ー ト - ResearchGate

June 1972
205
ー ト
ノ
ポ ー ラ ロ グ ラ フ型 酸 素 分 析 計 を 応 用 した
抗 酸 化 能 検 定 法 に お け る2,
(昭和46年12月24日
改良
受理)
小 沢 樹 夫*1
An
3の
中 村 好 志*1
Improved
Method
for Evaluation of Antioxidant
by Use of Polarographic Oxygen
Analyzer
Tatsuo
OZAWA*1,
Yoshiyuki
NAKAMURA*1
and Kumiko
平 賀 久 美 子*2
Activity
HIRAGA*2
(*1 Shizuoka College of Pharmacy: 2-2-1 Oshika Shizuoka-shi; *2 Fuji
Health Center: 217 Tsuda-Hasudaiba, Fuji-shi,Shizuoka-ken)
For
evaluation
measure
oxygen
of antioxidant
absorption
In the measurement,
of degree
reproducibility
to the
amounts
system,
a preparation
of antioxidative
ment,
linoleic
was
of oxygen
acid
activity,
following
activity,
raised
the
polarographic
trial by
procedure
namely,
and
absorbed
emulsion-ferrous
it was
noticed
that
was
et. al.1) and
test solution
were
improved.
peroxide
of lipid
values
ま え が き
and
By
an
to
K.2).
indication
this improve-
were
autoxidation
in
proportional
the
reaction
24, 1971)
消 費 とPOVが
油脂 の酸 化 の状 況,あ る い は抗 酸 化 剤 の効 力 を知 る た
II.
量,過 酸 化 物 価(POV),油
1.
脂 の 酸 化 生 成 物 の 量 を測 定 す
ほ ぼ 平 行 関 係 に あ る こ と を 認 め,自
実
験
試
薬
リ ノ ー ル 酸:(半
る.し か し,これ らの 定 量 に は 長 時 間 を要 した り,定量 に
凝 固 点-12.3°,酸
阻害 要 因が あ った り,操 作 の煩 雑 さな ど欠点 が多 く簡 便
ウ 素 価178.51.ク
な測 定法 の 出現 が 要 望 され て きた.酸 素 吸収 測 定 法 と し
除 く.Tween
てTappel1),八
(和 光 純 薬 製 品),1%溶
木2)ら は ポ ー ラ ロ グ ラ フ型 酸 素分 析 計 を
価197.74,
40:(小
液 に 用 時 調 製.抗
イオ ンを触 媒 と して 強制 酸 化 を行 な い 反応 溶 液 中 の溶 存
製 品),ジ
存 酸素 測 定 法 は 再 現 性 が や や 劣 る こ と,反 応 乳 液 を 測 定
のつ ど調 製 しな けれ ば な らな い点 で改 良 の余 地 が 多 い.
13.73meq/kg,ヨ
留 精 製 して 過 酸 化 物 を
原 化 学 製 品),硫
ル ヒ ド ロ キ シ ア ニ ソ ー ル(BHA,銀
素 を測 定 す る ワー ル ブル グ法 と異 な って い る.八 木 の 溶
井 化 学 製 品),95%,
POV
ロ ロ ホ ル ム:蒸
応 用 した方 法 を 考 案 した.こ の 方 法 は 油 脂乳 液 中 で金 属
酸 素量 を測 定 す る方 法 で あ って,反 応 系 外 の気 相 中 の酸
働酸
化 の 理 論 か ら の 推 定 を 裏 付 け た こ と に つ い て 報 告 す る.
め に,基 本 的 に は 自働 酸 化 の初 期 に吸 収 され る 酸 素 の
酸 第 一 鉄:特
級
酸 化 剤:ブ
チ
鱗1号)(和
光純 薬
ブ チ ル ヒ ド ロ キ シ トル エ ン(BHT),ノ
ドロ グ ア ヤ レ チ ン 酸(NDGA),没
ルジ ヒ
食 子 酸 プ ロ ピル(PG)
(以 上 東 京 化 成 製 品).
2.
