【2014/9/5 国際高等研究所・講演資料】(PDF ファイルです) - K-net

2014/9/6
国際高等研究所「老いを考える」研究会
• まとまりのない話で、すみませんでした。
• ショウジョウバエの研究データは、説明
できませんでしたが、一応、入れたまま
にしてあります。
• オムロン社との共同研究の疫学データは、
未発表ですので、取扱いにご注意下さい
概日周期研究から考える
生物の時間の分子基盤
名古屋市立大学大学院薬学研究科
神経薬理学分野
粂
和彦
2014/ 9/ 5
2
自己紹介
専門1.分子生物学・神経科学(名古屋市立大学)
睡眠・覚醒制御と体内時計の分子機構
→(原始的な)意識に興味がある
専門1: 生物学
専門2.睡眠医療(くわみず病院@熊本)
睡眠障害診療(ナルコレプシーなどの病気)
インターネットを介した医療相談
分子生物学・神経科学
専門3.哲学・倫理学(元・熊本大学社文研)
Bioethics 時代からNeuroethics まで
「心(意識)の哲学」←認知科学、心理学
アクティビストでもあるかも…
3
4
概日周期と睡眠制御
講談社現代新書
専門2: 医療
時間の分子生物学
~時計と睡眠の遺伝子
睡眠医療認定医として
第35回講談社出版文化賞
第20回科学出版賞受賞
5
6
1
2014/9/6
睡眠障害の臨床
睡眠障害相談室
http://sleepclinic.jp/
開設 2000年12月
総アクセス140万回
サイト経由の相談:
2000件以上受付
ちくま新書
眠りの悩み相談室
2007年
Google 検索
睡眠障害
23人の典型的な悩みを
持つ方を紹介
睡眠+悩み
7
8
高齢者の睡眠障害
睡眠の疫学
9
9:00
世界の国の睡眠時間
10
社会生活基本調査(男, H18年)
8:45
8:30
8:15
8:00
7:45
7:30
7:15
7:00
OECD – Society at a Glance (2009)
11
12
2
2014/9/6
社会生活基本調査(女, H18年)
睡眠の疫学研究
13
非接触型
14
睡眠モニター
Setting and Specification
 Radio frequency sensor 10.525GHz (original 5.8GHz)
 64Hz sampling rate
オムロン睡眠計
pillow
Setting
Area
Top view
2012年5月発売
50cm – 100cm Bed
HSL-101: 市販品
HSL-102m: 医療用
Side view
Contactless sleep monitor
<0.2 m
15
男女別の全睡眠時間の分布
年代別の就床時間
TST(min)
9
Frequency(%)
8
7
Male
6
Female
16
Bed
10's(40)
Ave
SD
Male
358.7
74.9
Female
370.7
73.7
20's(369)
30's(867)
40's(1191)
5
50's(878)
4
60's(355)
3
70's(127)
2
80-(38)
1
0
180-
240300360420Total Sleep Time (min)
480-
22:00
54017
0:00
2:00
4:00
6:00
Time(HH:MM)
8:00
10:00
18
3
2014/9/6
曜日による睡眠時間のズレ
日本国内でも、地域差がある
Monday(3451)
Tuesday(3451)
Wednesday(3440)
Thursday(3408)
Average Bed Time
23:30-24:00
Friday(3402)
24:00-24:30
Saturday(3423)
24:30-25:00
Sunday(3446)
n.a.
