講演資料 - 東京都環境局

都のVOC対策と国の動向
東京都 環境局 環境改善部 化学物質対策課
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本日のセミナーのねらい
• 屋外工事からのVOC
⇒主に塗装工事からのものが多いが、
防水工事の資材にもVOCが含まれるため、
「低VOC防水工事」の考え方を普及
• H25発行の「東京都VOC対策ガイド」の
活用法(JASS改定による注意点を確認)
• さらなるVOC低減工法の事例を紹介
⇒発注・施工時に採用をご検討ください。
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VOCとは?
○揮発性有機化合物
Volatile Organic Compounds
○シンナーなどの有機溶剤や
ガソリンが揮発したものなど
○大気汚染の原因物質として
排出抑制が求められている
3
VOCと大気汚染
SPM
PM2.5
光化学
オキシダント
《健康影響》
・目や喉への刺激
・呼吸が苦しい
・めまい、頭痛
《植物への影響》
・収量減
・白化
工場・給油・
蒸発系固定
屋外塗装等
(63%)
自動車・
船舶等
ボイラー・
焼却炉等
光化学
オキシダント
一般家庭・
オフィス
自然由来
(植物等)
PM2.5
《健康影響》
・呼吸器への影響
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主なVOCと性質
分類
芳香族化合物
成分の例
沸点
性質
トルエン
111 溶解性大
キシレン
140
用途
塗料、インキ、接着剤等
飽和炭化水素
ヘキサン
69 無極性
接着剤、油脂の洗浄
アルコール
イソプロピルアル
コール(IPA)
82 極性
オフセット印刷の湿し水
インキ
ブタノール
ケトン
118
塗料
アセトン
57 溶解性大
マニキュア除光液
MEK
78
塗料、インキ
エステル
酢酸エチル
77
塗料、インキ
有機塩素系
化合物
ジクロロメタン
40 溶解性大
87 難燃性
金属洗浄
混合物
ミネラルスピリット
(ターペン)
ドライクリーニング
塗料
ガソリン
燃料
トリクロロエチレン
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建築・土木工事とVOC
有害
二次生成
利用者への配慮
周辺住民への配慮
環境への配慮
臭気
蒸発・放散
→環境中へ放出
内装工事
屋外工事
【シックハウス対策】
【VOC排出対策】
VOC
建築基準法による規制
大気汚染防止法による
自主的取組規定
有害
作業者の衛生管理
可燃性
危険物管理
産業廃棄物
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大気汚染防止法におけるVOC規制
ベストミックス
排出の規制と事業者が自主的に行うVOCの排出及び飛散
の抑制のための取組とを適切に組み合わせて、効果的な
VOCの排出及び飛散の抑制を図っていく制度 (大気汚染防止法第17条の3)
自主的取組
排出規制
(強制的・限定的)
一定規模以上の排出
施設に対し、VOCの排
出基準を設定
(大気汚染防止法第17条の4関連)
×
(自主的・広範囲)
すべての事業者の責務
としてVOCの排出抑制
に努めることが規定
(大気汚染防止法第17条の14関連)
7
大気汚染防止法におけるVOC規制
「製品の購入」についての努力義
務がうたわれているのは、大気汚
染防止法の中ではこの条文だけ
(国民の努力)
第十七条の十五
何人も、その日常生活に伴う揮発性有機
化合物の大気中への排出又は飛散を抑制
するように努めるとともに、製品の購入に当
たつて揮発性有機化合物の使用量の少な
い製品を選択すること等により揮発性有機
化合物の排出又は飛散の抑制を促進するよ
う努めなければならない。
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環境省VOC排出インベントリ(全国)
その他
16%
工事業
16%
平成12年度
1,403,379t/年
その他の製造業
35%
印刷・
同関連業
9%
金属製品・
機械器具製造業
24%
その他
22%
工事業
15%
平成24年度
736,612t/年
その他の製
造業
32%
印刷・
同関連業
9%
金属製品・機
械器具製造
業
25%
固定発生源からの排出量 全国で48%削減
環境省インベントリ(H24年度排出量)を元に作成
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環境省VOC排出インベントリ(全国)
• 工事業から発生するVOCの内訳
製造機器類洗浄用シンナー
土木工事業
建築工事業
塗膜剥離剤(リムーバー)
舗装工事業
アスファルト溶剤
接着剤
塗料
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
H24排出量(t)
環境省インベントリ(H24年度排出量)を元に作成
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都内における光化学オキシダントの
高濃度出現頻度の推移
(時間/局)
25
(日)
25
急激に増加
20
20
15
15
10
5
0
2008~2012
2005~2009
1999~2003
1996~2000
1993~1997
1990~1994
1987~1991
1984~1988
1981~1985
1978~1982
0
1975~1979
5
2002~2006
対策開始頃
から改善
10
折れ線グラフ(左軸):時間値0.12ppm以上となった一般局1局当たりの時間数
棒 グ ラ フ(右軸):光化学スモッグ注意報発令日数
いずれも5年移動平均
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環境省の取組
H24.10.17 中央環境審議会大気環境部会
揮発性有機化合物排出抑制専門委員会(第17回)資料
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H26.8.20 中央環境審議会大気・騒音振動部会
微小粒子状物質等専門委員会(第3回)資料
光化学オキシダントの環境改善効果を
