ラクロス競技におけるスロー動作の研究

ラクロス競技におけるスロー動作の研究
渡邊太郎(東海大学大学院)
1.背景及び研究目的
栗山雅倫(東海大学)
テム(Frame DIAS Ⅳ:DKH 社製)を用い
ラクロスにおけるスローは、不可欠な技術
て、
三次元DLT 法により動作解析を行った。
だと認知されている。しかし、ラクロスのス
分析対象は、的に当たった 1 試技と的から
上方または下方に大きく外れた 1 試技を無作
ロー動作に関する研究事例は数少ない。
そこで本研究では、ラクロスにおいて一般
為に抽出し、上方群と下方群に分けた。
的に用いられるオーバーハンドスローを対
象とし、スティック操作がボールコントロー
3.結果及び考察
ルの正確性に及ぼす影響と、男女間における
1)リリースポイント(以下、RP)について
スティックの特性の相違がスロー動作に及
スティックのエンド(以下、エンド)とス
ぼす影響を明らかにすることによって、ラク
ティックとヘッドの結合部(以下、ネック)
ロスのスロー技術向上に役立てることを目
をデジタイズポイントとし、Y-Z 方向から見
的とした。
たエンド、
ネックと RP の分析を実施した
(図
1、2)
。当たった試技はエンドとネックの交
2.研究方法
点が RP と一致する傾向が見られた。これは
1)被験者
Y-Z 方向から見たとき、スティックと地面が
T 大学体育会所属の男子ラクロス部員10 名
垂直な状態でボールがリリースされている
(身長173.1±4.3cm、体重68.2±6.6kg、競技
と考えられる。一方、上方に外れた試技は
歴 2.0±1.1 年、年齢 19.4±1.1 歳、右利き)、
RP より交点が遅くなる傾向が見られた。こ
女子ラクロス部員 11 名(身長 160.6±3.5cm、
れはスティックが後傾した状態でボールが
体重 54.0±5.0kg、競技歴 2.6±1.7 年、年齢
リリースされていると考えられる。逆に下方
19.8±0.9 歳、右利き)を被験者とし、実験を行
に外れた試技は RP より交点が早くなる傾向
った。
がみられた。これはスティックが後傾した状
2)測定方法
態でボールがリリースされていると考えら
横 3m(X 方向)×縦 4m(Y 方向、投球方
れる。この傾向は男女に共通して見られた。
向)×高さ 3m(Z 方向)の試技エリアを設
(cm)
定し、規定位置から 5.48m 離れた直径 40cm
350
の的に向かって 10 球のウォーミングアップ
300
を行った後、同様に 20 球の試技行わせた。
250
RP
エンド
男女それぞれ同一のスティックを用いた。試
200
技は投球方向に向かって右前方と右後方に
:当たり
:上方
ネック
150
設置したハイスピードカメラ(CASIO
0
5
10
15
20 (コマ)
図 1 男子上方群 G の Y-Z 方向から見たエンドとネックの変位
EXILIM 240fsp)によって撮影した。
3)データ分析
得られた映像を基に、ビデオ動作解析シス
67
-15
エンド
-20
300
250
200
150
5
10
15
a d e g h k
-15
-20
-25
-25
-30
-30
-35
-35
-40
-40
-45
-45
図 4 TB 値の比較(女子,上方群)
:当たり
:下方
ネック
0
(cm)
-10
(cm)
-10
RP
(cm)
350
b
c
f
i
j
図 5 TB 値の比較(女子,下方群)
20 (コマ)
表1 TB値の平均値比較(cm)
図 2 男子下方群 D の Y-Z 方向から見たエンドとネックの変位
2. テイクバック(以下、TB)について
Y-Z 方向から見たエンドとネックの Z 成分
の差“エンド-ネック”の最大値の局面を
RP 前にスティックが一番傾いた局面ととら
4.まとめ
え TB 局面、そのときの差の値を TB 値と定
正確性の高いスローはスティックの特性
義した。
に関わらず、投球方向の真横から見て地面と
各被験者TB値の比較を実施した
(図3、
4、
垂直な状態でボールがリリースされる傾向
5、6、表 1)
。女子に比べ男子の方が TB 値が
が見られた。この状態でのリリースを先取り
大きい傾向が見られた。これは女子よりも男
し、スティックの特性やフォームを考慮し、
子のスティックはボールを保持しておくポ
TB 局面におけるスティックの傾きを決定し
ケットと呼ばれる部分が深く、ボールがポケ
ていると考えられる。
ットから転がりにくいため、スロー時により
よって男女に関わらず、スロー技術向上に
スティックを傾けないとスローを行うこと
は、RP の把握と TB 局面でのスティック操
が困難になるからだと考えられる。
作の二点が重要であることが示唆された。
また、当たりの試技に比べ、上方に外れた
試技は TB 値が大きい傾向が見られた。これ
5.引用参考文献
は TB 時にスティックの傾きが大きくなり、
・白木啓子ら(2003).ラクロスのパス技術と正
ポケットからボールが転がり出すタイミン
確性に関する研究 (バイオメカニクス).体力
グが早くなったために RP が早まり、上方に
科學.52(6). 802
外れたと考えられる。逆に下方に外れた試技
・高崎宗倫ら(2008).女子ラクロスにおけるシ
は TB 値が小さい傾向が見られた。
これは TB
ュートスピードの簡易的評価法:クロスによ
時にスティックの傾きが小さくなり、ポケッ
る遠投距離からの評価による一考察.日本体
トからボールが転がり出すタイミングが遅
育学会大会予稿集.(59).192
くなったために RP が遅くなり、下方に外れ
・大久保宜浩(2012).ゼロから始めるラクロス.
たと考えられる。 この傾向は男女に共通し
実業之日本社
て見られた。
(cm)
・田中滋(2006).ラクロス即上達バイブル.東邦
20
(cm)
20
15
15
10
10
5
5
0
-5
B
C
F
G
J
0
-5
-10
-10
-15
-15
図 2 TB 値の比較(男子,上方群)
出版
A
D
E
H
I
図 3 TB 値の比較(男子,下方群)
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