日本臨床細胞学会会員の皆様へ 2014 年 12 月 22 日 泌尿器細胞診の報告様式に関する WG 委員長 金城 満 日本臨床細胞学会泌尿器細胞診の報告様式に関するワ-キンググル-プ (WG)では、2014 年 11 月 9 日の秋期大会(下関市;亀井敏昭会長)で発表された泌尿器細胞診の新報告様式の最終 答申案について public comment を求めています。以下の答申案を読まれて、ご意見やコメ ントがありましたら、期限内に文末の送付先に電子メールでお送り頂きますようお願い申 し上げます。 本 WG では、2 年間に亘るグル-プ内の検討と The Paris System for Reporting Urinary Cytology Group(Paris System Group)との議論を踏まえて、下記の様に、泌尿器系の細胞 診の新報告様式を日本臨床細胞学会理事会(理事会)に提案しました。最終決定の前に、会 員の皆様のご意見を頂ければと思います。 泌尿器細胞診新報告様式の最終答申案 1.基本方針:4 つの基本方針が、WG の初期に決められました。 1) できる限り、簡便な方法を採用すること 2) 検体採取法、処理法、施設の種類を問わず、国内で共通に使用できること 3) 臨床的に有用であること 4) 国際的にも整合性の取れる報告様式とすること 2.泌尿器細胞診の報告様式作成までの経緯 泌尿器細胞診の検体は本邦では自排(自然)尿が主体であり、剝離細胞診の評価が求 められる事から、基本的にはリスク評価ということになります。乳腺や甲状腺などの 穿刺吸引細胞診や子宮頸部の標的組織擦過細胞診とは基本的には異なるものという認 識に立たなければなりません。 従来の Papanicolaou 分類では日本各地に種々の地域別特殊分類ができ、共通の認識 が得られにくくなっています。また、臨床現場で実用的な分類ではないという意見が あり、コメントを重視した記述式とすることになりましたが、報告書作成を多少とも 簡便化するために、必要最小限の臨床情報、細胞情報はチェックするだけとしました。 また、泌尿器細胞診の 60%以上が検査センタ-に提出されていることから、検体の種 類、検体処理法、施設の種別等に関係なく、使用できるような様式にすることにしま した。また、国際的に整合性の取れる報告様式にしてもらいたいということが理事会 から要望されています。 そのために、 当委員会では ASC/IAC を母体とする国際的な Paris system group(Prof.Wojcik & Prof.Rosenthal)と連絡を取りながら、求められる新報 1 告様式について 2 年間検討し続けて参りました。ただ、Paris system group は 2016 年 を期限としており、検討の最中であることと、基本的に高異型度尿路上皮癌(HGUC)の 検出に主眼を置く分類が考慮されていること、1 回の検査で最終決定をするなど本邦の 医療環境に馴染まないものになりつつあると考えられ、現在の Paris System に極力近 い形を取り、Paris system と本邦新報告様式と完全には一致しないが、読み替えが可 能な方式を採用しました。また、各カテゴリ-の HGUC のリスクや各カテゴリ-の診断 基準などの細かい内容は泌尿器細胞診ガイドライン(2015 年 3 月発行予定)に記載しま す。 3.泌尿器細胞診の新報告様式のポイント 1) 新報告様式はできるだけ、簡素化し、基本的には記述式とする。 2) 尿には不適切な検体採取という事象は存在しませんが、尿細胞診標本には不適正 検体が存在するという認識のもとに、不適正というカテゴリ-を設定しました。不 適正検体と評価された場合は、細胞像の評価は行う必要はありません。但し、異型 細胞が少数でも出現している場合は、不適正とはせずに細胞診断を行う必要があり ます。 3) 適切な検体については、悪性のリスクが低い順から細胞所見を 4 段階(2.陰 性 ;Negative for malignancy 、 3 . 異 型 細 胞 ; atypical cells 、 4 . 悪 性 疑 い;Suspicious for malignancy、5.悪性;Malignant)分類で評価、表示すること にしています。 4) 結果として、どのカテゴリ-の評価をした場合でも、その根拠をコメント欄に記 載しなければなりません。 4.細胞診申込書・診断書の記載について: 1)細胞診申込書・診断書の依頼医記載欄 日本泌尿器科学会推薦委員の意見を反映させて、チェックボックス方式にし、9 項目の 重要臨床事項に、その他を加えた 10 項目を掲載し、そのうちのどれかにチェックするよ うにしました。又検体種別も主要 6 項目とその他を加えた 7 項目のどれかにチェックす るようにしました。下図は一つのモデルで、参考にしてください。 