23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00
Time(HH:MM)
2013/1/1-1/30
Total 1941 data
19
20
気温と睡眠効率
高齢者に戻って
夜間の外気温が15度を超えると、睡眠効率低下
21
22
睡眠時間の加齢による変化
年代別の就床時間
10's(40)
20's(369)
30's(867)
40's(1191)
50's(878)
60's(355)
70's(127)
80-(38)
22:00
神山「睡眠の生理と臨床」 Roffwarg, Muzio, Dement: Science 152 (1966)
23
0:00
2:00
4:00
6:00
Time(HH:MM)
8:00
10:00
24
4
2014/9/6
年代別
20.0
男性
18.0
25
睡眠薬処方率 (%)
高齢者の不眠は「必然」
女性
24:00
若い人
16.0
14.0
7:00
眠っている時間
12.0
10.0
8.0
22:00
24:00
5:00
6.0
高齢者
4.0
眠っている時間
2.0
0.0
0-
10-
20-
30-
40-
50-
60-
70-
入眠困難 中途覚醒
三島和夫先生(国立精神神経センター)による
26
睡眠短縮法1:入眠困難
22:00
24:00
早朝覚醒
睡眠短縮法2:中途覚醒
5:00
22:00
寝つきが悪いと
悩んでいる時間
24:00
5:00
目が覚めて眠れないと
悩んでいる時間
23:30
5:00
23:30
5:00
27
睡眠短縮法3:早朝覚醒
22:00
24:00
2:00
不眠症の認知の歪み
5:00
1.実際には、ある程度眠れているのに、眠れて
いないと思う
2.睡眠が浅く・短いことが、悪いことだと思う
3.体調の悪さを、不眠のせいだと思う
4.辛いことが、眠れば解決すると思う
5.眠れないと思うと、焦ってしまって、ますま
す眠れなくなる
朝早く目が覚めて
悩んでいる時間
23:30
28
5:00
29
30
5
2014/9/6
不眠症の問診・診療のコツ
不眠症の認知状態と行動変容の可能性
1.ラポールは、最重要
→眠れないことは、主観的にはとても辛い
2.睡眠そのものの質問は、最低限にする
3.日中の活動・気分をしっかり尋ねる。
4.睡眠以外の治療目標を立てる
→眠れることを、目的にはしない
5.睡眠記録をつける
6.あまりにも主観評価が悪い場合は、
客観的な検査を行う
いつ病気になるかわからない
将来が不安だ
不安が続いて、夜、眠れない
昨日は全く眠れなかった
眠れなくて、身体がきつい
動く気にならない
夜、眠れないと思うと、
不安になる
どんな病気になるのか?
その病気の対処法は?
不安内容の
具体化・具象化
将来、何がしたいのか?
方向転換
なぜ夜は不安になるか?
生物学的理解
知識の付与
本当に眠れていないのか?
(アクチグラフなどで検査)
現状誤認の
是正
眠れないことで不調なのか?
認知の是非
本当に動いてみたのか?
激励
夜眠ることが目的なのか?
思考の転換
31
32
熊本大学生命倫理研究会
論文集の執筆・編集
専門3:哲学・倫理学
生命という価値
~その本質を問う
生命倫理・心の哲学
ニューロエシックス
ニューロエシックスの
日本への導入
33
34
私の哲学・倫理学的な立場
•
•
•
•
•
•
•
•
倫理の実践?
基本的に一元論者Non-Cartesian
プラトンよりアリストテレス
統合された自己を想定しない
エコロジカルな自己を想定:河野哲也
パーソン論は嫌い:日本型の倫理は必要
正義より、ケアの倫理学
立岩真也学派?
まあ、功利主義は否定しませんが…
医療事故被害者の支援活動
難病患者会の支援(慢性疲労症候群)
当事者主権・当事者研究
大熊由紀子さんとの親交
「寝たきり老人のいる国・いない国」
• フェミニスト(名誉女性 by 上野千鶴子)
•
•
•
•
• 福島の放射線被ばく問題
35
36
6
2014/9/6
脳神経倫理学
「老い」についての倫理問題
ニューロエシックス
(2002年にできた学問分野)
• 緩和ケア
• 安楽死・尊厳死
→「自己決定」至上主義の問題
(心は体を殺す権利があるのか?)
世界で最初の教科書
(21人の専門家=哲学、
倫理学、法律家、社会学、
教育学、神経科学、医学、
などが執筆)
• 治療についての判断同意能力
→特に認知症:衰退する自己
文学部・高橋教授と共同監訳
37
38
心の哲学:河野哲也・立教大学
余談
心はからだの外にある
~エコロジカルな私の哲学
功利主義・自己決定主義を超えて
環境に広がる心
~生態学的哲学の展望
パーソン論(シンガー)は嫌い
善悪は実在するか:
アフォーダンスの倫理学
(講談社メチエ)
39
相手が1人では、道は限られる
かける言葉もない・・・
私は、余命6ヶ月
将来に、希望もない
やりたいこともない
家族も友人もいない
早く死にたい!
