205号

林業滋賀
2014.8 No.205
発行/2014.7
発 行 所 滋賀県林業協会
大津市におの浜4ー1ー20
077(522)2318
編集責任者 北川 始
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LOVE
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WOOD
WOOD
彦根市の川崎さん
緑化功労者「農林水産大臣賞」を受賞
∼ 18 年間にわたり緑豊かな郷土づくりに貢献∼
緑化功労者・感謝状を授与された川崎さん
植樹祭での植樹の様子
緑化功労者は、国土緑化運動に永年にわたって貢献し、その功績が顕著であった方を公益社団法人国土緑
化推進機構が表彰するものです。
平成25年度は、彦根市在住の川崎昭重さんが緑化功労者「農林水産大臣賞」を受賞し、平成26年6月1日(日)
に新潟県長岡市で開催された「第 65 回全国植樹祭」で表彰されました。
川崎さんは、樹木医・樹木コンサルタントとして地元彦根市を中心に近隣の湖東地域など幅広い範囲におい
て緑づくりの指導や推進に大きく貢献されており、特にオーナー制を導入した平田川沿いのサクラ並木の造成では
有名な大阪造幣局の通り抜けの彦根版として、彦根市民のみならず、近隣市町からも多くの人々が訪れています。
また、芹川のケヤキ並木の保存管理や彦根城の松やサクラの保護など、今日まで18 年間に培われてきた緑化
に関する技術や経験を地域緑化の推進に活かしてこられた業績は、緑豊かな郷土づくりの礎ともなっています。
今回、こうした功績が顕著であると認められ農林水産大臣賞の受賞となりました。
も
WE LOVE WOOD
彦根市の川崎さん 緑化功労者「農林水産大臣賞」を受賞
◆1
滋賀林政トピックス
琵琶湖森林づくり県民フォーラム「水源林保全を進めるために」を開催しました
◆2
く
あのまち、このまち
朽木診療所「びわ湖材を使った木造公共施設」
◆4
じ
森林ガイド
木材利用の推進に向けて
◆6
インフォメーション
滋賀県林業協会 第51回通常総会
◆8
林業普及だより
「軽トラとチェーンソーで山をきれいに、まちを元気に!」甲賀木の駅プロジェクト
◆5
琵琶湖森林づくり県民フォーラム
「水源林保全を進めるために」を
開催しました
琵琶湖を取り巻く水源である滋賀県の森林の保全のあり方を考えていただく機会とするため、
「水源林保全を進めるために」をテーマとして琵琶湖森林づくり県民フォーラムを開催しました。
■基調講演「企業による水源林保全の取組 ∼水を守りに、森へ∼」
サントリーホールディングス㈱エコ戦略部 チーフスペシャリスト 山田 健 氏
フォーラムでは、「水と生きる」を会社の理念として水源の保全のための森林整備を実施しているサン
トリーホールディングス株式会社エコ戦略部チーフスペシャリスト山田 健様から水源としての森林の現状
と課題についてご講演いただきました。
講演では地下水が豊富な場所にサントリーの工場を建てておられることや、地下水の持続可能性を守
るため「天然水の森」を企画されたことなどについてお話しいただきました。また、CSR 活動ではなく
事業活動として位置付けておられることから、数値目標と品
質目標を設定して取り組んでおられることなどについてもご紹
介いただきました。
■琵琶湖森林づくり条例改正の
検討状況報告
滋賀県琵琶湖環境部森林政策課 滋賀県の担当者から「水源林保全のための仕組みづくり」の検討状況について説明しました。滋賀
県では、「琵琶湖森林づくり条例」制定から約10 年が経過し、目的不明な土地取得、ニホンジカによ
る被害、森林所有者の高齢化や不在村化による森林整備への不安など新たな課題が出てきていること
