当日配布資料(1.13MB)

脂肪肝診断のための市販超音
波診断装置のアタッチメント
大阪府立大学
工学研究科 電子物理工学科
教授 堀中 博道
1
従来技術とその問題点
脂肪肝の診断には、超音波エコー装置が用いられ
ているが、初期の脂肪肝は検出できない。
MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)を用
いると脂肪肝の定量評価も可能であるが、装置が
大きく、高価で、測定時間もかかる。
最近、肝脂肪測定機能を持つファイブロスキャンが
市販されているが、単一機能の装置としては高価。
2
新技術の特徴・従来技術との比較
• 超音波速度の温度依存性が水中と脂肪中で符
号まで異なることを利用した新しい測定原理に基
づく装置であり、脂肪肝の初期段階の診断に適
用できる。
• 小型、軽量、安価でほぼリアルタイムである。
• 市販の超音波エコー診断装置に取り付けるだけ
で脂肪肝の診断に適用できる。
3
想定される用途
• 脂肪肝の初期診断(未病の段階で検出)
• 生体内部の脂肪分布、脂肪割合の検出
• 剥がれやすい血管プラークの発見(脳梗塞、心筋
梗塞の予防)
• 小型、安価、リアルタイムなので健康診断、ベッド
サイドでの診断
4
検出原理
超音波アレイトラン
スデューサ
加温用超音波
トランスデューサ
超音波速度
(m/s)
1550
1550
水
1.9 m/s℃
1500
1500
1450
脂肪
- 4.9 m/s℃
1450
I
1400
1400
35
36
36
37
38
39
38
40
40
41
組織境界
42
42
温度 (℃)
水中、脂肪中の超音波速度の温度依存性
II
生体組織
水は温度上昇によって超音波速度が
増加する特殊な液体
v n  v
 n
I
II
2
加温前
n
vn : 超音波速度変化
n : エコーパルスシフト
加温後
 n : エコーパルスの間隔
v : 温度変化前の超音波速度
時間
1
1 + 2
5
移動補償プログラムの開発
アレイトランデューサー
加温用超音波
トランスデュー
サー
-振動ファントムでの検証-
X-axis
Y-axis
Z-axis
ステージコントローラ
微動機
鶏肉
脂肪
移動補償なし
ウサギの呼吸、鼓動を再現(振幅、速度)
超音波振幅画像
移動補償あり
超音波速度変化画像
6
家兎での実証実験
加温用超音波
トランスデューサー
標準的なウサギの肝臓
V/V
0.5%
0%
-0.5%
超音波エコーカメラ(SSD-500)
脂肪が蓄積されたウサギの
肝臓
V/V
信号処理システム(PXI)
超音波速度変化イメージング装置
周波数
画像用超音波アレイトランスデューサー:7.5 MHz
加温用トランスデューサー:1.0 MHz
0.5%
0%
-0.5%
7
開発装置の検証
-麻酔下のウサギへの適用-
大阪市立大学医学研究科での実験の様子
8
肝臓の脂肪蓄積に対する超音波速度変化
超音波速度変化割合 (%)
0.06
con-1
con-2
r = -0.90 (p < 0.005)
con-1,2:
正常肝の兎
0.04
2w-1
2w-1,2,3:
0.02
高栄養食を
2週間続けた兎
2w-3
0
4w-1
-0.02
2w-2
4w-1,2,3:
-0.04
4w-2
高栄養食を
4週間続けた兎
4w-3
-0.06
2
4
6
肝臓内の脂肪蓄積割合 (%)
8
肝臓部分の超音波速度変化は摘出肝の顕微鏡観測で求めた脂肪
蓄積割合と高い相関を示した
9
プロトタイプ1号機
画像用超音波
アレイプローブ
装置の構成
SSD-500 (超音波画像装置
アナログ方式) 送受信ボード
ディスプレ
イ
コントローラ
キーボード
高速AD変換器
高速HDD
ファンクション
ジェネレータ
高周波パワー
アンプ
加温用超音波
プローブ
10
脂肪肝診断装置
• 超音波速度変化イメージング法によって家兎の肝
臓の脂肪状態を観測することが可能であった。
• 人の肝臓の場合は、肋骨の間から診断するため
加温と画像検出を同じ部分から行う必要がある。
JSTのプロジェクトでは,加温と画像測定を同じトラン
