別紙 平成26年度中小企業等のクラウド利用による革新的省エネ化実証支援事業 クラウド基盤ソフトウェア導入実証課題 平成26年3月13日 経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 経済産業省では、平成26年度中⼩企業等のクラウド利⽤による⾰新的省エネ化実証⽀援事業の⼀環として、ク ラウド基盤ソフトウェア導⼊実証を⾏う(別紙資料参照)。本実証は、クラウド事業の振興と参⼊促進によるIT機器エ ネルギー消費量削減のために、既存クラウド基盤ソフトウェアを導⼊・運⽤する際に必要となるソフトウェア構築の費⽤ の半額(上限額あり、調整中)を補助するものである。本実証を有効に施策するため、既存クラウド基盤ソフトウエア で未解決となっている課題を本省でとりまとめて本リストに列挙し、これらの課題を解決する意欲を持つ事業者を公募 することとする(ただし、本リストに含まれない課題提案を排除するものではない)。 大項目 小項目 運用 具体的内容 開発事項例 現状のOSSクラウド基盤ソフト ウェアは、運用に人手が介在す ることが前提とされており運用 者の負担が大きい。これをある 程度自動化することが、利用者 の負荷低減のために必要であ る。 現状のOSSクラウド基盤ソフトウェアは、運 用に人手が介在することが前提とされてお り運用者の負担が大きい。これをある程度 自動化することが、利用者の負荷低減の ために必要である。 現状のOSSクラウド基盤ソフト ウェアは、運用中にバージョン を上げることが非常に難しい。 24時間365日稼動のシステムに対して、 システムの運用を停止せずにクラウド基盤 ソフトウェアのバージョンを上げる手法を 確立する。 モバイルデバイスから運用、利 モバイルデバイスから、クラウド基盤を運 用するインターフェイスが十分 用、利用するためのユーザインターフェイ ではない。 スを開発する。 監視 運用と監視 クラウドの利用にリソースの確 保が容易になり従来よりも多く のリソースが消費されるように なったが、それに付随する監視 システムの自動化が進んでい ない。 特に、クラウド環境では監視対 象となる仮想計算機が頻繁に 増減することから従来の監視機 構では対応できない クラウド上での迅速なシステム構築に追従 可能なシンプルかつ自動化された監視シ ステムの開発。 例: 監視情報収集の自動化とリソース消費 状態の可視化、複数のサーバ/リソース 間の関係の可視化、監視機能を強化。 監視で得られる情報のフォー マットが、機器および環境に依 存し、標準化されたものがな い。 機器および環境に依存しない、クラウド向 VMに関する情報はVMMから取 けの監視情報提供のための標準モデルを り出すことが可能だが、どのよう 開発する。 な情報が必要か、どのように表 現するかについて、コンセンサ スがない。 課金 クラウドを商用で展開するに は、各ユーザの使用量を即時 に正確に記録する課金機構が 必須である。 いくつかのクラウド基盤ソフト ウェア には課金モジュールが 提案されているが、現状の実装 は十分ではない。また、いくつ かのOSSクラウド基盤ソフトに はこのようなモジュールが存在 しない。 ・各ユーザに対して、課金に必要となる情 報を整理収拾するシステムを開発する。 ・さらに、この情報をユーザに開示するす るインターフェイスを開発する。 ・課金情報の項目、粒度、フォーマット等、 の標準化を行い、複数のクラウド基盤ソフ トウェアの課金情報を統合的に扱うフレー ムワークを構築する。 導入 クラウド基盤ソフトウェアの導入 は、各サーバにソフトウェアをイ ンストールするだけではなく、そ れぞれのサーバ上の設定ファイ クラウド基盤ソフトウェアの物理計算機群 ルを整合させるなど、困難な作 への導入を支援する、十分なスケーラビリ 業である。普及を図るには導入 ティを持ったシステムを開発する。 を補助する必要がある。 いくつかOSSでも提案されてい るものの、実用に足るクオリティ になっていない。 知識の共有 クラウド基盤ソフトウェアは設定 が複雑であることから、その導 入、運用には、機器の選定や設 知識共有のためのポータルを整備し、 定などの、多くのノウハウが必 ユーザ間の知識共有による協調を補助す 要である。これらのノウハウを る。 ユーザ間で効率的に共有する 機構が必要である。 クラウド向けシステム 構築手法の確立 現在クラウド上で稼働している ソフトウェアの多くは、通常の データセンタ環境を前提に開発 されており、クラウド基盤ソフト ウェアが提供する、高度にソフト ウェア化されたインフラの機能 を十分に活用しているとはいえ ない。