から、こういった課題への対応について滋賀県森林審議会に諮問しています。この検討内容について要
点を報告しました。
■パネルディスカッション「水源林保全を進めるために」
コーディネーター:滋賀県森林審議会会長の栗山 浩一氏(京都大学 教授) パ ネ リ ス ト:八代田千鶴 氏(独立行政法人森林総合研究所 主任研究員)
高橋 市衛 氏(長浜市伊香森林組合 参事)
山田 健 氏(サントリーホールディングス㈱エコ戦略部 チーフスペシャリスト)
パネルディスカッションでは、参加者の活動内容について
資料を使って説明いただいたあと、3 つのテーマ(目的不明
な土地取得、ニホンジカの問題、その他の森林に関わる諸
問題)についてディスカッションを行いました。
森林の現場で活躍しておられるパネリストの方々の体験談
や苦労話などを交え、水源林の保全について活発に議論し
ていただきました。
2
パネルディスカッション
「水源林保全を進めるために」
●「他道県で外国資本等による目的不明な土地取得があり、無秩序な開発や水源の
枯渇が懸念されていることについて」
主な意見
・日本では森林をどう管理するか、どう利用するかは森林所有者がすべて権限を持っている。環
境や森林に関心が高まっている中でどう対応するかが課題である。
・森林の管理はコストの面や生態系の面でも、ある程度の面積を一体的に行うことが大切。そう
いうときに一部の所有者に協力してもらえなかったりすると困る。
・外国資本が水を取ることを目的に森林を買うことはないと思う。
・所有者が誰かというより、きちんと森林(涵養)のことを考えているかが重要。
・森林にはいろんな機能があるということを認識して、自分の土地を周りの皆と協力して管理してほ
しい。
●「ニホンジカが急増し、農作物への食害や生物多様性の消失などの問題が生じて
いることについて」
主な意見
・最近はどこの山に行っても被害がある。
・ニホンジカをどうするかという方針を決めて具体的に実行していくことが重要である。
・新しい捕獲技術が出てきているが、どういう体制で実施するか、また地域に適した捕獲技術を
きちんと判断して実行していくことが大切。
・新しい捕獲技術だけでなく、「くくりわな」や「はこわな」など昔ながらの技術も重要で、それら
の方法をある程度組み合わせることも大切。
・シカ捕獲の取組は行われているが、生息数の減少にはまだまだ足りない現状。
・環境省が法律を変えて、
「保護ではなく管理をしよう」ということに舵を切ったことは大きな違い
になる。
●「その他の森林に関わる諸問題について」
主な意見
・森林所有の境界が明確であることは森林管理のために不可欠であるが、この境界確認作業に時
間がかかって、森林管理を進めるうえで障害となっている。また、境界の分かる人が高齢化して、
山での立会いができないという問題も出てきている。
・森林の管理やニホンジカの捕獲の際に林道が整備されていると作業がとてもスムーズに進む。
・今のやり方ではお金にならない山でも、発想を転換すれば宝の山に変わることもある。みんなが
山との接点を意識し、山の上流と下流をつなぐことで森林の整備が進むようなことが起こるかも
しれない。
・森林づくりに対して何らかの形で関わっていきたいという企業は多いと思うので、それを受け入れ
る態勢を整えていくことも大きな課題。
3
施設紹介
●朽木診療所「びわ湖材を使った木造公共施設」
高島市朽木地域は市の南西部に位置し、周りを山々に
囲まれた、森林資源の豊富な林業が盛んなところです。
このたび同市朽木市場地先において、高島市内で伐採
された地域材「びわ湖材」を用いた「高島市国民健康保
険朽木診療所」が完成しました。(木造平屋 延床面積
約 242 ㎡)
