週次レポート 平成 26 年 10月 27日 日米中銀会合にらみドル値固め焦点

週次レポート
平成 26年 10月 27日
日米中銀会合にらみドル値固め焦点
米欧指標、日本の決算発表、日欧景気対策なども注目
今週の為替相場は日米の中銀会合をにらみつつ、ドルの値固めが想定されよう。週間予想はドル/円が
106.20-108.7
0円、ユーロ/円が 136
.50-1
38.5
0円。引き続き世界減速懸念やエボラ熱の感染拡大リスク、
日本の消費税 10%再増税を巡る不透明感などが市場不安定化の材料として残るものの、世界成長見通し下方
修正や米 FRBによる 10月末での量的緩和(QE
)終了といった悪材料への織り込みは進捗しつつある。日米中
銀会合や米欧指標、日本企業の決算発表、日欧での景気刺激策を巡る論議などが注目されやすい。
「世界景気先行」海運指数が反発、世界減速を織り込み
10月以降、リスク回避の株安・円高を加速させた一因は、10月 7日の I
MFによる来年にかけての世界成長
見通しの下方修正であった。しかし、グローバルな景気動向に先行しやすい国際的な海運市況・バルチック
ドライ海運指数は、9月 10日の 1197ポイントを直近高値として先行急落したあと、10月 16日の 9
30を安値
として底入れ反発へと移行。10月 24日には 1192と「行って来い」の反発を見せており、当座の世界減速の
織り込み進捗が示唆されている。
しかも、テクニカルで海運指数は、今年 3月以来となる 200日移動平均線の上抜けを回復してきた。前週
には最新 1
0月指標でドイツやユーロ圏の製造業 PM
I、中国の HSB
C製造業 PMIなどが市場予想を上回ったほ
か、米国では底堅い指標が続いており、資源エネルギー価格の急落や世界的な長期金利の大幅低下、地政学
リスクの緩和、日欧中銀の緩和強化期待、米 FRBによる QE終了後の低金利長期化見通しなどを受けて、各国
の年末商戦に向けた景気の下げ止まり期待が浮上している。
ちなみに前回、海運指数が大幅下落のあと、200日線の節目を回復してきた局面としては 2013年 6月があ
った。当時のドル/円は同年 5月高値 103.74円前後からのドル急反落のあと、6月の 93.64円前後を安値に
底入れとなっている(円は天井形成)。その後、10月にかけてのレンジ横這いとドルの値固めを経て、10月
後半からドル高モメンタムが再点火。同年 1
2月末にかけて、105円方向へのドル高・円安が再加速された。
今回も当座の世界減速リスクの織り込み進捗とともに、ドルの底固めを経たあとの 110円再トライ、その後、
115円方向への上限切り上がりの可能性が注目されよう。
テクニカルでドル/
円は目先、週足・一目均衡表の転換線 106.96円前後、13週移動平均線 106.39円前後、
基準線 105.46円前後などを下値メドとした底固めが焦点となる。海運指数の反発は、豪ドルや NZドル、カ
ナダ・ドル、南アフリカ・ランドといった資源国通貨の下支え要因にもなるものだ。
今週に限ると、28-29日の米 FOMCが警戒されやすい。すでに 10月末での QE終了は織り込まれているが、
QE終了後も低金利政策は長期化させるという「フォワード・ガイダンス強化」の思惑が、短期的なドル安材
料となりやすい。FOMC声明では、世界減速やエボラ熱感染拡大リスク、ドル高による米国経済への悪影響に
関し、何らかの言及があるとドルにはマイナスの要因となる。
もっとも F
RBによる低金利政策の長期化メッセージは、米国株の反発支援となってクロス円主導での円安
をサポートしやすい。同時にリスク回避の後退は、安全逃避による米国債シフトを抑制(金利は下げ渋り)。
スピード調整やポジション調整によるドル安を経たあとのドルの下値固めを後押しさせていく。しかも米 10
年債金利は 10月 15日の 1
.86%までの急低下により、テクニカルで過熱感を示す RSI指数(相対力指数)や、