乳液の調製法
〔乳 液 原 液 〕Marcoの
著 者 らは と くに乳 液 調製 法 を再 検 討 し,反 応 方 法 を 改
ル 酸7.5g,
良,再 現 性 を 高 め る こ とが で きた こ と,ま た 溶 存 酸 素 の
混 合 溶 解 し,ロ
*1 静 岡 薬 科 大 学:静 岡 市小 鹿2-2-1
*2 静 岡 県 富 士 保 健 所:富 士市 津 田 蓮 台場217
applied
Yagi,
sulfate-antioxidant.
(Received December
I.
index,
first stage
analyzer
A.L.
of emulsified
protective
at the
oxygen
Tappel,
Tween
方 法3)に よ り調 製 す る.リ
40
1.2g,ク
ー タ リー エ バ ポ レ ー タ ー で40° 以 下 で ク
ロ ロ ホ ル ム を 留 去 し た の ち 水20mlを
合 乳 化 す る.さ
ノー
ロ ロ ホ ル ム50mlを
加 え,激
ら に 水 を 加 え て 全 量 を50mlと
し く混
す る.
206
食 衛 誌.
Vol.
13,
No.
3
冷 所 に お き,そ の 日の うち に 使 用 す る.
〔
試 験 乳 液〕 乳 液 原 液2mlを
で希 釈 して用 い る.
3.
溶 存酸 素 測 定 法
容 器(直 径40mm高
10mlを
試 験 乳 液48mlを
さ70mm)に
ノ ール 溶 液1mlを
777型)の
用 時 空 気 飽 和 水46ml
か っ色反 応
と り,抗 酸化 剤 のエ タ
加 え た の ち,酸 素 分 析 計(Beckman
セ ンサ ーを 挿 入 セ ッ トし,流 動 パ ラ フ ィン約
層 積,閉 鎖系 と して攪 拌 子 で 攪拌 し,酸 化 促 進
剤 と して硫 酸 第 一 鉄 溶 液1mlを
素量 を100と
立QPD
して,溶
54型)に
加 え て,最 初 の 溶存 酸
存 酸 素 の 変 化 を レ コー ダ ー(日
記録 す る.反 応 は25° で 行 な う.対 照
Fig.
1 .Stability
試 験 は 抗 酸 化 剤 エ タ ノール溶 液 の代 りに エ タ ノール1ml
storage
を加 え てお こな う.
bottle
4.
POVの
測 定法
was
oxygen
山 田 らの 方法4)を 応 用 してお
こな う.す なわ ち,溶 存酸 素 の測 定 を 終 った乳 液 の全 量
を分 液 ロー トに移 し,ク ロ ロホ ル ム30mlを
of
加 え て30
stock
Stock
emulsion
emulsion
stored
dissolved
analyzer
and
chlorine
free
at
was
during
in
the
25℃.
Amount
measured
expressed
as
the
shading
by
ppm
of
oxygen
on
the
water.
秒 間 振 と う,5分 間 静置,ク ロロホ ル ム層 を と り,無 水硫
酸 ナ トリウ ム1gで 脱 水 乾燥,そ の10ml(計
の リノー ル酸 含 有)を と り,た だ ち にPOVを
算 量,0.1g
測 定 す る.
る.酸 素量 は 調製 直 後 を 除 け ば,平 均7.85ppmで
は ±2%以
内に 納 ま って い る.ま たPOVは4時
変動
間 で1.8
別 に ク ロ ロホ ル ム抽 出 に際 して 油 脂 の 回収 実 験 を お こな
meq/kgの
い,定 量値 の補 正 をす る.回 収 率 は94.7%で
に比 べ 無 視 で きる.な お7, 24時 間 後 のPOVは18.07,
あ った.
III. 実 験 結 果 お よ び考 察
1.
上 昇 をみ て い るが,最
23.99meq/kgで
試 験 乳 液 調製 法 の 検 討
八 木1)は 試 験 のつ ど乳
あ った .い
初 の 値12.8meq/kg
ず れ の値 の 変 動 も 著 者 ら
が 八木 の 調製 法 を用 い た 場 合(溶 存 酸 素 平均8.13ppm変
液 を ミキ サ ーで 調製 して い るが,は ん 雑 で かつ 試 験 結 果
動 幅 ±10%,
の再 現 性 の向上 に不 都 合 と考 え られ るの で 著者 らは 乳 液
るか に小 さ く,乳 液 調製 法 と して 推奨 で きる 方 法 で あ
原 液 を調 製,貯 蔵 して お き,用 時 希 釈 して用 い る方 法 を
る.(リ
検 討 した.
a) 希 釈 水 の溶 存 酸 素量 の変 動
大 き いが,鉄 液 を 加 え て強 制 酸 化 させ る本 法 で は 問題 に
用 い る希 釈 水 は 一
POV平
ノー ル酸 のPOVは
2.
