No.26 在庫管理統一理論;STIC の定理

No.26
在庫管理統一理論;STIC の定理
在庫管理は適正在庫とか発注点という基準ではなく、常に変動し、つかまえどころのない
需要を基準としなければならない、と前回申し上げました。多分多くの方々は、疑問を感
じられるかもしれません。変動する需要が在庫管理の基準となりうるのか?そんなことを
したら、在庫管理はますます複雑になり、難しくなるのではないか?、、と。
結論から言いますと、需要基準の在庫管理の方がはるかに簡単なんです。これまでの、適
正在庫や発注点を基準とした在庫管理に慣れ親しんできた方々には、理解しにくいのは止
むを得ないかもしれません。これから、ステップ・バイ・ステップで解説していきますが、
部分の説明に入る前に、その要点を「在庫管理の統一理論
STIC の定理
サプライ・チェ
ーン・マネジメントへの展開を見据えて」と題して、まとめてみました。理論的な面に焦
点を当て、論文調にまとめましたので、少々わかりづらいかもしれません。さらっと読ん
でいただいて、理論のイメージを思い浮かべていただければよろしいかと思います。
需要基準の在庫管理のコアになる部分は「STIC の定理」です。この定理から導き出された
発注方式が STIC 発注方式です。その骨子は次のようになります。
‹
定期不定量発注;予め決められた発注間隔で、その間に受注した量を補充発注する。
発注量の決定に在庫量や需要予測量は不要。
‹
定量不定期発注;受注量が予め決めた量に達したとき、その量を補充発注する。発注
点を設定する必要はない。調達リードタイムに関係なく補充発注量を決めることがで
きるため、在庫レベルの変動は定期不定量発注と同等の滑らかさになる。
‹
不定期不定量発注(適時適量発注)
;間欠的注文の場合、受注時に受注した量を直ちに
補充発注する。適時適量の決定は在庫管理側が決めることではなく、市場が決めるこ
とである。だから、「時期も量も定まらない」のである。
これまでの発注方式と比べると、STIC 発注方式は非常に簡単です。しかも、保持する在庫
量は従来の発注方式と比べると、ほとんどのケースで少なくなります。つまり、変動する
需要に基準を置いた方が、在庫管理は簡単になり、スッキリする、というわけです。
ちょっと、脱線しますが、需要に基準を置いた方が管理が簡単になるのは、在庫管理だけ
ではありません。生産管理もそうなんです。受注生産でも見込み生産でも、あるいはその
混合でも、市場の需要に基準を置いた方が管理は簡単になります。その具体的な例が「動
的生産管理」です。これは、この Website のメインテーマでもあります。
在庫管理と生産管理は切っても切れない関係にあります。生産管理も在庫管理も需要が基
準となっている、というのは当たり前といえば当たり前です。市場に価値あるもの(製品
1/3
やサービス)を提供する機能が生産管理であり在庫管理ですから市場(需要)を基準とす
るというのは、概念的に正しいのではないかと思います。
では、部分の説明に入りたいと思います。初めに、「需要」について考えてみます。在庫か
ら出てゆくのは需要があるからです。需要が変動しなければ、つまり、一定の時間間隔で
在庫から出てゆけば在庫管理は非常に簡単になります。ところがそうではない。変動しま
す。しかもランダムに。ランダムに変動する需要をどう捉えるか。これが最初の課題です。
ランダムとは、ランダムの中に入るとカオスの世界で何の秩序もないようにみえますが、
高所から俯瞰すると、ある規則性があることがわかります。例えば、ある店に来る客の時
間間隔をみてみましょう。12:00 時に一人の客が来て弁当を買いました。次の客は 12 時 10
分に来てジュースを買いました。12 時 16 分に次の客が来てパンを買いました。夫々の時間
間隔は 10 分、6 分となります。この時間間隔はランダムにバラツクだろうと考えられます。
この時間間隔のデータを、横軸に時間間隔、縦軸に頻度をとり集計します。そうすると、
店により、時間帯により異なりますが、どれも似たようなカーブになります。ランダムも
見方によって規則性がみえてきます。このカーブは指数分布と呼ばれています。その一例
を図 1 に示します。
0.12
0.1
平均
確率
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
5
10
15
20
25
30
時間間隔
図1
平均 10 の指数分布の例
来客の頻度を時間間隔で捉えることは理に合っていますが、人間の感覚にはなじまないと
ころがあります。時間間隔ではなく、ある時間、例えば 1 時間に何人の客が来るか、とい
う見方もできます。平均 10 分間隔で客が来るのであれば、1 時間では平均 6 人の客が来る、
ということになります。1 日(24 時間)では平均 144 人、1 週間では平均 1,008 人の客が
来ることになります。
製品の売れ行きをみたり、欠品しないように仕入れたりする在庫管理では、ある時間の来
客数で把握するほうがわかりやすいと思います。ある時間を集計時間と呼んでおきます。
来客数は集計時間にほぼ比例することがわかります。
2/3
話を一般的にまた簡単にするために、来客数を受注件数とし、商品は 1 種類とします。ま
た来客一人はひとつの商品を買う、つまり受注件数と受注量は等しい、とします。正確性
を期すために、最小限の数式は使わざるを得ません。ご了解ください。時間間隔の平均を Ti 、
集計時間を Tg とすると、受注件数の平均 N は次のようになります。
N=
Tg
Ti
この式は非常に簡単です。来客(受注)の頻度を来客数(受注件数)に変換する式です。
ここまでは簡単なのですが、では、バラツキはどうなるか。受注の時間間隔がバラツキま
すので、集計時間での受注件数も当然バラツキます。どのような分布でバラツクのか、こ
れを知りたいわけです。
ランダムに到着する注文がある集計時間ではどのような分布となるかは、指数分布とポア
ッソン分布の関係にあることが知られております。
0.4
Tg=10
確率
0.3
Tg=20
Tg=30
Tg=40
Tg=50
0.2
Tg=60
Tg=100
0.1
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20件
受注件数(N)
図2
受注件数の分布(ポアッソン分布)
図 2 は平均 10 の指数分布で到着する注文の分布です。集計時間 Tg が 10 のとき、受注件数
N の平均は 1 ですが、分布形状は対称ではありません。Tg が 50~60 以上になる N の分布
形状は対称形に近くなり、また正規分布に似てきます。尚、ポアッソン分布は離散型の分
布です。N は整数でその確率を示しています。
ポアッソン分布にはおもしろい性質があります。それは平均と分散が同じ、ということで
す。図 2 の Tg=100 のポアッソン分布の平均は 10、分散も 10 です。
出展;DPM研究舎
http://tocken.com
3/3