ファンクラブ通信 NO.59 2014.12.25 野蒜築港ファンクラブ発行 大津波に被災した鳴瀬地区の沿岸部には、この年のこの暮れに不可思議な選挙カーの音も聞こえ ませんでした。土石を運ぶ大型トラックだけがひっきりなしに行き交っています。ここは「特別名 勝松島」の範囲内にあるため、景観上高台造成地は低地からは見えないような工夫がされています。 樹木に遮られ大掛かりな進捗をうかがうことはできませんが、陸前大塚から内陸部にカーブして高 台に向かう仙石線の線路橋脚はきれいに立ちあがりました。12 月 15 日(月)付の河北新報は、内 陸側にルート変更される陸前大塚‐陸前小野駅間 6.4km に線路が敷設され、14 日にレール締結式が 行われたことを告げています。仙石線は予定より早く来年6月には開通とのこと、その日を待ち望 んでいます。 その1 昨年4月のファンクラブ総会時の講演会「野蒜築港 跡・宮城の運河群再生に向けて」を始め、今年3月 29 日の東松島市郷土史友の会講演会「野蒜築 港跡の復興と地域づくり~北上・東名運河の歴史と被災状況、そしてこれから~」、7月 31 日の「運 河の水辺環境創生とまちづくり~運河でつなぐ防災意識~」と、FC 会員である東北大学の後藤光亀 氏には、野蒜築港の大切な遺産である運河について、様々な視点で地元での講演を行っていただき ました。住民の間にも東名運河への関心が高まって復旧計画への要望等が語られるようになり、今 回、郷土史友の会や東名運河を考える会、地元有志が集まって「東名運河の再生・復興を促進する 会」を結成しました。当座の代表は松川です。 「東名運河の復旧にあたり、文化遺産としての景観 (石積護岸、松並木、親水階段、他)を尊重・維持することで復興まちづくりに寄与する」を目的 とし、活動骨子は、東名運河の現状確認、復旧復興方法の意見集約、市・県との意見交換、運河の 利活用(運河クルーズ、ハゼ釣り大会、運河勉強会、運河まつりなどを考えています)としました。 10 月 17 日 第一回の活動として東名運河の現状(現地)を確認し、復旧復興方法に関する意 見集約を行いました。その後、市や県に対する要望書を作成しました。 10 月 30 日 東名運河再生・復興に係る第一回意見交換会に出席しました。検討会のメンバー は、行政区長、まちづくり協議会、郷土史友の会、野蒜築港 FC(松川) 、その他、東松島市(復興 政策課・復興都市計画課・生涯学習課・建設課・下水道課)、宮城県河川課、東部土木事務所で、 その場で「東名運河の再生・復興を促進する会」の発足を伝えました。 -1- その2 現在、国交省は被災した「野蒜水門」の改築工事 を行っています。水門の構造は、①既設水門を生かして背面に新たな水門を設置する②堤防高の嵩 上げ(5.76m→7.2m) ③門扉を再利用し不足分は継ぎ足すとなっています。既存の水門を嵩上 げし、東名運河側(新不動橋方向)に約 30m拡幅することになります。 この改築に伴って、埋蔵文化財の包蔵地である東名運河の文化財調査を市教委が実施したところ、 運河左岸(海側)護岸から写真のような興味深い柵(しがらみ)が発掘されました。護岸の稲井石 を外し、土砂を取り除いたところで見つかったそうです。太さが 1~3cmほどの枝を縦方向に斜め に並べ、それらを抑えるように横方向にも枝を置き所々に杭が打ち込まれています。粘土質の土で 覆われていたそうです。検出した際にガラス破片、ビニール片、ビニール紐片などが混入していた とのことで、市教委では設置年代を昭和であろうと判断しています。 ところで野蒜築港は明治政府の直轄工事です。財源として起業公債が使われましたので、政府 大蔵省は出資者に向けての説明責任として起業景況報告をしていました。野蒜築港に関しては 1999 年に発見された絵図や情報満載の「起業公債幷起業景況第3回報告」が有名ですが、明治 17 年の奥羽日日新聞には「起業基金及び事業景況第6回報告(大蔵省) 」が掲載されています。野蒜 関係は7月 29 日の附言から始まり、閘門、突堤、新鳴瀬川、浚渫等が8月2、4、5日と続きま す。東名運河分は5日で「柴工護岸を設け(下図赤線部)」の文言が見えます。この文言との整合 は考えられないでしょうか。護岸の石積みは何度か修復されていますので、ビニール片がそのとき に入り込んだ可能性はないでしょうか。これが明治期の柴工護岸だとすれば、地面下の強固な工事 なので、その後わざわざ撤去しただろうかと考えてみました。撮影日は 10 月 20 日で、後藤先生も 見てくださいましたが、29 日には日本大学(@郡山)の知野先生にも調査していただきました。こ の柵は詳細調査後に撤去されましたが、一部は切取り保存されています。新たな知見が寄せられる ことを期待しています。 (H26.10.20 撮影) (奥羽日日新聞 -2- M17.08.05 起業基金並びに事業景況報告)
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