私は、余命6ヶ月
将来に、希望もない
やりたいこともない
家族も友人もいない
早く死にたい!
41
42
7
2014/9/6
相手が複数と思えば・・・
別のコミュニケーションが開ける
痛いのは嫌!
私は空腹だ!
淋しい!
早く死にたい
お風呂は
気持ちよい
43
44
相手も自分の「心」の一部である
ここから、生物学
生きて欲しい!
45
46
Newton 2004年7月号
アウトライン
1. 生物にとっての時間とは?
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
47
時計博物館(松本市)
48
8
2014/9/6
アウトライン
1.生物にとっての時間の意味とは?
1. 生物にとっての時間とは?
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
• 長さの計測: タイマー
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
• 順序の決定: プログラム
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
• 同時性判定: ラッチ回路
5. ゾウの時間・ネズミの時間
• 時刻の情報: 時計
6. 寿命と老化を考える
• 季節の情報: カレンダー
49
1.生物にとっての時間の意味とは?
50
生物時間(タイマー1:長いもの)
• 腹時計が鳴るのは、4-5時間
• 長さの計測: タイマー
• 海の干満周期は、 12時間
• 順序の決定: プログラム
• 1日の周期は 24時間
• 同時性判定: ラッチ回路
• 学校のお休みは1週間に1回
• 月の満ち欠けと、女性の周期は1ヶ月
• 時刻の情報: 時計
• 季節のめぐりは、1年365日
• 季節の情報: カレンダー
• 「素数ゼミ」は、13年,17年を数える
• 寿命は、30分~数千年?
51
生物時間(タイマー2:短いもの)
52
心臓の鼓動が1秒に一回になる仕組み
• 腹時計が鳴るのは、4-5時間
• 食後血糖値が上がるまで、1時間
• 呼吸・あくびは、5秒間隔
• 心臓の鼓動は、1秒間隔
• まばたきは、100 - 150ミリ秒
• ボルト選手の反応は、110ミリ秒
• 脳波の速波(β波)は、50ミリ秒間隔
• チャンネルの開口時間は、数ミリ秒
53
54
9
2014/9/6
一定の積算入力と、域値を持つ反応
懐かしの水のみ鳥
ポジティブフィードバック
による、オーバーシュート
心臓細胞の
膜電位
域値
徐々に上昇
時間
王様のアイデア
55
1.生物にとっての時間の意味とは?
56
カエルの発生は温度で速度が変わる
• 長さの計測: タイマー
• 順序の決定: プログラム
• 同時性判定: ラッチ回路
• 時刻の情報: 時計
• 季節の情報: カレンダー
57
生物時間のプログラム
http://www.evgschool.org/
58
プログラム
• 順序が重要
• 環境によって変化
→相対的な時間軸の必要性
• 同時性(シンクロ)も重要
尻尾は、前足が生えるのと同じ頃、
無くならないといけない
↓
シンクロナイゼーションが必要
59
60
10
2014/9/6
1.生物にとっての時間の意味とは?
同時に入力があった時のみ、Cが反応
• 長さの計測: タイマー
A
• 順序の決定: プログラム
C
• 同時性判定: ラッチ回路
• 時刻の情報: 時計
A
B
• 季節の情報: カレンダー
B
時間
61
同時性判定
62
1.生物にとっての時間の意味とは?
• 時間差の測定
• 神経系で多用される
• 論理判定回路が作れる
• 長さの計測: タイマー
• 順序の決定: プログラム
• 同時性判定: ラッチ回路
• 時刻の情報: 時計
• 季節の情報: カレンダー
63
アウトライン
64
概日周期(サーカディアンリズム)とは
マウス(夜行性)の運動リズム
1. 約24時間周期の時計
LD
サーカ = 約
ディアン = 1日=24時間
1. 生物にとっての時間とは?
