米国経済(週次)予測(2014年3月7日)

No. 77
CQM(超短期経済予測モデル)
米国経済(週次)予測(2014 年 3 月 7 日)
熊坂侑三(APIR リサーチリーダー,ITエコノミーCEO)
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ポイント
CQM 予測の動態:実質 GDP の成長率
2014 年 Q1(1-3 月期) (%,前期比年率換算)
4.0
平均(GDP)
需要側
3.0
所得側
2.0
0.91
1.0
0.57
0.0
0.23
-1.0
3/7
3/3
2/21
2/14
2/7
1/31
1/17
1/10
1/3
12/20
12/13
12/6
11/29
11/22
11/15
11/8
▶米経済は 1 月、2 月の悪天候以前か
ら悪化しており、ファンダメンタル
ズの弱さを抱えている。
▶図表に見るように景気は 1 月 10 日
の CQM 予測から下降トレンドを形
成している。2 月 7 日に始めて 1 月
の雇用統計が更新されるまでは、1 月
の悪天候の影響を CQM 予測は受け
ていない。
▶図表にみる景気後退と同じパター
ンが実質アグリゲート指標からも見
られる。
▶しかし、多くの連銀エコノミストは
最近の景気のスローダウンを悪天候
によるとして、景気回復への楽観的
な見方を変えていない。
▶3 月 19 日の FOMC ミーティングで
は 3 度目の資産購入の縮小を決定を
する可能性が高い。
▶最近の研究で QE、フォワードガイ
ダンスの悪影響が懸念されている。
<連銀エコノミストが気づいていない、悪天候以前からの米経済のスローダウン>
今週の CQM 予測は 1 月の建設支出、貿易収支、工場受注(製造業財出荷)、2 月の雇用統計、農産物価格を更新
した。3 月 1 日の CQM は 2014Q1(1-3 月期)の実質 GDP 伸び率を支出サイドでは 0.35%から 0.23%へ、所得サ
イドでは 1.13%から 0.91%へそれぞれ下方修正した。両サイドからの平均実質 GDP 伸び率は 0.74%から 0.57%へ
と下方に修正された(図表)。ヘッドラインインフレーション(個人消費支出(PCE)価格デフレーター)は 2014Q1、
Q2(4-6 月期)とそれぞれ、1.58%、1.59%と予測されており、インフレに関しては現実的にはまったく望ましい伸
び率になっている。
最近の景気のスローダウンをほとんどの連銀エコノミストは悪天候によるとしている。図表に見るように、CQM
は米景気が 1 月 10 日の CQM 予測から支出・所得の両サイドにおいて下降トレンドを形成していることを示してい
る。1 月 10 日というのは 12 月の雇用統計が更新された時であり、1 月の悪天候の影響を受けた雇用統計が更新さ
れるのは 2 月 7 日の CQM 予測である。従って、2 月 7 日 CQM 予測までの景気の下降トレンドはまだ 1 月の悪天候
の影響をうけていない月次経済統計によるものである。すなわち、今の景気のスローダウンはファンダメンタルズ
と悪天候によるものである。支出・所得両サイドにおける平均実質 GDP 伸び率は 1 月 10 日の 2.25%から今週(3
月 7 日)までの 0.57%へと 1.68%も下方修正された。現在の米景気の拡大スピードは 0.5%程度と考えるのがよい。
連銀エコノミスト達が今の景気のスローダウンを悪天候によるものとして、今後の景気拡大の見通しに楽観的で
ある限り、3 月 19 日の FOMC ミーティングにおいて 3 度目の毎月の資産購入の縮小を決定するだろう。彼らの意
図は、資産購入の縮小を徐々に行う一方、異常な低金利政策をできるだけ長く維持することにある。Yellen 連銀議
長は今もって“失業率は高すぎ、インフレ率は低すぎる”と言っており、彼女は QE とフォワードガイダンスにより連
銀の雇用最大化と 2%インフレを達成しようとしている。しかし、問題は QE とフォワードガイダンスの経済的効果
である。JP Morgan のエコノミストたちによる最近の実証論文“Market Tantrum and Monetary Policy”では、連銀が
超低金利を長期間続けるほど経済へのリスクが高まると警告し、QE とフォワードガイダンスについてもそれらによ
り投資家がリスク資産にはしり、そうした行為を容易には反転させることはできないとも警告をしている。
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