Created on April 21, 2013
by 高橋 豊治
証券投資論講義資料
1. 投資のリターンとリスク
株式投資を考えよう。例として、1998 年 12 月から 1999 年 12 月までの大成建設とコ
マツの株価の月次終値を考えることにする。
Dec-98
217
593
大成建設
コマツ
Jan-99
212
613
Feb-99
206
581
Mar-99 Apr-99
278
268
609
711
May-99
290
731
Jun-99 Jul-99
266
260
773
720
Aug-99
245
700
Sep-99
237
706
Oct-99
220
606
Nov-99
217
575
これをグラフにしたものが、下の図である。
大成建設とコマツの株価の推移
900
800
700
600
500
400
300
200
100
大成建設
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コマツ
Nov-99
Oct-99
Sep-99
Aug-99
Jul-99
Jun-99
May-99
Apr-99
Mar-99
Feb-99
Jan-99
Dec-98
0
Dec-99
199
509
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A) 収益率の概念
投資を判断する場合に株価で考えてよいのだろうか?
Jan-99
-2.30%
3.37%
Feb-99
-2.83%
-5.22%
Mar-99
34.95%
4.82%
Apr-99 May-99
-3.60% 8.21%
16.75% 2.81%
Jun-99
-8.28%
5.75%
Jul-99 Aug-99 Sep-99 Oct-99 Nov-99 Dec-99
平均
-2.26% -5.77% -3.27% -7.17% -1.36% -8.29% -0.16%
-6.86% -2.78% 0.86% -14.16% -5.12% -11.48% -0.94%
月次株価収益率
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
-5%
-10%
-15%
Ja
n99
Fe
b99
Ma
r -9
9
Ap
r-9
9
Ma
y99
Ju
n99
Ju
l-9
9
Au
g-9
9
Se
p-9
9
Oc
t-9
9
No
v99
De
c99
大成建設
コマツ
大成建設
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コマツ
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B) 平均収益率と収益率の分散
平均収益率と実際の収益率を比較してみよう。
月次株価収益率
大成建設
-9 9
Dec
Nov
- 99
Oct
- 99
Sep
-9 9
-9 9
A ug
9
Ju l
-9
99
Ju n
-
May
- 99
A pr
- 99
9
Mar
-9
99
Fe b
-
Jan
-9
9
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
-5%
-10%
-15%
大成建設平均収益率
月次株価収益率
Ja
n99
Fe
b99
Ma
r- 9
9
Ap
r- 9
9
Ma
y99
Ju
n99
Ju
l-9
9
Au
g-9
9
Se
p-9
9
Oc
t- 9
9
No
v99
De
c99
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
-5%
-10%
-15%
コマツ
コマツ平均収益率
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平均収益率も違うが、平均収益率と比較した実際の収益率のばらつきも異なっている
(大成建設の方がばらつきが大きい)。
月次株価収益率の平均からの偏差(%,小数第 3 位四捨五入)
大成建設
コマツ
Jan-99
-2.14
4.31
Feb-99
-2.67
-4.28
Mar-99
35.11
5.76
Apr-99 May-99
-3.44
8.37
17.69
3.75
Jun-99
-8.12
6.69
Jul-99
-2.1
-5.92
Aug-99
-5.61
-1.84
Sep-99
-3.11
1.8
Oct-99
-7.01
-13.22
Nov-99
-1.2
-4.18
Dec-99
-8.13
-10.54
平均収益率と比較した実際の収益率のばらつきの度合いを表わすものとして、分散・
標準偏差がある。
分散の定義
var  x   E  x  E  x 
2
月次株価収益率の平均からの偏差の自乗(%2,標準偏差は%。小数第 3 位四捨五入)
Jan-99 Feb-99 Mar-99 Apr-99 May-99 Jun-99
大成建設 4.58
7.13 1232.7 11.83 70.06 65.93
コマツ
18.58
18.32 33.18 312.94 14.06 44.76
Jul-99 Aug-99 Sep-99 Oct-99 Nov-99 Dec-99
4.41
31.47
9.67
49.14
1.44
66.1
35.05
3.39
3.24 174.77 17.47 111.09
参考:分散の定義式の展開1
var  x   E  x  E  x 
2
2
 E  x 2  2 xE  x   E  x  