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
2. 外部から調節可能
光などにより、進み遅れを
修正することができる
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
3. 自律して動く
外部の環境が一定でも、 DD
時を刻み続けることができる
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
4. 温度(体温)変化に抵抗性
体温が変わっても同じ周期を
保ち続ける
65
FRP = 23.8 h
FRP = 22.5 h 66
11
2014/9/6
生物時計(概日周期)の必要性
概日周期生物時計とは
身体のリズムを刻む「24時間周期の時計」
1.時刻を知る:今、やるべきこと
2.季節を知る:この季節にやるべきこと
(日照時間を測ることによる)
3.方角を知る:渡り鳥の「羅針盤」
(時刻と太陽の方向から、方角を計算)
津和野の資料館の
大正時代の時計67
1.生物にとっての時間の意味とは?
68
間脳視床下部・視交叉上核
SCN
• 長さの計測: タイマー
• 順序の決定: プログラム
• 同時性判定: ラッチ回路
• 時刻の情報: 時計
• 季節の情報: カレンダー
視交叉の上にある視交叉上核
(SCN: suprachiasmatic nucleus)
RHT: retinohypothalamic tract 網膜から直接入力
69
70
生物時計の構成
生物時計の時計の針
• 時計の針はピリオド蛋白の量!?
ピリオド蛋白量
個体の活動はSCNに
制御される
朝
SCN全体が統一した
概日周期を示す
昼
夕
夜
朝
SCNの個々の神経細胞も
概日周期を示す
71
72
12
2014/9/6
ネガティブフィードバックによる発振機構
Xの遺伝子
多い
転写
哺乳類クリプトクローム遺伝子の
概日周期制御機能を発見
哺乳類BMAL1遺伝子の
逆位相振動を発見
(Kume et al. Cell, 1999)
(Shearmann et al. Science, 2000)
AAAA
AAAA
AAAA
AAAA
AAAA
XのmRNA
mRNAの量
AAAA
AAAA
④
転写の抑制
③
AAAA
AAAA
AAAA
翻訳
Xの蛋白質
⑥
蛋白質の量
AAAA
AAAA
②
AAAA
①
0
⑤
⑦
⑥
0時
24時
時間
遺伝子Xの蛋白質が、自分自身の転写を抑制するという性質を
持つだけで、周期的な増減を作り出すことができる。
73
概日周期発振機構の詳細
光
体中にある体内時計
• 体内時計を刻む仕組みは、個々の細胞レベルに存
在
• ↓
• 24時間の振動は、細胞レベルでは止まらず続い
ている
• ↓
• 臓器レベルでシンクロナイズする
• ↓
• 視交叉上核の中枢に同調する(液性、神経性)
• 各臓器に特有の同調因子もある(例:胃では、食
事)
CRY
TIM
TIM
PER
E-box
TIM
PER
+
mPER
TIM
mPER
E-box
CLK
CYC
E-box
mCRY
mCRY
+
PER
mCRY
CLOCK
mPER
BMAL
PER
E-box
ショウジョウバエ
74
mCRY
mPER
哺乳類
75
76
転写も翻訳も不要な24時間周期の発見
ネガティブフィードバックループは、普遍的?
明期
暗期
転写翻訳のネガティブフィードバックモデル
KaiA
KaiB
時計遺伝子
転写翻訳
時計タンパク質
ADP
ATP
シアノバクテリア
kaiBC
KaiC
アカパンカビ
frequency
FRQ
ショウジョウバエ
period
転写抑制
P
PER
KaiC
細胞内の蓄積量
KaiC P
P
最小のタイミングループ
24 時間
(翻訳後レベル)
Pi
kaiBCプロモーター
J. Tomita et al. (2005)
Science 307, 251
mRNA
タンパク質
転写翻訳
フィードバック振動
ゲノムワイドな
時間
概日遺伝子発現
77
光
基本転写機構
(ゲノム DNA の高次構造?)
78
13
2014/9/6
転写翻訳がなくても、リン酸化リズム継続
それが、試験管内でも、再構成できた!
79
冨田らの発見のインパクト
M. Nakajima et al. (2005) Science 308, 414
80
アウトライン
1. 生物にとっての時間とは?
