ビジネスを加速させるB to Bアプリの開発手法

撮影協力:六本木ライブラリー(森ビル株式会社)
増え続けるビジネスアプリマーケット
「 私たちは法人のお客様を中心にビジネスを行って
います」
(早津俊秀氏)
。B2B(Business to Business)
用アプリは App Store などのストアマーケットでは
ビジネスモデル
ビジネスプロセス
大手メーカーの
スマートデバイスを
活用した新ビジネスの企画
UX
舞台に出てくることがほとんどないが、ビジネスと
自体の検討や仕様検討のディスカッションから入り
改善など、次のサイクルまでトータルでサポートを
NC デザイン&コンサルティング
行っています」
(早津氏)
NC Design & Consulting
信頼が成功を導くための方程式
C a s e 1 急成長する企業内アプリ市場
伸び続ける市場に賭ける選択肢
ベンチャー企業の新サービス開発
システムインテグレーター
コンサルティングファーム
時期に来ているのは誰もが感じているはずだ。だが、
B2B の市場はまだまだ伸びていくという。具体例と
してくれた。営業・マーケティング施策の一環として
業務系のアプリは、単なるダウンロード
数や稼働率だけでは業務改善している
かどうか判定できないという。
「 設定し
た項目一つひとつの利用率をモニタリ
ングして、お客様と一緒に評価してもら
い、デザインや機能を向上していきます」
こういったノウハウの提供も結果として
信頼にもつながる
呼んでいるカーシェアの自転車版「 サイクルシェア」
ストアマーケットにアプリを登録して販売する、い
して十川亮平氏はある大手メーカーでの事例を紹介
デザイン事務所
上図は NCDC のカバーする業務範囲。
メンバーは総勢 6 名で、主要メンバーがエンジニア経験のあるコンサルタントであると
いう。それぞれがクロスしたスキルと経験の中でも得意分野を持ち、プロジェクト間を横断してチームワークで案件のクオリ
ティを高める。アプリ開発はもちろん、アプリを使った新規ビジネス立ち上げのコンサルティングからサーバサイドの開発ま
でトータルに対応できるのが最大の強みだ
その一つが「COGOO( コグー)
」だ。現在話題を
アプリ市場は 5 年経ち成熟の兆しを見せている。
わゆる B2C(Business to Customer)
は、伸び悩みの
多くのアプリ開発会社
今もそのペースは続いている。
ます。開発した後も効果測定テストやアプリの機能
ライアントもパートナーとして認識しやすい。まさ
に二人三脚といったところだ。
小売業のスマートデバイスを活用したカスタマーエクスペリエンス改革
新しいが、すでに実績で 30 社を超える受注があり、
アントが新しいサービスを作りたい時は、
新サービス
アプリ開発
え、スキルも移管していくケースが多くなるため、ク
製薬メーカー営業支援アプリ
コンサルティング(NCDC)の設立は 2011 年 3 月と
「当社は単にアプリの開発を行うだけでなく、クライ
サーバサイド開発
既存の金融機関サービスの
スマホ対応 UX 検討
公開されないため、同社がアプリベンダーとして表
しては急速な成長をしている分野だ。NC デザイン&
知識が不足している場合が多い。そこで、一緒に考
NCDC の事業領域(および主要クライアント)
タブレットを活用した営業改善のプロジェクトだ。
営業現場ではクライアント担当者との商談や打ち
合せを実施する際に、導入頂いた商品がどの程度使
われているのかなど定量的なデータに基づくコミュ
ニケーションを取る必要があり、それを繋ぐデータ
を閲覧できる環境が必要だ。十川氏が見せてくれた
ものは、営業が使用頻度をヒアリングし、タブレット
にその場で入力、瞬時に過去履歴まで含めたグラフ
ビジネスを加速させる B t o B アプリの開発手法
は、モバイル端末を通じて利用できる。このシステム
の開発は、運営会社であるリレーションズ株式会社
そして、技術者集団でもある同社はそのノウハウ
企業内におけるモバイルデバイスの浸透とともに、
急激な勢いで需要が高まっている企業内アプリ。それぞ
からの相談で始まった。
