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道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座
「すべての人に優しいまちづくり~私たちの生活とUD~」
講師:北星学園大学 経済学部
鈴木克典 教授
◆UD=ユニバーサルデザイン◆
・ユニバーサルデザインという英語の言葉の頭文字を取った略称で、「すべての人のためのデザイ
ン」、「多様な人が使いやすいデザイン」というような意味である。
◇ 講座の内容 ◇
・
「すべての人に優しいまちづくり」を目指すにあたって、私たちの生活にユニバーサルデザインが
どのように関わっているのかについて紹介し、気づいていただくことを目的とする。
◆UD(ユニバーサルデザイン)の定義
・1985 年にアメリカ、ノースカロライナ州立大学
教授のロナルド・メイス氏が提言した。
・一般的には、
「あらかじめ、障がいの有無、年齢、
性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しや
すい都市や生活環境をデザインする考え方」と定
義されている。
・メイス氏が、ユニバーサルデザインを提言したの
は、幼いころのポリオの発症により、障がいがあ
ったことに起因する。
・ユニバーサルデザインの言葉が生まれる前までは、障がいのある人が使用できるようにバリア、
つまり障壁となっているものを取り除くという考え方、バリアフリーが主流であった。
・障がい者と区別する、最初からバリアありきの考え方にメイス氏自身が疑問を感じていた。
・メイス氏は、自らの活動の中で、障がい者専用と思われていたトイレが、ベビーカーを押す人に
も役立つことに気づき、ユニバーサルデザインの考え方に至った。
・最初から全ての人にとって使いやすいデザインを作るという考え方を世間に広めたかった。
・ユニバーサルデザインという言葉を通して、差別・区別意識をなくしたいと思っていた。
・元々は、住宅など建築物に対して、ユニバーサルデザインが中心であったが、最近では、私たち
の身の回りの様々な製品やサービス、交通施設など、街中の環境、私たちの生活環境のあらゆる
場所にUD(ユニバーサルデザイン)の考え方が広まっている。
◆観光行動について
・観光地に着き、バスで移動する時に、バス停がどこにあるのか、どの路線に乗ればよいのか、時
刻表をあらかじめ調べてあっても、現地ではわかりにくく、迷ってしまうことがある。
・バス停だけでなく、ホテル、トイレ、観光スポットなども同様である。
◆UDにふれる
・シャンプーには目印となる突起がついているが、リンスにはついていない。
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・この突起により、目に障がいのある方でも区別できるようになっている。
・目に障がいのある方だけでなく、メガネやコンタクトを外している方、シャンプー中で目が開け
られない方にもわかりやすくなっている。
・電卓にもユニバーサルデザインが隠されている。
・本体とボタンと文字の配色、文字の形が非常にわかりやすくなっている。
・5のところに突起がついて、盤面を見なくてもボタンの位置がわかりやすいように工夫されてい
る。
◆文字のユニバーサルデザイン
・案内看板などでも配慮されているが、配色やフォントに工夫がなされている。
・白の背景に黒や赤の文字、濃い青の背景に黄色や白の文字だと、非常に見やすい。
・フォントを比較してみると、明朝体よりゴシック体の方が見やすい。
・白黒コピーだと、濃い色や薄い色同士が並ぶと区別がつきにくくなる。
・すべての人に見やすいということを考えると、色の配色やフォントを変えるだけで見やすくなる。
◆バリアフリーとの違い
・ユニバーサルデザインに明確な区分はないが、
「すべての人」を目指して多くの人が、可能な限り
「使いやすいようにしていくこと」がユニバーサルデザインにつながる。
◆バリアフリーとユニバーサルデザイン
・東洋大学の川内先生が概念をわかりやすく整理
している。
・本来の定義や考え方から、バリアフリーは適応
困難な人が使えない状態から使えるという状態
にするという修繕的な考え方である。
・ユニバーサルデザインは、使える状態から出発
し、より安心、安全、快適に使えるようにしてい
こうという考え方である。
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◆ユニバーサルデザインを使う人
・障害のある方、高齢者、男・女、子ども、妊産婦、
外国人なども対象となる。また、一時的な状況であ
るが、ケガをしている人なども対象となる。
・時代の変化もあるが、多様な人たちがいる生活の中
で、使う人 1 人 1 人の視点に立った発想が徐々に広
まってきたと言える。
◆UD7原則とは?