After Tomita et al. (Science 2005)
生物時計には、細胞が不要になった。
試験管内のタンパク質だけで、24時間の
温度補償される振動が作り出せる。
↓
哲学的な問いかけ:
試験管内で、周期的変動が起きるなら、
「生物時計・生命現象」と呼べるのか?
(BZ反応などと同じではないか?)
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
81
3.止まる時間: 睡眠、冬眠、休眠
82
眠る脳と、眠らせる脳
大脳皮質=眠る脳
眠らせる
脳幹=眠らせる脳
=眠らない脳
睡眠は脳の「機能」である
83
84
14
2014/9/6
イルカは、脳の半分ずつが、眠る
覚醒・ノンレム・レム睡眠時に働く場所
覚醒
ノンレム
レム
覚醒/ノン
レム神経
睡眠は、脳が「作り出している」状態
ノンレム/
レム神経
レム神経
レムオフ
神経
85
冬眠・麻酔は 「睡眠」ではない!
86
乾燥休眠
= 究極の冬眠?
1.熊は、眠るために冬眠から「起きる」
2.麻酔からさめると、眠くてしかたない
冬眠中も時々
目を覚まし、
体温を上げて
約1日寝ます
く
ま
モ
ン
クマムシ
冬眠中の熊
ユスリカ
87
88
乾燥休眠状態は、生きているのか?
ユスリカ
と
乾燥休眠状態は、完全な乾燥ではない
↓
水のトレハロース置換後のガラス化状態
=ガラスは個体ではなく、
粘度の極端に高い液体である
↓
つまり、一定の流動性は保たれている
=極限状態の生物
蚊
成虫の寿命:1日
種によっては30分!
幼虫:乾燥すると、
無代謝状態で休眠
何年でも生きる
http://medaka-ikimono.seesaa.net/
89
90
15
2014/9/6
アウトライン
4.ショウジョウバエの睡眠研究
1. 生物にとっての時間とは?
概日周期
生物時計
1.概日周期からの
アウトプットとして、
睡眠が、最も重要
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
睡眠覚醒状態
(眠気の制御)
恒常性維持
(睡眠負債)
2.概日周期生物時計中枢の
詳細がわかっている
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
3.強力な遺伝学が使える
脳
4.睡眠類似の行動がある
91
Fruit flies, Drosophila melanogaster
視葉
92
ショウジョウバエの利点1
<マウスなどの高等な系に比べて>
• 多数扱え効率が良い。早い。安い。
• 遺伝子機能を調べる道具を、他の種から
容易に導入できる
• 多種の操作遺伝子を同時に持たせられる
• 1細胞変化を、個体レベルでも観察
→ in vitro 技術のin vivo への応用
Tiny
Short generation (10 days)
Great genetics
Numerous behavior studies
93
ショウジョウバエの利点2
94
睡眠についての基礎的な疑問
<培養細胞など、より単純な系に比べて>
• 個体でなければ見られない機能
高次機能:行動(学習、社会性活動)、
睡眠、寿命、…
複数の細胞種:ニューロン・グリア連関
複数の臓器: 脳腸連関
1. なぜ、眠るのか? Why do we sleep?
→生存のため必須、有利(エネルギー節約)
→中枢神経系の機能維持
→神経可塑性の維持(学習・記憶)
2. どのように、眠るか? How do we sleep?