分 間 通 気 後,室 温 に 放置 し,そ の溶 存 酸 素 量 の経 時 的 変
開 放 系(流
動
一 定 の 溶存 酸 素 量,POVの
こ とは 再 現 性 を高 め る上 で,と
れ る.乳 液 原 液 をIIの3の
Table
1.
Variation
Water
乳 化 前 よ り 約13meq/kgと
動 パ ラ フ ィ ンを 積 層 しな い),閉 鎖 系(流
ず れ で も対 照 試験 で 八 木 の報告2)
変
乳液 を試 験 に 供 す る
くに 重要 な因 子 と考 え ら
測 定 温 度 と同 じ25° でか っ 色
容 器 中 に お き,そ の2mlず
方 法 で 溶存 酸 素 とPOVを
りは
反 応 の 開 放系,閉 鎖 系 の 検 討
動 パ ラ フ ィ ン積 層)い
(Table 1)
b) 乳 液 原 液 の 貯蔵 中 の溶 存 酸 素量 お よびPOVの
動 幅 ±30.9%)よ
な らな い と考 え,あ え て精 製 しな か った.)
定 の溶 存 酸素 量 であ る ことが 望 ま しい.脱 塩 蒸 留 水 に30
化 を測 定 し,ほ とん ど変 動 しな い こ とを確 認 した.
均13.6,変
つ を用 い て 経時 的 に前 述 の
測 定 した 結 果 がFig.
of Dissolved
Saturated
Oxygen
1で あ
in
with Air
Fig. 2.
Differences
between
of
opened
oxygen
and
consumption
intercepted
systems
○:
opened
vessel,
no
□:
opened
vessel,
BHA
■:
intercepted
vessel,
no
antioxidant;
●:
intercepted
vessel,
BHA
added.
Concentration
of
linoleic
of
acid.
BHA
antioxidant;
added;
is 1×10-2M
per
M
ポ ー ラ ロ グ ラ フ型 酸 素 分 析 計 を 応 用 した抗 酸 化 能 検 定 法 に お け る2
June 1972
と同現 象 が測 定 され るが(Fig.
2),BHA添
加では異な
BHT,
NDGA,
PGのPIをTable
2に 示 す.い ず れ
り開放 系 で5分 後 に早 く も酸 素 曲線 にや や 上 昇 が み ら
の 抗 酸 化 剤 に お い て もPI値
れ,閉 鎖 系 は開 放系 よ りか な り下 方 に あ り,開 放系 では
差S.D.は0.1以
系 外 よ り10∼20%程 度 の酸 素 の反 応 液 へ の溶 解 が あ る.
性 の 優 れ て い る こ とが わ か る.5分
した が っ て開 放 系 は不 適 当 と考 え,閉 鎖 系 を用 い るこ と
理 由は 後 述 す る.
と した.
3. 効 力表 示 法 と 再 現 性
4.
207
, 3の 改 良
の変 動 は わ ず か で,標 準 偏
下 で もあ る.こ れ に よ り,そ
間 後 にPIを
反 応 系 の溶 存 酸 素 量 とPOVの
の再 現
求めた
関係
溶 存 酸 素 量 の変 化 を抗 酸 化 剤 の 効力 判 定 に用 い るに あ
数量 的 取 り扱 いを 容 易 に す るた め,protective
index
た り,従 来 よ り用 い られ てい るPOVと
の 関 係 は未 検 討
(PI),す な わ ち 抗 酸 化 剤 添 加 時 の 溶 存 酸 素吸 収 量(%)
であ る.た だ 自働酸 化 の機 構 か らPOVと
酸 素 吸 収量(溶
で対 照 試 験 の溶 存酸 素 吸収 量(%)を
存 酸 素 量 の 減 少)と は平 行 す る と考 え られ て い る.そ こ
除 した値 を も って
示 す のが 便 利 と考 え られ る.以 上 の 検討 に よ り 改 良 し
で著 者 らは,こ の関 係 を検 討 してFig.
