural reform、7月:ペギング(釘付け)、8月:消費税、97年のトラウマ、9月:東京五輪はタイミング絶妙、
10月:米国国債デフォルト論、国債暴落論、11月:世界的ディスインフレ、12月:「100年に一度の危機」がな
い2013年。
2013年のキーワードは、世界経済にはバランスシート調整の後遺症を残す世界的ディスインフレやゴル
ディロックスの状態が残っているものの、毎月のキーワードから示されるストーリーラインは局面転換にある
ことを印象付けるものだった。2012年まで、我々のストーリーラインは一貫して、欧米のバランスシート調整
が続くなかで生じた長期停滞、「日本化現象」が続いているとの認識にあった。2013年には期待を込めつ
つも新たな局面到来との認識を示し、2014年も当初はそうした意識で臨んだ。今年1年間を振り返れば、結
局、前ページの一覧表にまとめたように、2013年に示したものと殆ど変らず、転換期待は足踏み、期待外れ
の1年だった。その結果、毎月のキーワードには、世界的なバランスシート調整のなかで筆者が長年ストー
リーラインとしてきた「日本化現象」が復活し、その現象が特に欧州に波及し、米国にも当てはまるとのイン
プリケーションにつながった。
2014年を反省を込めて振り返ると、2013年以降の大きな転換への流れに期待を込めたものの、現実に
はその転換は極めて緩やかであり、時には後退も生じる流れであった。これに地政学的不安が加わり不確
実性が高まった(もやもや感)。その結果、経済への見方が時として楽観的なバイアスを抱えやすかった。
現実に足元では従来の寒さが戻ったかのように、バランスシート調整の後遺症が残った「日本化現象」が繰
り返された。世界的なバランスシート調整から脱するには時間を要する、我慢が必要かが改めて分かった。
それは、今回の日米欧のバランスシート調整が大恐慌以来の、戦後最も深刻なものだったからである。
深刻な後遺症が残る中での金融政策は「異次元」なものとなることが、結局2014年10月の追加緩和で示
された。日銀による異次元の金融緩和が行われるなかで、国債市場は長期金利も含めた管理相場の色彩
を強める新たな局面に入ったとの認識が、昨年来の「ゴルディロックス」等のキーワードにつながった。日銀
の影響が、従来の政策金利、短期金利に止まらず、長期ゾーンにまで及ぶという、さながら米国の1940年
代の歴史に類似した「ペギング(釘付け)」が出現するまでに至った。市場には過去の延長線上とは異なる
認識が必要だとのメッセージも昨年以来の継続である。
今年1年間が期待外れであったが、再びバランスシート調整が続く冬の状態に時代が逆戻りしたと考え
るのも早計だろう。今年は改めてバランスシート調整の長期化の重さ(日本化)を再認識したものの、筆者が
重視したメッセージは来年に向けた「トリプルメリット」として改善の兆しも生じたことである。2014年を総括す
れば、緩やかながらも大きな潮流は回復に向いたものの、その出口へのプロセスは従来とは異なる「ニュー
ノーマル」という次元よりも、「ニューアブノーマル」とされるほどの誰もが体験したことのない「異次元」なもの
とみるべきというのが今年の反省も込めた筆者の認識だ。
本年もご愛読ありがとうございました。次回は 1 月 7 日(水)の発行を予定しております。
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