→中枢神経系の活動の低下
→外部から中枢への入力を制限
95
96
16
2014/9/6
Behavioral property of sleep
睡眠の行動学的特徴
赤外線モニター活動計測器
1. Regulation by circadian rhythm
概日周期の制御(決まった時間帯に眠る)
6.5 cm
2. Regulation by homeostasis (sleep debt)
恒常性維持機構の存在(=睡眠負債の存在)
3. Increased arousal threshold
覚醒域値の上昇(=外部刺激反応性の低下)
ショウジョウバエにも、睡眠様の行動がある
→
97
98
ショウジョウバエの睡眠計測
ショウジョウバエの睡眠の定義
覚醒
睡眠
覚醒
睡眠
Activity
count
赤外線ビーム
長さ 65mm
Data 取得 = 1 秒~1時間単位
太さ 3mm
エサ
綿栓
赤外線計測器
32 匹 / 台 x 120
→ 3840 匹同時観察
sleep = immobile period > 5 min
time
5分以上の不動状態を睡眠と定義
count
99
fumin(不眠) 変異の発見
+
fumin
野生型
100
ドーパミントランスポーター遺伝子変異
wild type exon 6
intron 6 (63bp )
exon 7
genome
GTA TAC AA G TAG GTT
cDNA
GTA TAC AA G GAT GC - - -
- - - - - - - - -
AG G GAT GC - - -
変異体
30
protein - - V
0
341
DD
counts / 5min
LD
Y
K
342
343
D --344
partial roo transposon (~ 0.4Kb)
fumin
0
12
0
12
Time ZT (CT)
0
0
12
0
12
genome
exon 6
43 bp
GTA TAC AA G TAG GTT
cDNA
GTA TAC AA G TAG GTT
exon 7
- - - - - - - - -
AG GGA TG・・・
~ 400bp
0
Time ZT (CT)
101
protein - -
V
Y
K
341
342
343
Stop
- - - - - - -
AAAA
Poly A
102
17
2014/9/6
ドーパミントランスポーターの機能
ショジョウバエの睡眠研究の展開
ドーパミンなど、分子レベルの相似性も発見され、
ショウジョウバエの「睡眠」と呼ばれるようになる
→モノアミンの生理機能・神経回路などに注目
Presynaptic
DA-neuron
Postsynaptic
neuron
DA
DA-R
DA
DAT
fumin
他グループの結果など
→睡眠は、ショウジョウバエの生存に必須
睡眠は、学習・記憶形成に重要
fumin 変異は学習にも障害
睡眠と摂食・代謝との関連
睡眠は、シナプス形態の修復に必須
覚醒物質
(cocaine, amphetamine)
103
Kume et al, J. Neurosci. (2005)
104
多面的アプローチ
1.分子遺伝学解析
2.回路解析
単一神経細胞の
個体レベルの機能解析
100
網羅的
遺伝子
発現解析
3.行動解析+数理モデル
1
0.1
4.寿命・栄養・代謝
生存曲線
不眠変異
野生型
10
生存率
1
野生型
一次元行動解析
二次元行動解析
0.1 1 10 100
不眠変異
通常栄養
10% Sucrose, Yeast extract
0.8
生存率
高栄養
1
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
寿命と睡眠と代謝の関係
days
days
睡眠と代謝・寿命の新たな関係
活動時間
睡眠時間
候補遺伝子群の機能解析
5.電気生理解析
コントロール
遺伝子X-KD
睡眠の生理機能
記憶・学習との関連
新規睡眠関連遺伝子の同定
睡眠の生理機能の解析
α=1.52
哺乳類との相関
ヒトでの疾患解析
メタボリック症候群の
新規動物モデル
哺乳類脳波との類似性
制御機構の神経基盤
睡眠の生理的意義の解明と、睡眠覚醒制御の普遍的モデル
105
106
Dr. Masako Yamazaki
25OC 寿命
100
% Survival
75
50
25
0
0
107
1
w (♂)
2
3
4
5
Weeks
w;fmn (♂)
6
w (♀)
7
8
9
w;fmn (♀)
108
18
2014/9/6
100
w, 20 oC
75
% Survival
% Survival
100
50
25
50
control (w) male
fumin male
25
0
16000
16000
9
12000
12000
yw, 30 oC
8000
8000
4000
4000
0
0
1
2
3
4
Weeks
100
yw, 20
75
50
7
8
0
50
25
0
0
0
4 7 10 1316 1922 303336 3942 2952 5659 62
