編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社 2015.1.19 第 1444 号 SMBC経営懇話会 TEL:フリーダイヤル 0120-7109-49 FAX:(03)5255-5564 URL:http://www.smbc-consulting.co.jp 【「働きがい・働きやすさ」を高めるマネジメント改革】 実例に学ぶ従業員満足度向上のポイント 株式会社プロフェス 代表 風土改革コアネットワークデザイナー 手塚利男 1. 社内における「働きがい・働きやすさ」を効果的に高めるためには、経営者をはじめとして人事や教育 の担当者等が連携して取り組むことが大切です。 2. ミッションを全社で共有し、従業員一人ひとりが自身のミッションを意識して仕事に取り組める環境をつ くることが、「働きがい・働きやすさ」につながります。 3. 従業員の「働きがい・働きやすさ」はマネジメントのやり方によって大きく差が出るため、従業員の声か らマネジメントの課題を見いだして、改善することが重要です。 内定者の半数近くが辞退する企業もあるように、「働きがい・働きやすさ」は学生にとって就職先を決める大事 な判断基準であり、経営者にとっても重要な課題です。ES(従業員満足度)を高めるための切り口は多様です が、今回は経営の明確な意思があってもよいという考え方を前提に、考えてみます。 1.創業から「働きがい・働きやすさ」を社是にしている企業 創業時から「働きがい・働きやすさ」を社是にしている企業(以下M社)があります。M社は地方に本社を置き、 売上シェア6割、業界利益全体の9割を占める産業機械メーカーです。 M社の社是は「我々はもっとも働きがいのあるもっとも働きやすい職場にしよう」です。毎朝全職場で一斉に唱 和して仕事に就きます。たとえ外部の施設を借りて研修を行っているときでも、唱和して始めるという徹底ぶりで す。経営者の思いを従業員に伝えるためには、その思いを社是として、ぶれることなく強い意志をもって継続的 に取り組む必要があります。一時的な掛け声だけでは口だけと見抜かれてしまいます。 さらに、社是実現に向けて、「働きがい」を“会社への愛着心や信頼・誇り・目標達成・評価・成長”、「働きやす さ」を“チャレンジ環境・連帯感・育成環境・経営層や上司からの支援・属性や雇用形態に差別されることなく活 躍できる”と捉え、マネジメントの軸として実行しています。 2.「働きがい・働きやすさ」実現に向けた5者の取り組みと連携の仕方 「働きがい・働きやすさ」を効果的に実現していくには、手当り次第にバラバラに取り組むのではなく、連携が 大事です。前述のM社では「経営者・人事担当者・教育担当者・事務局・キーマン」が連携して取り組んでいま す。 (1)経営者 積極的に会社の将来像を語り、「働きがい・働きやすさ」を基にしたアンケートを実施、その結果を自分た ちの成績表と受け止め、従業員が主役となって改善できるように支援する。 (次頁に続く) (1444-2/2) (2)人事担当者 「働きがい・働きやすさ」のために具体的に行動し、成果を出した人を評価して、ポストに就ける。 (3)教育担当者 アンケート結果から研修を企画、「働きがい・働きやすさ」を実現できるマネジメント層を育成する。 (4)事務局 「働きがい・働きやすさ」を実現するためのマネジメントポイントを質問項目にしたアンケート調査を実施。 調査結果の活用支援、教育改革行動を起こした人たちが部門を超えてつながれるような場づくりや広報、 予算取りの支援を行う。 (5)キーマン 「働きがい・働きやすさ」実現に向けて、テーマを持って仲間を集め、事務局と連携してチャレンジ行動を 起こす。 経営者、人事担当者、教育担当者、事務局、キーマン、それぞれが連携して活動に取り組むことで、点が線、 面となって「働きがい・働きやすさ」が高まっていきます。 3.ミッションの設定と浸透方法 「働きがい・働きやすさ」の実現のためには、目指すものを共有することが大事です。目指すものが違う組織で は、「働きがい」も「働きやすさ」も感じることができません。組織が一つになる、それがミッションです。 M社も数年前から「方向性を共有し全員の力を集約する。高い使命感をもって経営の当事者意識を持って現 場から変化し進化していく」ことをねらいとして、ミッション経営に取り組んでいます。同社では掲げた全社ミッショ ンを仕事の仕方にまで浸透させるため、研修の場を使って部門のミッション、部のミッション、課のミッション、個人 のミッションまで落とし込んでいます。従業員一人ひとりがミッションを意識してどう仕事をするか、明確にしている のです。 このように、自分のミッションを意識することで仕事の幅が拡がり、それが「働きがい」につながり、ミッションを共 有していることが「働きやすさ」につながります。 4.従業員の声をマネジメントに生かし、従業員満足度を上げるプロセス 従業員の「働きがい・働きやすさ」はマネジメントのやり方によって大きく差が出てきます。部下一人ひとりに対 して、経営者が目指す「働きがい・働きやすさ」に沿ったマネジメントがきちんと行われているかを確認し、それが 行われていなければマネジメントを変える必要があります。そのためには、従業員の声からマネジメントの課題を 顕在化することが重要です。 M社では、「働きがい・働きやすさ」を実現するためのマネジメントのポイントを質問項目にして、アンケートを 行っています。「イズムの浸透/改革意欲/誇り/信頼/目標・評価/連帯感/役員のスポンサーシップ/女 性の活躍環境」について年に1回定期的に調査し、結果を基に職場で話し合い、マネジメントの課題を見出して 改善しており、課題によってはマネジメント研修のテーマに決めて教育を行います。 このように、従業員の声からマネジメント改革につなげていくことで、さらに満足度が高まっていくのです。 人間も企業も多様です。そして、経営側のこだわりも多様です。したがって、企業の従業員満足度を高める切り 口も多様であってよいと思います。大事なのは、継続的に強い意志を持って取り組むことです。 【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・法人サービス開発部 TEL:0120-7109-49 Netpress 経営に関するタイムリーなトピックスを掲載しています! 詳しくはこちら
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