18a-E16-5

第 61 回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集(2014 春 青山学院大学)
18a-E16-5
埋め込み構造フォトニック結晶レーザの無閾値動作と自然放出光結合係数の評価
Thresholdless lasing of buried heterostructure photonic crystal laser
and the estimation of spontaneous emission coupling factor
日本電信電話株式会社 NTT ナノフォトニクスセンタ 1, NTT 物性研 2, NTT フォトニクス研 3
○
滝口雅人 1,2, 角倉久史 1,2, 谷山秀昭 1,2, ダナン ビロウォスト 2, 倉持栄一 1,2, 新家昭彦 1,2,
佐藤具就 1,3, 武田浩司 1,3, 松尾慎治 1,3, 納富雅也 1,2
NTT Nanophotonics Center1, NTT Basic Research Labs.2, NTT Photonics Labs. 3, NTT Corporation
○
M. Takiguchi1,2, H. Sumikura1,2, H. Taniyama1,2, D.M. Birowosuto1,2,
E. Kuramochi 1,2, A. Shinya1,2, T. Sato1,3, K. Takeda1,3, S. Matsuo1,3, M. Notomi1,2
E-mail: [email protected]
我々は超低消費電力で動作する高速で高効率な発光素子を目指し、フォトニック結晶(PhC)と埋め込
みヘテロ構造-量子井戸(BH-QW)を使った素子の研究を行っている[1][2]。既存の量子井戸型 PhC 発
光素子は、基板全面に量子井戸があるため、PhC 空孔による表面再結合やキャリア拡散により発光効率
が低下していた。一方で我々の BH-QW PhC 素子は、キャリア閉じ込め効果が高く、表面再結合が少な
いため、高効率・高出力化が期待できる。これまで我々は、BH-QW PhC 素子のパーセル効果 [2] や、
FDTD による自然放出光結合係数(β)の解析を行ってきた[3]。特に前回報告では、発光体の発光線幅が
10 nm 程度で共振器の Q 値が 7000 の場合に、発光の均一幅の離調をとってもβが 1 近くなることが分
かった。
そこで、今回発表では、実際に BH-QW L3-PhC 共振器の LL 特性の詳細を調べた。測定に用いた素子
の構造はスラブ厚が 240 nm の InP 基板で、空孔半径が 100 nm、格子間隔が 384-424 nm 、Q が 3000
程度の L3 共振器を用いた(図 1)。室温(300K)での測定に用いた素子は共振波長が 1440 nm で、低
温(4K)用の素子は共振波長が 1423 nm となっている。励起光源は、繰り返し周波数 80MHz、波長 810
nm のフェムト秒パルスレーザを用いた。図 2 の室温での LL 特性を見ると、
明らかにレーザ発振後には、
発光ピーク強度が励起パワーに対して大きく変化しているのに対して、図 3 の低温の測定では LL 特性
の変化が明瞭ではない。これは低温に冷やすと、量子井戸の発光幅が狭くなることで高β化し無閾値
動作をしていることを示している。そこで、低温での素子のレーザ発振閾値を確認するために、半値
幅と発光寿命の励起強度依存性を調べた(図 3)。共振器線幅は励起強度が増加するにつれて、線幅が
狭くなり、500 nW 付近でその変化が顕著になっている。また、発光寿命も、パーセル効果により高速
化された 0.3 ns の発光寿命が、励起強度の増加とともに、0.045 ns まで高速化された。この励起強度
に対する発光寿命の高速化は、誘導放出によるものだと考えられる。さらに、レーザ発振前後での強
度相関を測定し、カオス光からコヒーレント光への変化を見ることで、本素子がレーザ発振している
ことを確認した。図 2、3 のように、閾値付近では共振器幅の狭窄化によりコヒーレント長が長くなり、
発光強度も大きくなるため、バンチングが観測できた。レーザ発振後はコヒーレント光となりバンチ
ングが観測されなくなっている(励起強度が低いところでは発光強度が弱いことと、共振器線幅が広
くコヒーレンスが悪いためバンチングが見えなかった)。本講演では、格子定数依存性の評価やβの
評価について当日報告を行う。[1] S. Matsuo, et al., Nat Photonics. 4, 648 (2010) [2] M. Takiguchi, et al., Appl. Phys.
Lett. 103, 091113 (2013) [3] 滝口他、第 74 回応物学会秋季学術講演会 17a-P14-13 (2013)
s図 1. BH-QW L3 PhC
Ⓒ 2014 年 応用物理学会
s図 2. LL 特性と強度相関(300K)
04-062
s図 3. LL 特性と強度相関 (4K)