「 当時は先方に IT の専任社
を活かして、UX / UI のコンサルティングや IT の基
表示ができるものだった。
れの企業の事情に最適化したシステムおよびアプリをつくるには、単にアプリを発注すればいいというわけ
員がいなかったのがきっかけで、
コンサルティングも
礎知識のレクチャーといったアプリ開発に欠かせな
ではない。そのプラス α を、NC デザイン&コンサルティングはサービスとして提供している。
でき、開発もできる当社が選ばれました。NCDC は
い基礎的なリソースも積極的にクライアントに提供
お客様と一緒にビジネスから検討するため、必要な
する契約を行うなど、人と人が向き合うからこそ必
機能をこちらからどんどん提案しました」と早津氏
要なきめ細かな部分まで配慮してくれる。これがわ
はいう。技術面も、ハードウェア開発を行う別会社
ずか 2 年の間に成長している理由だろう。
とも協力しながらアプリや通信サーバの開発を行う
また、最後に早津氏はモバイルアプリの構築に必
ためにディスカッションを繰り返した。また、IT の
要なセキュリティや認証・認可、ログ取得、プッシュ
基本や IT プロジェクト管理の概念、アジャイル開発
通知、データベース自動生成機能を実装したサーバ
手法の基礎や注意点までレクチャーを重ねた。
ソフトウェアとクライアント SDK をモバイル開発プ
「 せっかく一緒に仕事をするのであれば、我々の
持っているスキルやノウハウをどんどん習得しても
らい、次回は我々がいなくてもお客様が多くの部分
をできるようにしていくのが理想です。スキル移管
を常に意識しています」
と早津氏はいう。
同社の強みはまさにここにある。仕様の決まった
App Pot
プッシュ通知やセキュリティ管理な
ど、アプリのバックエンドで必要とな
るサービスをソフトウェアとして提
供する。
「 複数のアプリを一括して制
御することもできるため、開発に関わ
る共通コストをお金、
時間の両面から
抑えることができるようになります」
(十川氏)
http://app-pot.jp/
ラットフォーム、
「AppPot」として提供するという。
実際に AppPot を使用した開発と通常通り開発した
アプリを比較すると開発コストが半減するそうだ。
「 実際に第三者にアプリを開発依頼して、実測で比
較した結果なので、効果は確かです」
と十川氏。同社
は日本企業に特化した製品を独自提供することでス
ものを作るだけならもっと安く作ってくれるところ
マートデバイスの企業利用の促進の起爆剤にしたい
はたくさんあるはずだ。しかし、早津氏は言う。
「先
考えだ。こういった包括的なサービスを提供できる
方からのリクエストだけでなく、サービスの中身ま
アプリベンダーの台頭によって、よりスマートデバ
で考えてこちらから提案をしていけるのはありがた
イスを業務で使う可能性は増え続けている。
いと言っていただけますし、発注側の担当者もこの
COGOO はリレーションズ株式会社が運営するスマートフォンを利用する自転
車シェアサービス( 詳細は 096 ページ)。平均 3 ∼ 6 カ月程度で完了させると
いうアプリ開発を、テストを繰り返し 1 年半ほどかけてブラッシュアップさせて
いった。ハードウェアの変更のみならず、サーバを組み直し、アプリもネイティブ
アプリから HTML5 による Web アプリに変更している。
「 一見手戻りしている
ようですが、結果として多くのお客様に利用してもらえるサービスに進化し、リ
レーションズ様のビジネス展開にも貢献できたと思います」
(早津氏)
078 アプリ開発会社年鑑 2014
機会に成長したいと思っている優秀で意欲の高い方
が多いです。そのような優秀な方には少しのスキル
移管をするだけで、
どんどん独り立ちしてくれます」
発注先はやりたいサービスなど熱意を持ってくる
ケースが多いが、その細部は決まっていなかったり、
POINT
NC デザイン&コンサル
ティング代表取締役・早
津俊秀氏(写真右)
、
同社
執行役員・十川亮平氏
企画段階から相談できる開発会社は、その後の展開
も視野に入れて相談できる。
アプリ開発会社年鑑 2014 079