適切に示すための指標(環境省H26.8)
現在の評価指標(環境省) ほぼ0%
年々変動が大きい
「環境基準の達成状況」
「光化学オキシダント注意報等発令状況」
「昼間の日最高1 時間濃度の年平均値の経年変化」
〔新指標〕光化学オキシダント濃度8時間値の日最高
値の年間99 パ-センタイル値の3年平均値
米国の環境基準の評価方法
に酷似
強化の
(参考)米国環境基準値
方針
日最高8時間平均値の
年間第4位値の3年平均 0.075ppm
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光化学オキシダント調査検討会
(環境省、平成26年度)の検討状況
• 昨年度までは、モニタリングデータの解析
にてOxの中長期的トレンドを把握
• 関東地域での高濃度Ox改善などを確認
⇒対策効果の定量的把握には至っていな
い
• H26からシミュレーションにて、これまでの
Ox濃度変動の要因の定量的な解析と、今
後の対策の方向性に向けた検討を実施
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H26.8.20 中央環境審議会大気・騒音振動部会
微小粒子状物質等専門委員会(第3回)資料
(抜粋および要約は発表者による)
PM2.5発生源情報の整備
二次生成粒子
PM2.5
VOC、SOx、NOx、
NH3、CO
一次粒子
PM2.5二次生成粒子の挙動解明
・VOCからのPM2.5生成に関する文献調査など
を実施中
・VOCからの粒子化は経路が何通りもあり、きわ
めて複雑。植物由来VOC、トルエン等芳香族の
ほか、アルカン類も粒子化するという知見あり。
15
経済産業省の動き
H26.4.11 産業構造審議会 産業技術環境分科会 産業環境対策小委員会(第2回) 資料4より抜粋
16
経済産業省の動き
H26.4.11 産業構造審議会 産業技術環境分科会 産業環境対策小委員会(第2回) 資料7より抜粋
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東京都のVOC対策
工場における自主的取組への技術支援
●印刷、塗装等のVOCを排出する
事業者に対する、対策技術の普及
排出事業者の取組を促進
低VOC製品の普及・啓発
●印刷・塗装・工事等を発注する事業者
等に対する、VOC排出の少ない仕様での
発注の普及
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VOC対策ガイド〔建築・土木工事編〕
• 平成25年6月発行。
• 屋外塗装については平成18年発行の
〔屋外塗装編〕の内容を
最新の仕様に更新。
• 新たに、建築工事で使用され
る防水施工、塗り床施工、建
築接着工法での低VOC仕様
について追加。
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〔建築・土木工事編〕の特徴
• 第Ⅰ部 屋外塗装編
従来の対策ガイド〔屋外塗装編〕の更新
• 建築塗装 掲載仕様の入替えあり
全ての塗料がJISあるいはJASS規格に対応
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成25
年版、およびJASS18塗装工事2013年版に対応
• 仕上塗材仕上げ 仕様の入替等なし
• 構造物
(独)土木研究所共同研究報告(H22)を中心に
仕様の見直し・更新
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• 第Ⅱ部 防水・塗床編 【新規】
• メンブレン防水
アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、
合成高分子ルーフィングシート防水、塗膜防水
の代表的な工法について低VOC仕様を紹介
公共建築工事標準仕様書平成25年版に対応
• シーリング工事
機能的に低VOC化が難しいことから、一般的な
施工上の注意事項などを紹介
• 合成樹脂塗床
公共工事で使用例の多い工法について低VOC
仕様を紹介
公共建築工事標準仕様書平成25年版に対応
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• 第Ⅲ部 建築接着工法編 【新規】
• 主に内装工事で使用される接着剤について、適
用箇所ごとに使用可能な接着剤の種類とVOC
量を掲載
→VOC量も考慮しての接着剤の比較検討が可
能に
• 参考資料
各資材ごとに技術的な解説などをまとめた
• 巻末付表
屋外塗装:本編に掲載した低VOC仕様と比較対
象の溶剤系仕様の詳細
メンブレン防水:本編掲載外の仕様も広く紹介
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塗料中のVOC成分と
光化学オキシダント生成能(MIR)
1.48
芳香族
アルコール
3.88
ケトン
0.63
0.83
エステル
ミネラルスピリッ
ト
メチルエチルケトン
2.88
塗料用ナフサ
ブタノール
0.61
酢酸ブチル
IPA
3.04
酢酸エチル
エチルベンゼン
7.76
メチルイソブチル
ケトン
キシレン
トルエン
4
6.81
~7.48
3.21
~4.88
塗料用石油
系混合溶剤
MIR(Maximum Incremental Reactivity):
VOC1gが都市大気の組成で光化学反応したときに生じる、
最大オゾン生成量g-O3 (数値はSAPRC-07より引用)
塗料用ナフサ、ミネラルスピリットの組成は都環境科学研究所調べ(2007)
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成分等に着目した対策
• 光化学オキシダント生成への寄与は、VOC成分
ごとに強さが違う
⇒重点的に削減するべきVOCを検討
(MIRが高い芳香族(混合溶剤中の芳香族も対
象)など)
• PM2.5生成への寄与は、まだ不明な点が多いが
、芳香族については生成への寄与が知られてい
る(その他のVOCも恐らく寄与あり)
【取組例】
第1段階⇒弱溶剤化(キシレンからミネラルスピリットへ)
第2段階⇒低溶剤化(溶剤含有量のさらなる削減)
第3段階⇒水性・無溶剤化
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