PA-A3 での ATM-3-FAILCREATEVC メッセージのトラブルシューテ ィング 目次 概要 PA-A3 アーキテクチャの理解 ハードウェア アーキテクチャ ソフトウェア アーキテクチャ ATM VC 作成の理解 FAILCREATEVC に関する既知の問題 PA-A3 に関する既知のバグ ID CSCdt90054:RSP コンソールで VIP の CPU 使用率が 99 % を示す場合 トラブルシューティング 関連情報 概要 まれな事例ですが、通常は ATM ルータ インターフェイスが多数の Switched Virtual Circuit(SVC; 相手先選択接続)をサポー トしているときに、ルータで次のログ メッセージによってエラーや障害の状態が報告されることがあります。 ATM-3-FAILCREATEVC: ATM failed to create VC(VCD=[dec], VPI=[dec], VCI=[dec]) on Interface[chars], (Cause of the failure: [chars]) 『Cisco IOS ソフトウェア システム エラー メッセージ ガイド』では、このメッセージが表示される原因として記載されていな いものがあります。その 1 つが「ドライバが VC の受け入れに失敗した」という原因です。 %ATM-3-FAILCREATEVC: ATM failed to create VC(VCD=3503, VPI=0, VCI=1076) on Interface ATM1/0, (Cause of the failure: Failed to have the driver to accept the VC) このテクニカル ノートは、PA-A3 ATM ポート アダプタがこのエラー状態になる既知の原因について説明しています。また、 Cisco IOS(R) ソフトウェア アーキテクチャの概要を示し、メッセージが参照しているドライバについても説明しています。 PA-A3 アーキテクチャの理解 FAILCREATEVC メッセージの原因を調べる前に、まず PA-A3 のハードウェアおよびソフトウェアのアーキテクチャについて理解す る必要があります。 ハードウェア アーキテクチャ 各 PA-A3 は、送信および受信用に別々の Segmentation And Reassembly(SAR)チップをサポートしており、DS3 および OC3 リ ンクを通じた高速通信に対応する十分な処理能力を提供します。SAR は内部的にはハードウェアの機能モジュールで構成されてい ます。これらのモジュールには ATM Processing Unit(APU)が含まれます。APU は ATM 固有の拡張機能のためにカスタマイズさ れたロジックを持つ miniRISC です。 ソフトウェア アーキテクチャ ATM インターフェイスはすべて、複数のブロックで構成されるソフトウェア アーキテクチャを使用しています。専用の CPU モジ ュールまたは ATM インターフェイス自体に搭載されているプロセッサがルーチン ブロックを処理します。これらのソフトウェア ブロックについてひととおり説明する前に、まずルータ内部の Cisco IOS ドライバと PCI バス アーキテクチャについて理解す る必要があります。 Cisco IOS には、フラッシュ カードや NVRAM からネットワーク インターフェイスにいたる広範なデバイスに対応したデバイス ドライバが含まれています。Cisco IOS ネットワーク インターフェイス デバイス ドライバは、インターフェイスに入力または インターフェイスから出力されるパケットを操作するための主要なインテリジェンスを提供します。 PA-A3 は Peripheral Component Interconnect(PCI)ホスト ドライバをサポートしています。PCI ホスト ドライバにより、 SAR のプロセッサは 7200/7400 シリーズの PCI バスだけでなく Versatile Interface Processor(VIP)上の PCI バスとも接続 できます。PCI ホスト ドライバと、ATM ファームウェアを実行する APU とは、メッセージング メールボックスを通じて通信し ます。 ドライバには、プラットフォーム依存またはプラットフォーム固有の機能を実行するコードが追加されています。つまり Cisco IOS では、基本的なコード セットを提供しながら、これらのコードによって、取り付けられた特定のハードウェアをサポートす るドライバを追加できるようになります。このプロセスのことを、ソフトウェア開発用語で「ハードウェア抽象化」と呼びます。 ここで、Cisco IOS が ATM VC の作成時にこれらのソフトウェア コンポーネントをどのように使用するのかについて見てみまし ょう。 ATM VC 作成の理解 PCI ホスト ドライバは PA-A3 上のプロセッサ(APU)で実行されているファームウェアと通信します。PCI ホスト ドライバは、 VC の設定などの特定のタスクを実行するようファームウェアに指示します。このコマンドはコマンド バッファに格納されます。 PA ホスト インターフェイスはコマンド バッファからコマンドを読み出してそれを処理します。処理が完了すると、PCI バス経 由で「command-done」割り込みをホスト ドライバに返します。 同様に、RSP の CPU は VIP の CPU と Command Control Block(CCB)を通じて通信します。