4501 第6回 「ものづくりセミナー」実施報告 神鋼鋼線工業株式会社 尼崎事業所技術部 神野 博征 1.はじめに 9月26日 (金) 、住友クラブ3階 (大阪市西区)において、第 6回「ものづくりセミナー」が、日本ばね工業会との共催に より開催された。このセミナーは特に中小企業の経営者や 製造現場の管理 ・監督者および実務者などを対象に、興味 の高いテーマをわかりやすく講演を行うことを趣旨として 企画された。41名が参加し、基調講演1件と 「ばねづくりの 勘どころ」 より2件の技術講演が行われた。 2.講演内容 当学会副会長の鈴木聡氏 (中央発條㈱)の開会挨拶、日本 ばね工業会技術副委員長の森田雅則氏の来賓挨拶の後、も のづくりセミナー推進委員の渡邊吉弘氏 (東洋精鋼㈱)の司 会進行のもと講演がスタートした。 2.1 基調講演 「安全を創る」 保安・保全アドバイザー (元三菱化成㈱) 荒井 保和氏 以下の4つのテーマをもとにご講演いただいた。 ①事故事例から学ぶ 実際の事故事例がいくつか紹介され、いずれも事故原因 は管理不足やヒューマンエラーであり、人間の失敗による ものである。 事故を防止するには、 個々が、 設備面、 システム 面、行動面での問題点を探し、 これに気付く必要がある。 ②知識を身に付ける 事故を防止するには、知識 (プロセス、設備、現場管理)が 必要となる。 知識を養うには、 こうすれば上手くいくという 教育よりも、こうすれば失敗するという教育を行う方が大 事である。 ③現場力 現場力とは、 現場で起きる事象に対し、 あらゆることを想 起し、想像力と知恵の連鎖で、即断即決する力である。現在 は失敗の経験がほとんどなく、背後に潜むリスクを知る機 会が少ない。 そのため、 できる限り多くの経験を積む機会を 与え、 失敗も経験させることが必要である。 ④安全文化 どのような時にも全員が安全第一を考え、その判断を実 践する習慣が身についていなければならない。 そして、周り に対して気付きを伝え、周囲も受容する姿勢を徹底しなけ ればならない。 日本ばね学会会報 2.2 技術講演1 「ばねづくりの勘どころ」より、ばねのめっき処理について 中央発條㈱ 岡本 貴幸氏 講演の概要は、表面処理の分類、めっきの目的と種類、 めっきの処理工程、めっきをする上での留意点についてで あった。 めっきとは何かから始まり、めっきの前処理が密着性に 大きく影響を及ぼすことや、めっき工程で起こる水素脆化 は酸洗時の影響が一番大きいといった重要なポイントまで をわかりやすく解説いただいた。最後に、OT線にめっきが 行われているということについて、水素脆化率が高いため、 技術者の立場からはお薦めできないとのことだった。 2.3 技術講演2 「ばねづくりの勘どころ」より、耐熱ばね材料について 鈴木住電ステンレス㈱ 林 博昭氏 講演の概要は、耐熱材料の効果、金属の熱変形、耐熱ばね 材料の種類、耐熱ばねの用途についてであった。 金属は高温になると原子が熱振動し、結合力が弱まるこ とによって変形すること、耐熱材料は、NiやCrなどの熱に 強い元素が使用されること、高温になると酸化が進むため、 耐熱性だけでなく耐酸化性も必要となることといった金属 学的な内容に加えて、耐熱ばね材料の種類(SKD、SUS、 SUH、NCF)や、それらの実際の用途例(自動車の排気系) ま でを詳しく解説いただいた。 3.おわりに 最後に、ものづくりセミナー推進委員長の松本断氏 (住友 電工スチールワイヤー㈱)から閉会の挨拶があった。また、 参加者の要望を今後のセミナーの内容に反映させるため、 アンケートを実施した。 今回のセミナーは、安全という身近なテーマの基調講演 に加え、ばねづくりの勘どころから2件の技術講演があり、 大変有意義であったのではないかと思われる。 (4) 2014年12月
© Copyright 2024 ExpyDoc