2015-01-12 07:57:31 Title Molecular biological

>> 愛媛大学 - Ehime University
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Molecular biological studies on probenazole inducible rice
genes: OsAP77 and OsHAP2E( 審査結果の要旨 )
MD. Mahfuz Alam
. vol., no., p.-
2014-09-22
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4354
Rights
Note
受理:2014-07-16,審査終了:2014-09-05
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IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/
(第5号様式)
学位論文審査の結果の要旨
氏
名
MD. MAHFUZ ALAM
主査 西口 正通
副査 小林 括平
審
査
委
員
副査 曵地 康史
副査 秋光 和也
副査 木場 章範
論
文
名
Molecular biological studies on probenazole inducible rice genes: OsAP77 and OsHAP2E
(プロべナゾール誘導性イネ遺伝子に関する分子生物学的研究:OsAP77 及び OsHAP2E)
審査結果の要旨
プロべナゾール(PBZ)は植物に作用し,病原体の感染に対して抵抗性を誘導する低分子化合物であ
り,イネにおけるいもち病の予防剤として長らく利用されてきた.イネマイクロアレイを利用して PBZ
処理により発現の変化するイネの遺伝子が網羅的に解析された.これらの PBZ により発現の増大する遺
伝子群の中にアスパラギン酸プロテアーゼ遺伝子( OsAP77 )及びヘムアクチベータタンパク質遺伝子
(OsHAP2E)が含まれていた.本研究においてはこれら PBZ によりその発現が誘導される 2 つの遺伝子
について,病原体感染に対する防御反応を中心とした分子生物学的な解析を行ったものである.
1. OsAP77 についての解析
アスパラギン酸プロテアーゼは動植物や微生物及びウイルス至るまで広く保存されており,タンパク
質の分解を通じて植物の黄化,環境ストレス,細胞死,生殖等種々の段階で機能しているとされ
る.OsAP77 のプロモーター領域をβ-グルクロニダーゼ(GUS)のレポーター遺伝子上流に結合したプラ
スミドをイネに導入し,得られた形質転換体を用いて,PBZ 処理を行ったところ,GUS 活性はイネ葉の
師部組織において特異的に観察された.また,サリチル酸(SA),サリチル酸アナログのイソニコチン
酸(INA),過酸化水素(H2O2),アブシジン酸(ABA)の処理により,同様に師部における高い GUS 活
性が見られた.この高い GUS 活性は,イネいもち菌,イネ白葉枯病菌やキュウリモザイク(CMV)の感染
においても見られた.さらに,イネのレトロトランスポゾン Tos17 の挿入による本遺伝子のノックアウ
ト変異株を用いて,同様に,上記 3 種類の異なる病原体を接種し,病徴を検討した.その結果,いずれ
の病原体の感染においても,変異株において病徴はより激しくなり,あるいは CMV の蓄積量は多くなる
ことを明らかにした.このことは,本遺伝子は,これら 3 種の異なる病原体の感染に対する防御反応に
積極的に関与していることを示すものである.
2. OsHAP2E についての解析
ヘムアクチベータタンパク質(HAP)は, 3 つの成分,HAP2,HAP3 及び HAP5,から構成される転写
因子である.これらの転写因子は植物の生育や環境ストレス等多くの段階において機能しているとされ
るが,病原体感染に対する役割は未報告であった.PBZ によりその発現が誘導されるイネの本遺伝子
(OsHAP2E)の第 1 イントロンを含むプロモーター領域を GUS レポーター遺伝子の上流に結合し,イネ
に導入した形質転換体を用いて検討した.PBZ 処理により,GUS 活性はイネ葉の表皮細胞以外のほとんど
の組織において観察された.また,SA,INA,H2O2 及び ABA の処理により同様の GUS 活性が見られた.さら
に,この GUS 活性はイネいもち菌,イネ白葉枯病菌,CMV やイネエソモザイクウイルス(RNMV)の感染に
よっても検出された.本遺伝子はこれらの処理や接種により発現が誘導されることを示唆するものであ
る.さらに,本遺伝子をカリフラワーモザイクウイルスの 35S プロモーターの下流に配置した過剰発現
系統(OsHAP2E-OX)を作出した.OsHAP2E-OX に,イネいもち菌,白葉枯病菌,CMV あるいは RNMV を接種し,
それらに対する抵抗性を検討した.その結果,いずれの病原体に対しても抵抗性を示すことを明らかに
した.また,対照のイネが生育できない乾燥条件や高塩濃度条件下において,OsHAP2E-OX は生育するこ
とができ,乾燥耐性及び耐塩性の付与されていることが判明した.さらに,OsHAP2E-OX は対照のイネよ
りも,光合成効率が高く,分げつ数も増大していることを見出した.イネマイクロアレイ解析の結果は,
OsHAP2E-OX において,イネのキチナーゼ遺伝子等防御関連遺伝子の発現の上昇していることが明らかに
なった.以上の結果は,OsHAP2E は病原体等の生物的ストレス,乾燥耐性,耐塩性等の非生物的ストレス
に対する抵抗性のみならず光合成効率及び分げつ数の増大に関係する役割を担っていることを示すもの
である.
以上のように得られた成果は,地球温暖化等環境の変化に伴う作物生産上に起こる諸問題の解決に役
立つ知見であると考えられる.今後は、これらの遺伝子を有効に活用し,作物栽培限界の拡大,作物生
産の安定化等を目指した有用作物の開発に貢献でき,農業や地球環境の分野にも影響を与えるものと考
えられ,評価される.
本論文の公開審査会は平成 26 年 8 月 2 日に香川大学農学部において開催された.申請者が論文内容
について発表した後,質疑応答が行われた.同日引き続いて論文審査委員会をあらためて開催し,審査
を行った.これらの結果から本論文は博士(農学)の学位を授与するに値すると審査委員会全員一致し
て判定した.