クラウドの活用を促進す るには、クラウドを前提としたソ フトウェアの開発が必要。 クラウド環境に適したア プリケーション構築 ・クラウド基盤ソフトウェア上で動作するVM を、UNIXプロセスのように容易に起動・終 了させる機構と各言語APIを開発し、計算 資源としてのVMを動的に増減しながら稼 働するアプリケーションの記述を可能とす る。 ・VMをプロセスと見立て、VM間をUNIXパ イプのようなデータストリーム構造で接続 して、連携したデータ処理を実現する。 通常のLinux等OSは、クラウド 高速に起動、終了することのできる、必要 上で負荷に応じて増減するよう 最小限の機能を持ったOSを開発する。 な用途には適していない。 クラウド向けゲストOS クラウド向けゲストOSには、ソフ トウェアをインストールし、設定 クラウドOSの設定を自動化するシステム することが不可欠だが、これは を開発する。 容易ではない。 基幹系アプリケーションをクラウ ドに移行するには、個々の仮想 計算機の可用性向上が求めら れる。このためには、仮想計算 仮想計算機の可用性 機を多重化することが考えられ るが、OSSクラウド基盤ソフト ウェアではサポートされていな い。 近年実用化されつつある仮想計算機多重 化技術を、OSSクラウド基盤ソフトウェアか ら利用することで、クラウド上の仮想計算 機の多重化を実現し、可用性向上を図る。 クラウド内にはそれぞれ異なる QoS要求を持つ複数のテナント がホストされる。 現状のOSSクラウド基盤ソフト ウェアでは、ネットワークの性能 的分離が十分ではなく、これら のQoSを満たすことはできな い。 ネットワークリソースを統合的に管理し、 個々のテナントに適切なリソースを性能的 に分離して割り当てる機構を構成する。可 能な場合には複数のネットワーク資源を使 いわける。 可用性とQoS 仮想ネットワークQoS 省エネルギー制御を行うには、 ユーザからの情報や、仮想計 ・各VMのQoS要請をユーザに明示させる 枠組みを整備する。 制御ヒント情報の取得 算機内部からの情報が必要で ・仮想計算機内部からスケジューリングに ある。 物理環境電力監視と 制御 省エネルギー化 必要となるヒント情報を提供するための APIを整備する。 省エネルギー制御には、各物理 ・IPMIなどを用いて、各物理計算機の情報 計算機、機器等の使用電力監 を再粒度に取得するAPIを整備する。 視と制御が必要である。 ・DCファシリティを上位システムから制御 するためのプロトコルおよびAPIを検討お より効率的なクラウド基盤の運 よび実装する。 DCファシリティの制御 用には、クラウドシステムを構 成するハードウェアを収容する ・DCファシリティの状態を計測し正規化し と連携 データセンターとの密な連携が た上で上位システム(クラウド基盤ソフト 必要である ウェア)に接続するプロトコルおよびAPIを 検討および実装する。 ・利用されていない計算資源、ストレージ 資源、ネットワーク資源の電源を制御し、 シャットダウンすることで省エネルギー化 する。 ユーザや仮想計算機から与え ・DCファシリティの監視制御と仮想資源利 仮想資源スケジューリ られる情報、DCファシリティから 用を連動させることで、効率化を図る。 得られる情報を用いることで、よ ング り効率的なクラウドの管理が可 ・スケジューリングを、クラウド運用者が任 能になる。 意に指定可能にするため、スケジューリン グモジュールをプラグイン可能にする。 ・スケジューリングを半自動とし、管理者に ナビゲーションUIを提供して、スケジューリ ングに介在させる。 ・プライベート、パブリック双方の複数クラ ウドを統合的に管理し、ユーザに対してク ラウドを透過的に利用させるシステムを開 クラウドを十分に活用するには 発する。 複数のクラウドを併用し、使い 分ける必要がある。 ・インタークラウドに関する何らかの標準 複数のクラウドを統合 規格を実装したインタークラウド連携ソフト 管理するシステム を開発し、実証する。 複数クラウドを統合的に管理す ・ネステッドVMやコンテナ等の技術を用い るシステムを実証的に検証する て、複数のクラウドミドルウェアを擬似的に 基盤がない。 運用できる技術を確立する。 ・VMM間でイメージ共有を可能にする変換 器を構築する。 