近傍渦巻銀河分子ガスの速度ベクトルの導出

筑波大学
茨城大学
University of Tsukuba
Ibaraki University
近傍渦巻銀河分子ガスの速度ベクトルの導出
1,
2,
2
宮本 祐介
中井 直正
久野成夫
2
城大学 宇宙科学教育研究センター, 筑波大学
1
Introduction�
Problem�
大質量星の母体である巨大分子雲 (GMC:質量
10 5­6 M ⊙ ) と巨大分子雲複合体 (GMA:質量
107­8M⊙) の進化を明らかにすることは、星形成、
銀河進化を理解するうえで重要である。
最近の観測から、渦状腕間にもGMC・GMAが
多く存在することが明らかになってきた。これ
らは銀河ダイナミクスの影響によって形成され
ると考えられている。
これまで、渦巻銀河内のGMC・GMAは、
(1). 渦状腕上流での分子雲同士の衝突や銀河衝撃
波によるガス圧縮等によって渦状腕で形成され、
GMC・GMAの進化の理解するためには観測的
に銀河内のガスのダイナミクスを明らかにする
ことが必要である。
カラー:CO積分強度
コントア:速度場
Vrot
θ1
Vobs
Vrot
Vobs 1
θ1
視線方向
Line-of-sight
"
Minor Axis Systemic velocity;Vsys ii :: iinncclliinnaattiioonn "#
しかし、非円運動をしている渦巻銀河のガスの
速度ベクトルを観測される速度成分Vobs から直
接導出することは難しい。
(2). 渦状腕下流で生成された大質量星の紫外線や
超新星爆発によって解離されて渦状腕間に放出さ
れる、 と考えられてきた。
Analysis�
Main Axis
#
#"
Vobs
Galactic Disk
方位角(θ1)にあるガスの観測される速度
Vobs 1=Vsys+Vrot cos (θ1) sin i
(ガスがVrotで円運動をする場合)
Idea: 渦状腕に対してガスが系統的に振る舞う場合、渦状腕から同位相(同Spiral Phase)にあるガスの速度ベクトル:V(V,φ) は観測
された速度(2点以上)から求めることが出来る*。(Kuno & Nakai 1997)
1.  Spiral Phaseの基準の決定 (例. M51)
*渦状腕に対するガス運動がランダムな場合、得られる速度ベクトルの分散が大きくなる。
2.  速度ベクトルの導出
3.  銀河面全体の速度ベクトル
Pitch Angle =19 1 (40 ≤ R ≤ 140 )
Arm 1をSpiral Phase ψ=0
Arm 2をSpiral Phase ψ=360 と定義。
VVoobbss11 VVoobbss22 VVoobbss33 同じSpiral Phaseに
あるガスの速度ベク
トルV は、各観測点
で異なった速度
(Vobs1,Vobs2 ...)
として測定される。
VVeelloocciittyy VVeeccttoorrss VV ((VV,,φ)) 最小2乗fitting
VV φ
Spiral Phase (ψ) での
速度ベクトルV(V,φ)
Spiral Phase = ψ
Spiral Phase = ψ
Arm 1
M51 disk上の分子ガスの代表的な速度ベクトル
40 ≤ R ≤ 110 (赤い領域)
110 ≤ R ≤ 140 (青い領域)
Spiral Phaseの間隔Δψ=20
VVoobbss11 VVoobbss22 視線方向
Arm 2
Spiral Phase (ψ)での速度ベクトル V(V,φ) は、
2つ以上の観測点 (θ1、θ2) で測定された速度
(Vobs1、Vobs2)から導出できる。
gas stream
Result�
M51のガスの速度ベクトルと面密度の変化
銀河衝撃波粒子モデル (Roberts 1990)
M51
gas stream
gas stream
Arm 1
M 5 1 銀 河 円 盤 の 内 側 (40 ≤ R ≤ 110 )
の速度ベクトルと分子ガス
面密度のSpiral Phaseに対
する変化は銀河衝撃波粒子
モデルとよく一致
Arm 2
V¦¦ (km s-1)
V
(km s-1)
gas stream
0
120 240
360 480
Spiral Phase (degree)
600
720
Summary �
•  観測的に近傍渦巻銀河(M51, M100, M81)のガスの速度ベクトルの導出に成功した。
•  得られた速度ベクトルのSpiral Phaseに対する変化は銀河衝撃波粒子モデルとよく一致する。
Reference�
・ N. Kuno & N. Nakai 1997 PASJ, 49, 279,�����・ W. Roberts et al. 1990, NYASA, 596, 130,�����・ Y. Miyamoto et al. 2014 PASJ, 66, 36