この施設は、もともと高島市役所朽木支所に隣接した
朽木診療所全景
RC 造 2 階建の建物でしたが、老朽化が著しいため、近く
の場所に移して建て替えられることになったものです。
建て替えにあたっては、高島市が「公共建築物におけ
る高島市内産材の利用方針」に基づき、地元のスギやヒ
ノキを構造材に用いるとともに、内装等についても可能な
限り木質化を進めようということで、琵琶湖森林づくり県
民税事業「びわ湖材利用促進事業」を活用して取り組ま
れました。
待合室
市内の建築会社により施工され、建物の柱や梁、土台
といった部材を中心に、市内産木材を高島市森林組合な
どから調達し、使用された木材は60 ㎥ほどになりました。
平成 26 年 5月1日から診療所として診察を始められて
いますが、利用者からは「木の香りがよい」、「ぬくもりが
感じられる」という声が寄せられるなど評判は上々のよう
です。
診療室
県西部・南部森林整備事務所高島支所としては、市
保険年金課をはじめ関係者と連携しながら、
計画段階から、木 材生産、建築まで、地
域材が円滑に活用されるための仕組みづく
りの支援を行いました。小さな建築物では
ありますが、
「仕組みづくり」という意味では、
今後の公共建築につながる大きな意味を持
高島森林組合
県 普及員
市保険年金課
設計概要打合
市内産情報提供
設計打合
製材品の見積り
設計チェック
特記仕様書打合
つ取り組みになったと思います。
木材在庫情報共有
H25.10 工事発注・落札
H25.11 納材
H26.2 振り返りの実施
H25 年度末 竣工
普及員の関わり(フロー図)
4
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甲賀森林整備事務所
「軽トラとチェーンソーで山をきれいに、
まちを元気に!」甲賀木の駅プロジェクト
東日本大震災以後のエネルギー問題の解決策で、
5月19日には運営委員会の主要メンバーで、林業
エネルギー源としての木材が期待されているのが、最
研究グループの10 数名が、間伐の選木、伐倒を実施
近の全国的なチップ用材の需要の高まりからうかがえ
しました。水田を転用後植林した26 年生のスギ林で、
ます。最近、建築用材として国産材、県産材の合板
県普及員から、樹木にとって樹冠長がいかに大切か、
の需要が堅調であることからも、木材に市場で強い
劣勢間伐だけでは効果が薄いことについて説明を受
追い風が吹いているのが実感されます。
け、技術的な裏付けを得ることでプロジェクトに対す
そのような中、平成 26 年 4月1日に甲賀市甲賀町
る自信を深められていました。
内で、甲賀愛林クラブと大原自治振興会の有志によ
また、6月3日には伐倒した間伐木の集材、造材、
る「甲賀木の駅運営委員会」が発足し、間伐後の山
搬出を実施。県普及員から、合板用材、チップ用材
に放置されたままの林地残材を「宝」に変える「甲
としての造材方法について説明を受け、今後の施業
賀木の駅プロジェクト」の取り組みがはじまりましたの
への意欲を強めていました。
で紹介します。
さらに、6月10日には甲賀町の大鳥神社境内で甲
木の駅プロジェクトでは、地元森林所有者等が林
賀木の駅プロジェクトの発足式典が行われ、式典の
地残材や間伐材を搬出すると町内商店で利用できる
最後では軽トラ10 台が、のぼりを掲げ市内のチップ
地域通貨「モリ券」と交換してもらえます。モリ券には、
工場へ向け力強く出発していきました。
森林保全、地域貢献費が上乗せされているため、通
この取組は、森林所有者のオピニオンリーダーであ
常より高い価格で木材を買ってもらえます。山仕事で
る林業研究グループが、核となり、地域を引っぱり、
晩酌代を得て、山はきれいになって、町も元気になる!
