高速道路の冬季交通確保の取り組み 松村 貴博*1、相坂 祐樹*2 1.はじめに 盛岡事業所は、東北自動車道花巻 IC~安代 IC 間の 83.3km と、八戸自動車 道安代 JCT~浄法 寺 IC 間の 14.9km の合計 98.2km の雪氷対策作業を行っている(図 -1)。 写真-1 吹雪状況 管内は積雪寒冷地に位置し東北自動車道最高標高地点 図-1 管理区間 『標高 475m』の竜ヶ森地区の地点など、気象の変化が 管内の冬季の気象特性は、花巻 IC~滝沢 IC 間は、比 激しい。また事故や吹雪での通行止めが多く、東北支社 較的平坦な北上平野を通過する区間であり、冷え込みは 管内で有数の冬季の交通の確保が厳しい難所を抱えてい 厳しいが降雪量は比較的少なく、道路西方に平野部が多 る環境である。そこで、雪氷作業において、冬季交通確 く地吹雪が発生しやすい。紫波 SA 付近及び 518KP~滝 保にむけ、除雪作業(写真-2)及び凍結防止剤散布作 沢 IC 間は、平野部と比較して雪の降り始めが早い。滝 業にて「キメ細かな路面管理」を実施し、情報(カメ 沢 IC~松尾八幡平 IC 間は、「岩手おろし」「八幡平お ラ)空白域の八戸道等に情報収集設備を強化し、効果的 ろし」が強く、冷え込みは厳しく、一本木 BS 付近は管 な冬季交通確保へ取り組んだことについて報告する。 内で最も冷え込む地点であり、降雪量は松尾八幡平以北 と比較して少ない。岩手山 SA~松尾八幡平 IC 間は地吹 雪が発生しやすい。松尾八幡平 IC~安代 IC 間は、東北 自動車道で最も標高の高い『標高 475m』の竜ヶ森地区 を抱え、前森山や七時雨山に囲まれた狭隘な山間部を通 過する気象条件の最も厳しい区間で、冷え込みも厳しく、 前森山 PA 付近が気象・路面の変化点となっており、降 雪量も多く圧雪になりやすい。前森山 PA~安代 IC 間は、 「前森山おろし」により全線で吹雪・地吹雪が発生し視 程障害が発生する(写真-1)。安代 JCT~浄法寺 IC 間 は、浄法寺 IC に向かうにつれ、松尾八幡平 IC~安代 IC 間に比べ、降雪量は徐々に少なくなるものの、冷え 写真-2 除雪状況 込みの厳しい区間で柿ノ木平 OV 付近(571KP)が気 象・路面の変化点となっている。 2.盛岡管理事務所管内の雪氷作業状況 盛岡事業所の雪氷基地は、花巻 IC 盛岡南 IC 西根 IC 松尾八幡平 IC 安代 IC の 5 ヶ所で、除雪車 17 台、湿塩 散布車 5 台、ロータリー車 5 台、モーターグレーダー2 台、トラクタショベル 4 台、万能車 2 台を保有し約 100 人体制で雪氷作業を安全に行っている(写真-3)。 図-2 路面標高 *1 ㈱ネクスコ・メンテナンス東北 盛岡事業所 *2 ㈱ネクスコ・メンテナンス東北 青森事業所 写真-3 雪氷車両(出陣式) 図-5 月別最低気温 図-6 雪氷作業状況 過去の気象状況は(図-3)に示す状況である。25年 度の初雪は11月11日と平年並み、冬日日数は136日と平 年並み、降雪日数は115日と平均よりやや少ない状況で あった。降雪量(図-4)は806cmと過去5ヶ年平均より 多く、最低気温(図-5)は過去5年で最も低い-18.3℃ を記録した。雪氷作業状況(図-6)は、除雪回数は 1,034回、散布回数は2,993回と、作業回数に示す「キ メ細かな路面管理」を実施している。凍結防止剤(図7)は、開通当初の白・黒路面管理時代から、スパイク タイヤ禁止や維持管理コスト低減等の変遷を経て、現 在は約8,000~9,000tに至っている。H25年度は過去最 高値の9,335tを使用するに至った。 図-3 過去の気象状況 図-7 凍結防止剤使用量 3.情報収集設備(カメラ)の概要と現状 H24年度までは、冬季はお客様への情報提供の一環と してLED情報板を設置していることから、H25年度は、 LED情報板はカメラ(静止画・動画)機能がついたタイ プに利活用し(写真-4、写真-5)、静止画13基、動画2 基の15基を装着した。 コスト面において24年度までは、LED情報板でシーズ ン750万に対し25年度は、カメラ付きLED情報板でシー 図-4 月別降雪量と累計降雪量 ズン975万と、約200万の低コストで対応出来た。 