消費増税と米の購入動向

米に関する調査レポート H26-2
2014年 8 月 15 日発行
公益社団法人米穀安定供給確保支援機構
(米穀機構)情報部
〒103-0001
東京都中央区日本橋小伝馬町 15-15
消費増税と米の購入動向
本年4月1日から消費税率が引き上げられ8%となったが、この増税前後のPOSデータによる米の購
入動向では、3月は+40.9%、4月は▲8.3%、5月以降は常態となっており、3月の駆け込み需要は4月
に消化されるという前回にリポートした消費税導入・増税時の動向と同様のパターンとなった。
1.消費増税前後の購入動向
POSデータにおける購入数量PIの推移 【週次】
(kg/千人)
2014年 数量PI
2013年 数量PI
120
110
104.4
100
90
80
69.5
70
60.8
60
54.4
50
51.8
49.0
40
POSデータにおける購入数量PI 【月次】
80kg
70kg
60kg
50kg
40kg
30kg
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2014年
52.7kg
62.9kg
77.2kg
49.8kg
54.9kg
60.6kg
2013年
46.2kg
53.7kg
54.8kg
54.3kg
50.8kg
52.6kg
(2) 家計調査による動向
総務省「家計調査」による2人以上の世帯の米
総務省「家計調査」における米購入数量
の月別の購入数量は、増税前の2月から増え始
(二人以上の世帯)
8kg
め、3月には7.26kg(精米、以下同じ)と前年同
7kg
月比+20.4%となった(同=消費税導入時(平成
6kg
元年)+9.6%、前回増税時(平成9年)+10.6%(消
5kg
費 地 情 報 №13 「 消 費 税 と 米 の 購 入 動 向 」
4kg
(H26.1.16)既報))。
3kg
また、増税後の4月の購入数量は4.47kgと前年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2014年
4.15kg
4.98kg
7.26kg
4.47kg
5.38kg
5.33kg
同 月 比 ▲ 25.3 % で あ っ た ( 同 = 平 成 元 年 ▲
2013年
4.55kg
5.06kg
6.03kg
5.98kg
5.92kg
5.90kg
18.1%、平成9年▲14.1%)。
更に、5月の購入数量は5.38kg(前年同月比
▲9.1%)、6月5.33kg(同▲9.7%)となっており、米の購入数量は前年同月比で平均して9%下落し
ていることを考慮すると、消費増税に伴う米の購入動向は3月に駆け込み需要が発生し、4月はその
反動による買い控え、5月以降に常態へ復帰しているものと思われる。
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6/30週
6/23週
6/9週
6/16週
6/2週
5/26週
5/19週
5/5週
5/12週
4/28週
4/21週
4/7週
4/14週
3/31週
3/24週
3/17週
3/3週
3/10週
2/25週
2/18週
2/4週
2/11週
1/28週
1/21週
1/7週
30
1/14週
(1) 週次POSデータによる動向
POSデータによる増税前の米購入数量PI( レ
ジ通過客数千人当たり購入数量)を週次(月~日
曜)[例えば、3/31週とは(平成26年3月31日(月)
~4月6日(日))]にみていくと、2/11週から上昇を
始め3/24週(3/24(月)~3/30(日))がピークとな
り 、 次 い で 購 入 数 量 PIが 高 か っ た の が 3/10 週
(3/10(月)~3/16(日))で3連休が挟まった3/17週
は3番目という結果になった。
購入数量PIの対前年同週との比較ではピーク
だった3/24週は+71.7%、3/10週は+29.4%であ
り、3月の対前年同月との比較では+40.9%とな
っている。
増税後の4月についてみてみると、対前年同週
との比較では3/31週から4/28週まで前年同週を
下回り5/5週から買い控えを脱して上昇に転じ、
以降現在まで前年同週を上回って推移してい
る。
増税後の月別の購入数量PIを前年同月と比較
すると4月▲8.3%、5月+8.1%、6月+15.2%とな
っている。
2.価格動向
POSデータにおける1kg当たり平均売価(税込)の推移
(円/kg)
2014年 平均売価
2013年 平均売価
440
423
420
418 419 420 417 416
418 420 416
417 415
416 416
414
413
413 411 415
412
408
411 410
411
406
406
408
400
380
377 377
377
373 375
372 373
369 369
376 376
374 372
373 375 371
371 371 370 370
370
367
368
363
363
359
360
340
6/30週
6/23週
6/9週
6/16週
6/2週
5/26週
5/19週
5/5週
5/12週
4/28週
4/21週
4/7週
4/14週
3/31週
3/24週
3/17週
3/3週
3/10週
2/25週
2/18週
