4軸回転望型RCへリ コプタの開発に関する基礎的研究 (ー) 一 本機の

Bu11Fac Agr Shmane Un1v,2723−26,December20.1993
4軸回転翼型RCヘリコプタの開発に関する基礎的研究(1)
一本機の試作一
中尾清治・吉田忠彦・藤浦建史・挑剣亭
Fundamenta1Stud1es on Deve1opment of Four−Rotor Type
RC−He11copter(Part1)
一Tria1Production of RC−He1icopter一
Se1〕1NAKA0,Tadah1ko YosHIDA,Tatesh1FUJIURA and Kente1YoU
Abstract RC−he11copter that can be contro11ed eas11y may be requ1red on use
of farm work m future In th1s paper,four−rotor type RC−he11copter was tr1ed to de−
ve1op and the resu1ts of some f11ght tests were reported
The tr1a1RC−he11copter had four rotors wh1ch were dr1ven by DC motors,The
p1tch ang1e was f1xed and the revo1ut1ona1speed of each motor was contro11ed by
way of PWMl(pu1se w1dth modu1at1on)They revo1uted m the oppos1te d1rect1on
each other1n order to defeat the react1on torque of the body caused by the revo1u−
t1on of rotors The f11ght stab111ty of the RC−he11copter cou1d be contro11ed auto−
mat1ca11y by two gWoscopes
From the test resu1ts,the best pitch ang1e of the rotor was10degrees.The
maxmum11ft1ng force of tr1a1RC−he11copter w1th the best p1tch ang1e was159N
at1170rpm in rotor revo1ution.
Key words Four rotor type RC−he11copter,p1tch ang1e,f11ght stab111ty,11ftmg
force;rotor revo1ution.
ような性格を持ち,各種のアタソチメントを適宜交換す
ることにより,播種,施肥,除草,防除(液剤,.微粒剤,
緒 言
粒剤,粉剤等の散布)等の多種の作業が可能であること,
わが国の農業では,農業就業者の減少及ひ高齢化が大
ヘリコプタのメインロータからのダウンウオッシュを利
きな問題となっている これらの問題の解決策のひとつ
用して農薬の散布を効率的に行えること等である.
として農業の機械化による作業の省力化,または人件費
しかし,大型のヘリコプタでは,購入時及び利用時の
削減等の低コスト化が必要とされている.
コスト面の問題や農薬散布時に起こる範囲外飛散の影響
農業の機械化における研究及び開発は,さまざまな角
による環境汚染の問題がある.
度から検討されている.その中のひとつに航空機の利用
これらの問題の改善策として,近年,RCヘリコプタ
があ1),日本では主に農薬散布にヘリコプタが利用され
の農業利用への関心が高まっている.
ている その理由としてあけられるのは,農地の区画面
RCヘリコプタを用いた場合の利点としてあげられる
積が諸外国に比べてはるかに小さく,地形的にも起伏が
のは,RCヘリコプタに薬剤タンク及び噴出ノズルを取
多くて固定翼の飛行機の使用が困難である.一方,ヘリ
り付け,ロータの回転によって起こるダウィウオッシュ
コプタは,飛行速度が遅く,また地上のトラクタと似た
を利用して薬剤散布を行う場合,従来よりも低空で散布
することが可能なため,薬剤の範囲外飛散が少なく,ま
吉田忠彦:島根大学大学院農学研究科修士課程
た,付着効率を高めることができ,したがって微量散布
跳剣亭:島根大学農学部研究生
が可能であるという点である.また,小区画な畑作,果
23
島根大学農学部研究報告第27号
24
樹等の部門でも利用が可能であるという点もある.
出に用いられるフリージャイロである.
現在,農業用RCヘリコプタは一部の農家で購入され
また,基板ユニットからの出力だけでは大型のモータ
実用化への試行が行われているが機体の操縦と,ノズル
を回転させる出力が得られないために,DCモータドラ
の開閉の操作を別々の送信機で行っているため,2名か
イブ用トランジスタにより増幅して,大型のモータを回
ら3名の作業者を必要とし,とくに安定飛行するための
転させていた.また,駆動装置及びフレーム部は,でき
操作がかなり難しく,高度な熟練を必要とするため,誰
るだけ軽量にするために,電動RCヘリコプタの部晶と
でもが容易に利用できるというわけではない.