・ユニバーサルデザインの考え方や指針を明確にする
ために、7つの原則がある。
・1つ目は、「公平性」。これは誰にでも使用できる、
入手できるということ。
・2つ目は、
「自由度」。これは、柔軟に使えるという
こと。
・3つ目は、
「単純性」。これは使い方・使用方法が容
易にわかるということ。
・4つ目は、
「分かりやすさ」。これは使う人にとって、
必要な情報が容易にわかること。不必要なものを除き、
シンプルで直感でわかるデザインであること。
・5つ目は、
「安全性」
。間違えても重大な結果にならないこと。うっかりミスや危険につながらな
いデザインであること。
・6つ目は、
「省体力」
。これは無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できるというこ
と。
・7つ目は、
「スペース確保」
。アクセスしやすいスペースの広さと、使用するのに適切な広さがあ
るということ。
UD(ユニバーサルデザイン)7つの原則を具体的な事例をもとに紹介します。
【事例 1】 狸小路商店街(取材 VTR)
◆UDを発展させる 4 つの視点
・1つ目は、ビジネス分野でよく使用される考え方で、
PDCAサイクルがある。
・Plan(計画・デザイン)、Do(実行)、Check(事後評
価)、Action(改善)という考え方である。
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・このサイクルを「スパイラルアップ」という。何回か繰り返し、徐々に良いものにしていくとい
う考え方である。
・しかも継続していくことが重要となる。
・2 つ目は当事者の参加・参画である。
・多様な人たちに参加・参画してもらうことにより、
多様な視点でチェックを重ねていくと、より多くの
人たちにとっての使いやすさにつながる。
・特に使用にあたってのバリアが大きいと思われる障
がい者の参加は、重要となってくる。
・3つ目は、
「使いやすさ」と環境調和である。
「使い
やすさ」だけを求めて、魅力がなくなってしまうとU
D(ユニバーサルデザイン)環境としては十分なもの
でなくなる。
(例えば、観光地である神社の参道を舗装すると雰囲気を壊してしまう。
)
・4つ目は、「気づきの重要性」である。
(例えば、お子さんと買い物に行って、自分で買いたいと思っているものが、なかなか見つからな
いということを意識すること。)
・お子さんが買いたい物に手が届かない、買いたい物が見つからないという状況を見て、不便だな
と思うのも気づきである。
・この場合、お客さんの視線に立った商品の配置や案内サインが不十分であるという、店舗側の課
題となる。
・自分や周辺の様々な使いにくさに気づいて、意識することがユニバーサルデザインにとって重要
となる。
◆UDの実例
・2010 年にオープンした新千歳空港国際線ターミナルビルでは、ユニバーサルデザインに配慮し建
設が行われた。
・障がい者、高齢者、子ども連れ、東アジアの外国人など 100 名ほどを集め、各種のワーキンググ
ループに分けて検証を重ね、建設に反映。
・専門家ワーキンググループは、出された意見を集約し、調整することが役割である。
いろいろな人の意見を取り入れ、ユニバーサルデザインを配慮した建設を行った事例を紹介します。
【事例 2】新千歳空港国際線ターミナルビル(取材 VTR)
すべての人たちが同じ空間で同じ映画を楽しもうという事例を紹介します。
【事例 3】北海道ユニバーサル上映映画祭(取材 VTR)
◆UDの発展
・製品や建築物だけでなく、最近は観光や防災などにもユニバーサルデザインの考え方が導入され
ている。
・観光では、三重県の伊勢志摩のようにユニバーサルデザインの視点に立ち、多様な方々がわかり
やすく、使いやすく、街中を歩きやすいまちづくりを行うことによって、観光客が大きく増加し
たという地域もある。
・防災面では、例えば、避難時には、避難経路や避難所の方向など、見知らぬ土地でもスマートフ
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ォーンで誘導をしてくれるシステムも開発されている。
◆心のユニバーサルデザイン
・多様な方たちが存在することへの理解や気遣う心が大切である。
・観光などで言えばおもてなしの心である。
・心がなくては、ハード面のユニバーサルデザインも活きてこなく、ハード面の整備が無意味にな
ってしまう。
・2020 年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。また、現在、札幌市では、冬
季オリンピック・パラリンピックの誘致が検討されている。
・開催されることになると世界中から多様な方々が訪れることになる。
・おもてなしの心でお迎えするには、ハード・ソフトともにユニバーサルデザインがますます重要
になってくる。
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