2
 E  x 2   2 E  xE  x   E  E  x  


 E  x 2   2 E  x   E  x 
2
 E  x 2   E  x 
2
1
E  E  x   E  x  という性質を利用
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2
分散
129.54
65.57
標準偏差
11.38
8.1
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分散・標準偏差は、広く一般的に利用されているが、このほかにも平均からの偏差の
絶対値の平均で、実際の収益率の、平均収益率に対する散らばり度合いを表わすことも
できる。
月次株価収益率の平均からの偏差の絶対値(%,小数第 3 位四捨五入)
大成建設
コマツ
Jan-99 Feb-99 Mar-99 Apr-99 May-99 Jun-99
2.14
2.67
35.11
3.44
8.37
8.12
4.31
4.28
5.76
17.69
3.75
6.69
Jul-99 Aug-99 Sep-99 Oct-99 Nov-99 Dec-99
2.1
5.61
3.11
7.01
1.2
8.13
5.92
1.84
1.8
13.22
4.18
10.54
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平均
7.25
6.67
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2. 2 資産の収益率の関係
A) 散らばり具合の関係(共分散・相関係数の概念)
2 資産の収益率の関係を散布図にしてみよう。
20%
15%
10%
5%
0%
-20%
-10%
-5%
0%
10%
20%
30%
40%
-10%
-15%
-20%
共分散の定義
cov  x, y   E  x  E  x   y  E  y 
月次株価収益率の平均からの偏差の積(%2,小数第 3 位四捨五入)
大成建設×コマツ
Jan-99 Feb-99 Mar-99 Apr-99 May-99
-9.22 11.43 202.23 -60.85 31.39
Jul-99 Aug-99 Sep-99 Oct-99 Nov-99 Dec-99
12.43
10.32
-5.6
92.67
5.02
85.69

平均
26.77
共分散
相関係数の定義
  x, y  
Jun-99
-54.32
E  x  E  x   y  E  y  
E  x  E  x   E  y  E  y 
2
2
 xy
 x y
共分散が収益率の散らばりの方向性と程度(大きさ)を示すものであったのに対して、相関
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係数は、2 つの収益率の関係を示すもので、それぞれの標準偏差を基準にして共分散の値を
再評価する(具体的には、共分散をそれぞれの標準偏差で割る)ことで散らばりの方向性を測
るものである。したがって相関係数  は、 1    1 という範囲の値をとる。
先ほどの株価収益率の例では、共分散:26.7658 %2、大成建設の標準偏差:11.38%、コ
マツの標準偏差:8.10%であったから、大成建設とコマツの株価収益率の相関係数は、
26.77%2 11.38%  8.10%  0.2904
となる。
以上の計算結果のまとめ
大成建設 コマツ
平均
-0.16%
-0.94%
分散
129.55%
2
65.56%2
標準偏差
11.38%
8.10%
共分散
26.78%2
相関係数
0.2904
参考:共分散定義式の展開2
cov  x, y   E  x  E  x   y  E  y  
 E  xy  xE  y   yE  x   E  x  E  y 
 E  xy   E  x  E  y   E  y  E  x   E  x  E  y 
 E  xy   E  y  E  x 
3. ポートフォリオの期待収益率と投資リスク(2 資産の場合)
A) ポートフォリオの収益率
ポートフォリオの収益率 R p は、それぞれの資産の収益率 R1 、 R 2 とそれぞれの資産へ
の投資比率 w 、 1  w に依存する。
R p  wR1  1  w R 2
B) ポートフォリオの平均収益率
ポートフォリオの平均収益率 E  R p  は、それぞれの資産の平均収益率 E  R1  、