して使用されているプラスチック製の部品とアルミ製の
この問題を解決するために,飛行安定性に優れ,操作
部品を用い,ロータも強化を施した発砲スチロール製の
が容易なRCヘリコプタを開発し,現在の航空散布作業
ものを使用し,機体重量の軽減化をはかった.
を補完する目的に向けての基礎研究として,4軸回転翼
仕様は奉ユに示したとおりで,図2に示すロータの直
型RCヘリコプタを試作し,基礎実験を行った.
径は890mm,このロータ直径を基準としてB,Dのよ
うに対角に位置するトタの軸間1巨離はl1ll㎜,そし
1.4軸回転翼型RCヘリコプタの試作
てC,Dのように隣あうロータの軸間距離は920mmと
1.1 4軸回転翼型RCヘリコプタの構造
した。機体全質量は2.68kg(自重26.26N),駆動部分
今回,試作した4軸回転翼型R Cヘリコプタ(図1)
のギヤは4枚使用しており,ギヤ比は3.46:1となっ
は,室内用玩具として市販されている安定性のよい4枚
ている.
のロータを持つ小型RCヘリコプタの形状をもとにした
表1 仕 様
ものである.
以下に説明する基板ユニット,プロポ及びジャイロは
上述した小型RCヘリコプタのものを使用した.基板ユ
ニットは受信機とマイコン制御のコントロールアンプが
組み込まれた3層構成のプリント配線基板,プロポは4
チャンネルで実機ヘリの操縦に近い操作が行えるもので,
前後の操作と左右の操作が1本のスティックにまとめら
れているものである.ジャイロは2種類のものが搭載さ
れており,ひとつは,回転しているジャイロを軸方向に
変化させる回転力が働いた場合,その回転力の面と直角
の面内で回転しようとする,いわゆるプリセッションと
よばれる現象を利用し,主に角速度検出に用いられるレー
トジャイロと,もう1つは,ジャイロをフリーにしてお
くと,いつまでもその方向を保つことを利用した位置検
全長・・…・1,570㎜
全高……230㎜
全質量…・・2.68㎏
ロータ手蚤・・…・890mm
ギヤ比……3.46:1
モータ…・・京商LE MANS PRO SUPER HERI(4個)
使用電圧7.2V∼8.4V
全長56㎜ 直径36㎜ 質量178g
ジャイロ……キーエンス社製E−570用
フリージャイロ(質量8g)
レートジャイロ(質量6g)
電源装置……ネミソクラムタEWS60ト9
電圧6.5V∼12.0V
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A アンテナ D
基板ユニット
ロータ
ジヤイロ
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図1 試作した4軸回転翼型RCヘリコプタ
図2 4軸回転翼型RCヘリコプタ
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島根大学農学部研究報告第27号
26
摘 要
操従が容易に行えるRCヘリコプタの開発は,航空機
の農業への利用のために,今後必要になってくると考え
られる.今回,基礎研究のために試作した4軸回転翼型
RCヘリコプタは,4枚のロータを持ち,互いに回転時
に起きるトルクを打ち消し合うことによ})機体の安定を
はかる また,上下,前後左右の運動は,すへて電流の
パルス幅制御による回転速度の変化で行わ札 2つのジャ
イロが機体の傾きを制御している.4軸回転翼型RCヘ
リコプタは,通常のRCヘリコプタと異なり,ピッチ角
の変化を必要としないため,ロータのピッチ角は一定に
図4 有線飛行実験
なっている.
試作した4軸回転翼型RCヘリコプタの基礎実験とし
引 用 文 献
て,固定するピッチ角を調一べるために,1つのロータに
ついて回転速度,ピッチ角ごとの揚力,ロータ軸トルク
1)市川良平,RCヘリコプターの開発,実用化農及園,
を計測し,本機に最適なピッチ角は10。であるという結
65:169−176.1990.
果が得られた.また,4つの組み合わせたロータについ
て,有線で飛行させ,本体の揚力,回転速度を諦則した.
2)笹倉新蔵,生まれ変わったキーエンスジャイロソーサー
IIE−570.ラジコン技術,12:185−189.1990.
3) ,有線専用ジャイロソーサープロテクター同,
その結果,プロポのレバーを最もあげたホバリングの状
3:159−161.1990.
態でピッチ角10。のときに最大の揚力が得られロータの
4)昌田賢二,凧商E Pコンセプト電動ヘリ抜群のホハリン
回転速度1170rpm揚力15.9Nという結果が得られた.
グ安定性.同,9:159−164.1990.