臨床事項:□膀胱癌治療歴なし、□肉眼的血尿あり、 □顕微鏡的血尿あり、□TUR-BT、□免疫抑 制治療、□全身化学療法、□抗がん剤膀注、□BCG 膀注、□骨盤部放射線治療、□その他 検体種別:□自排尿、□洗浄尿、□留置カテ-テル尿、□カテ-テル採取尿、□回腸導管尿、□腸管利 用代用膀胱尿、□その他( ) 2) 細胞診申込書・診断書の技師記載欄 2 技師は検体の量と性状、検体処理法をチェックしなければなりません。検体処理法の 種類によらず、同一の報告様式が使えるように、検体処理法をチェックする欄を設けま した。検体が適正であるか否かをチェックし、不適正の場合はその理由をチェックしな ければなりません。極端に細胞が少ない場合は、細胞数稀少のボックスをチェックする ようにしました。下図は一つのモデルで、参考にしてください。 検体量 ( )ml, 検体の色:□肉眼的血尿、□混濁尿、 検体処理法:□LBC、□遠沈塗抹法、□サイトスピン等、□その他 検体:□適正である □不適正である:(□スライドの破損、□高度膿尿、□高度血尿、□その他) 尿性状一般:□細胞数稀少 3) 細胞診申込書・診断書の細胞診専門医記載欄 最終的に本邦の泌尿器細胞診新報告様式の診断カテゴリーは 5 段階としました。本来 の細胞評価としては下記の表のように 4 段階(4 tired stratified categories)評価です。 しかし、標本の適正・不適正について記載する事が委員会内で可決され、このことは Paris system でも求められており、国際的に整合性のとれるカテゴリ-として細胞診カテゴリ -の中に含められました。もし、検体が不適正となった場合には、以後の 4 段階分類を 行う必要はありません。結果として、全ての標本において、この診断カテゴリーのどれ かに必ずチェックが入ることになります。基本的に細胞検査士 2 名のサイン欄と細胞診 専門医のサイン欄 1 名分を設けることにしました。下図は一つのモデルで、参考にして ください。 細胞診カテゴリ- □不適正 □陰性 Inadequate (Inadequate) Negative for malignancy (Negative) □異型細胞 Atypical cells (Atypical) □悪性疑い Suspicious for malignancy (Suspicious) □悪性 Malignant (Malignant) □HGUC □LGUC □Others コメント: 年 月 日 細胞検査士 細胞検査士 細胞診専門医 5.国際分類との関連 Paris System Group では、日本からの委員も含めて現在検討中ですが、①基本的には高 3 異型度尿路上皮癌の診断に主眼を置いた報告様式になる方向に議論は動いており、LGUC の細胞診断は不要であるという立場のようです。②日本では自排尿細胞診を中心とした細 胞診が主流ですが、欧米では洗浄尿が多い施設が散見されます。③医療保険制度が異なり、 繰り返し検査が基本的にはできません。欧米と本邦では泌尿器細胞診を取り巻く事情が大 きく異なるために、完全に報告様式を一致させることはできませんでした。また、本委員 会は今秋までに結論を出す責任を担っていることと予算も今年度までとなっています。こ の よ う な 状 況 か ら 、 Paris System の 世 話 人 で あ る Prof.Wojcik, Prof.Rosenthal, Prof.Brimo の各氏には前もって、本委員会の事情を説明して了解を得る事ができました。 Paris System 最終案は 2016 年に完成予定で、同年 6 月の IAC(横浜)で結果を公開され ることになっています。 * The Paris System の現在討議中の分類案(Sep 20, 2014、from Wojcik & Rosenthal) Statement of Adequacy Negative for Malignant Cells Atypical Urothelial Cells Suspicious for HGUC High Grade Urothelial Carcinoma Other Malignancies, both Primary & Secondary 泌尿器細胞診報告様式に関する委員会 委員長: 金城 満 コア委員:松山 副委員長:是松元子、大谷 博、顧問:松嵜 理 豪泰、賀本 敏行、徳田 雄治、関田 信之、白石 泰三、都築豊徳、 村田 晋一、山城 勝重、三村 明弘、三浦 弘守、今井 律子 拡大委員:佐竹 口 昭、岩井 早智子、佐藤 正和、小椋 子、福田 本 立成、森内 幸子、井関 充及、西 聖子、夏目 園子、瀬古 正彦、弓納持 勉、平 ご意見の送付先: 製鉄記念八幡病院 検査部/病理診断科 金城 満 FAX 093-671-9425 e-mail: [email protected] ご意見の提出期限:2016 年 1 月 31 日 ご意見に対する回答:2016 年 2 月中旬より学会 HP に掲載予定 4 吉秀、南 周子、伊藤 仁、川口 紀代美、下釜 達朗、平田 理恵、小山 芳徳、服部 学、浅見 英一 国広、大城 哲士、国実 洋 久秋、池
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