41479

日本建築学会大会学術講演梗概集
(近畿) 2014 年 9 月
41479
直流電源・情報統合供給によるパーソナル・スイッチを有する LED 照明システムの実証
(その2)人の行動特性を考慮した実証評価
2 ボタン方式
タスク照明連動制御
○箱田貴之*1
金 政秀*2
正会員
同
Web アンケート
照明器具 1 台/操作人数 2 人(12/12(木))制御 a
1.はじめに
本報では在席状況やスイッチの操作回数などの行動特
照明点灯状況
執務者①在/不在
執務者②在/不在
性を把握しつつ、物理データ並びにアンケート調査結果
2. 実証結果
制御方式による照明消費電力量の削減効果
調査対
22%削減、制御 a に加えタスクライトとの連動で半灯する
離席
11
12
13
14
15
16
17
消灯 32%
18
点灯 68%
半灯 4%
消灯 63%
20
点灯 33%
40
60
80
制御 a (12/9~13) 制御 b (12/16~20)
図 3 各制御の平均点灯時間割合(9:00~18:00)
制御 b は 35%削減となった(表 1)
。
表 1 測定結果一覧(9:00~18:00)
100
削減率
22%
照明点灯割合[%]
38%
10
制御 a
複数の照明制御
制御 b
タスクライト連動制御
0
人の判断で 2 つの照明操作が可能となる制御 a 導入により
1時間当たりの平均照明消費電量
5.4Wh/㎡
4.2Wh/㎡
3.5Wh/㎡
(タスクライト0.2Wh/㎡含む)
消灯
図 2 照明点灯状況と在席状況の対比
使用した一般的な執務室に比べて低くなっていた¹⁾。個
制御b
離席
不在
在席
9
により、1 時間当たり 5.4Wh/㎡となり、Hf 蛍光ランプを
在席率
47%
47%
消灯
不在
点灯
照明点灯状況
執務者①在/不在
執務者②在/不在
象エリアの平均照明消費電力量は、LED 照明の導入効果
制御
導入前
制御a
点灯
在席
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
照明器具 1 台/操作人数 2 人(12/19(木))制御 b
について報告する。
2.1
及川大輔*1
望月悦子*3
同
同
35%
100
■制御 a(9:00~18:00)
80
▲制御
b (9:00~18:00)
◆制御 a(18:00~24:00)
●制御 b(18:00~24:00)
60
在席状況と対応する照明器具の点灯状況の関係を見ると、
どちらの制御も離席時に細めな消灯がされていない(図
2)
。さらに、制御 b の 1 日の平均点灯時間割合は全点灯
が 33%(2 時間 58 分)
、半灯が 4%(23 分)であった(図
3)。タスクライトとの連動制御はほとんど行われていな
いことがわかる。また、制御 a,b(9:00~18:00)の在席率
がほぼ等しいとき、制御 b の方が照明点灯割合が低くな
っている(図 4)。タスクライトとの連動制御による半灯
時間も少なく、離席時の細めな消灯もされていないこと
から、制御 b では不在箇所の消灯により消費電力量の削
減効果が高くなったと考えられる。
表2
制御
制御a
制御b
1 日の平均スイッチ操作回数
Aボタン
2.6回
3.5回
■A ボタン
Bボタン
2.4回
2.8回
スイッチ操作回数
4.0回
5.0回
■B ボタン
100
80
60
操作割合[%]
在席率[%]
照明消費電力(15 分間)[W/㎡]
40
2.2 照明消費電力と在席状況 制御導入前は一括点灯/消
…制御 a (9:00~18:00)
灯のため、在席状況によらず照明消費電力は一定の推移
20
---制御 b(9:00~18:00)
を保っていた(図 1)
。制御 a 導入後も日中(9:00~18:00)
0
20
40
60
80
100 在席率[%]
図 4 点灯割合と在席率の分布(1 時間平均毎)
は離/着席に関わらず、照明消費電力がほぼ一定となって
2.3
制御方式による操作回数
1 人当たりの 1 日平均操作
いるが、18 時以降は在席率の減少に伴って、夜間の照明
回数(9:00~18:00)は制御 a で 4.0 回、制御 b で 5.0 回であ
消費電力は減少している。
った。ボタン毎の操作回数は A ボタン(座席に最も近い
導入前(11/21(木)) 制御 a(12/12(木)
) 制御 b(11/21(木))
8
器具に割り当て)が多かった。制御 a でボタン A しか使
100
平均在席率 45%
平均在席率 40%
平均在席率 50%
用しない執務者が 7 人いた。同執務者は、制御 b でも B
平均電力量 4.9W/㎡
6
平均電力量 3.3W/㎡
平均電力量 4.6W/㎡
80
60
ボタン(次に座席に近い器具に割り当て)を使用せずに
4
40
A ボタンしか使用しなかった(図 5)。B ボタンを使用し
2
20
時
ない 7 人の操作可能な照明器具数の割り当ては、ほとん
00
6
12
18 24 0
6
12
18 24 0
6
12
18
24 0
ど 1 台 4 人であったため、1 度も操作しなかったと考えら
図 1 照明消費電力と在席率の関係 ■照明消費電力-在席率
0
れる(図 6)
。
制御 b は制御 a に比べ、照明消費電力が低い。執務者の
40
20
A ボタン平均割合 67%
0
B ボタン平均割合 33%
100
80
60
40
A ボタン平均割合 69%
20
B ボタン平均割合 31%
0
1
5
10
15
20
25
30
35
(上:制御 a 下:制御 b)操作人数[人]
図 5 操作割合
Actual proof of personal lighting control system integrated with direct current and information
(Part2) Demonstrated evaluation with consideration of characteristic of occupants’behavior
