FS -9 第 78 回日本循環器学会学術集会 ファイアサイドセミナー 9 新しい循環器診断イメージングの世界 2014 年 3月 21日(金) 18:20∼19:20 第 12 会場 (東京国際フォーラム ガラス棟 G602) 座長 演者 国家公務員共済会組合連合会 虎の門病院 Cardiac MRI 山口 徹 先生 RVG 1 左心不全における右室機能の評価法 筑波大学 医学医療系 臨床検査医学 石津 智子 先生 演者 2D ECHO RV speckle tracking echo RV speckle tracking echo time-strain curve 19y, M, VT ARVC 2 限界への挑戦 -Subtraction Coronary CTA- 医療法人社団田貫会 高瀬クリニック 循環器科 近藤 武 先生 患者さんやスタッフの被曝や負担を最少にすること、そして診断や 治療のため最良の画像を提供することが私たちの使命です。 共催:第 78 回日本循環器学会学術集会 東芝メディカルシステムズ株式会社 FS -9 第 78 回日本循環器学会学術集会 ファイアサイドセミナー 9 新しい循環器診断イメージングの世界 演者 1 左心不全における右室機能の評価法 筑波大学 医学医療系 臨床検査医学 石津 智子 先生 心不全の病態の主役は左室であり、右室は脇役である。しかし同じような左心不全でも肺高血圧を伴っている場合は予 後不良であるし、さらには右室の駆出率が低下するとイベント発症も増加する。実臨床でも、特に標準的心不全治療に 対する反応が悪い症例では、右室壁運動が低下していることが時折経験される。このように脇役でありながらも、右室 は心臓の代償機転において最後の要として重要な役割を担っていることが認識されつつある。このような時代の要請に 応え、近年心エコー法による右室機能の標準化が提唱された。右室という複雑な解剖、形態を正しく理解し、そのサイズ、 壁機能の定量的で再現性のある計測を行い、治療に対する反応性を評価することは臨床的に大変重要なスキルといえる。 しかし本当に重要なのは得られたデータからどのように病態を解釈するかである。右室は、右室心筋それ自体の異常の 他、周囲の影響を大きく受ける。右室機能の主な外的規定要因は次の 5 つである。1)後負荷としての肺動脈、肺実質、 肺静脈の病変そして左房圧、2)前負荷としての循環血液量、3)心室中隔機能、4)心膜の性質と心膜腔の圧、そして5) 三尖弁逆流である。右室は左室と異なる血行動態上の特徴を有しており、1)2)に示した負荷に対して非常に敏感で ある。また、右室の半分は左室と心室中隔を共有している。このため、左室機能不全に右室拡大や壁運動低下が合併す る頻度は高いものの、左室機能の改善に伴い右室機能も可逆性に改善することが多い。一方、左室不全を来す変性疾患 などにおいて病変は左室のみならず右室にも及ぶことがまれではない。また、外的要因で右室の拡大が進行すると三尖 弁輪拡大と共に機能的三尖弁逆流が生じるが、三尖弁逆流は一見右室駆出率を増加させ右心機能不全を不顕性化し得る。 このように複雑な要素の影響のために目の前の右室機能不全には負荷による受動的な要素が強いのか、右室心筋自体が 非可逆性に障害を受けているのかを見分ける有効な鑑別法は未だ確立されていない。新しい評価法として 2 次元、およ び 3 次元エコーを用いた壁変形の定量化やその時相分析、負荷試験などに期待が寄せられている。 今回のセミナーでは基本的な心エコー右室計測法について概説し、症例をもとに右室機能評価心エコー法の活用の現状 と将来について提示したい。 演者 2 限界への挑戦 - Subtraction Coronary CTA- 高瀬クリニック 循環器科 近藤 武 先生 背景:冠動脈石灰化とステントは冠動脈 CTA(CCTA)にとって最も大きな問題である.高度冠動脈石灰化例では CCTA を実施しても狭窄度評価不能のセグメント(seg)が増すが,この様な症例では閉塞性冠動脈疾患が存在する 確率も高いので CCTA を実施すべきかどうか議論されている.ステントに関してはガイドラインでも径 3mm 未満は inappropriate とされ,3mm 以上でも uncertain とされている.そこで造影 CCTA から造影前 CCTA(Mask)を差し 引いて Subtraction Coronary CTA(S-CCTA)画像を作成し,観血的冠動脈造影(ICA)を真としてその診断能を検討 した. 方 法:HR ≦ 61 で,CACS>600(32 例 )も し く は ス テ ン ト 例(96 例 )で S-CCTA 実 施 し た. 呼 吸 停 止 不 全 に よ り 石 灰 化 群 で 2 例, ス テ ン ト 群 で 3 例 除 外 し た.S-CCTA 後 1 カ 月 以 内 に ICA を 実 施 し た 石 灰 化 群 21 例(M/F = 9/12,72 ± 8 歳,CACS: 1253 ± 114)とステント群 43 例(M/F = 33/10,72 ± 9 歳)を対象とした.撮影には Aquilion ONE ViSION Edition(0.275 s/r)を用い,一回呼吸停止下に Mask 像と造影 CCTA を ECG-gated 1-beat prospective CTA 法で撮影した.非線形自動位置補正の後に,造影 CCTA から Mask 像を volume data として差し引 き S-CCTA を得た.S-CCTA では原理的には石灰もステントもないので,ICA と類似した画像が得られる MIP 表示を行 い ICA 所見と対比した. 結果:CT 総被ばく量は石灰化群 6.8 ± 4.4 mSv,ステント群 6.3 ± 3.4mSv であった.石灰化群では CCTA 上で 151 seg に石灰化を認め,その内 24 seg は狭窄度評価不能と判定された.ICA を真とした場合,この評価不能 seg におけ る S-CCTA の感度は 90%,特異度 71%,PPV 69%,NPV 91%,正診率 79% であった.ステント群では CCTA 上 で 125 seg にステントを認め,その内 52 seg は狭窄度評価不能と判定された.この評価不能 seg における S-CCTA の 感度は 100%,特異度 67%,PPV 29%,NPV 100%, 正診率 71% であった. 結論:S-CCTA は被ばく量が約 2 倍となるが,診断能は高く,ことに NPV が高いので,S-CCTA で陰性なら無駄な ICA を回避できる可能性がある. 患者さんやスタッフの被曝や負担を最少にすること、そして診断や 治療のため最良の画像を提供することが私たちの使命です。
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