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Title
光電格子分光器による夜光の観測
Author(s)
市川, 敏朗
Citation
[岐阜大学教養部研究報告] vol.[6] p.[2]-[5]
Issue Date
1970
Rights
Version
岐阜大学教養部物理学教室 (Faculty of General Education,
Gifu University) / 岐阜大学教養部物理学教室 (Faculty of
General Education, Gifu University)
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/47421
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
2
レ光電格子分光器によ る夜光の観測,
市 JI卜 敏 朗 ・ 大
地
λ
登
丿岐阜 大学教 養部物理学教室
( 昭 和 45 年 10 月 31 日 受 理)
Photoelectric G rating SPectrometer for O bserving Air910w
T oshiro l cHI KAw A &
N oboru O TI
A bstract- A brief description ig given here of a photoelectric grilting spectrometer
constructed for airglow studies.
T he apparatus has 2.5 ×3.0cm replica grating, therm oelectric coolitlg system
for
the photom ultiplier and photocounting system .
Preliminary m easurem ent on the airglow OI -5577, N al-5893 and OI -6300 11nes is
presented.
序
1957年以来, 我 々は岐阜大学において , 主 と し て夜光の観測研究1) を つ yけ て きたが, 近年
人工光線の強度が強く な り, 又二方において空気の透明度も悪 く なって, 従来行なってきた よ
うな測定方法で観測を行ない う る観測地点を見つけ る事は大変困難な事 とな っ て きた。
と こ ろ が, 一般の夜空の人工光線のスペ ク トル分布を し らべてみ る と , 水銀の輝線の散乱は
非常に強大であ るが, 連続スペ ク トル成分の単位波長当 りのエ ネルギーは, 夜光輝線5577A の
強度に比べ て , それほど強 く はない。
それゆえ , 波長分解能を上げた分光方式を用いて測定 し さ えすれば, 比較的都市光等人工光
線の多い地点で 乱 夜光輝線の強度測定は可能にな る と考え , 筆者等は新 しい夜光観測用の測
定器を製作 したので , そ の概略について報告す る。
測
定
器
近年外国では, 透過半値 巾が約 3 ~ 4 A の干渉 フ ィ ル タ ーの製作がで き る よ う にな り , それ
を使用 し , 入射光 と ラ イル タ ーと の傾斜角を変化 させ, 分光掃引す る と い った , 測定方式 と し
ては従来 の干渉 フ ィ ル タ ー方式に入 る方法に よ っ て , 夜光やオ ーI=・ ラの分光観測を お こな っ て
い る例があ るl)
と こ ろ が, 日本ではそ の よ う な 良い フ ィ ル タ ーが製作 さ れていないため, 入手す る事は非常
に 困難 で あ る。
I
I
-
・
そ こ で格子分光器に よ る分光方式が考え られ るが, 格子分光器に よ る方式で ぱ掃引波長域は
非常に大 き く とれ るが, 構造的に入射及び射出ス リ ッ トがあ るた めに , 受光面積が非常に小 さ
く な り , 測定が困難 と な る点が問題 で あ る。
十
大型格子分光器 と光量子計数方式を 組み合せた ホ ト メ ータ ーに よ る 夜光の 観測について の
2
光電格子分光器に よる夜光の観測
3
Broadfoot ( 1968) 3) 等の発表に もみ られ る よ う に , 事実測定出来 る光量は非常に少ない。
故に, 格子分光方式を採用す るな らば, 検出器で あ るホ ト マデテ ィ プ ラ イ ヤーを , - 30°
C以
下に冷却 し て4) 熱電子放射に よ る暗電子放 出を , 少 な く す る と共 に, 磁気 レ ン ズ5) を利用 し て光
電面 よ り の放射電子を , 光学的な モ ノ ク ロ メ ータ ーの射出ス リ ッ ト像の部分だけに限定 し て ,
かっ そ の出力を 光電子計数方式6) に よっ て測定す る形式を と るべき であろ う 。
このよ う な観点に も と づ いで , 我 々は第 1 図のブ ロッ ク ・ ダ イ ヤグ ラ ムに示 し た よ う な方式
●
。
。
1M PUT
Fig.
