東日本大震災で明確となった河川津波の危険性 国交省河川津波対策検討会では、施設計画上の津波(L1)、最 大クラスの津波(L2)に分けて対策実施することを提言(H23.8月) 河川管理上の課題:津波がどこまで河川を遡上するかの予測→ 樋門操作・河川巡視範囲などの判断 様々な河川流量と津波規模に応じて、河川遡上距離や危険箇所 を事前に明らかにしておき、津波来襲時の判断材料を得ておくこ とが肝要(数値計算が有利) 河川津波における遡上距離・遡上高の推定手法 河川津波における遡上距離 遡上高の推定手法 河川津波予測手法の提案 津波予測縦断図(流量2000m3/s) 遡上距離 20 左岸堤防高 右岸堤防高 計画高水敷高 15 10 初期水位(2000m3/s) 5 最深河床高 0 津波高1m 津波高3m 津波高5.46m(500年間隔) 津波高8m 津波高15m ‐5 津波高2m 津波高4m 津波高6m 津波高10m ‐10 0 River Engineering Research Team 地震発生 25 本手法の計算 モデルによる 事前検討 標高(m) 寒地土木研究所寒地河川チーム 研究員 阿部孝章 土研新技術ショーケース2014 in 那覇 2014年1月23日(木) 沖縄県市町村自治会館 河川津波予測縦断図 5 10 15 20 25 30 35 40 距離標 KP(km) 1 津波規模H 河川流量Q 遡上高 River Engineering Research Team 本手法の計算モデルについて • CERI1D:一次元不定流計算用ソルバー – – – – 本手法の計算モデルについて River Engineering Research Team 3 River Engineering Research Team 連続式と運動方程式 横断データ例: Aw Qw 0 t x gn 2u 2 S Qw Qw2 gAw H w b 1w3 w 0 Rw t x Aw x 計算の実行 ※1次元モデルなので 高速な計算が可能です 出力データ • 縦断的な水位、流速等 予測縦断図 4 CERI 1Dの計算モデルについて 入力データ 上流流量、下流水位 横断データ ※全てcsvファ イルで用意 粗度係数 データ整理 URL http://river.ceri.go.jp/ (寒地河川チーム) http://i-ric.org/ja/ (iRICソフトウェア) • 今年4月にiRICソフトウェアに統合 計算モデルの概要 • • • 洪水の計算 津波の計算 河氷変動計算 結氷河川における津波計算 iRICソフトウェアの統一化されたGUI上 で計算前処理が可能 • 寒地河川チームホームページで公開中の「津波河川遡上 予測の手引き(案)」にて予測縦断図の作成方法を詳しく解 説しております(後ほどご紹介します)。 5 River Engineering Research Team • • • • • • Aw[m2]:河川水の流積、 Qw[m3/s]:流量 Hw[m]:水位 n[sm‐1/3]:Manningの粗度係数 uw[m/s]:河川縦断方向の流速 Sw[m]:潤辺、Rw[m]:径深、 ρw[kg/m3]:水の密度で999.8 River Engineering Research Team 6 2011年東北地方太平洋沖地震津波 宮城県沖で発生した2011年東北地方太平洋 沖地震津波は北海道にも到達し、全道的に河 川遡上が発生(1級10河川で遡上を確認) 十勝川・新釧路川で再現計算を実施 津波再現計算適用事例 3.11再現計算(iRICソフトウェアで実施) 新釧路川 7 River Engineering Research Team River Engineering Research Team 十勝川 8 2 事例1:十勝川(3.11) 広里1分水位 CERI1D広里1分 2011年3月11日~12日における 十勝川の河川津波を再現計算 標高(m) 1.6 1.2 0.8 0.4 0 3/11 12:00 3/11 18:00 3/12 0:00 3/12 6:00 3/12 12:00 広里水位観測所(3/11 12時‐3/12 12時) 十勝川(KP3.2~KP21.0) 2011年 3月11日14:45~3月12日00:45 (計10時間) 2.0 :観測値 (KP9.3旅来) :計算値 (KP9.2地点) 1.5 水位 [m] KP7.4L, 広里 1.0 0.5 0.0 -0.5 0 1 ※帯広開発建設部様より河道諸元 データ・水位記録をご提供頂きました 2 3 4 5 6 時間 [hour] 7 8 9 10 大津(KP.3.2)~茂岩 (KP.21.0)の範囲で解析 大津10秒水位を下流端境 界条件とした River Engineering Research Team 9 事例2:新釧路川(3.11) River Engineering Research Team 事例2:新釧路川(3.11) • 精度の検証 ●新釧路川の再現計算(時系列水位) – 広里水位観測所における時系列水位比較 2 ←新釧路川 広里1分水位 CERI1D広里1分 標高(m) 1.6 KP7.4(広里) 1.2 0.8 0.4 0 3/11 12:00 3/11 18:00 3/12 0:00 3/12 6:00 3/12 12:00 釧路開建治水課様より水位データをご提供頂きました River Engineering Research Team 11 River Engineering Research Team 12 事例2:新釧路川(3.11) 事例3:鳴瀬川(東北地方) • 精度の検証 鳴瀬川流下方向 – 最大水位と痕跡標高との比較 KP9.0R,鹿島台 平均河床高 右岸堤防高 HZmax 左岸堤防高 河川事務所痕跡調査 寒地痕跡調査 初期水位 KP4.2R,小野 8.0 標高(m) 6.0 KP0.5R,野蒜 4.0 2.0 0.0 鳴瀬川 ※東北地方整備局様より河道諸元・痕跡データ等ご提供頂きました ‐2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 河口からの距離(km) 8.0 13 River Engineering Research Team ※ここでご紹介する鳴瀬川への適用事例は,寒地土木研究所月報5月号(5/10発刊)に掲載 14 中 River Engineering Research Team 事例3:鳴瀬川(東北地方) • 各水位観測所での水位時系列比較 鹿島台(KP9.0) 6 水位[m] 計算期間 3/11 0時‐3/15 0時 - 小野観測所(東北地整) - シミュレーション KP4.2, 小野 5 観測値(KP9.0鹿島台) 4 計算値(KP9.0) 3 2 1 0 ‐1 0 1 2 3 4 日数[d ] 日数[days] 小野(KP4.2) 6 5 観測値(KP4.2小野) 水位[m] 4 計算値(KP4.3) 3 観測値は3日目途中で欠側 2 1 0 ‐1 0 1 2 3 4 日数[days] ■2地点で水位記録と良好な一致を確認されました River Engineering Research Team River Engineering Research Team 16 事例3:鳴瀬川(東北地方) • 精度の検証(鳴瀬川) – 最大水位の計算結果と痕跡調査との比較 計算水位 平均河床 左岸痕跡 左岸築堤高 右岸築堤高 初期水位 良好な再現性が確認された 右岸痕跡 ※計算は河口から0.5km ~24.6km区間で実施 観測所 16 野蒜 水位観測所 14 小野 水位観測所 鹿島台 水位観測所 遡上距離・遡上高推定手法 12 4kmまでは堤内地も浸水 標高(m) 10 8 6 4 2 0 ※再現計算に関する詳細は寒地土木研究所月報(伊藤ら, 2013年 5月号)にて紹介しております。 http://thesis.ceri.go.jp/center/doc/geppou/kasen/00160920401.pdf ‐2 ‐4 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 追加距離(m) ※東北地方整備局様より河道諸元・痕跡データ等ご提供頂きました River Engineering Research Team 17 River Engineering Research Team 18 既往手法との比較 河川津波来襲時の判断材料を提供 津波予測縦断図(流量2000m3/s) 25 左岸堤防高 15 初期水位(2000m3/s) 5 最深河床高 0 津波高1m 津波高4m 津波高8m ‐5 ‐10 0 10 津波高2m 津波高5.46m 津波高10m 20 津波高3m 津波高6m 津波高15m 30 4.0 2.0 0.0 ‐2.0 40 0.0 河口からの距離(km) 地震発生時、津波高の情報が得られれば、予め作成しておいた予測縦断 図の近い流量のグラフを元に河川縦断的な最高水位を瞬時に予測可能 平面2次元計算モデルとの比較 3 120 1 80 ‐1 40 ‐3 0 5400 7200 経過時間 [s] 9000 下流端水位 [T.P.m] 上流端流量 [m3/s] 5 160 3600 8.0 20 Nays2DFlood 計算メッシュ 下流端水位 200 1800 4.0 6.0 河口からの距離(km) 平面2次元計算モデルとの比較 CERI1D計算メッシュ 0 2.0 簡易推定手法の値は津波の河川遡上解析の手引き(案)・国土技術研究センター: 参考資料‐2簡易推定手法を元に作成→上流へ行くほど痕跡値から乖離 River Engineering Research Team River Engineering Research Team 上流端流量 寒地土研痕跡調査 初期水位 6.0 計画高水敷高 10 標高 高(m) 標高(m) 8.0 右岸堤防高 20 平均河床高 右岸堤防高 