(リマインダー)改正されたPCT規則が7月1日に発効 -国際調査機関の見解書の公開時期が早まる- -国際予備審査にトップ・アップ調査を導入- 〔概要〕 (1)国際調査機関の見解書(WO/ISA)が第三者に利用可能となる時期が優先日 から 30 カ月経過後でしたが、PCT 規則が改正され、国際公開日となり 12 カ月早まり ます。 この改正により、2014 年 7 月 1 日以降に出願される国際出願について作成される 国際調査機関の見解書(WO/ISA)は、当該国際出願の国際公開の日より 「PATENTSCOPE1」から入手し利用可能となります。 (2)また、国際予備審査にトップ・アップ調査(Top-up Searches)が導入され、国際調 査完了後に公開されたため国際調査の時点で利用可能でなかった特許文献の調査 を国際予備審査において行うことにより、精度の高い国際予備審査が行われます。 トップ・アップ調査は、国際出願日に関係なく 2014 年 7 月 1 日以降に国際予備審 査請求がされる国際出願に適用されます。 <目 次> 1.国際調査機関の見解書(WO/ISA)の第三者への提供時期が早まる 2.国際予備審査にトップ・アップ調査を導入 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 本件 PCT 規則改正に関する記事は 2013 年 10 月 31 日付でホームページに掲 載しましたが(タイトルは、PCT 同盟総会が開催される(2013 年秋))、改正された PCT 規則が本年 7 月 1 日に発効するため、一部加筆・修正して再度掲載したもの です。 本件 PCT 規則改正は、第 44 回 PCT 同盟総会(2013 年 9~10 月)において採 択されました。 1 〔詳細〕 1.国際調査機関の見解書(WO/ISA)の第三者への提供時期が早まる -2014 年 7 月 1 日発効- 現在、国際出願について作成された国際調査機関の見解書(WO/ISA)は、当該 国際出願の優先日から 30 カ月経過後に「PATENTSCOPE1」において公開され、第 三者が利用可能になります(規則 44 の 3.1)。 しかし、今回の規則改正により、国際調査機関の見解書(WO/ISA)は国際公開 の日から利用可能になります。ただし、原文の言語で公開されます。英訳は国際事 務局が作成しますが、この時点では作成されておりません。 この改正により、2014 年 7 月 1 日以降に出願される国際出願について作成される 国際調査機関の見解書(WO/ISA)は、当該国際出願の国際公開の日から 「PATENTSCOPE1」から入手し利用可能となります。 同様に、国際調査機関の見解書に対して出願人が提出する「非公式コメント」も、 国際公開の日から「PATENTSCOPE1」から入手し利用可能となります。このコメント も原文の言語で公開されます。そして、国内段階に移行するとき、出願人が移行する 国の公用語に翻訳して提出します。 <規則改正の内容> ・規則 44 の 3.1 の削除 国際事務局及び国際調査機関は、優先日から 30 カ月を経過する前に、いかなる 者又はいかなる当局に対しても、国際調査機関の見解書(WO/ISA)が知得される ようにしてはならない、と規定したPCT規則 44 の 3.1 が削除されました。 ・規則 94.1(b)の改正 これに伴い、国際事務局が保有する一件書類の利用に関し、「国際事務局は、第 38 条及び規則 44 の 3.1 の規定に従うことを条件とし、かつ、国際出願が国際公開さ れた後はいかなる者の請求にも応じ、役務の費用の支払いを条件として、一件書類 中の文書の写しを提供する。」、と規定されていた規則 94.1(b)から「及び規則 44 の 3.1」が削除されました。 改正前は、国際調査機関の見解書(WO/ISA)及び非公式コメントは国際出願の 優先日から 30 カ月が経過するまで利用可能になりませんでしたが、上記規則改正に より国際出願の国際公開の日から利用可能になりました。 2 2. 国際予備審査にトップ・アップ調査を導入することが採択される -2014 年 7 月 1 日発効- 国際予備審査に「トップ・アップ調査(Top-up Searches)」を導入することがPCT同 盟総会で採択され、トップ・アップ調査に関する規定が新たに設けられました。 [トップ・アップ調査とは] トップ・アップ調査は、国際予備審査において、国際調査が完了した後に公開され 利用可能となった特許文献から関連する文献を見つけることを目的としています。 トップ・アップ調査が国際予備審査に導入されることにより、国際調査完了後に公 開されたため国際調査の時点で利用可能でなかった特許文献も国際予備審査にお いて調査の対象となり、精度の高い国際予備審査が行われます。 