1
P吐 S O UT
V OUT
GND
2SA 5α7
2SC 4SX7
IS 2 13
2 SC 39 5
2 SC 3 95
2 SA 5 00
2SA j政)
IS 75 85
2SC 400
PuLsE AM PL旧 a
DISCRIMIN A TO R
Fig.
3
2
o N E- sHo r
以 TEMETER
4
市 川
敏 朗 ・大
地
登
のホ ト メ ータ ーを組み立てた 。 こ Xで , ホ ト マルの冷却装置は, 電子冷凍方式を 2 段組み合わ
せに した ので , 夏季で も- 30°
C 以下の温度に保つ事が出来た 。 そ の結果, 暗電子流は, 非常
に少な く な り , 浜松テ レ ビのホ ト マル R- 376 ( S- 20) を , 1000V の作動電圧で , 計数器のデ
ィ ス ク リ ミネータ ーを , 夜光 OI- 5577の輝線強度に相当す る光電流で, S/N 比を最高にえ ら
んだ と き , 約 1 カ ウン ト/秒程度にな った。
又 , 計数 の不感時間を変化で き る よ う に し , それを適当に選ぶ事に よっ て , 測定光子の時間
計数比の少ない と き , 暗電子のア ーフ タ ーパルス効果7) に よ る計数を軽減す る事が出来 る様に
した 。
電気回路 のダイ ヤグ ラ ムを 第 2 図に示 し た 。
測定結果及び考察
第 3 図に岐阜市長良岐阜大学構 内で本測定器に よっ て観測 した記録の一部を示 した 。
か ぎ られた予算で組み立てた結果ではあ ったが, 浜 松テ レ ビのホ ト マルテ ィ プ ラ イ ヤーも非
常に良好で , 又磁気 レ ン ズ も大変効果的であ っ たた め, 格子分光器が格子及び格子常数共に小
さ く ( Broadfoot の場合の1/10乃至 1/20) , 分光器は第一線の水準の物ではなか ったが, 一応
初期の 目的には, ほぼかな う測定器が作 り得た と考え られ る。
しか し夜光輝線 OI- 6300 の観測のためには,
ホ ト マルテ ィ プ ラ イ ヤーの赤色での量子効率
を 一層上げ る必要があ る。そ のた めに, 例えば, Hirschfeld,8) Burroughs,9) Gunter et apo
)等
に よっ て発表 されてい るホ ト マルテ ィ プ ラ イ ヤーの光電窓内で入射光を 多重反射 させ る と い っ
た方法を採用すれば, 非常に有効であ る と思われ, 我 々の研究室で も現在実行方計画中であ る。
Fig.
4
3
光電格子分光器に よる夜光の観測
5
ただ し , こ の方式を用いた場合には, 磁気 レ ンズが使用出来な いので , こ の点は問題で あろ
う。
文
献
7 H
大地, 市 川 : 岐阜大学学芸研究報告, 2, 27 ( 1957)
c n
E ather, R . H . and Reasoner, D . L ・, ( 1969,) A ppl, 0 pt. 8, 227・
9
B roadfoot, A . L . and K enda11, K . R . , ( 1968) , J. Geophys. Res. 73, 426・
4)
Broadfoot, A . L ., ( 1966) , A ppL Opt. 5, 1259・
5)
F rom mh(jld, L . and F eibelman, w . A 。 1967, J. Sci. lnstrum . 44, 182.
6)
T uII , R . G ・, ( 1968) , A ppl. 0 pt. 7, 2023・
7)
Foord, R・, Jones, R., 0 11ver, CoJ. and Pike,E.R・, ( 1969) , Appl. 0 pt.8, 1叩5・
8)
Hirschfeld, T・, ( 1968) , Appl. 0 pt. 7, 443・
9)
Burroughs, E . G ・, ( 1968) , A ppl. 0 pt. 7, 2429・
10)
Gunter, Jr., W . D., Grant, G. R. and Shaw, S. A ., ( 1970) , A ppl. 0 pt. 9, 251.
5