簡易推定手法 HZmax 左岸堤防高 開発局痕跡調査 ※本予測図は流量の ケース数分作成します ‐5 10800 計算モデル 入力データ間隔[s] シミュレーション時間[s] マニングの粗度係数 最小水深h min[m] 計算時間間隔[s] CERI1D Nays2DFlood 1D不定流 2D不定流 15 15 10800 10800 0.025 0.025 0.01 0.01 自動算出 0.1 480 CERI1D 計算時間は0.5%以下 2 0 50 100 21 River Engineering Research Team 留意事項 Nays2DFlood 150 200 250 300 350 シミュレーションに要した時間 [s] 400 450 500 22 River Engineering Research Team 作例 津波予測縦断図(流量120m3/s) 25 20 右岸堤防高 計画高水敷高 初期水位(120m3/s) 10 鵡川 北海道M川 10 初期流量38m3/s 津波遡上予測縦断図 5 8 最深河床高 0 津波高0.5m 津波高3m 津波高6m 津波高15m ‐5 ‐10 0 5 10 15 津波高1m 津波高4m 津波高8m 20 25 津波高2m 津波高5.46m 津波高10m 30 35 40 距離標 KP(km) 小流量 津波予測縦断図(流量2500m3/s) 標高 [m] 標高(m) 12 左岸堤防高 15 • 実際の河川では流量によって初 期水位が変化し、遡上距離も変 化します(例:右図) • 波高の他に流量を変化させた解 析を行うことも可能です 6 Elev. 4 Initial HZmax1m 2 25 HZmax2m 20 標高(m) HZmax3m 0 右岸堤防高 15 左岸堤防高 計画高水敷高 10 HZmax5m ‐2 初期水位(2500m3/s) 5 津波高2m 津波高5.46m 津波高10m ‐5 津波高3m 津波高6m 津波高15m 津波高4m 津波高8m ‐10 0 5 大流量 10 River Engineering Research Team 15 20 25 距離標 KP(km) 30 HZmax7m 0 最深河床高 0 35 40 23 2 4 6 河口からの距離 [km] 8 10 HZmax10m 平成25年度寒地土木研究所現地講習会in室蘭(国土交通省北海道開発局 室蘭開発建設部・(独)土木研究所寒地土木研究所実施)の講習内容より River Engineering Research Team 24 予測縦断図の活用について 本推定手法のマニュアル化を実施 • 河川津波計算 • 津波予測縦断図の作成 ■避難用道路の使用可否判断 ■樋門閉扉操作 ■堤防越流範囲 これらの基本的な流れを「津 波河川遡上予測の手引き (案)」として公開中です ! ! ! ! ※寒地河川チームホームページ > 「ツール」 コーナーよりダウンロードして頂けます URL: http://river.ceri.go.jp/ River Engineering Research Team River Engineering Research Team 本手法の使用方法 まとめ • 入手、使用方法 河川津波における遡上距離・遡上高の推定手法 – 計算モデル・マニュアルは無償でwebからダウンロード 可能 – 計算実施のための掲示板でのサポート – 河川の地形データが必要 • 国交省「河川定期縦横断 データ作成ガイドライン」に沿った データ • 河川津波の遡上距離・遡上高を地震発生後、津波が河川 を遡上するまでの間に瞬時に推定する手法です • 河川管理者や自治体の防災担当者が緊急時の判断を行 うための支援となります • 堤防越流範囲推定、避難用道路の判断、注意報解除後 の点検範囲設定が迅速に行えるようになります • 河川内の津波遡上を精緻に予測する他の2次元モデル等 に比較し、計算が高速・条件設定が容易・環境が無償であ るという特長があります • 計算ソフト・マニュアルはWEBで無償公開中です • 事前に必要な手続き – 特になし – まずはご相談下さい River Engineering Research Team 27 River Engineering Research Team 28 お問い合わせ先 寒地技術推進室(技術相談窓口) ・・・本技術全般や導入について 寒地河川チーム ・・・計算モデル詳細や今後の普及について (担当:柿沼・阿部) TEL 011‐841‐1639 寒地河川 寒地土木研究所のホームページ ご清聴ありがとうございました! 検 索 技術相談窓口 ※お問い合わせメールフォームよりお願い致します。 River Engineering Research Team 29 Ice Jam in Shokotsu River, 03/03/2010
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