DMX指数と ADX指数(トレンドの強さを示す方向性指数)などで、いったんの金利下限到達シグナルが点灯
してきた。今後は揺り戻し調整的な金利の上昇が意識され、現状からのドルの下値を抑制しよう。その他の
注目ポイントは以下の通り
<日米の短期金利差>
米国市場では 10月から FRBによる利上げ時期に後ズレ観測が広がり、ドル/円でのドル安を後押しさせて
きた。しかし、政策金利 F
Fと連動性の高いロンドン L
IBOR(銀行間金利)のドル建て 3カ月物金利は、9月
30日の 0.235%から 10月 15日の 0.228
%への急低下を経て、24日には 0.23
3%へと再上昇している。米国
では指標の改善が続いており、「利上げ時期の来年半ばから来年後半までの後ズレ」が 10月以降のドル安要
因となっても、
「来年後半以降への後ズレ」を織り込むのはまだ尚早となっている。すでに足元で来年後半ま
での後ズレは織り込みが進捗しつつあり、現状からのドルの下値余地と米債金利の低下余地を狭めることに
なる。
一方で日本に関しては、日銀に追加緩和の余地が残されている。LI
BORの円建て 3カ月物は 9月 8日の
0.127%から金利の低下が続き、ドル金利が上昇に転じても 10月 24日には 0.107
%と低下に歯止めが掛かっ
ていない。結果、日米 3カ月金利は 0
.12%の「ドル建て優位」となり、2013年 3月以来の拡大幅に開いてき
た。過去のドル高局面に比べると金利差は僅かであり、引き続きドルの上値の重さに変わりはないが、緩や
かなドルの下値切り上がりはサポートされていく。
<米国の経済指標>
米国の経済指標は底堅い内容が相次いでおり、今週も 28日の耐久財受注とケースシラー住宅価格指数、消
費者信頼感指数、30日の 7-9月期 GDP
、31日の個人支出などで改善が期待されやすい。注目は GDPだが設
備投資や住宅がプラス要因となる一方、個人消費と在庫投資の減少が下振れの攪乱要因として注視される。
<欧州の指標とユーロ動向>
欧州では 30日に 10月のドイツ消費者物価指数(CPI
)、31日にユーロ圏 CPIが公表される。改めて物価下
落とデフレ圧力が警戒される一方、最新 10月の製造業 PMIはドイツ、ユーロ圏ともに予想を上回る改善とな
ってきた。欧州ではユーロ安やロシア・ウクライナの地政学リスク緩和などが景気の下支え要因となってお
り、CPIも一旦の下げ止まりが注目されやすい。
ユーロについては、26日で欧州中銀(E
CB)による銀行ストレステスト(健全性審査)の結果公表が終わ
り、短期的な悪材料の出尽くしも見られている。シカゴ IMMの投機的なユーロ・ポジション(非商業部門、
国際通貨市場)では、最新 21日週にネット・ショート(売り持ち)が 9月 2日週以来の高水準に再膨張して
きた。米 FOMCにかけてはポジション調整的なドル売り戻しとユーロの買い戻しが想定され、11月 6日の EC
B
理事会までの「小休止」的なユーロの自律反発が焦点になりそうだ。
<日本企業の決算発表と日銀政策会合>
日本株市場では今週から企業の決算発表が本格化する。先行発表の米国では底堅い決算が相次いでおり、
日本でも円安効果などによる収益見通しの上方修正が期待されよう。日本株の反発と円の戻り売り(外貨の
押し目買い)の材料となるものだ。
同時に日本では 31日に日銀の政策決定会合が開催される。半年に 1度の経済・物価展望レポート公表では
成長と物価見通しの下方修正が想定され、追加緩和への期待感が改めて株高と円安のトレンドを維持させる。
ただし、展望レポートの下方修正については、すでに前週から織り込みが進んできた。そのため 31日の会合
前後では、
「材料出尽くし」や「追加緩和の手段と時期の曖昧さ」による短期的な円高のリスクも排除できな
い。
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