資源の有効活用だけでなく、地域経済の活性化をも
というおもしろい活動です。
担うものとして期
甲賀木の駅運営委員会は、現在までこの仕組み作
待されています。
りの準備をされており、4月7日には本格的な活動に
最近の森林所有
先だって運営委員会の主要メンバーが、林地残材の
者の山離れが著
搬出、出荷の体験会を実施し、甲賀町神地先の約
しい中、森 林 所
50 年生のヒノキ林で林床に玉切りして放置された3、
有者の関心を山
4 番玉を集材し、市内のチップ工場へ出荷しました。
へ取り戻すため、
出荷量は 7.5tとなり、参加者は汗をかきながら手応
今後の活躍が注
えを感じていました。
目されています。
甲賀木の駅プロジェクトの発足式典
間伐木の搬出作業
市内のチップ工場へ出荷
5
市町村木材利用方針の策定状況
ங஬Мဇỉਖ਼ᡶỆӼẬề
地域材を活用した公共建築物の木造化は、木材需要を創出するとともに、
木造技術の向上や地域の林業、木材産業の活性化などによる雇用の拡大
など地域経済の振興に貢献することから、国は、「公共建築物等における
木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号。以下「法」
という)」
第 7 条第 1 項の規程に基づき「公共建築物における木材の利用の促進に
関する基本方針」
を平成22年10月に策定しました。
また、滋賀県においても、
法第 8 条第 1 項の規定に基づき、「公共建築物における滋賀県産木材の利
用方針」を策定し、社会全体の木材需要を拡大することを狙いとして、公
共建築物等への木材利用の推進を図っています。
58%
滋賀
また、これらに合わせて、法第 9 条第 1 項では、市町村においても、市
町村の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関する方針を定
めることができるとされています。
滋賀県内木材利用方針策定市町
平成26年7月1日現在
現在、全国の市町村における「市町村木材利用方針」の策
定状況は右表のとおりで、全国のほぼ半数の23 県において県
下全市町村の木材利用方針が策定されています。また、その
他の道府県においても、多くの市町村で木材利用方針が策定
済となっていますが、滋賀県においては、現在、19市町のうち、
木材利用方針策定済市町は11 市町にとどまり、なんとか半数
を超えたものの、まだまだ策定率が低い状況にあります。
このような中、去る5月16日に米原市で開催された「かなん
認 定こども園」の構
造見学会には、同市
が当初予定していた
50 名の参 加 者を大
きく上 回る150 名の
参加者があり、公共
木造建築物に対する
関心の高さを示すこ
平成26年7月1日現在
とになりました。
かなん認定こども園構造見学会
市町が木材利用方針を策定することによって、直ちに木材利用が進むわけではありませんし、地域の
林業が活性化するわけでもありません。しかし、地球温暖化防止などの環境問題への対応や水資源の
確保などを進めていく上で、木材の利用が適正な森林の整備に寄与することを考えれば、多くの森林を
抱える市町はもとより、森林が少ない市町においても、今後の木材利用の方向を示して、率先して木材
の利用に取り組んでいただきたいと考えています。
6
お住まいには
びわ湖材 を
甲賀市水口町杣中160
甲賀市甲南町深川2007
http://www.kouka.ne.jp/~kourin/
組合の力で安心で活力ある健全な森林づくりをすすめています。
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滋賀中央森林組合
本 所 〒528-0014
甲賀市水口町鹿深3-39
TEL 0748(65)4180
FAX 0748(65)4181
本 所
土山事業所 〒528-0211
信楽事業所 〒529-1832
日野事業所 〒529-1602
甲 賀 支 所 〒520-3431
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信楽事業所
日野事業所
甲賀支所
甲賀市土山町北土山361 TEL 0748
(66)
0015
甲賀市信楽町小川出1-1 TEL 0748
(82)0758
蒲生郡日野町河原1-1 TEL 0748
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滋 賀 北 部
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浅井事業所 〒526-0244 長浜市内保町2535 TEL0749-74-0276
h
t
t
p://www.
l
umbe
r−base.
JP/
7
お知らせ
滋賀県林業協会 第 51回通常総会
平成26年度林業功績者ならびに
治山・林道工事、作業路工事優秀施工者表彰
滋賀県林業協会では、平成 26 年 7月24日大津市で第 51
回通常総会を開催し、事業計画案および収支予算案を承認い
ただきました。総会席上「平成 26 年度林業功績者ならびに治
山・林道工事、作業路工事優秀施工者を表彰しました。受賞
者の皆様には今後のますますのご活躍をご期待申し上げます。
受賞者の方々(敬称略)は次のとおりです。
平成26年度 林業功績受賞者(6名)
奥村 智裕(大津市) 宮城定右衛門(栗東市)
高田 藤吉(栗東市) 小倉 正(甲賀市)
林業功績受賞者
北原 一夫(長浜市) 中川 栄(高島市)
平成26年度 治山・林道優秀工事施工者(6社)
株式会社 沢井建設 株式会社 市原建機
廣田建設株式会社 株式会社 萩原建設
法面プロテクト株式会社 株式会社 藤田工業
平成26年度 作業路優秀工事施工者(1組合)
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