国際予備審査請求の件数は 2001 年をピークに減少していますが、トップ・アップ調 査の導入により、国際予備審査においてより精度の高い結果が得られ、国際予備審 査の利用価値が高まることが期待されます。 [国際予備審査請求件数の推移] 3 <新たに設けられたトップ・アップ調査に関する規則> トップ・アップ調査に関し新設される規則を以下に記します(理解し易くするため公 定訳文とは異なった表現となっておりますが内容は同じです2)。 〇規則 66.1 の 3 (新設) 国際予備審査機関は、国際調査報告が作成された日の後に公開された又は当 該予備審査機関にとって調査のために利用可能となった規則 64 に規定された「国 際予備審査における先行技術」を発見する調査(トップ・アップ調査)を行う。ただ し、当該調査が有用でないと考える場合を除く。 国際予備審査機関が、第 34 条(3)(国際出願が発明の単一性の要件を満たして いない)又は(4)(国際出願の対象が国際予備審査を要しないとされている)、又は 規則 66.1(e)(国際調査報告が作成されていない発明に関する請求の範囲である) のいずれかに該当することを発見したとき、トップ・アップ調査は国際予備審査の対 象となる国際出願の一部のみについて予備審査を行う。 〇規則 70.2(f) (新設) 国際予備審査報告には、規則 66.1 の 3 に規定されたトップ・アップ調査がされた 日付を表示し、又はトップ・アップ調査がされなかったことを記述する。 [トップ・アップ調査がされない場合] なお、提案されている規則では、国際出願が発明の単一性の要件を満たしていな い(第 34 条(3))、国際出願の対象が国際予備審査を要しないとされている(第 34 条 (4))、又は国際調査報告が作成されていない発明に関する請求の範囲である(規則 66.1(e))、のいずれかに該当する場合は、これらに該当しない国際出願の一部のみ についてトップ・アップ調査を行えばよいとされています。 [トップ・アップ調査の導入時期について] トップ・アップ調査導入のための上記新設規定は 2014 年 7 月 1 日に発効し、国際 出願日に関係なく、2014 年 7 月 1 日以降に国際予備審査請求がされた国際出願に 適用されます。 なお、トップ・アップ調査導入のために、国際予備審査機関がトップ・アップ調査を 行うための準備をし、「実施細則」及び「国際調査及び国際予備審査ガイドライン」の 修正がされます。 4 PATENTSCOPE:インターネット上で“PCT Resources”と入力し、“Patent Data”の項 目に含まれている“PATENTSCOPE Search Service”をクリックすると、国際出願番号 等を入力する枠が表示されるので、そこに番号を入力すると当該番号の国際出願に係る一 件書類にアクセスできます。 2. 規則66.1の3の英語の原文 66.1ter Top-up Searches The International Preliminary Examining Authority shall conduct a search (“top-up search”) to discover documents referred to in Rule 64 which have been published or have become available to the said Authority for search subsequent to the date on which the international search report was established, unless it considers that such a search would serve no useful purpose. If the Authority finds that any of the situations referred to in Article 34(3) or (4) or Rule 66.1(e) exists, the top-up search shall cover only those parts of the international application that are the subject of international preliminary examination. 2014年6月23日 (IP情報室) ⓒSEIWA PATENT&LAW 特許 5 制度改正 条約
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