これらのコマンドは動作が保証され ています。つまり、VIP プラットフォーム ドライバはラブ ノート(love note)によって要求の完了を確認応答します。 この通信について、7200 シリーズ ルータで debug atm events コマンドを使用する例を見てみましょう。これらのメッセージは RSP/VIP プラットフォームを使用する場合は若干異なります。 注意:debug コマンドを発行する前に、「debug コマンドに関する重要な情報」を参照してください。debug atm events コ マンドを使用すると、実稼動ルータで大量のデバッグが出力される場合があります。出力の量は、統計情報を報告する VC の数 や、VC 関連のイベントの量によって異なります。 7200(config)#int atm 5/0.2 multi 7200(config-subif)#pvc 2/2 7200(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 10000 9000 7200(config-if-atm-vc)#exit 5d08h: atmdx_setup_vc(ATM5/0): vc:3 vpi:2 vci:2 state:2 config_status:0 5d08h: atmdx_pas_vc_setup(ATM5/0): vcd 3, atm hdr 0x00200020, mtu 4482 5d08h: VBR: pcr 23597, scr 21237, mbs 94 5d08h: vc tx_limit=353, rx_limit=117 7200(config-subif)#no pvc 2/2 7200(config-subif)# 5d10h: atmdx_teardown_vc(ATM5/0): idb state 4 vcd 3 state 4 5d10h: atmdx_pas_teardown_vc(ATM5/0): vcd 3 7200(config-subif)# FAILCREATEVC に関する既知の問題 PA-A3 は各 SAR 用に VC テーブルのようなデータ構造を格納するための少量のオンボード メモリを備えています。LANE 環境な どでは、多数の Switched Virtual Circuit(SVC; 相手先選択接続)をセットアップおよびティアダウンしている状況で、送信 SAR のコマンド割り込みが失われると、%ATM-3-FAILCREATEVC メッセージが発生しますが、この症状はシスコ バグ ID CSCdp18492 によって解決されています。この状況が起こると、送信 SAR と受信 SAR の間で VC ステータスの同期がとれないこ とがあります。これは、受信 SAR は VC を自身のローカル メモリにすでに設定していますが、送信 SAR は設定していないため です。 PCI ホスト ドライバは VC テーブルの同期をとる役割を果たします。どちらの SAR もプラットフォーム ドライバからのコマン ドを実行する必要があります。ホスト ドライバは、両方の SAR から肯定のステータス メッセージを受信するまで待ち、それか ら肯定の確認応答を返します。肯定のステータス メッセージが短時間の間に受信されなかった場合、ホスト ドライバは障害フィ ードバック メッセージを返します。 場合によっては、ルータが複数の %ATM-3-FAILCREATEVC ログ メッセージの中で同じ VPI/VCI ペアを参照することがあります。 この原因には、接続されている ATM スイッチが、新しく信号を受信したデータ仮想回線に割り当てる VPI/VCI 値をどのように選 択するのかが関係しています。 ATM スイッチ(ATM エンドシステムではありません)は、CALL PROCEEDING シグナリング メッセージを発信側に返すときに VPI/VCI 値を割り当てます。中には、VC 値をブロック単位で割り当てる ATM スイッチもあります。これらのスイッチは VC テー ブルをスキャンし、現在使用中の最高値よりも小さい未使用値がないか調べて、同じ未使用リソースの割り当てを試みます。ルー タのシグナリング レイヤから障害メッセージが返されたときは、単純に次に最も高い空き値に移ります。 たとえば、0/320/131 の VPI/VCI 値を持つ 100 個の SVC を ATM スイッチが作成するとします。SVC 0/50 および 0/68 がティ アダウンした場合、スイッチはこれらの値を新しい SVC のために再利用しようとします。ATM ルータ インターフェイスは、 Virtual Circuit Descriptor(VCD; 仮想回線ディスクリプタ)によってインデックス付けされた VC テーブルを作成します。ス イッチは同じ VPI/VCI を割り当てようとしますが、その一方で ATM ドライバは元のテーブル行を完全にはティアダウンしません。こ れらが繰り返された結果、PA-A3 は自身の VCD テーブルを更新しようとするループから抜け出せなくなる可能性があります。 PA-A3 に関する既知のバグ ID PA-A3 での FAILCREATEVC メッセージに対して報告されている既知のシスコ バグ ID を次の表に示します。 シスコ バグ 説明 ID CSCdt42998 ATM failed to create VC already in use.(ATM がすでに使用中の VC の作成に失敗し ました) ルータは同じ VPI/VCI ペアに対して FAILCREATEVC メッセージを報告しています。