スデューサーで行う脂肪肝診断の専用装置の開発を
行っている。
他の方法 ⇒市販装置のアタッチメントとして開発
11
市販の超音波エコー装置で脂肪肝診断
①市販超音波診断装置は測定部位の設定、確認に用いる。
②音響ミラーで切り替え
③加温
④超音波速度変化測定
⑤脂肪割合に換算、表示
②、③、④、⑤を行う超音波トランスデューサーとその信号
処理回路をアタッチメントとして開発する。
*肝臓内部で脂肪の分布はほぼ一様であり、中心値のみでよい。
⇒単眼(1ch)のトランスデューサーで加温、超音波速度変化計測を
行う。
12
アタッチメントの構造例
市販の超音波
診断装置のプ
ローブ
加温+超音波
速度変化測定
用トランス
デューサー
切替え
超音波ミラー
表面 ガラスなど
裏面 吸収材ブチルゴム等
正面図
診断部位の決定
シリコーンゴム
超音波を透過
加温、超音波
速度変化測定
側面図
13
装置全体の構成
市販超音波診断装置は測定部位の設定,確認にのみ用いる。
加温制御,超音波速度変化測定は,専用回路ボードで行われ,PCで
処理され,脂肪割合を求める。
PCにはエコー波形が表示され,演算範囲を入力し超音波速度変化
割合,脂肪割合が表示される。
正弦波 発生部(加温用)
ミラー切り替え信号部
超音波パルス送信部
エコー信号受信部
AD変換部
メモリ部
脂肪肝診断用
制御部
アタッチメント
制御、信号処理回路ボード
市販の超音波診断装置
PC
表示内容
・エコー波形(1ch)
・超音波速度変化
・脂肪割合
14
深部の脂肪割合測定のためのアタッチメントの試作例
加温用超音波トランスデューサー
(伊藤超短波のプローブ(1MHz))
薄い金属板
(切り替える)
超音波速度変化測
定用トランスデュー
サー(ジャパンプロー
ブの探針 (1-3MHz))
C
B
超音波アレイトランスデュー
サー(SSD-500用のプロー
ブ(7.5MHz))
A
シリコーンゴムに
よる窓
ポジション
A :Bモード画像測定
B:超音波による加温
C:超音波速度変化測
定
Bモード画像測定
市販の装置を用いる
市販の超音波診断装置
のプローブ
加温,超音波速度変化
専用の装置を作製
15
加温用トランスデューサーによる生体深部の加温の検証
16
生体疑似ファントムにおける超音波による深部の加温特性
実験結果
シミュレーション結果
℃
2.0
1.0
0
5
深さ (cm)
10
人の肝臓の診断に必要な5cm以上の深さでも十分な加温が可能である
17
実用化に向けた課題
• 試作したアタッチメントを市販装置と組み合わせ、
生体疑似ファントムに適用して、内部の脂肪量の
評価の実験を行い、改良する。
• 今後、家兎,大型動物について実験データを取
得し、ヒトに適用していく場合の条件設定を行う。
• 医工連携研究を継続し、医師目線で使い易い構
造、必要な表示内容、画面構成などを決定する。
18
企業への期待
超音波エコー装置を開発、販売している企業、電
子計測機器、超音波装置企業との共同研究開発
開発内容
・ 装置試作、
・ 超音波プローブの設計、作製
・ 音響ミラーの切り替え構造
・ 信号処理回路、処理プログラムの改良など
19
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:
脂肪診断用付属装置および脂肪診断システム
• 出願番号: 特願2014-135343,特願2014-135344
• 出願人 : 大阪府立大学、大阪市立大学
• 発明者 : 堀中博道、森川浩安
20
産学医工連携の経歴
• 2011年-2012年 キヤノン財団 「産業基盤の創生」
に採択
医工連携研究
大阪市大 医学研究科、大阪府大 工学研究科
• 2012年-2014年 JST研究成果展開事業に採択
先端計測機器分析技術・機器開発プロジェクト
産学医工連携研究開発
大阪府大 工学研究科、大阪市大 医学研究科、
㈱アドバンテスト
21
お問い合わせ先
大阪府立大学
産学官研究連携戦略室 コーディネータ
野村 幸弘
TEL 072-254- 8263
FAX 072-254- 7475
e-mail [email protected]
22