論 文 内 容 の 要 旨

氏
名:
今田
憲二郎
論 文 題 名 : M ut ua l R e gula ti on b et we e n Ra f/ MEK/ERK S i gna li ng a nd
Y- B ox- Bi ndi ng Pr ote i n-1 Pr o mot e s Pr os ta t e Ca nc er Pr ogr e ss i on
( 前 立 腺 癌 進 展 に お け る Y-b ox-b i ndi ng pr ot ei n-1 と Ra f/ MEK/E RK 経 路 の 相 互 制 御 )
区
分:甲
論
文
内
容
の
要
旨
目 的 : Y-box-binding protein-1( YB-1)は 細 胞 増 殖 、抗 ア ポ ト ー シ ス 作 用 、上 皮 間 葉 移 行
や前立腺癌での去勢抵抗性などに関与した、様々な機能を示すことが知られている。し
か し 、YB-1 が ど の よ う に が ん 生 物 学 に 影 響 を 及 ぼ す の か 、特 に YB-1 と 分 裂 促 進 因 子 活
性 化 タ ン パ ク 質 キ ナ ー ゼ ( mitogen-a ctiva ted protein kinase; MAPK) と の 関 係 に つ い て は
未 だ 知 ら れ て い な い 。 そ の た め 、 我 々 は 前 立 腺 癌 に お け る YB-1 と MAPK 経 路 の 相 互 作
用について研究した。
実験手法:前立腺癌細胞株を用いて、定量的ポリメラーゼ連鎖反応、ウエスタンブロッ
テ ィ ン グ 、 共 免 疫 沈 降 法 を 行 っ た 。 ま た 、 165 例 の 前 立 腺 癌 臨 床 検 体 を 用 い て 、 YB-1、
リ ン 酸 化 YB-1、ERK2 蛋 白 の 免 疫 組 織 化 学 染 色 を 行 っ た 。YB-1、 リ ン 酸 化 YB-1、 ERK2
蛋白の核発現と臨床病理学的事項を比較検討した。
結 果 : 上 皮 成 長 因 子 ( epiderma l growth fa ctor; EGF) は リ ン 酸 化 YB-1 発 現 を 上 昇 さ せ 、
MEK 阻 害 剤( U0126、PD98059)は リ ン 酸 化 YB-1 発 現 を 低 下 さ せ た 。逆 に 、YB-1 を sma ll
interfering RNA( siRNA)を 用 い て ノ ッ ク ダ ウ ン す る と 、ERK2、リ ン 酸 化 MEK、リ ン 酸
化 ERK1/2、 リ ン 酸 化 RSK 蛋 白 発 現 が 低 下 し た 。 さ ら に 、 YB-1 は ERK2 や Ra f-1 と 相 互
に作用し、プロテアソーム経路を通じてその発現を制御した。免疫組織化学染色では、
YB-1、リ ン 酸 化 YB-1、ERK2 蛋 白 核 発 現 の 間 に そ れ ぞ れ 相 関 を 認 め た 。Cox 比 例 ハ ザ ー
ド モ デ ル に お い て 、 ERK2 蛋 白 発 現 は 独 立 し た 予 後 因 子 だ っ た ( ハ ザ ー ド 比 7.947; 95%
信 頼 区 間 3.527-20.508; P < 0.0001) 。
結 論 : 我 々 は YB-1 と MAPK 経 路 の 機 能 的 な 関 係 と 、 前 立 腺 癌 進 展 に お け る そ の 生 化 学
的 な 関 連 性 を 明 ら か に し た 。 加 え て 、 ERK2 蛋 白 発 現 は 独 立 し た 予 後 因 子 だ っ た 。 こ れ
ら の 研 究 結 果 は 、 ERK 経 路 お よ び YB-1 の 両 者 が 前 立 腺 癌 の 診 断 や 治 療 に お け る 分 子 標
的となる可能性を示した。