この VC のセットアップまたはティアダウンは完全には実行されず、VC は「free-VC」ソフト ウェア ルーチンが訂正できない中間的な状態のままになります。 CSCdp49223 Deluxe: Tx SAR may miss command interrupt from host driver.(Deluxe:Tx SAR で ホスト ドライバからのコマンド割り込みが失われた可能性があります) PA-A3 の送信 SAR でホスト CPU からのコマンド割り込みが失われたことが原因で起こ る FAILCREATEVC エラー状態を解決します。CSCdp18492 は CSCdp49223 の回避手段を実 装します。CSCdp42529 は CSCdp49223 の副作用を修正します。 CSCdt90054 %ATM-3-FAILCREATEVC when VIP runs at 99 % CPU on RSP console.(RSP コンソールで VIP の CPU 使用率が 99 % を示した場合の %ATM-3-FAILCREATEVC) CSCdt77918 も参照してください。 CSCdt90054:RSP コンソールで VIP の CPU 使用率が 99 % を示す場合 まれに、VIP の CPU 使用率が 99 %/99 % のときに、プロセッサ サイクルを割り当てることができず、RSP からのコマンドを受 信して実行することができないことがあります。この状況が起こると、ドライバで VC の受け入れが失敗したことを示す ATM-3FAILCREATEVC メッセージが RSP コンソールから報告されることがあります。シスコでは、CSCdt90054 のトラブルシューティン グの過程で、VIP コンソールのドライバ レベル コマンドに見られる ATM VC のセットと、RSP コンソールの show atm vc の出 力に表示される VC とが一致していないときに、これらのログ メッセージが出力されることを突き止めました。 VIP で CPU 使用率が 99 % になるのはよくあることです。VIP は 7500 シリーズの分散アーキテクチャを実装しています。この アーキテクチャでは、分散トラフィック シェーピングなどの拡張サービスとパケット処理の負荷がどちらも VIP の CPU にオフ ロードされます。中程度のトラフィックでも、VIP の CPU 使用率は容易に 99 % に達します。したがって、VIP が自身のパフォ ーマンスの限界に達しているかどうかを示す上で、VIP の CPU 使用率は正確な指標にはなりません。 Rx 側バッファリングは発信インターフェイスが輻輳しているときに発生する処理で、発信インターフェイスのキューイング方針 は First In, First Out(FIFO)です。パケットをただちに廃棄するのではなく、バッファが発信インターフェイス用に使用でき るようになるまで、着信 VIP が自身の共有 RAM にパケットをバッファリングします。Rx 側バッファリングの結果、VIP は 99 % の CPU 使用率で動作することになります。VIP は発信インターフェイスの txqueue のステータスを絶えず監視しており、バッ ファに空きができるとただちに CyBus を経由してパケットを txqueue にコピーします。詳細については、「99 % の CPU 使用率 で動作する VIP と Rx 側バッファリング」テクニカル ノートを参照してください。 VIP の機能性の観点から見ると、99 % の CPU 使用率と 100 % の CPU 使用率との違いは重要です。使用率が 99 % よりも高くな ると、多くの場合、VIP の CPU でのコマンドへの応答が(最大数秒)遅くなります。 トラブルシューティング Cisco TAC に問い合せる際は、次の手順を実行して、FAILCREATEVC メッセージに関する症状についてできるだけ多くの情報を収 集してください。 service timestamps debug datetime msec および service timestamps log datetime msec を有効にして、ロギングの時間 の単位が細かくなるようにします。 同じ VPI/VCI ペアを参照しているエラー メッセージがある場合は、sh atm pvc {vpi/vci} コマンドを実行します。ルータ が出力を返す場合は、VPI/VCI ペアが以前に存在していたことになります。ATM インターフェイスでは VC がまだ存在して いるものと見なしているため、VPI/VCI ペアを持つ新しいセットアップ要求を拒否します。 show log および show tech をキャプチャします。 ケースのオープン方法に関する情報など、TAC の詳細については、Worldwide Technical Assistance Center を参照してくださ い。 関連情報 その他のテクニカルティップス:ATM よくある問い合せ:ATM ATM に関するその他の情報 PA-A3 拡張 ATM ポート アダプタのインストールと設定 1992 - 2010 Cisco Systems, Inc. All rights reserved. Updated: September 12,2002 Document ID: 10407
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