た溶存 酸 素 測 定 法 に
こよ り試 験 を 実 施,算 出 したBHA,
Table 2. Reproducibility of Antioxidant
を得 た.こ れ に よ りBHA無
Evaluations
3の よ うな結 果
添 加(対 照 試験)で は1分 以
内 に 急速 に酸 素 吸 収 が お こ る と共 に,POVは5分
後に
ピー クに達 し,BHA添
加 で は,酸 素 は 最 初約30%の 吸
収 が み られ るが,2分
以後 に は,ほ ぼ 吸収 は と ま り,POV
の 上 昇 もゆ るや か に な り,そ の ピ ー クは15分 以 後 に遅 れ
て 発 現す る.す な わ ち,BHAは
酸 素 吸 収 を阻 害,過 酸
化 物 の 生 成 を一 時 停 止 させ る と考 え られ る.こ れ に よ り
本 法 の 考案 の根 拠 とな って い る反 応 液 中 の溶存 酸 素量 と
POVは
比 例 関 係 に あ る とい う推 論 が 立 証 され た.
また,抗 酸 化 剤 の効 力 の比 較 値 で あ るPIは
量(溶 存 酸 素量 の減 少)とPOVが
Evaluation
of
absorption
Reaction
ion,
antioxidative
method
media:
with
Reaction
in
linoleic
or
effect:
the
intercepted
acid
without
え られ る限 界 の5分 後 の値 を用 い るの が適 当 と考 え る.
oxygen
system.
25℃.
Reaction
な おFig.
3でPOVがBHA添
加 が無 添 加 よ り 大 き
くな って い るのは 無 添 加 で は油 脂 の 分解 が 引 き続 い て お
こ り,過 酸 化物 の蓄 積 が 少 な い ため と考 え られ る.
emulsion-ferrous
antioxidant.
tenmperature;
酸 素吸 収
平行 関 係に あ る と考
period:
5min..
IV.
1.
要
約
ポ ー ラ ログ ラ フ型酸 素 分析 計 を応 用 した 抗 酸化 剤
の効 力 検 定 法 の実 施 に あ た り,好 ま し くな い2, 3の 点 を
改 良 した.a)
た.b)
乳 液 の調 製 法 に改 良を 加 え再 現 性 を 増 し
反 応 系 は 開 放系 よ り閉 鎖系 を用 い る方が 適 切 と
考 え る.
2.
反 応系 で溶 存 酸 素 量 の減 少(酸 素 吸収 量)とPOV
は 酸 化 の 初 期 に は平 行 す る こ とか ら,本 法が 抗 酸 化 力 の
検 定 法 と して 利用 で き る こ とを 明 らか に した.
3. 本 法 は金 属触 媒 で 強制 酸 化 させ る点,効 力 判定 に
は慎 重 を 要 し,本 法 に よ る"抗 酸 化 力"と は生 成 した パ
ー オ キ シ ラ ジ カル の捕 獲 能 力 と金 属 のキ レー ト能 力 を あ
わ せ て表 現 して い る こ とを 念頭 に お くべ きで あ ろ う.
終 りに臨 み,本 実 験 に協 力 され た小 野 田み ち よ,横 山
直 美,高 橋 由里 子 の各 位 に感 謝 す る.
Fig. 3.
Relation
between
and peroxide
○:
oxygen
dissolved,
□:
oxygen
dissolved,
●:
peroxide
■:
peroxide
value,
of
consumption
linoleic
of
no
antioxidant;
BHA
added;
BHA
献
Hamilton,
J.W.,
Chemists'
Soc.
2)
Yagi
3)
Marco,
K.:
Tappel,
34,
Agr.
142
Biol.
A.L:
J.
Am.
Oil
(1970).
Chem.
34,
142
(1970).
antioxidant;
BHA
acid.
文
1)
no
value,
Concentration
M
oxygen
value.
added.
is
1×10-2M
594
per
4)
G.J.:
J.
Am.
Oil
Chemists'
Soc.
45,
(1968).
尾 崎 直 臣,山
田 恵 子:栄
養 と 食 糧21,
89
(1968).