― 1001 ―
AとB
A ボタン
(主)
B ボタン
(従)
図 6 操作可能な照明器具数の割合
Takayuki Hakoda et al
3. 執務者への意識調査
その他
細かく操作する習慣がない
3.1 調査概要 パーソナル・スイッチ(P・S)導入前と
細かく操作しなくても満足している
制御 a,b 導入後の調査期間中、執務者に対して光環境と 2
急激に明るさが変わるため
ボタン式 P・S に関するアンケート調査を行った。内容は
他人と照明を共有しているため
主に執務室の光環境、スイッチ操作に対する評価である。 周辺の照明変化がきになるため
執務空間全体が暗くなる気がするため
アンケートは各フェーズの最終日前日に WEB で配信した。
0
2
ボ
タ
ン
式
タ
ス
ク
ラ
イ
ト
内容
満足度
押しやすさ
反応速度
照明との対応
ボタンの必要個数
常に点灯している/時々点灯している/点灯していない
机上面の明るさが足りないとき/執務空化全体が暗いと感じる時/
点灯するタイミング 机上面と空間の明るさムラを感じる時/他の天井照明が半灯した時/
他の天井照明が消灯している時/その他
連動制御は必要か 必要/不必要/どちらでもない
表 4 アンケート有効回答数
有効回答数(36名)
質問数
12項目
29項目
21項目
導入前
制御a
制御b
回収率
97%
86%
78%
35名
31名
28名
1
制御 a
2 5
5
4
3
1
3
24%
20 40
60
80
100[%]
図 9 ボタンの必要個数
■不必要 44%
30%
■どちらでもよい 44%
制御 b
2
4
3
1.机上面の明るさ 2.空間全体の明るさ 3.机上面の満足度
4.空間全体の満足度 5.作業のしやすさ
図 7 光環境評価の結果
3.3 制御方式評価 前報で述べた通り、2 ボタン式 P・S
は、高い評価を得た。しかし、他人と照明を共有してい
るためと操作しづらい回答した執務者が 76%存在した
(図 8)。また、ボタンの必要個数について、64%の執務
者が 1 つで良いと回答したが、2 つ必要と回答した執務者
が 29%存在した(図 9)
。
*1 千葉工業大学大学院
■4 つ必要 0%
28%
■必要 12%
2 5
4
■3 つ必要 7%
76%
70%
時々点灯している
3.2 光環境評価 制御導入前及び制御 a はどの項目にお
いても、高い評価が得られている。制御 b においては空
間全体の明るさ評価が制御導入前、制御 a と比べ低くなっ
ている。制御 b は制御 a に比べて、在席率が下がるにつれ
点灯率も下がっていることから、執務空間全体の照度が
低かったと予想される。しかし、空間全体の満足度は高
かった。
制御導入前
■1 つで良い 64%
10%
点灯していない
常に点灯していない
1
■2 つ必要 29%
3%
3.4 タスクライトの評価 タスクライトの使用頻度につ
いて、70%の執務者が「点灯していない」、30%が「時々
点灯している」と回答しており、タスクライトはほとん
ど使用されていないことが分かる(図 10)
。また、タスク
ライトに連動した天井照明の制御は必要かの問いに、「必
要」が 12%、
「不必要」が 44%と連動制御の必要性は低い
ことが分かる(図 11)。不必要な理由に「タスクライトを
点けるとタスクライトを点灯する前より机上面が暗く感
じる」や「モニター作業がメインなので不必要」といっ
た意見が多かった。連動制御によって自席周辺の照明環
境が変化することを不満に思う執務者が 77%いた(図 12)
。
評価項目
満足/不満足/どちらでもない
押しやすい/押しにくい/どちらでもない
適切/速い/遅い
満足/不満足/どちらでもない
必要/1つで良い/3つ必要/4つ必要
使用状況
制御
45%
図 8 照明操作を妨げている要因
表 3 執務者アンケート評価
制御
複数回答可
14%
工学部 修士課程
0%
0 20 40
60
80
100[%]
図 10 タスクライト使用状況 図 11 タスクライト連動制御
その他
46%
周辺の照明環境に影響を与えるため
38%
照明の照度を変えたいため
38%
気が付かないため
8%
明るさが変わり不満
38%
0
20
40
60
80
100[%]
図 12 不必要の理由(複数回答可)
4 まとめ
・照明消費電力量は制御導入前より削減されたが、制御 b
で削減効果が高かったのは、タスク照明との連動制御に
よる半灯効果でなく、主としての不在箇所の消灯割合が
高かったことによる。
・執務者は 2 つの操作ボタン内スイッチは 1 つで良く、
操作回数を見ても A ボタン(座席に最も近い器具に割り
当て)が多い。しかし、照明との対応しだいでは 2 つで
も良い。
・光環境評価で空間全体が暗くとも高い満足度が示され
た。しかし、照明操作による他人への影響を気にしてい
ることから、段調光制御による他人への影響の緩和は見
られなかった。
・タスクライトあまり使用されず、連動制御による照明
の半灯効果は自席周辺が暗くなり不評であった。
謝辞 実測調査は長澤孝明君(当時千葉工業大学)の力によるところが大きい。
記して感謝の意を表す。
参考文献 1)及川ら:パーソナル・スイッチによる照明個別制御の実証(その
1.2),日本建築学会大会学術講演梗概集, D-2 分冊, pp.1389-1392(2013)
* 1Graduate student, Chiba Institute of Technology
*2 首都大学東京
都市環境学部 客員研究員 博士(工学)
*2Associate Research Engineer, Tokyo Metropolitan University, Dr.Eng
*3 千葉工業大学
工学部
*3Prof., Chiba Institute of Technology, Dr.Eng
教授 博士(工学)
― 1002 ―