詳細 - 日本心理学会

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長さ錯視における比較刺激の形状と位置の効果
○松下戦具 ・富田瑛智 ・森川和則
( 大阪大学大学教育実践センター・ 大阪大学人間科学研究科)
キーワード:長さ錯視・楕円・比較刺激
7KH (ffHFWV RI 3RVLWLRQV DQG 6KDSHV RI &RPSDULVRQ 6WLPXOL RQ /HQJWK ,OOXVLRQ
6R\RJX 0$7686+,7$ $NLWRVKL 720,7$ DQG .D]XQRUL 025,.$:$
,QVWLWXWH IRU +LJKHU (GXFDWLRQ 5HVHDUFK DQG 3UDFWLFH 2VDND 8QLYHUVLW\ *UDGXDWH 6FKRRO RI +XPDQ 6FLHQFHV 2VDND 8QLYHUVLW\
.H\ ZRUGV OHQJWK LOOXVLRQ HOOLSVH FRPSDULVRQ VWLPXOXV
円と、その円の幅を縮めた楕円とを並べると、楕円の長軸
は円の直径よりも長く知覚される。楕円が円よりも長く見え
るその理由として、アスペクト比だけではなく弧の曲率も利
いている可能性は示唆されている 松下・森川 。
しかしながら、楕円が絶対的に長く見えるのか、円が短く
見えるのか、それとも円と楕円との組み合わせが効果を及ぼ
すのかすら明らかにされていない。そこで本研究では、比較
刺激と提示位置とを系統的に操作し、楕円の長さ錯視におけ
る一般性を検討した。もしすべての条件で長く見えるなら楕
円そのものの特性である可能性が高い。そうでないなら、比
較対象との組み合わせの効果である可能性がある。
方 法
本実験では 3(67 法を使い図形の主観的長さを測定した。
実験参加者:実験参加者は 歳から 歳 0 = ., 6 ' =
. の大学生、大学院生および大学教員の 名であった。彼
らのうち 名は本研究の著者であった。
刺激・装置:刺激は、 インチ液晶ディスプレイに提示さ
れ、刺激の背景は灰色であった。参加者とディスプレイとの
距離はあご台により FP に保たれた。
刺激図形はすべて幅 S[ の黒い枠線で描画され、塗りつ
ぶされなかった。標準刺激は長軸 S[ 短軸 S[ の楕円
か、直径 S[ の円であった。比較刺激は垂直線分、円、楕
円で、長さの初期値は ± から ± S[ であった。楕円
のアスペクト比は条件によらず常に であった。
提示位置には、水平条件と上下条件を設定した。水平条件
では、二つの図形が画面中段、左右に並べて刺激が提示され
た。上下条件では、左上と右下、もしくは右上と左下に刺激
が提示された。
手続き:実験計画は、標準刺激(円・楕円)× 比較刺激(垂
直線分・円・楕円)× 提示位置(水平・上下)の 要因実験
参加者内計画であった。ただし試行数を減らすために、比較
刺激と標準刺激が同じ図形(円と円、楕円と楕円)にならな
いように設定した。
教示の後キーを押すと課題が開始され、画面には1つの標
準刺激と1つの比較刺激が提示された。実験課題は、提示さ
れた つの図形のうち、長いほうの図形をキー押しで答える
二肢強制選択課題であった。本実験での「長さ」はディスプ
レイ上の垂直方向の長さであると定義された(楕円の長軸お
よび比較刺激の線分は常に垂直方向であった)。刺激図形は
参加者がキー押し反応するまで提示された。反応が起こると
秒間のブランク画面が提示され、次の刺激が提示された。
試行の種類は × × 種類で、それぞれを 回測定した
ので全部で 系列の課題が設定された。(ただし 人の実験
参加者は 回ではなく 回の測定で 系列でおこなった。)
どの系列の課題が提示されるかは毎試行ランダムに決定さ
れた。比較刺激の長さの調節幅(3(67 法のステップサイズ)
が S[ 以下になったときにその系列は収束とし、すべての
系列が収束した時点で実験を終了した。
結果と考察
得られた収束値を条件ごとに平均し、 要因の分散分析
を行った。その結果、全般的に楕円は円よりも長く知覚さ
れ ), = ., S < .、比較刺激の主効果も有意で
あった ), = ., S < .。また、標準刺激と比較刺
激との交互作用が有意であった ), = ., S < .。
さらに提示位置と比較刺激との交互作用も有意であった
), = ., S = .。これらの交互作用を詳細に調べる
ため、比較刺激の条件ごとに 要因の分散分析を行った。
線分と比較した条件だけで 要因の分散分析をしたとこ
ろ、交互作用が有意であったため(), = ., S < .)
単純主効果の検定を行った。その結果、円は比較刺激(線分)
と横に並べられたときよりも上下に並べられたときの方が長
く知覚されていた。また比較刺激が線分の場合、標準刺激と
比較刺激とを横に並べると、円よりも楕円が長く知覚された
が ), = ., S < .、上下に提示するとその差はみら
れなくなった ), = ., S = .。
一方、円と楕円とを直接比較した条件だけで 要因の分
散分析をしたところ、交互作用は有意ではなく ), =
., S = .、標準刺激の主効果だけが有意で、楕円が長く
知覚されていた ), = ., S < .。
)LJXUH 各条件の主観的長さ。 S[ が客観的な長さであ
る。エラーバーは標準誤差。
本研究の結果は、D 確かに楕円は円より長く見られる傾
向があるが、E 比較刺激によってその知覚が異なり、F そ
の効果は提示位置によっても異なることが示された。した
がって、楕円がどのように見えるかではなく、何とどのよう
に比較されるかが楕円錯視の重要な点であり、今後の研究で
は、観察者の注意の空間的配分や、比較に用いた方略を詳細
に検討する必要がある。
引用文献
松下戦具・森川和則 弧の割合による図形の長さ錯視
日本心理学会第 回大会発表抄録集 S ̿ 552 ̿