4 7 10 13 16 19 22 30 33 36 39 42 29 52 56 59 62
days
0
Weeks
6
75
25
yw (♂)
5
Weeks
100
oC
% Survival
% Survival
加齢による活動量の変化
w, 30 oC
75
yw;fmn (♂)
1
2
3
4
yw (♀)
5
Weeks
6
7
8
days
9
109
yw;fmn (♀)
110
飢餓状態での寿命 (水のみ)
p<0.05
p<0.05
80
0.5% Agarose
エサを変えてみることに…
hours
60
(n=20)
*
*
40
20
0
male
Survivorship(%)
1
10% SY
0.8
0.8
male
female
fumin
112
Diet and activity change (control)
16000
16000
10% SY
12000
12000
0.6
0.6
0.4
0.4
8000
8000
0.2
0.2
4000
4000
1.0% SY
0
0
2
9
15
22
1
28 35
days
41
47
53
3
9
16
22
28
1
0.8
Survivorship(%)
Best condition
1.0% SY
1
female
control
111
35
41
48
0
54
3
days
0.5% SY
0.4
0.2
0.2
3
9
16
22
28 35
41
days
male
48
54
control
fumin
26
33
39
45
50
0
55
3
3
female
9
9
15
23
29
35
45
52
16000
0.5% SY
12000
0
0
21
0.3% SY
0.6
0.4
15
16000
0.8
0.6
9
0.3% SY
12000
8000
8000
4000
4000
16 22 28 35 41 48 54
control
fumin
0
days
3
113
9
15
21
26
33
39
45
50
55
0
3
mean value
9
15
21
26
33
39
45
50
55
114
19
2014/9/6
Sleep property change with ageing
(control)
Diet and activity change (fumin)
16000
3days
16000
10% SY
1.0% SY
12000
12000
8000
8000
27.8
4000
29.9
26.9
42.5
51.1
49.5
4000
0
3
9
15
23
29
35
41
48
0.5% SY
0
55
16000
3
9
15
21
26
33
39
45
50
55
1.0% SY
active
5 - 30min
10% SY
30 - 60min
120min≦
60-120min
16000
0.5% SY
12000
12000
8000
8000
4000
4000
0
3
9
15
21
26
33
39
45
50
18days
0.3% SY
17.7
29.9
42.7
30.9
29
37
0
55
3
9
15
21
26
33
39
45
50
mean value
55
115
116
0.5% SY
Sleep property change with ageing
(fumin)
3days
1.0% SY
10% SY
TH inhibitor prolonged longevity
control male
fumin male
18.5
17.5
21.1
73.1
65.5
10%SY
75.7
+ 3mM 3-IY
+ 10mM 3-IY
1
+ 3mM 3-IY
10%SY
+ 10mM 3-IY
1
prolongation(+)
0.5% SY
active
1.0% SY
5 - 30min
30 - 60min
60-120min
120min≦
18days
7.4
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
17.5
15
0.8
10% SY
0
4
7
10
13
17
20
23
26
29
32
35
38
days
78.1
0.5% SY
77.3
1.0% SY
90.6
10% SY
4
7
10
13
17
20
23
days
26
29
32
35
38
(n=25)
117
118
活動・休息(睡眠)の時系列解析
睡眠の時系列解析
上野太郎君
119
東大・数理
増田直紀さん
120
20
2014/9/6
Video monitoring of 2D movements
Temporal organization of
active and rest (inactive) periods in
Drosophila melanogaster
活動と休止の時間系列解析
121
122
秒単位の動きの定量化とデータ処理
Image analysis and movement quantitation
