1
2013
金融システム論:学部冬学期基本科目4
第 6 講:期待収入最大化オークションデザイン
経済セミナー「オークションとマーケットデザイン」
第 8 回(2013 年 12 月、2014 年 1 月号)
宿題:読むこと!
(効率的配分ではなく)売り手収入を最大化するオークションは
いかに設計されるか?
Myerson, R. (1981): “Optimal Auction Design,” Mathematics of Operations Research 6, 58-73.
仮定:
Quasi-Linearity, Risk-Neutrality, Independent Type Distributions
実数空間のタイプ集合:  i  [0,1] for all i  N
2
6.1.同値定理再考
同値定理(第 4 講4.4):BIC をみたす直接メカニズム ( g , x ) において
期待支払額 E[ xi ( ) | i ]は
E[ xi ( ) | i ]  E[vi ( g( ),  ) | i ] 
i


E [v i 2 ( g ( i ,   i ),  i ,   i ) |  i ]d    yi* (0)
i  0
期待収入 E[
 x ( )]は
i N
E[  xi ( )]  E[  vi ( g( ),  )]   E i [
i N
i N
i N
i


i  0
i
E [v i 2 ( g ( i ,   i ),  i ,   i ) |  i ]d  i ]   yi* (0)
同値定理をさらに掘り下げて分析しよう!
i N
3
限界収入(Marginal Revenue):
売り手から見た事実上の価値(Virtual Valuation)
1  Pi ( i )
MRi (a ,  ; pi )  vi (a ,  )  vi 2 (a ,  )
pi ( i )
1  Pi (i )
評価価値( vi ( a ,  ) ) - 情報レント( vi 2 (a ,  )
)
pi ( i )
情報の非対称性:
買い手は評価価値についての私的情報を偽って伝えることによって
利益を得ようとする:
∴情報レント発生:買い手の取り分
定理6-1:BIC みたす直接メカニズム ( g , x ) がもたらす期待収入
 E[ x ( )] は
iN
限界収入の和の期待値(マイナス  y (0) )に等しい:
i N
*
i
*
E
[
x
(

)]

E
[
MR
(
g
(

),

;
p
)]

y
 i
 i
 i (0)
i
i N
i N
i N
i
4
6.2.定理6-1の証明
同値定理より、事前の期待支払額は
E[ xi ( )]  E[vi ( g( ), )]  Ei [
i

E[vi 2 ( g(i, i ),i, i ) | i]d ]  yi* (0) 。
i  0
分布独立性より、中間部は
i


Ei [
E[v i 2 ( g ( i ,   i ),  i ,   i ) |  i ]d  ]  E[
i  0
i


v i 2 ( g ( i ,   i ),  i ,   i )d  i ] 。
i  0
よって
E[ xi ( )]  E[v i ( g ( ),  )]  E[
i

v i 2 ( g ( i,   i ),  i,   i )d  i ]  yi* (0) 。
 i  0
i


中間部 E [
v i 2 ( g ( i ,   i ),  i ,   i )d i] の中に vi 2 ( g ( i,   i ),  i ,   i ) が登場するのは
i  0
 i が  i 以上になるケース(のみ)。
5
 i が  i 以上になる確率は 1  Pi (i) 。よって
E[ xi ( )]  E[vi ( g ( ),  )]  E i [

vi 2 ( g ( ),  ){1  Pi ( i )}d i ]  yi* (0) 。
 i  i
中間部について
E i [
 E i [

vi 2 ( g ( ),  )
i  i


vi 2 ( g ( ),  ){1  Pi (i )}di ]
i  i
1  Pi (i )
1  Pi (i )
pi (i )di ]  E[vi 2 ( g ( ),  )
]。
pi (i )
pi (i )
よって
1  Pi ( i )
]  yi* (0)
pi ( i )
E[ xi ( )]  E[ MRi ( g ( ), ; pi )]  yi* (0) 。
E[ xi ( )]  E[vi ( g( ),  )  vi 2 ( g( ),  )
よって
 E[ x ( )]  E[ MR ( g( ), ; p )]   y (0)
i N
i
i N
i
i
i N
が成立するので、定理は証明された。
*
i
6
6.3.期待収入最大化問題
各タイプの期待利得は外部機会(ゼロ)以上であることを要求:そうでないと参加しない
中間個人合理性(Interim Individual Rationality, IIR):
yi* (i )  E[vi ( g( ),  )  xi ( ) | i ]  0
期待収入最大化問題: BIC と IIR の制約下で期待収入最大化
n
max E[ xi ( )] subject to BIC and IIR
( g,x)
i 1
追加仮定: タイプゼロの時が評価最低:
vi (a ,  )  vi (a ,(0,  i )) for all a  A , all i  N , and all   
∴ IIR の代わりに、 yi* (0)  0 for all i  N 、としてよい。
7
ˆ とする。 定理6-1より、
BIC をみたす支払ルール x が存在する配分ルール g の全体集合を G
定理6-2:BIC および IIR の制約下での期待収入最大化問題は
max
E[  MRi ( g ( ),  ; pi )]
ˆ
gG
i N
に等しい。
問題点: Gˆ の範囲は一般にはわからない
期待収入最大化問題の解法例:
限界収入の和の期待値 E [
 MR ( g( ), ; p )] を、 Gˆ ではなく
i N
i
i
配分ルール全体集合( G とする)について最大化:
max E[  MRi ( g( ),  ; pi )]
gG
i N
解を g と記す。定理4-2における payment rule を x と記す
( g , x ) が BIC をみたすかどうかチェック
みたすならば、 ( g , x ) が期待収入最大化メカニズムである
8
6.4. 単一財一単位取引
vi ( a ,  i )  0 , MRi (a ,  i ; pi )  0
vi (a , i )  i , MRi (a ,  i ; pi )   i 
if a  i
1  Pi ( i )
pi ( i )
if a  i
限界収入が一番高く非負である入札者に落札せよ!
MRi ( i ,  i ; pi )  MRi ( j ,  j ; p j ) for all j  i if g ( )  i
g ( )  0 (売れ残り)
if MRi ( i ,  i ; pi )  0 for all i  N .
9
仮定(単調性)
:
仮定(分布対称性):
1  Pi ( i )
は  i の増加関数
pi ( i )
pi (i )  p j ( j ) if i   j
i 
仮定より
[ MRi ( i ,  i ; pi )  MRi ( j ,  j ; p j ) ]⇔[ i   j ]
が成立:
評価価値がより高い入札者がより高い MR!
留保価格(Reserve Price) r の設定:
MR1 (1, r; p1 )  r 
1  P1 ( r )
0
p1 ( r )
評価価値が一番高く、留保価格以上である入札者に落札せよ!
i   j for all j  i
if g ( )  i
if i  r for all i  N
g ( )  0
留保価格付きの二位価格入札が期待収入最大化を実現!
10
6.5. 参入促進で収入を高める
留保価格 r 付き二位価格入札:
E[max[max MRi ( i , i ; Pi ), 0]]  E[max[max{i 
iN
iN
1  Pi (i )
}, o]]
pi (i )
n  1 人目を追加参入させ、留保価格なし二位価格入札:
1  Pi (i )
E[ max MRi ( i , i ; Pi )]  E[ max {i 
}]
iN { n1}
iN { n1}
pi (i )
どちらが得?