VMイメージのクラウド IaaSクラウド間で、VMイメージを ・VMM間でVMの構成情報(CPU、メモリな ど) 共有可能に 間可搬性 ・VMMに依存しないクラウド環境の利用手 法(例:コンテナ技術による仮想環境の隠 蔽、VMのネスティングなど)を確立する。 複数のVMで構成され るシステムを可搬に構 成 各クラウド基盤ソフトウェアに依存しない、 3tierシステムなど複数VMで構 複数のVMから構成されるシステムを、ネッ 成されるシステムをクラウド間で トワーク構成を含めて記述する方法、およ 可搬するためのシステム定義 びそれを各クラウド基盤ソフトウェア向け 手法・構成方法の開発 記述に変換する手法の確立する。 安全な接続 ・VPN、IP Sec等の機能を用いて、クラウド Virtual Private Cloud を構成す 事業者に依存せず、外部から接続する標 るためには、仮想環境へ安全に 準手法を開発する。 接続する方法が不可欠である。 同様に、クラウド間でも安全な ・複数のクラウドにシームレスに接続可能 接続が必要である。 なシングルサインオン環境を実現する。 クラウド間連携 複数のクラウド上システムを クラウド内部IPアドレス ネットワークで透過的に接続す インスタンス作成時のインターフェイスを拡 るためには、クラウド上システム 張し、IPアドレスの指定を可能にする。 の制御 のローカルなIPアドレスを整合 させる必要がある。 サービスIPアドレスの 制御 複数のデータセンターや複数の クラウド事業者を利用したディ ザスタリカバリー(DR)に対応し てシステムを構成する際に、グ ローバルIPへの対応がネックに なりシステム設計および災害時 の切替対応が困難である。 このような機能はDRに限らず、 クラウド間連携においては必須 となる。 DNSやグローバルロードバランシングと連 携し、複数データセンター・複数クラウド事 業者を跨いでディザスタリカバリー用のシ ステムを構築するためのシステムモデル またはコントローラを開発する。 ・ストレージを動的に高速マイグレーション する手法を開発する。 ストレージマイグレー 複数のクラウド間を使い分ける ・事前に複製を作っておくことで、マイグ ためには、ストレージを共有す レーションを見かけ上高速化する。 ション・リプリケーション る必要がある。 ・共有分散ファイルシステム、分散データ ストアを開発する。 物理環境と仮想環境 の統一的な制御 仮想環境だけでなく、物理環境 も同一のインターフェイスで関 することのできるクラウド基盤ソ フトウェアは、いくつかの先行事 例はあるものの、整備が不十分 である。 物理環境と仮想環境 の変換ソフト 物理環境ディスクイメージを仮 想環境ディスクイメージに変換 するソフトをP2V、その逆をV2P と呼ぶ。これらのソフトにはOSS の標準的なものがない。 仮想サーバに加え、物理サーバと仮想 ネットワークの情報を自動取得・可視化 し、統合管理するためのコントローラを開 発する。 物理環境への適用拡大 ・P2V,V2Pソフトウェアを開発、整備する。 ・既存ディスクイメージ変換ソフトウェアを 組合せて、容易にP2V, V2Pを実現するた めのシステム構築手法を確立する。 ・稼働中システムの設定に対して、更新さ れたソフトウェアが動作するかを継続的に 自動テストする環境を構築する手法を確 立する。 基盤ソフトウェア更新へ 基盤ソフトウェア更新 の対応 への対応が困難 クラウド基盤ソフトウェアが更新 された場合、稼働中のシステム を更新する前に、稼働中システ ムの設定で問題なく動作する確 証が得られない。 ・利用者は、それぞれ手元にテスト環境を 構築する。テスト環境は、定期的にレポジ トリからチェックアウトし、自動的にテストを 行う。 ・テスト失敗時には自動的にレポジトリに 対してチケットを発行する。これにより、早 期に問題を発見、改修することが可能にな る。 用語 VM: 仮想計算機 VMM: 仮想計算機マネージャ。Xen, KVMなど クラウド基盤ソフトウェア: OpenStack, CloudStackなどのIaaS基盤ソフトウェア IPMI: Intelligent Platform Management Interface。マザーボード上のコントローラで ネットワーク経由で様々な制御と監視を可能にする。 P2V, V2P: VはVirtual,PはPhysicalを指す。P2Vは物理環境のディスクイメージを吸い出して 仮想環境で実行すること。V2Pはその逆を意味する。
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