2

E  E  x   E  x  という性質を利用
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

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E  R 2  とそれぞれの資産への投資比率 w 、 1  w に依存する。
E  R p   w E  R1   1  w E  R 2 
あるいは記号を簡単にするために平均収益率を E  R    として、
 
 p  w 1  1  w 2
C) ポートフォリオの収益率の分散
ポートフォリオの収益率の分散 var  R p  は、それぞれの資産の収益率の分散 var  R1  、




var  R 2  と収益率の共分散 cov  R1 , R2  、それぞれの資産への投資比率 w 、1  w に依存
する。
 
 
 

var Rp  w2 var R1  1  w var R2  2w 1  w cov R1 , R2
2

あ る い は 記 号 を 簡 単 に す る た め に 収 益 率 の 分 散 を v a r R    、 共 分 散 を
 
2
cov  R1 , R 2   12 として、
 p 2  w2  12  1  w  22  2w 1  w  12
2
さらに、2 資産の収益率の相関係数 12 、それぞれの資産の収益率の標準偏差  1 、 2 を
利用すれば、
 p 2  w2 12  1  w  22  2w 1  w 121 2
2
ポートフォリオのリスクとリターン
0.0%
6%
8%
11%
E[Rp]
-0.2%
-0.4%
-0.6%
-0.8%
-1.0%
Std[Rp]
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13%
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参考:ポートフォリオの平均収益率と分散の計算式の導出
A)
平均収益率の式の導出
2種類の資産 A,B からなるポートフォリオの収益率 R p は、A,B の組み入れ比率 xa 、 xb と、それぞ
れの収益率 Ra 、 Rb とで、以下のように表わすことができる。
Rp  xa Ra  xb Rb
(3)式
ここで、このポートフォリオの期待収益率 E
 

E Rp  E xa Ra  xb Rb
 R  は、(3)式より
p

となるから、これを展開して、
 




E Rp  E xa Ra  E xb Rb
 
 
 
E Rp  xa E Ra  xb E Rb
が得られる。
B)
ポートフォリオの分散式の導出
ポートフォリオの分散  p は、
2

2
 p 2  E  Rp    E  Rp 



2
より、これを展開すると、

2
 p 2  E  xa Ra  xb Rb    E  xa Ra  xb Rb 



2
2
2
2
2
 E  xa Ra  xb Rb  2 xa Ra xb Rb 

2

2
 E  xa Ra   E  xb Rb   2 E  xa Ra  E  xb Rb 


 p 2  E  xa 2 Ra 2   E  xb 2 Rb 2   E  2 xa Ra xb Rb 

2
2

 E  xa Ra   E  xb Rb   2 E  xa Ra  E  xb Rb 
 p 2  xa 2 E  Ra 2   xb 2 E  Rb 2   2 xa xb E  Ra Rb 
2
2
2
2
 xa E  Ra   xb E  Rb   2 xa xb E  Ra  E  Rb 
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
2
 
 p 2  xa 2 E  Ra 2   E  Ra   xb 2 E  Rb 2   E  Rb 

2 xa xb E  Ra Rb   E  Ra  E  Rb 

ここで、

、

、
2
 a 2  E  Ra    E  Ra 


2
 b 2  E  Rb    E  Rb 


2
2
 ab  E  Ra  Rb   E  Ra  E  Rb 
より
 p 2  xa 2 a 2  xb 2 b 2  2 xa xb ab
が導出される。
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2

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4. ポートフォリオの期待収益率と収益率の分散の関係
A) 関係の導出
xa  xb  1 の下でのポートフォリオの期待収益率と収益率の分散の関係を明らかにし
 