2/4週
2/11週
1/28週
1/21週
1/7週
320
1/14週
P O S デー タ によ る 週次 の 精 米 1kg当 りの 平
成26年年初からの平均価格(税込)は、昨今の需給
動 向 を 反 映 し て 平 成 25年 よ り 50円 / kg程 度 低
く、この価格差は現在も維持されているが増税
前の3月からは下落傾向で推移し、購入のピーク
と な っ た 3 月 最 終 週 に は 359 円 / kg(税 込 )と な
り、価格的にも購入インセンティブが働いたも
のと推察される。
なお、直近では363円/kg(7/28週)となって
おり、税抜では3月の最終週を6円/kg下回る水
準となっている。
3.地域別の購入動向
地域別購入数量PIの推移
(kg/千人)
POSデータによる購入数量PIを地域
別にみると
(1) 全国平均(右表 黒破線)より低水
準にあるのは、東北、北陸・甲信越、
東海、中・四国であり、何れも屈指の
米作地帯やその周辺地帯にあり、特
に東北地域においては3月に駆け込
み需要がほとんど発生していない。
(2) 逆 に 全 国 平 均 を 上 回 っ て い る の
は、京浜、関東等の消費地帯が中心
であるが、特徴的なのは北海道地域
であり、普段の購入数量PIが全国平均の約2倍であり3/24週においては236kg/千人と、この週
の全国平均の約2.4倍の駆け込み需要があった。
北海道, 236.0
200
150
京浜, 137.8
北海道, 138.4
京浜, 104.1
100
北海道, 93.5
九州, 89.1
関東, 82.5
全国, 70.0
近畿, 65.0
東海, 46.8
中・四国, 43.4
北陸・甲信越, 37.8
50
東北, 29.1
東北, 20.4
0
4.包装容量別の動向
POSデータによる包装容量別の購入点数PI
をみると
(1) 2kg袋については、増税前の駆け込み需要
には関係なく横ばい状況で推移し、4月の
買い控え以後は復調し右肩上がりとなって
いる。
容量(袋)別の購入点数PI(前年比)の推移
280%
2kg袋
260%
5kg袋
10kg袋
263.8%
240%
220%
200%
192.3%
180%
156.9%
160%
131.6%
140%
120%
114.6%
100%
(2) 5kg袋については、増税前の駆け込み需要
ではそれ以前より50%程度上昇し、4月の
買い控え以後は2kg袋とともに復調し現在
も販売の主力袋として拡大している。
96.2%
80%
包装容量別割合(全国計)
3/24週 4.4%
(3) 10kg袋については、増税前の駆け込み需
要として最も伸長し、それ以前より倍増の
88.2%
59.7%
6/23週 6.5%
- 2 -
0%
34.9%
64.4%
20%
40%
27.7%
60%
80%
1.0%
1.4%
100%
2kg
5kg
10kg
その他
勢いであったが、4月の買い控え時には前年同期比でマイナスを記録し、現在もそのシェアは
小さくなっている。
このように増税時の包装容量別の購入動向は、2kg袋は極端な動きはなく、買いだめのためのスケ
ールメリット感のある5kg、10kg袋に購入が集中したものと思われる。なお、現在は需給に不安が
なく安定的な価格動向の環境下で2kg、5kg、その他(2、5、10kg袋以外)容量袋がそのシェアを伸
ばしている。
最後に、量販店における米の販売ボリュームを試算してみると、農林水産省の公表では出荷・販
売の商業的に取引される米の総量は年間600万トン程度あり、これを基に当機構の消費動向調査に
よる量販店ルートでの購入割合から推計すると、その購入量は年間180万トン、月平均15万トンと
なり、これに前掲のPOSデータによる仮需(40%)を乗じると3月の量販店の駆け込み需要(仮需)
は6万トン程度ということになる。
また、POSデータを基にした全量販店における平成25年度の精米販売数量は約150万トンと推計
され、月平均の販売数量は12.5万トンとなり、3月に同様に約40%の駆け込み需要(仮需)があった
とするとそのボリュームは5万トン程度ということになる。
したがって、本年3月の量販店ルートでは大まかな推計に過ぎないが5~6万トンの駆け込み需要
(仮需)が発生していたのではないかと推察される。
先般、農林水産省が発表した「食料需給表」によれば平成25年度の米の1人当たり消費量は56.9kg
となり、前年度より0.6kg増える結果となった。その増加理由として消費増税による駆け込み需要
が挙げられていた。
「食料需給表」に基づく米の消費量が対前年比で増加したのは、近年では平成19
年度、平成22年度にもあり、それぞれ麦価の高騰、東日本大震災がその要因であったとされている。
実際の米の消費が増加したとなれば慶事であるが、「食料需給表」は年間供給量からの算定値であ
って仮需分は平成26年度に消費されることや毎年の消費減を勘案すれば「食料需給表」ベースの平
成26年度の消費は相当量の減少になると推察され、更に米消費の実態は、総人口の減少等の構造的
な要因や平成26年4~6月期のGDPの個人消費の大幅な落込み等厳しい環境下にあることも考え併
せておく必要があるものと思われる。
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