い状況だったため動画 1 基、静止画 1 基を配置し、事 故や吹雪が一番多い松尾 IC~安代 IC 間に、動画 1 基、 静止画 5 基、盛岡南 IC~西根 IC 間に静止画 3 基、花 巻 IC~紫波 IC 間に静止画 3 基を配置し情報密度の強 化を行った。設置後は、CCTV が 7 基(約 11.0km)、 Web カメラ 1 基(約 4.5km)、新情報収集設備(カメ ラ)15 基(約 22.5km)の計 23 基で、可視化範囲が約 38.0km となり、約 2 倍に強化となる。 写真-4 カメラ機能付きLED情報板 図-9 情報収集設備(カメラ)の配置計画 (2)配置効果 降雪量、作業回数、事故件数、通行止め量の 3 ヶ年 平均と 25 年度を比較すると(図-10)、降雪量(図11)は 3 ヶ年平均 697cm に対し 25 年度は 806cm で 1.16 倍、除雪回数(図-12)は 3 ヶ年平均 972 回に対 し 25 年度は 1,034 回で 1.06 倍、散布回数(図-13)は 3 ヶ年平均 2,820 回に対し 25 年度は 2,993 回で 1.06 写真-5 カメラ機能付きLED情報板の画像 倍、巡回回数(図-14)は 3 ヶ年平均 2,391 回に対し 25 年度は 2,334 回で 0.98 倍、事故件数は 3 ヶ年平均 雪氷作業に利用する気象・路面状況把握カメラの現 250 件に対し 25 年度は 306 件で 1.22 倍と、降雪量と 状は(図-8)、CCTVが7基(約11.0km)、Webカメラ1基 同様に増加したが、通行止め量は 3 ヶ年平均 (約4.5km)の計8基で、可視化範囲が約15.5kmに留ま 8,037km・hr に対し 25 年度は 3,756km・hr で 0.47 倍 っており、八戸道等の情報はその必要の都度雪氷巡回 と大幅減少となった(図-15)。これは降雪量の多さ で把握するしかなかった。 1.16 倍に対して、カメラ機能にしたことにより、巡回 は効率的に状況把握が可能となり、効率的・効果的な 雪氷作業が発揮され、通行止め量は 0.47 倍と大幅に削 減出来た要素に大きく影響しているのではないかと考 えられる。 情報空白域 図-8 情報収集設備(カメラ)の現状 4.情報収集設備(カメラ)増設による配置計画・効果 (1)配置計画 静止画 13 基、動画 2 基、計 15 基の配置は、(図9)に示す状況により、例えば、八戸道の情報が全くな 図-10 3 ヶ年平均と 25 年度の比較 図-11 25 年度降雪量と 3 ヶ年比較 図-15 事故件数と通行止め量 5.情報収集設備(カメラ)増設による具体的な例 (1)直接的効果 上下線東北道松尾~安代、八戸道安代~浄法寺間の 通行止めで、通行止め解除条件が、事故処理完了後の 路面回復(剤散布)を確認後、全線一括解除のときに、 八戸道の路面や気象情報をカメラにて確認し、高速隊 に画像確認の上で、合同巡回 *-1 を削減出来たと共に、 図-12 25 年度除雪回数と 3 ヶ年比較 雪氷巡回に要する約1時間の時間短縮の効果を上げた。 *-1 高速隊との現地確認パトロール (2)間接的効果 安代基地の管轄エリアは、東北道(松尾~安代)八 戸道(安代~浄法寺)を担当し、情報空白エリアの八 戸道方面は、雪氷巡回班が1班の制約下のもとで、交通 量や気象条件等から東北道先行での現場把握が為され て、八戸道エリアは作業対応の1テンポ遅れの状況に至 っていたが、カメラで情報空白エリアを予め確認出来 ることで、巡回経路を天候・路面状況が悪い方に変更 することで、状況に応じた効率的・効果的なタイムリ ーな作業指示及び路面管理の効果が上がった。 図-13 25 年度散布回数と 3 ヶ年比較 6.まとめ 情報(カメラ)空白域の八戸道等にLED情報板を低コ ストで利活用し、情報収集設備(カメラ)を増設した ことにより、可視化範囲が約2倍になり、その結果、現 地気象・路面管理の把握により、効率的・効果的な路 面管理が強化され、中でも通行止め回避や、通行止め 時間短縮効果が発揮され、冬季交通確保の目的を果た していると考えられる。尚、凍結防止剤使用量は過去 最高値の9,335tと環境対策面からも減量化が必要と考 えられる。今後は、カメラ機能の強化、気象変化点や 交通事故多発箇所等へ追加、スマートホンを使用した 図-14 25 年度巡回回数と 3 ヶ年比較 共有化を検討し活用していきたい。
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