量子論的SPMシミュレータ開発報告 -トンネル電流の精度向上

量子論的SPMシミュレータ開発報告
-トンネル電流の精度向上、及び、原子間作用パラメ
ータ7種類の紹介Advanced Algorithm & Systems 小方 亨
本日の内容
量子論的SPMシミュレータの紹介
トンネル電流の精度向上
原子間作用パラメータの充実(7種類)
量子論的SPMシミュレータの紹介(1)
密度汎関数強束縛法(DFTB法)に基づき、以下の4種類の計算を行う。
AFM像計算
原子間力の計算により、周波数シフト像を計算する。
KPFM像計算
接触電位差像を計算する。
STM像計算
トンネル電流像を計算する。
STS像計算
トンネル電流分光を計算する。
量子論的SPMシミュレータの紹介(2)
量子論的SPMシミュレータでは原子間の相互作用に関する情報が「原子間作用
パラメータ」というファイルに保存されており、探針と試料を構成する全ての元素に
対して、元素と元素の対として用意されている。このファイルにない元素を含む系
は計算できない。
探針
試料
タングステン(W)のみを含む
シリコン(Si)と水素(H)を含む
hh, hsi, hw, sih, sisi, siw, wh, wsi, ww の9つの組み合わせが必要。
原子間作用パラメータ “h-si-w” がこの9つ全ての組み合わせを保持している。
今回の変更点
トンネル電流の精度向上
原子間作用パラメータを7種類に追加
トンネル電流の精度向上
概要
STM,STSの計算では、探針の電子状態と試料の電子状態を求め、
探針-試料間の状態の遷移としてトンネル電流を計算している。
既存のプログラムは、試料のΓ点の電子状態のみを計算していた
が、いくつかのk点を取り、試料の状態をバンドとして計算することで精
度向上を図る。
試料の状態密度
エネルギー
探針の状態密度
フェルミレベル
トンネル電流
探針-試料間の
バイアス
トンネル電流の精度向上
計算事例
Si(001)-2x1:H 、Si(001)-3x1:H の計算
探針
試料
シリコン
Si(001)-2x1:H
Si(001)-3x1:H
探針位置
Si 4 H 9
タングステン
W 14
[参照論文] Surface Science 313 (1994) 17-24
探針位置
トンネル電流の精度向上
Si(001)-2x1:H (1)
Si(001)-2x1:H 探針:シリコン 旧プログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが存在しない
トンネル電流の精度向上
Si(001)-2x1:H (2)
Si(001)-2x1:H 探針:シリコン 今回のプログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが見られる
トンネル電流の精度向上
Si(001)-2x1:H (3)
Si(001)-2x1:H 探針:タングステン 今回のプログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが見られる
トンネル電流の精度向上
Si(001)-2x1:H (3)
探針(タングステン)の状態密度
Si(001)-2x1:Hの状態密度
ギャップが開いている
トンネル電流の精度向上
Si(001)-3x1:H (1)
Si(001)-2x1:H 探針:シリコン 旧プログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが存在しない
トンネル電流の精度向上
Si(001)-3x1:H (2)
Si(001)-2x1:H 探針:シリコン 今回のプログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが見られる
トンネル電流の精度向上
Si(001)-3x1:H (3)
Si(001)-2x1:H 探針:タングステン 今回のプログラム
I-V曲線
スペクトル
バンドギャップが見られる
トンネル電流の精度向上
Si(001)-3x1:H (3)
探針(タングステン)の状態密度
Si(001)-3x1:Hの状態密度
ギャップが開いている
原子間作用パラメータの充実
•
•
7種類の原子間作用パラメータファイルを作成。
•
シリコン系: h-c-si, h-o-si, h-n-si, h-si-p
•
タングステン系: h-si-w, h-o-w
•
白金系: h-c-pt, h-si-pt
•
金系: h-c-au, h-si-au
•
チタン系: h-si-ti-o, w-ti-o, au-ti-o, pt-ti-o
•
アルミナ: h-si-al-o
•
ルテニウム: w-ru-o, au-ru-o, pt-ru-o
単結晶、化合物のフェルミレベル付近のバンド構造を再
現することで検証を行った。
原子間作用パラメータの充実
(シリコン系)
Si-diamond: wikiより
Si-diamond
SiC, Phys.Rev.B.59.5536
SiC zincblende
α-SiO2, REU 2004 Summer
Program, university of Illinois,
J.Abrahamson
α-SiO2
原子間作用パラメータの充実
(タングステン、白金)
W-bcc: Phys.Rev.B.10.2349
W bcc
Pt-fcc: Phys.Rev.Lett.100.096401
Pt fcc
原子間作用パラメータの充実
(金)
Au-fcc: Phys.Rev.B.4.3321
Au fcc
原子間作用パラメータの充実
(チタン系)
Ti hcp: Iranian Journal of Science and
Technology (2012)A4:511515
Ti hcp
TiO2: Jpn.J.Appl.Phys.50,101103
TiO2 rutile
原子間作用パラメータの充実
(ルテニウム系)
Ru-hcp: Carl von Ossietzky University,
Diploma, Nils Ohmer(2010,0323)
Ru hcp
RuO2: a journal of chemical sciences,62b,949
RuO2 rutile
原子間作用パラメータの充実
従来はシリコンの探針しか使用できなかった。
タングステン系、白金系、金系の原子間作用パラメー
タが追加されたことで、タングステンの探針や、白
金、金を含んだ探針で計算をすることができる。
原子間作用パラメータの充実
チタン系(h-si-ti-o, w-ti-o, au-ti-o, pt-ti-o)
試料として、酸化チタンなど、チタンを含む系を計算できる。
アルミナ系(h-si-al-o)
試料として、酸化アルミニウム(アルミナ)などを計算できる
ルテニウム系(w-ru-o, au-ru-o, pt-ru-o)
試料として、触媒などで使用される、ルテニウムを含む系を計算できる。