R   
 
よう。以下では、簡単化のためにそれぞれの期待収益率を E Rp   p 、 E Ra  a 、
 
 R    、  R    、
、  R    )
、共分散を cov  a, b   
E Rb  b 、分散を 
 
差は、  Ra   a
2
2
p
2
2
p
b
a
2
a
b
b
2
b
(したがって標準偏
ab 、相関係数を
 ab 、A の組
み入れ比率を xa  x (したがって xb  1  x )で表わすことにする。
以上のような設定の下では、(1)式、(2)式は以下のように書き換えることができる。
 p  xa  1  x  b
(1)'式
 p 2  x2 a 2  1  x   b 2  2 ab x 1  x   a b
2
(2)'式
(1)'式より
 p  b  x  a  b 
∴x
 p  b
 a  b
(1)"式
(1)"式を(2)'式に代入することで、ポートフォリオの期待収益率  p と収益率の分散  p
2
の関係、すなわち、いわゆるリターンとリスクの関係が示されることになる。そこで実
際に代入して整理すると、
  p  b 
  p  b 
  p  b   p  b 
2
2

  a  1 
  b  2  ab 
1 
  a b












b 
a
b 
b 
a
b 
 a

 a
2
p
2
2
  p  b 
 a   p 
  p  b  a   p 
2
2

 a  
  b  2  ab 

  a b
  a  b 
  a  b 
 a  b  a  b 
2


p
 b 
  a  b 
2
2
2
a
2


a
 p 
  a  b 
2
2
 b 2  2  ab

p
 b  a   p 
  a  b 
2
 a b
両辺に  a  b  をかけて
2
2
 a  b   p 2    p  b   a 2   a   p   b 2  2ab a b   p  b  a   p 
2
2
これを整理すると
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2
  a   b   p 2    p 2  2  p b  b 2   a 2    a 2  2  a  p   p 2   b 2


 2      2      
  2       (3)
 2  ab a b  p a   p  b a  b  p

2
 p a b
2

2
 b  a   a
2
2
2
2
ab
2
a
b
p
b
a
a
2
b
 ab a b  a  b 

2
b
ab
a
p
a
b
B) ρ=-1 の場合のポートフォリオのリターンとリスク
ρ=-1 の場合(3)式は、
2
 a  b   p 2   p 2  a 2   b 2  2 a b   2 p  b a 2  a b 2   a b  a  b  

 b  a  a  b  2a  p a b
2
2
2
2

2
2
 a  b   p 2   p 2  a   b   2 p  b a 2  a b 2   a b  a  b  
  b a  a b 
2
となり、これを整理すると、
 a  b   p 2   p 2  a   b 
2
  b a  a b   0
2
2
 2 p  b a  a   b   a b  a   b  
2
2
2
 a  b   p 2   p 2  a   b   2 p  b a  a b  a   b    b a  a b   0
因数分解して、
 
a
 b   p   p  a   b   a  b   p   p  a   b 
2 p  b a  a b  a   b    b a  a b   0
2
これは、さらに次のように因数分解できる。
 a  b   p   p  a   b    b a  a b  


  a  b   p   p  a   b    b a  a b    0
これを満たすには
 
a
 b   p   p  a   b    b a  a b   0
a
 b   p   p  a   b    b a  a b   0
または
 
が条件となる。これより、
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Created on April 21, 2013
by 高橋 豊治
p 
 a  b
   a b
p  b a
a b
a b
または
 a  b
   a b
p  b a
a b
a b
   a b
となり、共通の切片 b a
を持つことがわかる。これが、分散がゼロとなる場
a b
p  
合のポートフォリオの期待収益率である。
次に、分散がゼロとなるような、A と B の投資比率を求めるためには、
p 
b a  a b
となるような A,B の投資比率を求めればよいから、
a b
 p  xa  1  x  b
より、
b a  a b
 xa  1  x  b
a b
を満たす x は、
b a  a b
 x   a  b   b
a b
b a  a b
b
x

 a   b  a  b   a  b 
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