講義ノート10

数値計算法
行列の固有値問題:対称行列
Lecture 10
田中美栄子
対称行列
対称行列とは
A=AT
となる行列で (i,j)成分と(j,i)成分が等しい行列
のこと
例えば
 3  1  1


A    1 1  1
1 1 3 


対称行列の固有値と固有ベクトル
• Aが対称行列 AT  A ならば固有値は比較的簡
単に求められる.
• 回転行列Vはその転置行列 VT が逆行列に等しい
つまり V T = V-1
0 0 0 



T
V AV  


のように対角化できる.
1
0
0
0
2
0
0

0 0 
. 0 

0 n 
こうして対称行列の固有値は簡単に求められる
対称行列の固有値・固有ベクトル
3×3行列であるAの固有値と固有ベクトルを
求めてみよう AX = λX が定義となる
 3  1  1


A    1 1  1
1 1 3 


より次の3式を得る
x
 
X   y
z
 
固有値方程式 AX=λX を解く
3x-y-z=λx
(1) →
-x+y-z=λy
(2) →
-x-y+3z=λz (3) →
(3-λ)x-y-z=0
-x+(1-λ)y-z=0
-x-y+(3-λ)z=0
(1’)-(2’) から (3-λ)x-y = -x+(1-λ)y
まとめると
(4-λ)x = (2-λ)y
(1’)-(3’) から (3-λ)x-z = -x+(3-λ)z
まとめると
(4-λ)x = (4-λ)z
つまり x = z あるいは λ = 4
λ = 4 の固有ベクトルを求めると
(1’)
(2’)
(3’)
(4)
(5)
λ=4の固有ベクトルを求める(続)
• λ=4を(1)(2)(3)に代入すると
3x –y –z = λx
(1) → -x –y –z = 0 (1’)
-x + y –z = λy
(2) → -x -3y –z = 0 (2’)
-x -y + 3z = λz (3) → -x –y –z = 0 (3’)
(1’)と(2’)から y = 0
(1’)に代入して x + z = 0
長さ1に規格化すると固有ベクトルはつぎのよう
になる
λ=4の固有ベクトル
X
(  4)
1
1  

0
2 
  1
固有ベクトルは全部で3つある
• 後の二つに関しては x = z のはずなので
(3-λ)x-y-z=0
(1’) → (2-λ)x-y=0
-x+(1-λ)y-z=0
(2’) → (1-λ)y-2x=0
の両方から,(1-λ)(2-λ)x-2x=0
X=0または (1-λ)(2-λ)=2 → λ2-3λ=0
よって λ=0, λ=3 が求められる
それぞれの固有ベクトルを求める
λ=0とλ=3それぞれの固有ベクトル
• まずλ=0に対しては(2-λ)x-y=0 より y=2x
なので
1
X
(  0 )
1  

 2
6 
1
• 次にλ=3に対しては x+y=0より
X (  3 )
1
1  

  1
3 
1
まとめると
 1/ 6

T
X AX   2 / 6

 1/ 6
1 / 6

 1/ 3

1 / 2
T
1/ 3
1 / 2   3  1  1 1 / 6
 

 1/ 3
0    1 1  1 2 / 6


1 / 3  1 / 2    1  1 3  1 / 6
2/ 6
1 / 6  0
3
2 2 


 1 / 3 1 / 3  0  3
0 


0
 1 / 2  0
3 2 2
0 0 0


 0 3 0
0 0 4


1/ 3
1/ 2 

 1/ 3
0 

1/ 3  1/ 2 
確認
• 対称行列の異なる固有値の固有ベクトル
同士は直交する.つまり内積がゼロになる
X (  0 )
•
X
(  4)
1
1  

 2
6 
1
 1 
1  

 0 
2 
  1
X (  3 )
1
1  

  1
3 
1
について確認せよ
注意
• Aが対称行列でない時は,Xは回転行列では
なく、固有ベクトル同士も一般に直交しない
• 以上の方法は固有方程式(特性方程式とも言
う)を解いて固有値を求める方法と等価であ
る