実データ A, A, R, R, R, A, R, A, R, A, A, R, R, R, A, R, R ・・・
積算データ A= 2, 1, 1, 2, 1
R= 3, 1, 1, 3, 2
累積出現割合
(x秒≦の割合)
1
A= 1, 1, 1, 2, 2
R= 1, 1, 2, 3, 3
0.8
0.6
0.4
0.2
0
123
二つの分布
指数分布・正規分布
1
2
3
4
5
(秒)
124
哺乳類での先行研究
(サイコロを降った場合)
=> 指数関数的な確率密度関数
Exponential
=> 片対数で直線、両対数では曲線
べき乗分布=ある規則に従う分布
=> フラクタル構造, Levy flight model
=> べき乗則に従う確率密度関数 power law
=> 片対数で曲線、両対数では直線
125
126
21
2014/9/6
休止
活動時間の分布
活動
片対数グラフ
人間
哺乳類でも、
活動時間=対数分布
両対数グラフ Log-log plot
休止時間=べき乗分布
両対数グラフ
青: control
赤: fumin
150
1
マウス
1
50
100
10
100
1000
127
128
休止時間の分布
片対数グラフ
普通のハエ
両対数グラフ
Active
青: control
1
500
両対数グラフ
赤: fumin
1000 1
Rest
10
100
α=1.52
1000
129
不眠のハエの場合
Active
130
不眠のハエでも、活動時間は変わらない
Rest
両対数グラフ
α=1.82
青: control
131
赤: fumin
132
22
2014/9/6
不眠のハエは、休む時間が短縮
ドパミンを強めても、活動時間は不変
blue : WT α=1.53
red : fmn α=1.91
blue : 22℃
red : 29℃
Rest (TH-GAL4; UAS-TrpA1)
133
ドパミンは
休息時間を短縮
134
概日周期は、傾きは変化させない
blue : 22℃ α=1.59
red : 29℃ α=2.72
青:昼
:赤:夜
135
ハエの睡眠研究から…
136
アウトライン
• 寿命が最長になるための最適の栄養量が
ありそう。
• 多くても少なくても、寿命短縮
• どちらの方向でも、睡眠も短縮
• 活動量・代謝量はドーパミンが制御
• 活動時間と休息時間は、別の形の制御で、
そのパターンは哺乳類と似ている
• ドーパミンは、休息時間を短くする
137
1. 生物にとっての時間とは?
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
138
23
2014/9/6
5.ゾウの時間、ネズミの時間
代謝量と体重の相関
E = 4.1W 0.75
本川達雄先生
139
心拍数、代謝量、寿命…
140
例外の出現
大きく異なる
哺乳類は一生で、心拍数20億回?
• ヒトの寿命は長すぎ
ゾウ: 体重 6000kg
脈拍20回x60x24x365x190年
ネズミ: 体重 20g
脈拍600回x60x24x365x7年
小サイズの動物は、体重当たり代謝量が大きい
↓
絶食に弱い、食べ続けないと、すぐ死んでしまう
↓
• ハダカデバネズミ(naked mole rat)
→30年以上、生きる。
癌にとてもなりにくい(ヒトも同じ)
体温が低目。社会性をもつ。
活動の休止時間は短い
141
ハダカデバネズミ
142
アウトライン
1. 生物にとっての時間とは?
2. リズムを刻む:概日周期生物時計
3. 止まる時間:睡眠、冬眠、休眠
4. ショウジョウバエの睡眠…哺乳類との類似性
5. ゾウの時間・ネズミの時間
6. 寿命と老化を考える
143
144
24
2014/9/6
寿命を規定する因子は単一ではない
• 寿命=個体(多細胞生物)レベルの概念
• ただし、単細胞レベルでも、寿命は存在
→テロメアによる分裂回数制限
• 不死化細胞(HeLa, ES/iPS)の存在
• 単細胞生物にも「交配・交雑」は存在
6.寿命と老化
まとまらない、まとめ
146
これまでの知見
Fig. 3. Life span and energy metabolism.
• 基本的には、カロリー少な目が長寿命
• インスリンシグナルが強すぎると短寿命
マウス:インスリン受容体、IRS-2
ショウジョウバエ:chico
• マウスでは、脳による制御も重要
A Taguchi et al. Science 2007;317:369-372
147
異なる種の結果の問題
148
まとめ
主な(老化時)死因が異なる
• ヒト:感染症→動脈硬化性疾患・癌
• マウス:癌
癌とダイエット(腸内細菌叢)の関連
• ショウジョウバエ:感染
生物は、さまざまな形で時を測る
休息(睡眠)には、一定の普遍性がある
寿命は、さまざまな要因に影響を受ける
動物の寿命を最長にする代謝量と、その
規定する活動・休息(睡眠)量が存在する
• ドーパミンは意欲を高め活動を増やす
が、寿命は短くする…かもしれない?
•
•
•
•
ご清聴、ありがとうございました!
149
150
25