数理論理学 配布資料 (山田) 証明法 (演習問題の解答) 演習の実施後に読むことを推奨! ●演習問題(集合論に関する性質の証明) (1) A ∪ B ⊆ C ⇔ A ⊆ C ∧ B ⊆ C [証明](⇒) A ∪ B ⊆ C を仮定して,A ⊆ C と B ⊆ C を示す.A ⊆ C を証明するため,x ∈ A を 仮定して x ∈ C を導く.x ∈ A と和集合の定義より x ∈ A ∪ B .これと仮定 A ∪ B ⊆ C より x ∈ C . B ⊆ C の証明も同様である.(⇐) A ⊆ C と B ⊆ C を仮定して,A ∪ B ⊆ C を示す.A ∪ B ⊆ C を 証明するため,x ∈ A ∪ B を仮定して x ∈ C を導く.仮定 x ∈ A ∪ B と和集合の定義より,(a) x ∈ A または (b) x ∈ B だから,この二つの場合分けにより x ∈ C を導く.(a) の場合は仮定 A ⊆ C より x ∈ C .(b) の場合は仮定 B ⊆ C より x ∈ C . (2) A × B ⊆ C × D ⇒ A ⊆ C ∧ B ⊆ D [反証]A = ∅, B = {1, 2}, C = {0}, D = {1} とおけば,A × B = ∅ と C × D = {(0, 1)} が成り 立つから,A × B ⊆ C × D だが,B ⊆ D が成り立たない. なお,次のように前提を強めれば,含意が成立するようになる. A=∅ ∧ B =∅ ∧ A×B ⊆C×D ⇒ A⊆C ∧ B ⊆D [証明]A = ∅ と B = ∅ と A × B ⊆ C × D を仮定して,二つの包含関係 A ⊆ C と B ⊆ D を示 す.まず,包含関係 A ⊆ C を証明するため,x ∈ A を仮定して x ∈ C を導く.仮定 B = ∅ より, B には少なくとも 1 つの要素 y が存在するので,直積集合の定義より (x, y) ∈ A × B .これと仮 定 A × B ⊆ C × D より (x, y) ∈ C × D.これと直積集合の定義より x ∈ C .もう一つの包含関係 B ⊆ D も,仮定 A = ∅ を使えば同様に証明できる. (3) ∃A ⊆ N ∀B ⊆ N (A ∩ B = B ∧ B ∩ A = B) [証明]A = N とおけば,任意の自然数集合 B について,A∩B = N∩B = B かつ B∩A = B∩N = B . (4) 自然数上の演算 f を,n が偶数のとき f (n) = n div 2,n が奇数のとき f (n) = 2 × (n div 2) + 1,と 定めると,∀m ∈ N ∃n ∈ N f (n) = m [証明]任意の自然数 m について,n = 2m とおく.n は偶数だから,f の定義より f (n) = f (2m) = (2m) div 2 = m. (5) 関係 R′ を xR′ y ⇔ xRy ∧ ¬ yRx と定めると,R が推移的ならば R′ も推移的. [証明]R が推移的であると仮定する.R′ が推移的であることを示すため,任意の要素 x, y, z につ いて,xR′ y と yR′ z を仮定して xR′ z を証明する.xR′ z を示すには,R′ の定義より,(a) xRz が成 立する,(b) zR′ x が成立しない,の二つを示す必要がある.まず,(a) を証明する.仮定 xR′ y と 仮定 yR′ z と R′ の定義より,xRy かつ yRz だから,R の推移性より xRz .次に,(b) を背理法に より示すため,zR′ x を仮定して矛盾を導く.仮定 zR′ x と仮定 xR′ y と R′ の定義より,zRx かつ xRy だから,R の推移性より zRy .一方,仮定 yR′ z と R′ の定義より zRy は成立しないが,これ は zRy に矛盾する. 山田 俊行 http://www.cs.info.mie-u.ac.jp/~toshi/ 1
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