空中発射式ロケット - JAXA大学・研究機関連携室

空中発射式ロケットにおける、
分離直後のロケットの状態推定と最適制御
ロケットの空中発射
ある程度の高度(10km~20km)まで上昇した飛行機
からロケットを発射して衛星を軌道に乗せる「空中発射
(Air Launch)」という打ち上げ方式がある。
空中発射は大掛かりな地上発射施設を必要とせず、
1段目の役割を担う飛行機を何回も再利用できるので、
低コストで即応性が高い。このため、小型衛星の打ち
上げ方式として非常に優れており、諸外国では盛んに
研究されている。
日本においてはあまり研究が進んでいないが、小型
衛星が驚くべき速さで高性能化してきていることを考え
ると、小型衛星の効率的な打ち上げ方として今後必ず
必要になってくる技術である。
課題点と研究目的
放出落下式
・運搬が簡易で安全
・母機改造の必要無し
・効率的なピッチアップ
空中発射システムの打ち上げ方式には、「背負い式」・「吊り下
げ式」・「ワイヤー牽引式」・「放出落下式」などがある。この中で、
運搬の安全性、発射母機改造の必要性、分離後のピッチアップ
に必要な燃料などの面で「放出落下式」が特に優れている。
「放出落下式」では発射母機からロケットを投下するが、投下直
後のロケットの位置や姿勢を正確に予測することは難しい。また、
投下点における風の状態も予測することはできないので、投下直
後のロケットの状態には不確定な部分が多い。そのような状況で、
ロケットの姿勢を正確かつ素早く制御しなければならない。そこで、
本研究では投下直後のロケットの状態を正確に推定し、最適な姿
勢制御をほどこす手法を確立すること目的としている。
粒子フィルタ
不確定要素が多い投下直後のロケットの状態推定を
行うための切り口として、本研究では「粒子フィルタ」と
呼ばれる手法を用いる。粒子フィルタは高次元状態ベク
トルの推定方法として10年ほど前に提案された新しい
手法である。
粒子フィルタではまず、パラメータや状態変数などで
張られた空間(一般状態空間)に確率を重みとして持つ
点(粒子)を多数分布させる。そして粒子の時間変化を
系の遷移測に則って予測し、観測値との適応度(ゆう
度)により重みを更新していくことで、状態ベクトルの推
定値を確率分布として表す。
総合研究大学院大学 宇宙科学専攻 森田研究室
博士前期課程2年 三浦政司
図引用:Marti Sarigul-Klijn, et al., “Trade Studies for Air
Launching a Small Launch Vehicle from a Cargo Aircraft”,
43rd AIAA Aerospace Sciences Meeting and Exhibit Meeting Papers, 2005, p 15631-15642
予測
フィルタリング
ゆう度計算
リサンプリング
消滅
一
般
状
態
空
間
消滅
消滅
x
X t −1| t −1
確率重み
X t | t −1
X t | t −1
t +1 ⇐ t
Xt |t