数理解析系用レポート SHINOBU YOKOYAMA Abstract. アルバイト先の塾で、生徒からもらった問題を一般化して不動点を数える関数について考察したものですが、考察が完遂し ているわけではありません。 1 2 SHINOBU YOKOYAMA Definition.1:自然数 a の素因数分解 a = k ∏ pri i が与えられたとき, その素因数の積が作る n 個の数の組全体の集合 (こ i のとき全ての素因数は使い切らなくてはならない) を M = Ma とおく (pi は素数; pi < pi+1 (1 ≤ i ≤ k − 1)). 以降この組の個数 F を問題にし, 組数, 相異なる素因数の個数, 各素因数の次数をパラメータとして F(n, k, r1 , . . . , rk ) と 書く. パラメータを取り出す関数 η : N → Nk+1 (N0 = N ∪ {0}) を η(a) = (k, r1 , . . . , rk ) と定義し, n を固定した F を 0 Fn (k, r1 , . . . , rk ) = F(n, k, r1 , . . . , rk ) と書いて Fn ◦ η = τn : N → N0 を導入する (η は素因数分解の作り方から明らかに全射). —————————————————————— 上記のように素因数分解される自然数 a を固定しておき, M における辞書式順序 < を M ∋ (xi ), (yi ); (xi ) < (yi ) ⇔ (∃j = min{i ∈ [1, n] ∩ N |xi ̸= yi })(xj < yj ) と定義し, M = (Ma , <) とする. 辞書式順序が整列性を保つので, M は整列集合で M の中に有限の狭義単調増加列を取れる. 故に求める組の個数 F は, このような数列で最大長のものの長さ, 言い換えれば (xi )1 = (1, 1, . . . , a) となる M 上の数列 ((xi )j ) の長さの上限と言える (M そのものが有限数列の集合なので, M 上の数列とは数列の数列である). 従って (xi )1 = (1, 1, . . . , a) を満たす M 上の数列で最大長のものを特に ((βi )j ) と記すことにする. 例えば n = 2, a = 2 · 32 · 5 の場合 ((βi )j ) は, ((βi )1 ) = (1, a) < (2, 32 · 5) < (3, 2 · 3 · 5) < (5, 2 · 32 ) < (2 · 3, 3 · 5) < (32 , 2 · 5) = ((βi )6 ) となり, 長さが 6 なので τ2 (90) = 6 である. 非負整数の作る部分直積空間として n ∑ { } Kj = (x1 , · · · , xn ) ∈ (N0 ∩ [0, rj ])n : xj = rj をとり, χa : L = j=1 ∏k j=1 Kj → Ma を χa ((tij )) = ( k ∏ ti pi 1 , i=1 k ∏ i=1 ti pi 2 , . . . , k ∏ t piin ) = (x1 , x2 , . . . , xn ) i=1 と定めると, χ は全単射で, F = cardχ−1 (M ) である ((tij ) は非負整数係数の (k,n) 型行列). 以降この写像で L と M を同 一視する. 例えば n=2 のときの (βi )j を χ の像で表すと. 0 0 (βi )1 = (1, a) = χ( . .. 0 r1 r2 .. ), . rk 1 0 (βi )2 = (p1 , a/p1 ) = χ( . .. 0 r1 − 1 r2 .. ) . rk 固定点関数 0 1 (βi )3 = (p2 , a/p2 ) = χ( . .. 0 r1 r2 − 1 .. ), . rk 3 2 0 (βi )4 = (p21 , a/p21 ) = χ( . .. 0 r1 − 2 r2 − 1 .. ) . rk 等となる. (βi )3 では暗黙に p2 < p21 < p3 を仮定したが, (p1 , p2 , p3 ) = (3, 5, 7) のようにそれを満たさない素因数の組は幾らでも取り うる. しかしこの取り方は, (βi )j の長さに影響しない. それを示すために, 数列 (βi )j の要素に対する置換と置換作用による同 値類を考える. Ma への n 次元対称群 Sn の作用を (Ma と同一視した L の元の) 列の置換と考えれば, 軌道分解 ∪ Ma = OSn (xi ) xi ∈ L を得る. この軌道の個数 (=cardSn \Ma ) が F であることは定義から明らかである (集合としての Ma は掛け合わせて a と なるような n 個の数の組全体であったから, それらの組の内, 要素の置換を施して変化したもの (同一軌道内にあると解釈され る) を除いたものの個数が F である). 補題 1. τn は素因数の選び方に拠らず決まる. つまり各素因数の次数が等しい二つの異なる自然数 a, b について, τn (a) = τn (b) が成立する. 仮定を満たす a, b に対し, 二つの自然な射影 νa : L → Ma = Sn \Ma と νb : L → Mb = Sn \Mb を考える (L は a, b に依らずにとれる). これらは全射で, τ (a) < τ (b) とすると, (τ (x) = cardMx により) ある y ∈ Mb があって νb−1 (y) ∩ νa−1 (x) = ∅ (∀x ∈ Ma ) となるが, これは ν の全射性に反する (t ∈ νb−1 (y) ⊂ L をとれば νa (t) ∈ Ma である) 上の補題により, k 個の異なる文字が r1 , . . . , rk 個ずつあるとき, r1 + . . . + rk 個の文字から n 個を選んでできる組全体を M’ とおいて M と同一視して良い. n=2 の場合の F の形を具体的に与えてみる . )L の定義から, 第 i 行は n 個の要素を足し合わせると ri となるような組全体 ( から成っている. そのような組の個数は n+rrii −1 で与えられるから, n=2 のとき, これは ri + 1 に等しい. 一方全ての 1 ≤ i ≤ k について ri が偶数である場合には, r1 /2 r2 /2 Ma ∋ (yj ) = χ( . .. rk /2 r1 /2 r2 /2 .. ) . rk /2 となるような (yj ) が唯一つ存在し, M においてその Sn 軌道はただ一つの元からなる. 言い換えれば, このとき (yj ) ∈ M が存在し, それは列の置換に対して不変である唯一つの元である. Cauchy-Frobenius Lemma により, M への置換作用に関す る固定点の総和を Sn の位数で割ったものが F に等しく, F2 (∗) = ceil( k 1∏ (ri + 1)) 2 i=1 ··· (1.2) が成り立つ (上で示したように次数が全て偶数の場合, そうでない場合より固定点が一つ増えるので, その場合を ceil で調 整した). より一般の n に対しても, 各置換による固定点の個数を変数として容易に表示できるが, この関数の代数的表示を得るには, 固定点を数える関数が本質的である. 4 SHINOBU YOKOYAMA m 個を動かす置換で固定される M の元は (1, . . . , 1, ∗) 型の他, (2, . . . , 2, ∗) のように各素因数の次数に依存するものが多く 含まれるため, この表示は複雑になるだろう. まずは n と k を固定して次数だけの条件を幾つか作ってみないといけない.
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