熱力学的極限に挑む断熱モード磁束量子プロセッサの研究

【基盤研究 (S)】
理工系(工学)
研究課題名
熱力学的極限に挑む断熱モード磁束量子プロセッサの
研究
よしかわ
のぶゆき
吉川
信行
横浜国立大学・大学院工学研究院・教授
研究課題番号: 2
6220904 研究者番号:7
0
2
0
2
3
9
8
研究分野:電子デバイス、電子機器
キーワード:電子デバイス、集積回路
【研究の背景・目的】
将来のエクサスケールの高性能コンピュータの実
現のためには、演算におけるエネルギー効率が今よ
り格段に高い論理回路が必要不可欠である。一方で、
論理回路の 1ピット当たりの消費エネルギーに下限
値が存在するかどうかは未解決の問題である。情報
機器の低消費エネルギー化を進めるためには、この
問題の本質的な理解が極めて重要である 。
osephson接合の超伝導位相をゆっくり
本研究は、 ]
と断熱的に変化させることで、高速性が特徴の磁束
量子回路において 熱力学的極限に迫る究極的な低
消費エネルギー化を図る。図 1に半導体 CMOS 回路、
S
F
Q
)回路、ならびに本提案の断
従来の単一磁束量子 (
A
Q
F
P
)回路のビットエネルギーと
熱モード磁束量子 (
クロック周期の関係を示す。 AQFP回路は CMOSに対し
て 6桁以上のエネルギー低減化が可能であり、冷却
を考慮しでも十分な優位性を持つ。本研究では AQFP
回路を中核とし、それを情報処理システムとして実
用化するために不可欠なメモリと 3次元集積回路プ
ロセスを開発する 。プ ロジェクトの最終目標として、
3次元集積化された 1
6
bAQFPプロセッサの 5GHzで
の高速動作実証を目指す。
化させる 。 これにより回路の抵抗成分に生じる電圧
を抑制し、演算における消費エネルギーを極限まで
小さくする 。信号のエネノレギーは断熱モード回路で
は、消費されることなく全て電源に回収され、再利
用される 。 超伝導回路は本質的に無損失で、あり、断
熱モード動作における低エネノレギー性能を極限まで
発揮できる。
【期待される成果と意義】
本研究の成果は、論理回路の消費エネルギーの熱
力学的限界を明らかにするとし、う意味で学術的に大
きな意味を持つばかりでなく、冷凍機の電力を見込
んでもハイエンド情報機器の消費電力を圧倒的に小
さくできる。更に本技術による極限的な低消費電力
回路は、量子ピットシステムや超伝導検出器など、
多くの分野への波及効果が期待できる。
入力信号
励起電流
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占Lx
2
励起電流なし
励起電流あり
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【当該研究課題と関連の深い論文 著書】
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【研究期間と研究経費】
平成 26年度 -30年度
150,
300千円
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図 2 AQFP論理ゲートとそのポテンシャル変化
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【研究の方法】
断熱モード回路とは、回路を断熱的にゆっくりと
動作させることで演算エネルギーを低減する方法で
ある。 AQFP回路では、図 2の様に回路のポテンシャ
ルをシング、ルウェルからダブ、ルウェルに断熱的に変
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【ホームページ等】
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クロック周期 [
図 1 各種論理回路のビットエネルギーとクロック周期
の関係
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